ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak   作:ウルトラゼロNEO

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嵐の前の

 

「──成る程。ユカちゃんにバレたか」

 

 GBBBBで行われているバトルトーナメントも準決勝戦が終わり、決勝戦の時を待つだけだ。そんなある日の昼下がり、マンションのとある一室。そこにはソファーに腰掛けて電話しているショウと近くには知育玩具で遊んでいるラグナの姿があった。

 

「どの道良いタイミングだったのではないかな? 君だっていつまでも演じ続けるのは負担だろう」

 

 相手はマイスターのようだ。ベクルックスとの一連の出来事を伝えられているのだろう。とはいえ元々マイスターの正体を知っているショウは好意的に受け止めるように勧める。

 

「それよりももうすぐバトルトーナメントも決勝だろう。ツムギ君とどのようなバトルになるか楽しみにしているよ」

 

 いよいよ迫るバトルトーナメント決勝、アルティメイトフォースゼロとクラン・ブレイカーズのバトル。どちらかに肩入れして応援する気はないが、どうなるのか楽しみな試合でもある。その後、話もそこそこにショウは通話を終える。

 

「世界は目まぐるしく進むものだな」

 

 スマートフォンを机に置き、ソファーから立ち上がったショウは知育玩具で遊んでいるラグナの元に向かう。

 

「なー、ラグナー?」

 

 初めての子育てで気苦労も多いようだが、赤子に向けた柔らかな物言いで喋りかけるショウ。少なくとも上手くやれている方だろう。

 

「ぱぁぱ」

 

 ラグナはまるで自分の知育玩具を自慢するかのように無邪気な笑顔でブロックを向けてくる。漸く喋れるようになったラグナにショウの頬は思わず緩む。そんなショウとラグナの近くの棚の上にはフルスクラッチで作られた脇に抱えられるほどの大きさを持つ強襲機動特装艦アークエンジェルの模型が堂々たるその姿を見せつけていた。

 

 ・・・

 

「もう少しで完成だね」

 

 ブレイカーズ三号店の作業ブースでは機材を借りてガンプラ制作に勤しむツムギの姿があった。ナギサのエアリアルソアーに触発されるように始めた新作ガンプラ作りだが、漸く完成の目途が立ち、ユウヒが声をかける。

 

「バトルトーナメントに間に合わなかったのは残念ですけど、でも下手に妥協しなかった分、良いガンプラを作れたと思います!」

「ふふっ、そうだね」

 

 ツムギの新作ガンプラはマイティーストライクフリーダムガンダムをベースにカスタマイズを施したものであった。全体的にストライクブレイザーの流れを組むようなガンプラではあるが、細部の武装などは異なり、ツムギのGBBBBでの経験が反映されたようなガンプラであった。

 

「名前は決まったの?」

「それがまだ……。中々いい名前が浮かばなくて」

「まあ、焦ることないよ。大事な名前だからね。納得するまで考え抜けばいい」

 

 ツムギの次なるガンプラは果たしてどのような名前なのか。何気なく聞いてみたが、まだ決まってはいないらしい。名前というのは例え生物でなくとも大事なものだ。じっくり悩めばいいとユウヒは笑いかけるのであった。

 

 ・・・

 

「流石、ガンダムブレイカー、やっぱり強いねぇ! シゲちゃんも良い刺激になったよ!」

 

 GBBBBのロビー広場ではタツヤの姿があった。今日はアヤトやヒマリは一緒ではないようだが、タツヤを中心に人が賑わっており、先程まで一緒にマルチでミッションを共にプレイしていたシゲがタツヤを賞賛する。

 

「シゲさんこそ。バトルのアドバイスをする上でシゲさんのマルチでの立ち回りは参考に勧められるくらいですよ」

 

 どうやら今日もタツヤは彼にバトルのコツを求めるプレイヤー達にアドバイスをしていたようだ。たまたまマルチで居合わせて出撃したものの実力のあるシゲは良い参考になるのだろう。タツヤは自分だけではなく、シゲの動きを見本に他のプレイヤー達にアドバイスしていた。

 

「それじゃあ、今日はこの辺にしようか」

 

 キリの良い時間を見つけ、今日の指導を切り上げるタツヤ。中には残念そうにしているプレイヤーもいるが、都合というものもある。タツヤを中心にした集まりは解散するのであった。

 

「──君はまるで太陽のようだね」

 

 ログアウトしようか、そう思ってコンソール画面を開いていたタツヤに声をかけるものがいた。

 

「みんなを照らしてくれる。君といると自分もマシな人間でありたいと思えるよ」

 

 ゼノギアだ。一見、怪しい風貌の人物だが、タツヤはなにか記憶を探るようにゼノギアを見ると……。

 

「もしかして、“シキ”か?」

「……おや」

 

 ゼノギアの声と喋り方から思い当たる人物がいたのか。人名を口にするタツヤにゼノギアは動きを止める。

 

「驚いたな。分かってしまうのかい」

「友達だからな。声と喋り方で分かるよ」

 

 元々知り合いであったようだが、それでもGBBBBのアバターという仮初の身体で一発で自分の素性を見抜いたタツヤにどこか嬉しそうにマスクを外して素顔を露にするゼノギア。微笑を見せるゼノギアのタツヤも釣られて笑う。

 

「シキもこっちにいたなら教えてくれれば良かったのに」

「タイミングがなくてね。だが漸く君の所に来れた」

 

 友人関係にあるようで2人の会話は非常に和やかだ。普段、妖しい雰囲気を纏うゼノギアもいつも以上に雰囲気が和らいでいるのだ。

 

「タツヤは相変わらず誰かのために動いているようだね」

「別にそんな大した事じゃないよ。俺がしたい事をして、それが最終的にそう思われているだけだよ」

 

 今もバトルのアドバイスしていたタツヤ。家業を手伝ったりと身内のアヤトでなくともタツヤの行動は広く知られている事なのだろう。だがタツヤは意識している訳ではないようであっけらかんとした様子だ。

 

「そうだ。折角だし、一緒にミッションに行かないか? シキに会うのも久しぶりだし、遊びたいんだ」

 

 折角、GBBBBで会ったのならミッションをしようと思ったのだろう。そのまま笑顔でゼノギアに手を差し伸べ、その太陽のような明るい笑顔を向ける。

 

「……君は本当に眩しいな。人を疑うことなく、手を差し伸べる」

 

 そんなタツヤの姿を見て、ゼノギアは心底、眩しそうに一瞬だけ顔を顰める。

 

(だからこそ……私は君に執着してしまう)

 

 そしてゼノギアはタツヤの手を取ったのだ。

 

「……?」

「さあ、行こう。タツヤの腕を間近で見せてもらうよ」

 

 一瞬、何かに蝕まれるような感覚がタツヤを襲う。思わず眉を顰めたタツヤだが、ゼノギアはそのままタツヤの肩に手を回し、体を密着させる。思うところはあったが、ゼノギアは、いやシキは友達だ。一先ずタツヤはゼノギアと共にミッションへ向かうのであった。

 

 ・・・

 

「色んな事があったな、ブレイザー」

 

 タツヤとゼノギアの邂逅から数時間後、クラン・ブレイカーズのマイハンガー。そこに格納されているストライクブレイザーのコックピット内ではシートに身を預けたツムギの姿があった。

 

「まさかこんなところにまで来れるなんてね。色んな人と知り合って、バトルして……。ブレイザーにも出会えた。GBBBBってやっぱり凄いところだよ」

《……》

 

 独り言のようになってしまっているが、その言葉の全てはストライクブレイザーに宿るブレイザーへ向けてのものだった。ツムギはたまにこうしてブレイザーに話しかけていた。最もブレイザーが何か言葉を返すことはないが、それでもブレイザーの気配は感じる。リアクションはないが、話は聞いてくれているのだろう。

 

「マイスター達は強い……。でも、それでも気持ちだけは負けない。俺は1人じゃない。クランのみんなも……何より俺にはブレイザーがいるから」

 

 いよいよ迫るマイスター率いるアルティメイトフォースゼロとのバトル。果たしてどのようなバトルになるのか。期待感と高揚感で胸がいっぱいだ。早くバトルがしたい。自分には胸を張れる仲間達がいる。彼らの姿を想えば、不思議と負ける気にはなれなかった。

 

「ノセー!」

 

 ふとコックピットの外からナギサの声が聞こえる。モニターを操作してみれば、ストライクブレイザーの足元におはナギサとソフィーの姿があった。

 

「どうしたの?」

「フレンド画面でノセがログインしてるってあったからさ。さっきリンちゃんに会って、クラン・ブレイカーズのハンガーを通してもらったんだよ!」

 

 ハッチを開いたツムギはリフトを使ってストライクブレイザーのコックピット近くまで昇ってきたナギサ達に声をかける。特に何か用がある訳でもないが、ツムギが同じタイミングでログインしたことを知り、顔を見に来たようだ。

 

「なにしてたの?」

「ブレイザーと話してたんだ……って言っても俺が一方的に話してるだけだけど」

 

 リフトからコックピット内を覗き込むソフィー。何か調整の類をしているようにも見えない。それもそうだろう。ツムギはブレイザーと話したいだけで他に目的はない。

 

「じゃあ、ナギサさん達のトークも聞かせちゃおっかなー」

「ん」

 

 ナギサもソフィーもブレイザーには助けてもらった事がある。少しでもコミュニケーションが取れるなら取りたいのだろう。

 

「えっ、ちょっ、2人とも……!?」

 

 そこまでは良かったが、何とナギサとソフィーはストライクブレイザーのコックピットに入ってきたではないか。まさかの行動にコックピット内にいたツムギは慌てるが、2人はお構いなしにそのまま入り込む。

 

「ねぇねぇ、ブレイザー聞こえてる?」

「いや、あの……」

 

 ツムギを挟んで強引にストライクブレイザーのコックピットに入り込んだナギサとソフィー。早速、話始めるナギサを他所にまともに身動きも取れない程のすし詰め状態にツムギが戸惑っていると……。

 

「……っ」

 

 あまりに密着状態の為、視界には意図しなくてもナギサやソフィーの胸や太ももが入り込んでくる。少なくともメタバースの為、感触などの類はないが、それでもツムギも思春期の青年。意識してしまったのだろう。頬を染めながら視線を彷徨わせる。

 

「……ふーん」

 

 相変わらずトークを続けているナギサ。近況を面白おかしく話しているなか、ソフィーは視線を彷徨わせるツムギを見て、何かを察したかのように目を細める。

 

「ソ、ソフィー……なに……?」

「いやぁ? でも……ふーん」

「やめてよ、その反応!」

 

 2人の異性に密着されている状況を意識してしまっている事を悟られたか、明らかに含みのある反応を見せるソフィー。明言こそしないもののその反応にたまらずツムギは叫ぶ。

 

「おーと、バランス崩したー」

「ソフィー!?」

 

 明らかに棒読みのままソフィーは更にツムギに身体を密着させ、首元に両腕を回す。完全にからかっているのだろう。だがツムギからすれば、刺激も強く狼狽えてしまっている。

 

「……じゃあナギサさんもー!」

 

 ツムギとソフィーの状態を見て、ナギサも何を思ったのか、ツムギに更に身を寄せ、その頭を抱え込むように抱き着いたのだ。

 

「──えぇ!? なにやってんの、アンタ達……」

「り、リン……」

 

 頬どころか顔を真っ赤にしているツムギ。そんな状態のなか、ナギサとソフィーをクラン・ブレイカーズのマイハンガーへ案内したリンが遅れてやってきた。リフトからストライクブレイザーのコックピット内を見て、明らかに困惑しているリンにツムギが助けを求めるように視線を送ると……。

 

「……」

「リン!?」

 

 明らかに戸惑っていたリンだが、何かを考えるように間を置いた後、何を思ったのか、リンまでストライクブレイザーのコックピット内に入ってきたではないか。思わぬ行動にツムギが悲鳴のようにリンの名を呼ぶが、最終的にツムギは三人の少女に囲まれ、逃げ道を失ってしまった。

 

《……》

 

 ブレイザーの気配を感じる。果たして今、この状況にブレイザーはなにを思っているのだろうか。それは分からないが、少なくともナギサ達の暴走を何とかしなければいけない。が、どうにもできない。ツムギは無心になるようギュッと目を瞑るのであった……。

8/21はバニーの日。小話にバニーイラストが見たいのは(7月末まで)

  • ナギサ
  • ソフィー
  • ユカ
  • アオバ
  • シオン
  • セレナ
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