ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
フリーダムフリートからの宣戦布告から数日。GBBBBのログインも制限されるなか、現実世界でのアオバはガンプラ製作に勤しんでいた。
「さて、と……」
それが漸く完成したのだろう。アオバの目の前にはブルーデスティニー1号機を思わせる配色のガンダムタイプのガンプラがあった。元々彼女が使用していたブルーデスティニーエクストラのバトルで使用するながらディティールアップなど情報量を増やし、完成度を高めたガンプラだっだが、目の前のガンプラはブルーデスティニーエクストラ以上の完成度のガンプラだった。
フリーダムフリートの事も気になるが、所詮、GBBBBの1プレイヤーに過ぎないアオバにはどうしようもない事だ。ならばせめて再びGBBBBが再開した時の為に備えてのガンプラ作りだった。
「アキナ?」
ふと同じGBBBBプレイヤーである妹のアキナが気になり、部屋の様子を伺うも気配が感じられない。ノックにも反応がなく、部屋に入ってみればもぬけの殻であった。
「お母さん、アキナは?」
「お友達のところに泊まりに行くって行ったけど」
リビングにいる母親に声をかけてみるも、アキナは家にはいないようだ。別に姉であるからと言ってアキナの行動を束縛する気はないが、何故だが妙な胸騒ぎを覚えるのであった。
・・・
「……では、そのように」
GBBBB、アルティメイトフォースゼロのクランルームではモニター越しに運営側とマイスターが会議をしており、丁度終わったのかモニターは暗転する。
「どうだった?」
「あまり良い状況ではないが、それでも我々の行動する時間は得ることは出来た」
ソファーに腰掛けて一息つくマイスター。すると扉が開き、ライムとアータルが入室してくる。部屋に入って早々、ライムは会議の様子を尋ねると、マイスターは神妙な面持ちで答える。
「……アヤトはいないか」
「あれからログインしていない。タツヤはヒマリの話ではリアルの方では昏睡状態に近いらしく、今は病院の世話になっているようだ」
目の前でタツヤを攫われたというアヤト。普段はタツヤを茶化す言動もあるアヤトだが、それでも双子として人一倍タツヤを慕っている。だからこそ今回のタツヤを巡る一件によるショックも大きかったのだろう。
「……この短い時間に色んなものを失ってしまった」
リリン、タツヤ、ブレイザー。何より楽しかったはずのGBBBB。この現状にマイスターは重々しくため息をつく。
「……彼らにこんな想いをさせたくなかった。ただ、純粋にガンプラバトルを……GBBBBを楽しんでほしかった。その為の道を切り開く為に私は……俺はここに来たのに」
マイスターがGBBBBにいるのは、ただGBBBBを楽しむだけではない。彼はただのプレイヤーではない。運営の会議の場に出られる程の影響力を持つ程の人物なのだ。見ようによっては運営側の人間だが、このような事態を招いたことに思うところがあるのだろう。マイスター・アインとして、そしてそのバイザーに隠れた一人の人間として悔しそうに目を伏せる。
「……だが最後まで諦めやしない。必ずGBBBBを取り戻して見せる」
それでもマイスターは諦める事はしない。また楽しかったGBBBBを、そこにいるプレイヤー達の笑顔を取り戻すためにも今は彼が出来る事を進めていくのであった。
・・・
「ソフィー達の配信を観てますの?」
一方、ユカが暮らしているマンション。ソファーに腰掛けながらスマートフォンで動画を見ているユカの隣にアイスティーを2人分用意したシオンが腰かけ、聞こえてくる聞き馴染みのある声に反応する。
「前の配信だけどね」
とはいえ生配信という訳ではないようだ。視聴中の動画を止めたユカはスマートフォンをテーブルに置くと、そのまま隣に座るシオンの肩にもたれかかる。
「……アタシさ。目的は果たしたから、GBBBBに行く意味はもうないんだよね」
「ですが、それでも残る事を決めたのでしょう?」
アマミヤ・イチヤを探すためにGBBBBをやって来たユカ。その目的も一区切りがついた為、もうGBBBBに行かなくても良いのだが、ユカはGBBBBに残る事を決めた。それはアマミヤ・イチヤを取り戻す為、というのは理由の一つだ。
「……うん。理由は色々あるよ。でも今は……ノセっちやナギちゃん達がGBBBBで何を成し遂げるのかを見てみたい気持ちもあるんだ」
年下であるツムギ達。後輩なんて言うつもりはないが、それでも何かを感じさせてくれる彼らがGBBBBという舞台で何を選び、そして成し遂げるのか見届けたい気持ちがあるのだ。
「……だからアタシが出来ることはする。こんなのが辿り着く場所で良い筈ないから」
ユカがふと向けた視線の先には手を加えているのか、少々姿が異なるバルバトスルプスノームの姿があった。そしてその隣には見慣れぬガンプラの姿も……。いずれ来る戦いを予感しながら今は身体を休めるようにシオンと2人だけの時間を過ごすのであった。
・・・
セレクトMの厨房ではアヤトの姿があった。タツヤが入院した事は両親も知っている。だからこそ自発的に手伝い、最早従業員並の働きを見せていたタツヤが抜けた穴を埋めるように多忙な時間を過ごし、ヒマリだけではなく、アヤトも店を手伝うという選択肢を取ったようだ。
「……っ」
「アヤ兄?」
売上の計算をしている父と店内の清掃作業に勤しむ母。そんな中、アヤトとヒマリは翌日の仕込みの為、野菜のカットを中心に進めていたが、ふと包丁を落として指を抑えるアヤトにヒマリは駆け寄る。
「うん、これで大丈夫」
どうやら包丁で怪我をしてしまったようだ。大した怪我ではないようでヒマリはこういった怪我は慣れっこなのか、手早く処置を済ませる。
「……やっぱりタツ兄みたいにはいかないな」
指に巻かれた絆創膏を眺めながらアヤトは不意にポツリとこぼす。タツヤならばこんなお粗末な怪我はしないだろう。それだけではない。今もオニオンスライスをカットしている訳だが、厚みもタツヤならばもっと薄くカットしていた。
「……昔さ。父さんが過労で倒れた時があったじゃん。その時、俺も丁度、模型紙の担当から作例を掲載しないかって話を持ち掛けられてたんだ。家の事もあったし、断ろうと思ったんだけど……」
「タツ兄がパパの分まで頑張ったんだよね」
セレクトMも何も全てが問題なく、ここまで来れた訳ではない。ここに至るまで様々な出来事があり、窮地に立たされることもあった。だがその度に両親やタツヤを中心に家族で乗り越えてきた。
『……タツ兄。……俺も店、手伝うよ』
『大丈夫だ。兄ちゃんに任せろ』
それは父がいないセレクトMの厨房で慣れない仕込み作業で絆創膏を巻きながらも何とか作業を進めるタツヤに手伝いを申し出た時の事であった。アヤトの申し出に対して、タツヤはこちらの事は気にするなとばかりに笑いかけてくれたのだ。
「……お陰で模型紙の為の作例に集中できて反響もあって今も続けることが出来てる。タツ兄がいたから……俺は……」
模型紙への作例の掲載や歴代ガンダムブレイカーの中でもトップクラスの完成度を誇るガンダムブレイカーエストレーモの作成に集中できたのは、タツヤがアヤトが心配しないように常に気を回し続けた結果だろう。それを誰よりも理解しているアヤトは悲しそうに目を伏せる。
「……1人じゃ無理でも兄弟なら何でも出来る……。じゃあ、タツ兄がいなくなったら俺は……」
今まで口にすれば言葉通り何でも出来る気がした。しかし今はどうだろう。タツヤを失ったことで改めて己の無力さを感じているのだろう。悲痛な面持ちのアヤトに対して、ヒマリも何と声をかけて良いのか分からず、ただただ時間だけが流れていくのであった……。
8/21はバニーの日。小話にバニーイラストが見たいのは(7月末まで)
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