ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「四天王達が言っていた通りだな。4つのミッションが追加されているのを確認した」
アルティメイトフォースゼロのクランルームに戻ってきたツムギ達。程なくして先程のカオス達の話が事実だったのか、確認しにいったマイスターが戻ってくる。どうやら先程の話は事実だと思っていいだろう。
「ミッション開放は明日から。受けられるのは1日1件のみだ」
「チッ、準備のいいことだな」
現在、このクランルームには多くのプレイヤーがいる。総当たりでいけば1日のうちに何とかなりそうな気もするが、やはりと言うべきか制限が設けられているようだ。この事態にマシマは面倒そうにぼやく。
「ひとつひとつ辿って鍵を探す……。まるでラプラスの箱みたいだね」
「もどかしいなぁ……。こうしてる間にもリリンが辛い思いをしてるかもしれないのに!」
状況に対して思わせるものがあるのか、何気なく呟くミサの隣でリンは明らかに焦った様子を見せる。ただでさえ時間に余裕のない状況だ。失敗も許されないだろう。
「気持ちは分かるが冷静に行動を移すべきだ。相手はシステムに干渉できる。迂闊な対抗手段を取れば、どんな反撃を受けるか分からない」
「向こうが出した条件に従って戦うしかない、というわけですね……」
焦りに身を任せて、下手な行動を取ればそれこそリリンに危害が及ぶかもしれない。アータルの言うように迂闊な行動は避けるべきだろう。カオス達の掌のうえで足掻くしかないこの状況にシーナは苦い表情を見せる。
「……相手はフリーダムフリート四天王。まともに戦っても手強い相手だ。それがウイルスで強化されている上に、どんな罠を仕掛けてくるかも分からない」
「万全を期してかからなくてはならないな」
バトルトーナメントでは手を抜いていたとは言え、フリーダムフリート四天王はそう易易と突破できる相手ではないだろう。それにこの状況だ。何が待ち受けているか分からない。マイスターとショウは神妙な面持ちで呟く。
「……そうだね。でも、アタシ達のすることは変わらないよ。どんな敵が相手でも、あのオッサンは止めるし、リリンを助けるんだから!」
アータル、そしてマイスターやショウの言葉は最もだ。勢いのある性格のリンではあるが、その事は理解しているのだろう。だが、だとしてもリン達がやるべき事は変わらないのだ。
「リン君の言う通りだ。明日のミッション解放と共に攻略を開始する。皆、万全の準備をして臨んでくれ」
リンの言葉に頷きながらマイスターは集まった面々、一人一人を見渡しながら話す。どの道、今日受けられるミッションは受けてしまった。今日はもうどうすることも出来ない。ならばガンプラの調整などに意識を向けるべきだろう。
「──頑張っているようだね」
不意にクランルームの扉が開く。思わぬ来訪者に視線が入り口へ集中すると、そこにいたのは……。
「偉いよ。とっても」
ゼノギアだ。パチパチと拍手をしながらクランルームへと足を踏み入れる。
「お前……! カオスの!」
「タツ兄を返してよッ!」
唯一、ゼノギアの事を知っているアヤトとヒマリが反応する。今すぐにでも掴みかからんばかりの2人とその発言内容に周囲は驚くもののすぐさまゼノギアを警戒する。
「何故、この部屋が……と聞くのは愚問か」
「カオスはGBBBBの全てを掌握した。ならばどんなクランルームも出入り自由という訳さ」
招かれざる客であるゼノギアが何故、アルティメイトフォースゼロのクランルームに……。疑問が浮かぶも今やGBBBBはカオスの手の中にある。マイスターの呟きにくつくつとした笑みを浮かべながら答える。
「しかし、驚いたよ。あのブレイザーとかいうAIとそのガンプラは使いものにならないと思っていたのに、まさかガンダムブレイカーとして舞い降りてくるとは」
「……まさかアナタはあのガンプラの」
ふとゼノギアはツムギを見やる。ブレイザーが操るストライクブレイザーはターンΩとの戦闘でデータも酷く損傷してしまった。それが新しいガンプラと共に戦線復帰したのだから、ゼノギアも予想外だったのだろう。しかしその口ぶりからターンΩを操る者だと察したのか、ツムギの問いかけに対して肯定するように鼻で笑う。
「……ッ。お前のせいでブレイザーは!」
まるで線が切れたかのように途端に明確な怒りを露にするツムギ。今にも掴みかからんとするツムギだが……。
「っ!?」
ふとクランルームが衝撃を受けたかのように激しく揺れた。普通ならばありえないことだ。ツムギ達が驚いていると……。
「な……。プレイヤーの活動可能区域に攻撃を……!?」
「カオス達が出した条件。1日1件のミッションの受注……。しかしこれだけ人数がいるんだ。暇を持て余してしまうのではないかね? だから戯れを用意してやったよ」
何かが視界に留まり、マイスターが窓から不気味な瘴気に覆われた空を見やると、そこには無数のガンプラ達の姿が。恐らくはカオス達に操られたものだろう。ロビー広場を含めたGBBBBのプレイヤー達の活動可能区域に対して攻撃を仕掛けてきていた。今はゼノギアの意のままなのか。彼が喋りだしたタイミングで攻撃が止む。
「1日1件受けられるフリーダムフリート攻略ミッションとは別の、この場を守る為の防衛ミッションという奴だ。当然、ここを守り切れなければ君達のアバターのデータやログインする場所のシステムは損傷し、あのリリンという子を助け出す事は出来なくなるだろうねぇ」
今回はあくまでデモンストレーションのようなものなのか。これ以上の攻撃はない。とはいえゼノギアの言葉通りならば、このクランルームを含めてプレイヤー達の活動可能区域を死守しなくてはならない。
「では、精々頑張ってくれたまえ」
「待て、タツ兄は……!」
この場を立ち去ろうとするゼノギア。アヤトはせめてタツヤの情報を少しでも知ろうと駆けだそうとした瞬間、クランルームの窓の方から巨大な何かが轟音を立てて突き破って来る。見てみれば、そこには深紅のカラーリングに染まったユニコーンガンダム2号機 バンシィをカスタマイズしたと思わせるガンプラの姿が。
「そうだねぇ。ならば紹介しよう。我らの絶対的なエースを」
壁を打ち破り、その姿を覗かせるガンプラの姿に誰もが唖然とするなか、そのガンプラを背にトレギアは仰々しく両手を広げると、不意にガンプラのコックピットが開かれて、中にいたプレイヤーが姿を現す。
「タツ……兄……?」
アヤトやヒマリは目を見開いて動揺する。その姿こそゼノギアと同じくアコードの衣装をカスタマイズしたものを着用しているが、そこにいたのは紛れもなくタツヤ本人であった。
「……タツヤ君になにをした?」
しかしタツヤの様子はあまりにもおかしい。物言わぬ人形のようにその表情は虚ろなのだ。何よりタツヤならばこんな真似はしない。ショウが鋭い視線をゼノギアに向けながら問いかける。
「私色に組み上げたのさ。いくら人間がログインしているとはいえ、この世界に入れば、GBVのようなウイルスに感染したりとデータに変換される部分がある。ガンプラを操るウイルスではなく、GBVを改良したアバターを操るウイルスの試作を試させてもらったのだよ。お陰で今は私の相棒だ」
タツヤの肩に手をかけ、指先で彼の顎を撫でる。しかしタツヤは何の反応もしない。今のタツヤは本当にゼノギアの手中にあるのだろう。
「では、健闘を祈っているよ」
タツヤはバンシィのカスタマイズ機に再び乗り込むと、そのマニピュレータにゼノギアを乗せる。嘲笑うようなゼノギアの言葉と共に転送ゲートを利用して、この場を去っていく。
「あれは……?」
それを皮切りにプレイヤーの活動可能区域を攻撃していた他のプレイヤー機も次々と転移していく。その中でアオバは見知ったガンプラの姿を見つけるが、そのガンプラもすぐにいなくなってしまうのであった……。