マダムマルキンの洋装店でサイズを測って貰い、次に教科書を買いに行く途中。ハグリッドに買ってもらったアイスクリームを舐めながら、ハリーはハグリッドへと質問を投げかけた。
「ねえハグリッド。ホグワーツの寮ってなんなの?」
「グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの四つだ。
ジェームズとリリーは二人ともグリフィンドールだったんだ」
過去を思い出しているのか、空を見上げながら言うハグリッドに、ハリーは次の質問を投げかける。
「じゃあクィディッチってなに? 箒に乗るの?」
「そうだ。クィディッチは魔法界のスポーツで、ジェームズは名チェイサーだったんだぞ」
「チェイサーって?」とまた質問をするハリーに答えていくハグリッド。
アイリスは二人の会話を聞きながら、これからの目標を考えていた。
今までの目標は波風立たせず生き残ることだった。
でも魔法界に来たのならば、今のうちに目標を決めておきたい。
なにせ二年生で選択科目が出て、その選択した課目によって将来が決まるのだから。
あーでもない、こうでもない、と悩んでいると、いつのまにか"フローリシュ・アンド・ブロッツ"という本屋へと辿り着いていた。
ハリーとハグリッドの会話はまだ続いているが、そんな中でもしっかりと教科書を買っておく。
アイリスは本屋に置いていた"幻の動物とその生息地"という本が気になったが、お金を無駄遣いするわけにはいかないので視線を逸らし、ハリーと手を繋きながら本屋を離れる。
次の目的地を目指して歩いている中。アイリスはまだ目標を決めるのには早いか、と結論を付けた。
まだ魔法界についてのことは前世の記憶でしか知らないため、自分が何をしたいのかも分からない。
そんな中で目標を決めても仕方ないだろう、と考え、一年生の間に目標を決めることにした。
アイリスが一年生の間に将来の目標を決めることにした後。錫製の大鍋や薬品を入れる瓶、望遠鏡などを買いそろえ、最後に杖を買う為に"OLLIVANDERS"と書かれている店へとやってきた。
店名の横には"紀元前382年創業"と書かれており、歴史の長さを感じる店だった。
ハグリッドとは用事があるとのことで別れ、アイリスとハリーだけでオリバンダーの店へと入る。
店の中は少し薄暗く、木材の匂いが漂う落ち着いた雰囲気の店だった。
壁一面に配置されている棚には細長い箱が納められており、あの中に杖が入っているのだろうと推測できる。
アイリスとハリーは荷物を傍へと置き、カウンターの前へと歩いていく。
ハリーが「あの~」と遠慮がちに呟くと、梯子が横移動してきた。
そして梯子にはふさふさしている白髪の皺が目立つ老人がひっついている。
老人はアイリスとハリーの方を見て笑顔を浮かべながら口を開いた。
「いつ会えるかと楽しみにしていましたよ、ポッターさん」
そう言うと、老人は梯子から降りて壁一面の棚に納められた箱を探り始めた。
「あなた方のお父様とお母様がここで最初の杖を買っていたのがつい昨日のことのようじゃ」
老人は「まずはハリー・ポッターさんからですな」と言い、杖腕──利き腕──を聞いた後、巻尺がひとりでに動いて身体中を測り始めた。
ハリーは困惑の表情を浮かべながらも大人しくしていると、老人は棚から取り出した箱の中から杖を手に取ってハリーへと手渡した。
受け取ったハリーはどうすればいいのか分からなかったのか老人を見ていると、老人は不思議そうに「ほら、振ってみなされ」と答えた。
その言葉に従いハリーが杖を振った瞬間、カウンターの奥に見えていた引き出しが勝手に飛び出してきて、納められていた複数枚の紙が空を舞った。
驚いたハリーが丁寧に杖をカウンターへと置くと、老人──オリバンダーは「合わんようじゃな」と独り言を呟いて、また別の箱を手に取った。
そこから何度か杖を振っては店の中がめちゃくちゃになるのを繰り返した後。ついにハリーの杖が決定した。
オリバンダーいわく、それはヴォルデモートと同じ不死鳥の尾羽を使われた杖だという。
そして神妙な面持ちでハリーへと「あなたは偉大な事を成し遂げるだろう」と告げるとアイリスへと視線を移した。
「さあ、次はあなたですぞ」
オリバンダーは杖を選ぶのが心底楽しいようで、先ほどの神妙な面持ちは全く見えなくなっている。
アイリスは老人に杖腕を聞かれたので「右」と答えると、また巻尺で身体中を測り始めた。
正直な所、身体のサイズを測られるのは恥ずかしいのでやめて欲しいのだが。
少し俯いて待っていると、老人が箱の中から取り出した杖を、アイリスに持ち手が向くように差し出してきた。
「さあ、これはどうですかな?」
アイリスが手渡された杖を振ってみると、棚に納められていた箱が次々に飛び出してきた。
オリバンダーは「合わんようじゃな」と言い、さらに別の杖を持ってくる。
そうして何本もの杖を振って少し疲れてきた時。アイリスはオリバンダーの持ってきた箱に目が釘付けになってしまった。
オリバンダーに手渡された杖を握ると、胸の中が温かくなった気がした。
「おお、これのようじゃな」
嬉しそうに笑ったオリバンダーは「柳の木に不死鳥の尾羽、12インチ、柔らかく、自然との相性がいい魔法使いを好む」と答えた。
アイリスが「不死鳥の尾羽?」と疑問を口にすると、この不死鳥の尾羽はハリーと同じ羽根ではないらしい。
オリバンダーいわく、ある日突然やってきた不死鳥が落としていった羽根なのだとか。
「あなたはきっと、自然と共に生きる存在となるじゃろう」
アイリスとハリーがガリオンを払って店の外へと出ると、二つの鳥かごを持つハグリッドの姿があった。
鳥かごの中には二匹の梟が入っており、アイリスは片方の梟に見覚えがあった。
アイリスとハリーが近づくと、ハグリッドは笑顔を浮かべながら鳥かごをアイリスとハリーへと手渡した。
「二人とも、プレゼントだ」
アイリスが受け取ると、鳥かごの中にいる梟のつぶらな瞳と目線が合った。
梟はとても可愛らしく、茶色い羽根はとてももふもふしてそうだ。
「ハリーのはシロフクロウ。アイリスのはモリフクロウだ。二人とも大事にするんだぞ」
アイリスとハリーは笑みを浮かべながら、ハグリッドへと同時に「ありがとう」と感謝を示す。
ハグリッドは温かく微笑むと、「飯でも食べようか」と背を向けて歩き始めた。
~~~~
ハグリッドと一緒に漏れ鍋──ダイアゴン横丁に行く前に通った酒場──でご飯を食べた後、ダーズリー家へと帰ってきたころにはもう日が沈んでいた。
ご飯を食べている時にヴォルデモートのことについての説明をされたが、アイリスとしてはどうしようもない問題だ。
ただの転生者でしかないアイリスが、最も恐れられる闇の魔法使いと戦えるとは思えない。
それに、今はそんなことよりももっと重要なことがある。
あと一か月。ホグワーツに向かう9月1日までをどうやって耐えるかだ。
ダーズリー家へと帰ってきたアイリスとハリーには当然出迎えなど無く、二人で階段下の物置部屋の中へと荷物を運びこむ。
そろそろ身体のサイズ的に辛いのだが、バーノンたちが空き部屋を渡してくれるとは思えないため言い出すことができない。
アイリスとハリーはなんとか狭い中へと鳥かごを押し込み、二人でベッドの上に寝転がる。
いつもは沈痛な面持ちで希望なんて無かったハリーだったが、今のハリーはとても楽しそうにしている。
「アイリス。楽しみだね」
「そうだね」と呟くと、ハリーはアイリスの頭を優しく撫でてきた。
元々身体が弱かったアイリスだ。重い荷物を持って長距離を歩くのは初めての経験だった。
そのせいか身体には疲労が溜まっており、次第に瞼が重くなっていく。
まだ水浴びもできていないのに寝るのは。そう思うが、身体は言う事を聞かない。
そうしてアイリスは、ハリーの「おやすみ」に消え入るような声で「おやすみ」と返した後、身体を襲う睡魔に身を委ねたのだった。
Kindleでハリーポッターが二か月間無料で読めるみたい。
曖昧な記憶で書いていたから助かる。