半妖の青年は“五つの異能”で理不尽を覆す。神と悪魔の運命に挑む【SIN】 作:神野あさぎ
「復活だと……?」
城へ向かう途中、
「そう! よくは分からないけど、なんか此処が現世に呼び戻すのに最適な場所らしい的な……」
玄が早口で続けた。
確かに此処は……
北王は思考を巡らせた。
北王の家も気場の上に建ててあり、その地の力を利用して、かつて
「じゃあなんで、人を操って戦わせたんだ?」
北王の純粋な質問。
「捧げる魂を回収するためですよって」
「答えになってないぞ」
玄が答えるが、北王が論理の穴を指摘して否定する。
その指摘に気づき、玄が補足する。
「まあ……
神が直接手を下せば殺すのは簡単だが、無差別に殺すのではなく、同士討ちという絶望の「過程」にも意味があるようだった。
「未練って言うの? そういう強い想いが、理想を叶える助けになるらしい」
玄が続けた。
「
辛は攫われた丁のことを思い出しながら呟いた。
丁もこの場に連れて来られていた。その理由が、嫌な予感となって胸をざわつかせた。
すると、城の方から凄まじいエネルギーがあふれ出た。
儀式が、始まった。
天を衝く光の柱が現れ、それを取り囲むように神達が立ちすくむ。
一人減った分、『シン』を持っていかれるね……消費が激しい。
儀式に力を注ぐレインが、眉をひそめてそう思った。
隣に立つ鍵神の眼が、侵入者を捉えた。
此処で来るか。
背後の破壊された城壁の穴を駆け上がる影。
その影は上空で待機していたモドキを足場として強く踏み込み、方向転換。
神達の真上へと鋭く降下する。
長槍を構えたアヴェルスだ。
ウルが嬉しそうに微笑み、儀式の最中にもかかわらず駆け出す。
ウルは左腕でアヴェルスの強烈な槍の突きをいなす。
「アヴェルス君さぁ……」
そう言いながら、一瞬でアヴェルスに急接近するウル。
槍を背中で受け流すように動き、そのまま右脚を蹴り上げ、アヴェルスの顎を激しく蹴り飛ばす。
宙に浮いたアヴェルスに対し、ウルは高く上げた右足をアヴェルスの首の後ろへと回した。
「もっと頑張りましょうね~~~」
右脚を引き込み、左脚と右脚でアヴェルスの首を万力のように挟み込んだ形にして、空中で思いきり首をへし折った。
バキリと嫌な音が響き、ウルは笑顔のまま床に華麗に着地する。
「首が折れたままじゃ、流石に身体動かせない?」
右脚でアヴェルスの首を折った状態で地面に押さえつけたまま、無慈悲に言い放つ。
ウルの右手には、奪い取ったアヴェルスの槍が握られていた。
「ご……ご主人様!!」
上空を旋回するモドキが悲鳴のような声をかける。
次の瞬間、空中のモドキが透明な結界に閉じ込められ、その結界に幾重もの鎖が巻き付いた。
「魔女は厄介だ」
そう言いながら、鍵神が右手で能力の『鍵』を操作し、空間ごと施錠して魔女の能力を持つモドキを閉じ込めたのだ。
あれ……この感じ……空間
モドキは転送能力が完全に封じられたことを悟り、大量の冷や汗をかいた。
空間を移動するモドキを無力化した、鍵神の的確な一手。
「まだ来るよ」
ゼニスがため息交じりに言う。
手に持っていた美しい翅は、すでに儀式の光の柱に吸い込まれていた。
影を足場に駆けやって来たのは玄。
ウルの背後を取り、影の剣を全力で振り下ろそうとする。
ウルは振り返ることもなく、奪ったアヴェルスの槍を背面に回し、玄の刃を正確に受け止めた。
受け止め──……!?
玄の目が見開かれる。
病み使いの能力で負傷し、極限まで強化されている玄のスピードに、難なくついてきているからだ。
ウルは立ち上がりながら槍を一回転させ、玄の影の刃をいなすと同時に、石突で玄を激しく打ち据えた。
能力で強化しているオレの攻撃に、対応できるのか……。
後頭部を強打され、崩れ落ちながら玄は絶望的に思った。
ウルは足元のアヴェルスを踏みつけながら、奪った槍を軽やかに構え直す。
「裏切者には死を! な~んて言うつもりはないんだけどさ。玄君には、あの時の
ウルは微笑みながら、
玄の脳天へと、冷酷に振り下ろされる槍。
そこへ現れた辛が、玄が残した影の剣を拾い上げ、下から斬り上げる。
ウルは玄へのトドメを中断し、辛の刃を槍で受け止める。
辛が自前の金属の剣を使わないのは、ウルの『
「いい加減、うちの子を返してもらえませんかね」
直後、背後に駆けつけた北王が、ウルの腹に重い蹴りを入れる。
ウルは微笑みを崩さないまま、後方へと吹き飛ばされる。
後方には、儀式を続ける神達と光の柱。
花神が「やばい、巻き込まれる」と反応する。
が、リューが間に入り、吹き飛んできたウルの背中をガッチリと受け止めた。
「あーちょっと! 何受け止めてるんですか!! 味方を巻き込んで大惨事! になりたかったのに!!」
「流石に今は駄目」
ウルは飛ばされた勢いのまま神達にぶつかり、巻き込んで転がりたかったという異常な願望を白状する。
すかさずリューが冷たく拒否した。
「つーか良く動けるな!! 消耗してないのか!?」
儀式で大量のシンを消耗しているはずなのに、機敏に動くウルとリューを見て、花神が思わず突っ込んだ。
「加虐対象に自分も含まれるもんで~、逆境は燃えます!」
花神の言葉に、ウルは狂気じみた笑顔で返す。
辛の頬に冷や汗が流れる。
「だから玄君の、傷つくほどに強くなる能力欲しかったんだよね。まあ……すぐ治っちゃうから無理なんだけど」
ウルは体勢を立て直すと、嬉々として告げる。
十分強いんですが。
玄は痛みに顔を歪めながら、思わず心の中で突っ込んだ。
「それより、えっと……なんだっけ?」
ウルが口を開くと、儀式の光の柱が急速に収束していく。
「うちの子返して、だっけ?」
ウルは儀式の中心を見ながら、からかうように言った。
辛、玄、北王の目が見開かれる。
「何処に居るの? お前の子」
完全に収束した光の中、神達の中心に立つのは
「ひの……」
辛がその姿を目にし、安堵して名を呟こうとした。
「「誰だ。お前は」」
辛と北王が、全く同時に、底冷えするような声を発した。
中央に居る人物の姿は、確かに丁だった。だが、そこから発せられる『気配』が完全に別物になっていた。
気配を正確に感知できる二人には、皮を被っただけの別人だと即座に理解できたのだ。
「ああ……なんとなく分かっちゃうんだっけ? まあ……復活の話を聞いたってのもあるだろうけど」
ウルが楽しそうに言う。
城の入り口の方からは、
「!! お前は──……」
床に転がり、吸血鬼の能力で折れた首を治癒して蘇生したアヴェルスも、顔を上げて視線を移す。
「ボクは……」
丁の身体をした『それ』は、ゆっくりと立ち上がると、聞き覚えのない声で口を開いた。
その背中には、ゼニスが持ってきた美しい翅が生えていた。
「