「ふぅ……訓練室の理屈がさっぱり分からん。」
技術室の片隅で録画された訓練室のログを見る。
アフトクラトルによる侵攻があった日に、エネドラが本部に侵入し、所属する精鋭たちの手により討ち取られたのだが。
……訓練室で、仮想擬似モードだった。
訓練室の仮想擬似モードとは各々のトリオン器官をコンピューターでデジタルな値として反映させ、実トリオンを消費しないものである。
それはそうだろう。
ネイバーの侵攻が発生した際にガス欠、否トリオン欠乏に陥っていたら意味がない。
そのため、模擬戦での戦いも擬似であるから欠損や欠乏は数値と映像的な反映であり、実ダメージが入っていない。
だからこそ回復が早い。なぜなら実の損傷が無いからだ。
しかし、忍田本部長が闘った時に『なぜ実体があるエネドラに物理攻撃が入った』のかだ。
エネドラがご丁寧に訓練に参加した仮装体ならまだしも、エネドラは生身であり、それを証拠にミラに討ち取られたのだ。
つまり『仮想擬似モード』であっても『トリオンは発生した』はずだということ。
この場合、忍田本部長のトリオン消費があるのは欠損から回復しているため発生は確実である。
仮に『訓練室がトリオンを還元する』のならば『味方だけが補給している』ことになる。
これはボーダー隊員だと認識して判別したと仮定する。
この出自不明のトリオンが『基地のを構成するトリオンの備蓄』であり、数値からトリオンへ『エネルギー変換』され訓練室から供給されているならば理屈は通る。
しかし問題はエネドラに『物理的ダメージが入った』ことである。
つまり、忍田本部長本人からトリオンが出力されている。
ということは『仮想擬似モード』はデジタルな数値によるVRのようなものではなく、否、これが『仮想擬似モード』ではなく『別のモード』を乗算することで基地内トリオンを忍田本部長のトリオンに合成補給していたとすれば。
ならば味方側には『仮想擬似モード』で無尽蔵にみせかけ、仮想的なトリオンの恩恵を受けていると安堵させ、実際に仮想の孤月を残像のように使用してエネドラを翻弄した。
そして、実際にエネドラに斬りつける時に本物のトリオンの孤月を換装していたのであれば『あたかも無尽蔵なトリオン』のように魅せ、エネドラを怯ませることができる。
忍田本部長ほどの手練れであれば、仮想擬似モードと実体をきり分けて翻弄する芸当が可能であった。
そうすれば『訓練室でトリオンの消費はない』という説明に理屈が付く。
直接、鬼怒田開発室長に確認を取れれば……。
「ゴンちゃん、またカンヅメ?またエネドラの映像見てるの?」
「あ、雷蔵さん!いやぁね、理屈が……。」
雷蔵さんはポフっと肩に手を乗せた。
「エネドラとのお喋りに付き合ってくれたら解説してもいいよ。」
しぶしぶエネドラッドが鎮座するクッションの前に座った。
「玄界の猿のくせして頭が硬ぇな。」
憎まれ口は相変わらずの様子。
「今考え中なので……エネドラッドは少し静かにしてて。」
エネドラはブラックトリガーだった。
それを跳ね返したからには実体、トリオン体だ。
デジタルの仮想擬似モードではない。
訓練室はデジタル数値のシミュレーションの他に基地内のトリオンを実トリオン体に流すモードが存在していないと理屈が
「映画を観せろゴン!!」
今考えてるって言ってるのに。
「はいはい。f思議惑星キン・ザ・ザを観ようか。」
プロジェクターのスイッチを押してスクリーンを下ろした。
「つまらなそうだ……。」
エネドラッドの頭を指で弾く。
確かに千佳ちゃんの一件で基地がトリオン体なのは確実であるが、基地内の貯蓄トリオンがどの程度あるのか、基地を換装する①、隊員のトリオン体を換装する予備②、戦闘用トリオン備蓄③、その他について④、トリオンも賞味期限のように劣化摩耗期間があるとすれば常に新しいトリオンでなければ
「ゴンちゃん、映画を観よう。」
雷蔵さんにポフっとまた肩に手が置かれてスクリーンを観た。
訓練室がボーダー隊員にトリオン体を補給できるとして、訓練室内で放出・回収・再活用としてリサイクルのようにトリオンを回せるのならば備蓄も要らず、データのように細かにトリオンを微調整出来るのならば。
「ゴンちゃん。」
雷蔵さんに肩をつかまれた。
もし仮に訓練室からのトリオンの無尽蔵供給ならば基地を構成するトリオンが底をついたらどうなるか?
リソース配分は?
エネドラを訓練室に呼び込み嵌めたのが『無尽蔵なトリオン量での圧倒』という策ならば同じように訓練室に呼び込み袋叩きにすればいい。
訓練室からトリオンをボーダー隊員に流せるのなら忍田本部長以外の他の隊員にも供給が可能なシステムであるべきで。
「ゴンちゃん。怒るよ。」
「で、この映画は何が言いたかったんだ?」
エネドラッドがカッと脚で私の腕を叩いた。
「体制への不満を上手くカモフラージュすることかな。エネドラッドは失敗したね。」
私もエネドラッドの頭を軽く小突く。
「ゴンちゃんはそういう感じかー。」
雷蔵さんに肩をトントンと叩かれる。
「雷蔵さんはどう思いましたか?」
トントンと肩を叩かれながら頭の上に顎が乗せられて、重い。
「んー……ボロを着てても心は錦。郷に入っては郷に従え。……かなー……」
雷蔵さんの体温が暖かくてついウトウトしてしまう。
この感じ、もしかしてハグされてる?
そんなわけ無いか……。
でも、あったかいなぁ……。
「フン!!ゴンは何もわかってねぇ!!これは他人の実力を見誤るなって……寝てるのか?相変わらず早いな。」
「ゴンちゃんは無理に頭を使うと眠くなっちゃうから仕方がないよ。」
、、、
「雷蔵、お前ゴンに気があるのか?」
雷蔵は特に感情を表に出さずに頷いた。
「うん。」
コイツも剣士だったらしいが、まあそうだろうよ。
心の揺れ動きを悟らせねえのが玄人だ。
「つまらねーな、ゴンの何処が好きなんだよ。」
爪で雷蔵の掌をつついた。
「かわいいところ。」
素っ気ねえな。
「嘘つけ、同じ技術屋だからだろ。」
ゴンは技術屋として玄界の猿にしては頭が回る方だ。
「まあ、たしかにゴンちゃんは技術オタクだからね。」
すると名を呼ばれたことを聞きつけてゴンが近寄ってきた。
「今悪口言ってましたか?」
不安げな顔をしている。
上司の評価は気になるだろうよ。
「ああ!」
「いってないよ。ゴンちゃんがかわいいって話はしてた。」
雷蔵がゴンの目をまっすぐ見据えて話しかけると、ゴンの顔はみるみるうちに赤くなった。
「……コホン、エネドラッド、映画を見よう。」
はぁ、仕方ねーな。
「そうだな……」
「コラッ!!ゴン!!仕事をサボるな!!まったく……」
ノートパソコンを弄っていると背後から鬼怒田開発室長にポカっと頭を叩かれた。
「すみません……つい解析に夢中になってしまって……。あ、あの……訓練室のトリオン換装技術について……」
どさくさに紛れて技術的な話を教えてもらえないかな。
「でしゃばるな!お前は技術者として目先の仕事をすればいい!!自分の仕事をしろ!!仕事を熟してから新しいことに手を伸ばせ!!」
怒濤の勢いで喝を入れられてしまった。
「うう……すみません……。」
頭を下げると型番が古い技術マニュアルを手渡された。
「成すべきことをし、自分の役割を果たしてから読みなさい。」
、、、
「あのぅ……根付さん、トリオンのリサイクルシステムが仮にあるならば、他の隊員にも……」
ソファで休憩していると、たまたま根付メディア対策室長が隣に座った。
これは技術を聞き出すチャンスかもしれない。
「君ねぇ……確かに発想はいいけれど、これをC級隊員が知った場合エスカレーションが煩雑になるでしょう?かえってボトルネックになりかねないことわからないかなぁ……」
根付さんは深い溜息と共に参考書と缶コーヒーを持たせてくれたが、サッサと立ち去ってしまった。
「はい……。未熟者ですみません……。」
、、、
「私、ボーダーに向いてないのかな……根付さんと鬼怒田さんに怒られてばっかりだ……。」
技術の提案をしても長い議論の末に却下されたことは数しれず、頼られたことも手で数えられる位しか起こらなかった。
「逆だよ。」
顔を上げると雷蔵さんが真顔で立っていた。
「え?」
逆とは?クヨクヨするなって意味?
「ゴンちゃんはお客様じゃなく、彼らと同じテーブルの上にいるんだ。すごいことだよ。」
お客様じゃない?
そるゃ、ボーダー隊員だから市民とは違う立場だけれど。
「テーブルの上……?」
首を傾げるとエネドラッドの脚に叩かれた。
「ゴン、お前は自分のことになるとバカになるよな。」
今、バカって言った?
「なんだって!エネドラッドめ!」
エネドラッドの脚をグリグリと掴んだ。
「馬鹿ゴン!!オレの身体は繊細なんだ!!」
その様子を見て、雷蔵さんは笑っていた。
「ゴンちゃんは骨の髄から技術者だね。」
「久しぶりに四人で話すなあ!!」
最近では忙しくて鬼怒田開発室長、根付メディア対策室、雷蔵さんと同じ空間にいることがめっきり減っていた。
「あ、あのー……無礼講とかありますか?」
恐る恐る挙手をする。
「ゴンちゃん、君ねぇ……無礼講を許すのは上の……いいですよ。」
今日は珍しく許可が下りた。
「やった!!では基地のトリオン換装について……」
顔色を伺いながら言葉を選ぶ。
「またその話か……。まあいいだろう。構わん。」
ならまずは……。
「トリオン障壁ですが、現在イレギュラー門が勝手に出現するのをビーコンを付けて追っていますが地理的に偏りがありますよね。イレギュラー門自体が開く行為そのものに莫大なトリオンが消費されることから完全に消費すると門が閉じる。いえ、点の上で消失しますよね?あの感知システムなのですが、付近の空間のひずみ、いえ揺らぎを感知する地震速報に類似したシステムの拡充について」
鬼怒田さんに頭を叩かれた。
「それは取り組んどる。あとで話してやる。」
よしよし、次も行ける。
「本題のトリオン障壁ですが障壁を張るにも莫大なトリオンを消費しますよね?発生期間のリミットを伸ばすのは消費量と技術的制限から難しいのは分かります。そのトリオンについて討ち取ったネイバーのトリオン兵を換装していますが、やはり出力が足りないですよね?それにクールタイムが発生して連続的な防御の要としては可用性に欠く。ならばトリオン障壁を一点集中型を増やし」
根付さんに頬をつねられた。
……ん?頬をつねられている?
「君ねぇ……君自身がトリオン消費問題を言ってるでしょう。あとで話そうね。」
まあいいか、どんどん聞こう。
「聞きたかったのはアフトクラトル侵攻時のトリオン換装についてです。基地自体がトリオンなのは理解していますが……なぜ訓練室の仮想擬似モードで忍田本部長は勝てた……言い方を変えます。デジタル数値による『トリオンを使わない』はずの訓練室でなぜトリオン供給が実際に行われたのかです。……私の見立てを述べていいですか?」
鬼怒田さんと根付さんは頷いた。
「アフトクラトルの人間が言っていたように『金の雛鳥』……マザートリガーが基盤に入っていたりしますか?であるから莫大に流れるトリオンを説明するために『仮想』であるとしているのなら理屈が」
雷蔵さんにポフっと肩に手を乗せられる。
「トリガー増産の話は?」
あ、そうだった。
「トリガー生産工場のラインについてなんですが、新しい金型を受け入れる専用の工作機械を作るべきだと思っていて、確かにトリオンを使うので量産体制は難しいものがありますが、3Dプリンターで作った金型を適時試験するのには新しい工程が必要ですが、これによって全体の工数の把握とリソース管理が一歩前進すると思いまして……。」
三人はこちらを見て、何とも言えない顔をしていた。
「ゴン……」
そして何故か頭を撫でられた。
「……う、馬鹿なことを慰められてる……。」
「ゴン、お前サイドエフェクトあるのか?」
ゴンは目を丸くしてオレを見た。
「まさか!無いよ。そもそもトリオン量がないし。」
そう言って悄気ているが、コイツ……。
「お前、技術屋のアイツら以外に持論を話すなよ。……これは警告だ。」
コイツが暴発したら、とんでもないことになる予感しかしねぇ。
「わかってるよ!突拍子もない突飛な妄想だって言われるからでしょ!三人以外に話してないよ……ボーダー内部にあんまり仲いい人いないし……。」
項垂れている様子から、他にオタク語りはしていないようだ。
「ゴン、オレを信じるか?」
ゴンの手の甲を爪で叩いた。
「うん、信じるよ。」
オイオイ、オレはお前の仲間を殺したんだぞ。
まあいい。
「持論を語るな。それは思考の吐露、知識の漏洩は命取りになるからだ。沈黙は金。わかるな?セキュリティの話だ。」
そう語りかけるとゴンは顎に手を付けて唸った。
「……セキュリティ。」
技術屋には技術的なニュアンスで伝えたほうが理解する。
「そうだ。セキュリティだ。」
ゴンはしばらく考え込んだあと、頷いた。
「……分かった。話さないよ。」
その方が身のためだ。
「分かったならいい。」
まったくとんだ爆弾だぜ。
「……実は私ね、役に立たないからボーダー辞めようかと思ってて……こないだも大恥かいたし……。」
コイツ……。
「馬鹿が!!お前はオレの世話係だ!!辞めたらオレが承知しないからな!!」
爪でガンガン叩いた。
「えへへ……そうだね、もうちょっとだけ頑張るよ。」
お前みたいな奴が行く場所なんて此処くらいしかねーよ!!
「……映画。」
、、、
「雷蔵、アイツ大丈夫なのかよ……自覚させたほうが……。」
エネドラもゴンちゃんについて考えることがあるのか。
「いいんだよ。ゴンちゃんはありのままだからこそ頭が回るんだから。」
ゴンちゃんに政治的な立ち回り等の制約を与えてはいけない。
萎縮させてしまっては折角の自由な発想に縛りが出て、出力が鈍ってしまう。
「……そうかよ。」
「そうだよ。」
「うわ出た、根暗オタク。」
最悪だー。
「うわ出た、陰湿なやつ。」
今はイライラしてるのに。
「根暗オタク、戦闘訓練に付き合わない?今なら手が空いてる。」
菊地原はズケズケ言ってくるから付き合いやすいんだけど、今は会話したくない。
「ヤダ、負けるとムカつくから。」
三人に憐れまれてしまった事実に押しつぶされそうなんだ。
放っておいてほしい。
「あのさ、エンジニア辞めたら?正直、向いてないよ。」
「……うるさいな。」
、、、
「テメェ……言いたいことがあるなら直接言えや!!」
なんで2連続で当たるんだよ。
「オラつくなよB級。」
影浦はナイーブすぎるんだよ。
「……来い、戦闘訓練で白黒ハッキリさせる。」
無理やり腕を掴まれてズルズルと引きずられてしまっている。
「私の方がエンジニア転向前のポイントが高かったけど……もし鈍ってる私に負けたら影浦隊はどうすんの?」
ピタリと足が止まって爬虫類のような瞳に睨まれた。
「……テメェ」
その殺気を察してゾエさんが影浦の腕を掴んだ。
「どうどう、雷蔵さん呼ぶ?呼んだほうがいいよね?」
いいわけない!!
雷蔵さんに嫌われたくないのわかって言ってるでしょ!!
「なんかぁ、影浦くんがぁ、イキってきてぇ……」
「ゴンちゃんの方がイキってるよね?」
……ゾエさん……じゃない、北添……。
「……北添、戦闘訓練しよう。」
影浦の腕を振りほどいて北添の腕を掴んで訓練室に向かった。
「もーゴンちゃんは血の気が多いんだから……。」
、、、
「それで、北添にボコボコにされたんだ。」
ゴンちゃんは部屋に入るなり号泣し始めた。
「うぇぇん……だから戦闘訓練なんかしたくないんですよぉぉ……うぇぇん……」
自信がないくせに、プライドがやたらと高いんだよな。
口は悪くて負けず嫌い、なのに打たれ弱いんだ。
「ゴンちゃんはかわいいから大丈夫。」
頭をポンポンと撫でると落ち着きを取り戻して腕の中に身体を預けた。
「私は技術者として……。」
背中を擦ると瞼が落ちてスウスウと寝息を立て始め、ゆっくりと仮眠ベッドに寝かしつける。
「ゴンちゃんはかわいい技術者だよ。」
おでこに手を当てて囁いた。
「ゴン……お前……思ってたのと違うな。」
エネドラはこれからたくさんの『思い違い』を知っていく。
「そうだね。ゴンちゃんは特別だから。」
「ゴンさん、口が悪いですよ。」
菊地原が珍しくすれちがいざまに苦情を言ってきた。
「うん。ごめんね。」
ゴンちゃんに突っかかるのはゴンちゃんが菊地原にとって気の置けない相手だからだよね。
「彼女、何かあったんですか?」
目ざといな。
「さあ、どうだろう。」
ゴンちゃんに何かあっても、他の隊員では何もできないから。
「エンジニアから戦闘員に戻したほうがいいと思います。環境が合ってないんじゃないですか?本人もトンチンカンな事を言って恥をかいたと悩んでいました。」
ゴンちゃんはトリガーの量産体制やトリオン供給と換装について口出せる、元戦闘員の叩き上げ。
「そっか。」
菊地原が気兼ねなく口喧嘩の応酬をしてストレスを発散する相手になるだけいいだろう。
「雷蔵さんて……。」
、、、
「ゴンの奴、憐れみやがって……」
影浦も気兼ね無くストレスをぶつけられるサンドバッグがいて良かったね。
ゴンちゃんは過去の栄光を盾にイキり散らすから。
遠慮なく暴言を吐き合い、後腐れなくスパーリングでボコボコにできる恰好のプロレス相手。
現役で最前線を張る戦闘員には順当に負けるから丁度いい。
「うん。ごめんね。」
ゴンちゃんはストレス溜まってそうな相手、コミュニケーション不全の相手にしか喧嘩を売らないし、買わないから。
「ゴンは雷蔵の前では猫かぶってやがるからな。」
知ってるよ。
ゴンちゃんの気性の荒さは、一番よく知っている。
「そうみたいだ。」
彼女は気づかれていないと信じ、それを尊重して知らないふり、見ないふりをして目を瞑っているだけだから。
「……ゴンは役に立つか。」
もちろん。
現場に居た、最前線を知っているからこそシステムの根本に口出しできるんだから。
技術開発室にとって彼女は必要不可欠で、彼女の場をかきみだすアイデアのブレーンストーミングが存在意義だと言っても過言ではない。
「ゴンちゃんを気にかけてくれてありがとう。」
ゴンちゃんはああ見えてあけっぴろげな性格だから居心地がいい良いよね。
みんなの悪友ポジションってところかな。
「……まるで保護者だな。」
そうだよ。
「うちの子がすみません。みたいな感じかな。」
ゴンちゃんはうちの子、大切な子。
欠点があるから長所が伸びる。
「本気でゴンの態度を改めさせる気など毛頭ないくせして……。」
必要ないからね。
「……底なしの甘やかしじゃねーか。いいのかよ、それで……。」
「いいんだよ。」