二兎追うものは一兎も得ず   作:ummt

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釣りタイトルと終わる終わるのキャプション詐欺は法に反する以前に道義に反してるぞコノヤロー!!

 

「神楽ちゃん、また窓辺に月餅なんか供えて……。」

 

 射干菟(しゃがと)は月餅が好きだって言ってたアル。

 きっと匂いにつられて出てくるに違いないネ。

「三日月の髪飾りも供えるアル。ナームー。」

 シャガトが残した髪飾り、私には分かるアル。

 これは鏡のような洒落たものじゃない。

 鏢刀、飛び道具を常に身につけていた。

「オイイイイ!!なんかシャガトさんが死んじゃったみたいになってるううう!!」

 新八もツッコミのキレがどことなく鈍っている。

 同じ竈門の飯を食べた仲、そうやすやすと忘れられないアル。

「竈門だと鬼殺隊の耳飾りの隊士になっちゃうでしょ!!釜ですよ釜!!」

 きっと戻ってくるから、わざと置いていったアル。

 秘伝マシンは必要だから絶対に帰って来るネ。

「いや、なんかさ。シャガトさんって『いあいぎり』とか、『かいりき』だったらもう覚えてそうだよね。」

 新八はしなしなになってソファに萎びた。

「シナは差別的ワードアル!!チャイナって言うネ!!」

 バンバンと肩を叩いても塩を掛けたナメクジみたいになってる新八を揺する。

「神楽、その辺にしておけ。」

 銀ちゃんは何事もなかったかのように新聞紙を捲っている。

「銀ちゃんには人の心がないアルか!?学校に野良犬が迷い込んできても『俺興味ねーし』ポジで高みの見物決め込む冷笑系男子学生アルか!?」

 銀ちゃんは目線を動かさず、新聞紙を捲った。

「銀さん、新聞紙逆ですよ、逆。」

 やっぱり動揺してるアル。

 ……シャガトは同じ夜兎だった。

『なら親は葬った?』

 それも昔の風習『親殺し』をして当然という価値観の女。

 ……でも、シャガトは私を傷つけたりしなかった。

 『親殺し』を強制したり、しないこてを責めたりしなかった。

『ごめんなさい、神楽ちゃん』

 そう言ってくれたアル。

 夜兎族としての闘争本能と野心、信念があるはずの女が同族の私を尊重してくれた。

 一緒にお風呂に入って、ご飯を食べて、昼寝して、買い物して、定春と一緒に眼鏡を散歩させて。

「オイイイイ!!僕が定春を散歩させてたでしょ!!……はあ。」

 飛び道具を置いていったと言うことは、無益な闘いをしないという宣言のような気がして。

 

「アイツ……俺のコウモリ傘、借りパクしてったままだな。」

 


 

「岡田、紅桜を見せてはくれまいか。」

 

 岡田似蔵の紅桜、あれは妖刀の類いだろう。

「射干菟ちゃん、一応機密事項になってるからねェ。」

 抜身の刀身は妖しく光り輝いている。

「私は刀には詳しくないが……美しい鏡面……。」

 銀に反射するこの刃は一太刀で人を葬れるだろう。

「夜兎の女の子は化粧道具より銃火器に興味津々なんだねェ。」

 紅桜は鼓動するかのように刃文が脈打ち、この世のものとは思えない異質さ、異形さを感じさせる。

「人による。恋をする者もいる。争いを好む私のような者もいる。夜兎も多様性が進んでな……。」

 しゃがんで紅桜を眺めていると岡田も腰を落とした。

「多様性ねぇ……。古い生き方をしている者には厳しいだろう。特に『古い伝説』とかは、チューニングに苦労するんじゃないかねェ。」

 『古い伝説』か……聞いたことがある。

 攘夷志士四天王……その一角、白夜叉。

 存命なのだろうか。

 一度相見えてみたいものだ。

「夜兎も同じだ。風習は廃れ、混血が進み純血の夜兎は私を含めて希少になるまで没落してしまった。」

 最強の夜兎の一人である神晃に師事したが、とんだ腑抜けになってしまっていた。

 星海坊主として掃除屋の仕事を仕込まれたのはいいものの、神晃はただの近所にいるお節介ジジイ、好々爺の風体で『夜兎』の男である殺気は微塵も感じられなかった。

 だからこそ、自らも腑抜けに染まる前に逃げるように独立し、独り掃除屋稼業を営んだ。

「大変だねェ、お互いにさ。」

 岡田似蔵は盲目にも関わらず此処までの地位に上り詰めたのだ。

 人は感覚の一部を失うと他の感覚が研ぎ澄まされることがあると聞くが、それにしても苦労はあったはずだ。

「そうだな。岡田、お前の身の上話をしてくれないか。」

 岡田は床に座るとぽつりぽつりと話し始めた。

「きっと射干菟ちゃんにはつまらない話さね。」

 私も岡田の隣に座って身を寄せるように耳を傾けた。

 岡田似蔵の語りは噺家のように見事だった。

 

「……これくらいでいいかい?」

 話を終えた岡田に立ち上がりつつ礼を述べる。

「ああ。時間を取らせたな。最後に刀身に触れていいか?」

 指の腹を刃に滑らせると血が滴った。

 

「触っちゃいけねェ!!射干菟ちゃん!!」

 


 

「シャガト〜シャガトはおらんかね〜」

 

 定春に乗ってシャガトを呼んでも何の反応も無いアル。

 ただの屍のようだ。

「オイイイイ!!本当に死んじゃうフラグだからやめようね神楽ちゃん!!」

 新八がナメクジからカタツムリに進化してノロノロと歩いた。

「神楽ちゃん、カタツムリとナメクジは進化とかじゃないらしいですからね……。」

「あら神楽ちゃん、シャガトさんをお探し?」

 声のする方を見るとお妙のアネゴがやや斜め左に傾いて眉間にしわを寄せていた。

「どうしたアル?シャガトが見つかったみたいな言い方ネ!!」

 もしかして、もしかしたら本当に見つかったアルか?

「見つかったも何も……どうにかしてほしくて……。」

 どういうことネ、家でもぶっ壊したか?

「天然系ヒロインだから何かやっちゃったアル?」

 アネゴはハァとため息をつくと頬に手を置いて困ったように眉を顰めた。

 

「今、その角を曲がったあたりに居るから……。」

 

、、、

 

「きゃあ!!本物の真選組の隊服カッコいい〜!!」

 

 いきなり岡田似蔵に襲われたから慌てて船の甲板から渡船で江戸に逃げてきちゃったけど、生の真選組に会えた!!

 超ラッキーなんですけど!!

「あのー……貴方、万事屋で居候していたシャガトさんでは?」

 万事屋!?

「えっ!?万事屋ってどこにあるんですか!?行きたーい!!」

 やっぱり主人公には会っておきたいよね!

「オイ、愛されヒロイン王。行方不明になったって話は虚偽ですかい?」

 聞き覚えがある声……もしかして!?

「あ!!沖田総悟だ〜!!超イケメン!!ドS王子だぁ!!罵ってくださーい!!」

 抱きつこうとすると後退りされてしまった。

 いけない、焦っちゃった!!

「土方さん……この女、人が変わったようですぜ……。」

 ウソ!!土方さんもいるの!?

「総悟、一旦保護の名目で」

「そうだ!!沖田ミツバさんってまだ生きてますかぁ?私土方さんとミツバさんのカップリングがすっごい好きで」

 ビキッと何かが切れる音がして、目を開けると物凄い形相をした二人が私を睨んでいた。

「え?私なにか変なこといいましたかぁ?」

 二人は沈黙したまま動かない。

 もしかして、もうミツバさんは亡くなってる?

 紅桜編ではまだ生きてたはずだけど。

 

「シャガト!!どうしちゃったアル!?」

 


 

「あ!!神楽ちゃんだ!!可愛い〜!!はじめまして〜!!」

 

 シャガトはニヤニヤしながら近づいてきて無遠慮に髪を撫でてきた。

「やめるアル!!はじめましてって何ネ!!失礼アル!!」

 髪に伸びた手を叩くとシャガトは急にメソメソと泣き始めた。

「う……ひどいよ、いきなり叩くなんて……私何も悪いことしてないのに。」

 ひどいのはそっちアル!!

「いきなり居なくなったと思ったら男共にうざ絡みするとか、ネジが外れたアルか!?」

 シャガトは手で半円を作ってポロポロと涙を流した。

「えぇん……どうして私をいじめるの?私が同じ夜兎だから?……もしかして万事屋のヒロインの座を奪われると思って意地悪してるの?」

 ……何がどうなっているかさっぱり分からないネ。

「シャガトさん!!どうしたんですか!!何があったんですか神楽ちゃん!!」

 新八がようやく追いついて息を切らせながら修羅場にログインした。

「ログインしたくないですよ、シャガトさんどこに行ってたんですか?探したんですよ?」

 シャガトは瞼を擦ると見下したような目で新八を見た。

「はぁー?私、万事屋メンバーとは初対面ですけど?眼鏡はモブのくせにでしゃばんなよ。」

 ……シャガトは、シャガトはそんなこと言わない。

「シャガトさん、いくら僕でもイジりですらない発言には怒りますよ。飛影のように黒龍波撃ちますから。」

 新八も異変を察して様子を伺っている。

「意味わかんないんですけど。ねー土方さん、総悟くん、私江戸を案内して欲しいなぁ。……なんだか具合が……悪く……」

 当たり前ネ!!

 シャガトはコウモリ傘を持っていない。

 曇りだった空から太陽光が漏れ出している。

 直射日光を浴びて平気な夜兎じゃないことは分かってるアル!!

「新八!!包帯でグルグル巻きにして確保するネ!!」

 新八も意図を理解してか山崎から包帯を受け取るとシャガトに飛びかかった。

「きゃあ!!何するのよ!!えっち!!やめて!!」

 今直ぐ行動不能にしないと人の心の地雷原を踏み荒らすアル。

「そこは『オレの心には響かない』ネ!!」

 あっさりとグルグル巻きになったシャガトを担いだ。

「オイ待てチャイナ……その女は俺の個人情報を知っていた……事情を聞く必要がある。身柄を引き渡せ。」

 無理アル。

 身柄を渡したら本気で怒り狂っているお前達の手によってシャガトは半殺しにされてしまうヨ。

 

「すみません土方さん、沖田さん、深い事情がありそうなので一旦失礼します!!」

 


 

「シャガト、どうしたアル!?変なものでも食べたアルか?」

 

 シャガトはモゴモゴしたまま蠢いている。

「神楽ちゃん!!口の包帯を外してから話しましょう!?先ずは追手から逃げないと!!」

 定春に乗って逃げる後ろには真選組のパトカーがピッタリと張り付いている。

「そこのミイラ泥棒!!御用改である!!止まれ!!」

 止まれと言われて止まる馬鹿は居ないアル!!

「定春!!真っ直ぐ前にアタック全開!!全速前進DA!!」

 指をさして方向を指し示す。

「今デュエルはしてないから!!」

 新八もシャガトを抱えながら……

「ちょいと失礼。」

 誰アル!?

 サングラスの……変なおじさん!?

「だっふんだ、なんてね。俺にも責任あるからさ、射干菟ちゃんは返してもらうよ。」

 オッサンはミイラのシャガトを抱えて飛び去って行った。

「待つアル!!新八!!定春は急に止まれないアル!!私はオッサンを追いかけるネ!!」

「ちょ神楽ちゃん!!」

 定春の手綱を新八に任せてオッサンが飛んだ方向へ飛んだ。

「まだ近くに居るはずアル……。」

 長屋の屋根を駆け回ってもオッサンの姿どころかミイラの姿も見当たらない。

 

「シャガト!!居るなら返事するアル!!空気読めずに失礼なことしでかしたのは一緒に謝ってやるから!!出てくるヨ!!」

 

、、、

 

「シャガトさん、また居なくなっちゃいましたね……。」

 

 新八はぐったりとぐずり始めた。

「グズグズ言って……仕方ないアル……また来る……。」

 でも、あのシャガトは『はじめまして』と言った。

 それに、本当に別人みたいだった。

 夢を見る中学生のように、溺愛される美少女のように。

 確かに記憶喪失だった。

 あれが記憶を戻した本来のシャガト?

「反抗期じゃねーの。」

 銀ちゃんが新聞紙を縦にして読んでいた。

「銀ちゃん、動揺してるの隠すの下手ネ。」

 窓辺に置いた三日月型の髪留めを触りながら月餅を食べた。

「いいの神楽ちゃん、月餅を食べちゃって……。」

 月餅も賞味期限があるヨ。

「いいネ。シャガトに会ったらまた買って渡せばいいアル。」

 そろそろ満月になるアル、シャガト……。

 

「最近は辻斬りが出るらしいじゃねぇか。……アイツが関係してる……わけねえな。神楽、夕飯の前にお菓子を食べるのやめなさい!!」

 


 

「ねえお前、誰が旦那様に黙って抜け出していいって言ったの?」

 

 どうしよ……岡田似蔵に連れ戻されたと思ったら神威様に壁ドンされちゃってる。

「だ、だって……いきなり斬りつけられて……怖くなっちゃって……」

 突然目の前に岡田似蔵が居たら誰でも逃げ出すでしょ!?

「ふぅん、口答えするのか。」

 神威様に顎クイされて顔が近づいてくる。

「あ……はい……」

 これって『うるさい唇だな』ってなるパターンだよね?

 ゆっくりと目を瞑ると間があった。

「あのさぁ、俺にキスしてもらいたきゃ言う事を素直に聞いて、奉仕することだね。」

 ほ、奉仕!?

「きゃあ!!神威様のえっち!!……しても、いいです。」

 ゆっくりとしゃがんで神威様の腰に手を当てると髪の毛を掴まれた。

「ぎゃあっ!!痛いっ痛いです!!」

 どうして?

 旦那様への奉仕っていったら……

「お前、頭ん中ピンク色の花畑だよなぁ……。」

 それって……

「私、おバカキャラじゃないですから!!」

 頬を膨らませると顎をグッと掴まれた。

「射干菟をモノにするためにお前の相手をする俺の気にもなれ。」

 私をモノにするために……。

 私を落としてメロメロにするために手練手管を必死に考えて苦労してるってこと?

 嬉しい……そこまで私に夢中になってほしいんだ。

「はい……神威様のお気持ち、よーく分かります……。そのお気持ち、受け止めますから。」

 顎をパッと離されて神威様は部屋から出ていってしまった。

 

「お前、暫く謹慎処分。部屋から出るな。」

 

、、、

 

「侵入者だ!!」

 

 神威様が出ていってからしばらく経ったある日、それは突然に起こった。

「射干菟様もお逃げ下さい!!岡田似蔵が暴走しました!!」

 鬼兵隊の無名キャラに部屋の鍵を開けてもらって晴れて自由の身になれた。

「ウソ!?これから紅桜編のヤマ場がはじまるってコト!?岡田似蔵、ホントにムカつくから銀さんにやられるとこ見たいかも!!」

 私は夜兎だから丈夫で死なないだろうし、何より神威様の花嫁。

 みんなが私の盾になる。

 確か紅桜編では神威様と阿伏兎と一緒に河上さんと春雨の船に居たはず。

 やった!!動き回ってもバレないし、推しの高杉様と二人きりになる絶好のチャンス!!

 

「甲板、甲板〜!!岡田似蔵を探さなきゃ!!」

 


 

「オイオイ、化け物じゃねーか。」

 

 銀さんの声が角の部屋で聴こえた。

 まだ甲板に上がってなかったんだ。

「銀さん?あ!銀さんだー!!」

 高杉様に負けないくらいイケメンでカッコいい!!

「来るな射干菟ちゃん!!」

「来るなシャガト!!」

 一斉に声が掛かると太ももに血が滴った。

「え?……」

 声とは逆方向を見ると河上さんの弦が太ももを切り裂いていた。

「子兎に邪魔はさせないでござるよ。」

 河上万斉と神威様、阿伏兎は春雨の船にいるはず……。

 なんで?シナリオが……

 変わっ……

「銀さん!!コイツらは私に任せて岡田似蔵を止めて下さい!!」

 ワイヤーから距離をとって銀さんに声を張り上げる。

「シャガト……?……あとでお説教するからなー……だから……それまで死ぬな、必ず戻れ、シャガト。」

 チラリと岡田を見ると腕からミミズのようなものが伸びて怪物に成り果てている。

 銀さんは岡田と競り合いながら甲板へ向かっていった。

「へえー。俺たちをお前一人で足止めできると思うの?流石射干菟、俺の見込んだ女だ。」

 神威が番傘を振り上げて飛びかかったため後ず去ると万斉のワイヤーが背のギリギリを張って宙返りでかわした。

 その隙に三人に向かって紐付き鏢を打ち込んだ。

「お前は弱いぞ神威!!」

 鉄扇を思い切り投げるとひょいと躱された。

「射干菟はノーコン、ン!?」

 鉄扇はブーメランのように軌道を変えて阿伏兎の脇腹の服を裂いた。

「射干菟殿、拙者も観てほしいでござるな。」

 右を向くと万斉が三味線から抜刀しておりギリギリで鏢で受け止める。

「射干菟、旦那様を忘れるなよ!」

 神威に思い切り背中側から番傘で殴られて壁に叩きつけられたが、そのタイミングでしなる鋼鉄の紐を引いて神威と万斉の服を裂いた。

「痛ぇ……やりやがったな雑魚兎……雄の雑魚など……」

 どこか骨にヒビが入ったな。

「その雑魚に分からせられてるのはどこの誰かな?」

 神威と阿伏兎が番傘を開いた。

 飛び道具が来る。

 思い切り壁を蹴って天井に張り付くと狙ったように万斉の弦によるワイヤーが迫り躱しながら新たな鏢を打ち込んだ。

「万斉!!お前は人斬りだろう!!斬ってこい!!」

 万斉は躊躇いなく指を曲げて弦を打ち込んだのを躱し、壁に踵をトンと叩きつけて刃を出した。

「オイオイ、仕込みブーツなんてどこで……」

 その勢いで蹴り上げるようにワイヤーを踵の刃で断ち切った。

 

「このワイヤー、鋼鉄に近いな。……どうなっている。」

 


 

「仕方がない。私はお前達を仕留めるつもりで狩るとする。」

 

 腰に巻いた鋼鉄の血引き鞭を外してヒュンとしならせた。

「血引きって……道順の武器じゃん。ワタリみたいな昔の忍者漫画読んでる人いないよ?」

 この血引きの尖端は皮膚を抉る。

「心の臓を射抜かれたくなければ、立ち去れ。」

 一撃必殺、心の臓を貫けば相手は確実に絶命する。

「鞭はリーチがあるからやり辛いでござる、とでも言えばいいでござるか?」

 万斉が再びワイヤーを此方に向かって放ち、飛び上がると開いた二つの番傘が動いた。

「その心、もらい受ける!!」

 鞭を叩きつけると神威が尖端を握りしめて笑っていた。

 阿伏兎は何処だ!?

「カッコいい台詞だなァ!!」

 空中で蹴りを入れられて壁に叩きつけられる。

「本気で仕留める気ないくせに。」

 その勢いを殺さぬまま鞭を引いた。

「おっと!手の皮が剥ける!!」

 宙を描く鞭を左右に振って万斉のワイヤーを叩き切る。

「射干菟殿!!君のハートをキャッチでござる!!」

 壁にめり込んだ上半身を起こして背を曲げて万斉の刀をスレスレの所で避ける。

「万斉!!お前……」

 近距離でワイヤーが放たれて思い切り身体を反らす。

「射干菟殿のリズム、拙者……本気で好きでござるよ。」

 万斉に距離を詰められ切っ先が迫ると背中から衝撃が走り天井に叩きつけられた。

「旦那様がいる前で間夫とイチャつくな。」

 神威に蹴られた衝撃で天井に指の力でなんとか張り付く。

「お前みたいな雑魚が私の伴侶になるわけないだろうが!!」

 ちょうどよく紐付き鏢の終点が天に集まり力いっぱい引くと床が剥がれた。

「おっと!!床剥がしか!!」

 これで平らな面は無くなった。

「あのさぁ、足場が悪くても俺たち夜兎には関係ないから。」

 神威は割れた床の破片を蹴り上げ、天井に突き刺さった。

「万斉!!お前は引け!!これは夜兎の共食いだ!!」

 万斉は天井に張り付くこちらを見上げるとワイヤーを左右に放った。

「拙者は惚れた女を落とすために動いているだけでござる。」

 ぬかせ。

 何故左右に放ったんだ?

「だからさぁ!!俺の前で射干菟を口説くなよ!!」

 神威が天井に張り付く私目掛けて番傘を投げると万斉のワイヤーが一気に引かれて壁諸共天井が崩れた。

 

「万斉!!皆を押しつぶす気か!?って……射干菟がいない!!」

 


 

「岡田似蔵……まだ生きてるか……。」

 

 なんだ?

 どうして射干菟ちゃんの声がする?

「まだ……ね。」

 そんなに親しくなかったけど、フラグが立ったのかな。

 なあんて……。

「お前一人で行かせはしない……。」

 ……どうしたんだい。

「射干菟ちゃん、女神様にでもなったつもりかい……。」

 柔らかく暖かい皮膚の感触がする。

「私も鬼兵隊なんだろ……?なら……同族……仲間だから。」

 そうかい。

「射干菟ちゃんは……」

 

、、、

 

「あのさぁ、射干菟もろとも木っ端微塵にしてどうするの?」

 

 神威も苛立ってるようだが、お前にも落ち度があるだろう。

「おめぇこそ射干菟とやり合ってたらしいじゃねぇか。」

 捜索隊に射干菟を探させてはいるが、梨の礫だ。

 

「射干菟殿なら、きっと帰って来るでござるよ。」

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