亜人の佐藤さんinプレデターズ   作:ビタミンK

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考えたけど使えなかった設定って結構頭に残るなぁ……。


決着

拠点に残った焦げ跡と血痕が、さっきまでの戦闘を物語っていた。

 

ノーランドは通路の入口で、怒鳴るように言った。

 

 

 

「ここは終わりだ。あいつは場所を覚えた。次は真正面から潰しに来る」

 

 

 

返論する者はいなかった。

 

新入りたちは負傷者を抱え、使える弾薬と水をかき集める。

ロイスも無言で荷をまとめ、出口側の経路を確認している。

 

誰もが理解していた。

 

あの怪物が再び来れば、この狭い居住区は棺桶になる。

 

ノーランドは佐藤を見る。

 

 

 

「おい、友達。行くぞ」

 

 

 

佐藤は床に転がった異形の装備を拾い集めながら、顔も上げなかった。

 

 

 

「私は残る」

 

「馬鹿か。ここにいたら死ぬぞ」

 

「知ってる」

 

 

 

即答だった。

 

佐藤は壊れたマスクの予備部品を弄りながら笑う。

 

 

 

「でも、ここに来るんだろ?」

 

 

 

ノーランドは舌打ちした。

 

ロイスが初めて口を開く。

 

 

 

「お前は勝てると思っているのか」

 

 

 

佐藤は少し考えるふりをした。

 

 

 

「わからない。でも面白い」

 

 

 

それだけだった。

 

ロイスは数秒見つめ、背を向ける。

 

 

 

「置いていく」

 

「どうぞ」

 

 

 

ノーランドは最後まで何か言いたげだったが、結局肩をすくめた。

 

 

 

「……ヘマはするなよ、化け物」

 

「努力するよ」

 

 

 

皮肉にもならない返事だった。

 

やがて足音が遠ざかる。

 

配線まみれの通路へ、人間たちは消えていった。

 

 

 

 

 

 

静寂。

 

拠点には佐藤一人だけが残る。

 

彼は嬉しそうに鼻歌を歌いながら、散らばった装備を並べた。

 

ガントレット。

拾い直したナイフ。

残り少ないピストル弾。

 

 

 

「さて」

 

 

 

まずはガントレット。

 

展開速度。

刃のロック。

腕への固定具。

 

自分の身体に合わせ、何度か着脱を繰り返す。

 

 

 

「うん、問題なし」

 

 

 

次は地形。

 

入口通路。

射線。

遮蔽物。

掘削機の位置。

崩れかけた梁。

 

歩き回りながら、戦う場所を頭へ入れていく。

 

時折、椅子へ座る。

 

 

 

待つ。

 

……五分。

 

……十分。

 

……二十分。

 

何も来ない。

 

佐藤は頬杖をついた。

 

 

 

「遅いな」

 

 

 

さらに待つ。

 

機械音だけが響く。

 

佐藤は天井を見上げ、ため息をついた。

 

 

 

「飽きた」

 

 

 

立ち上がる。

 

ガントレット固定。

ナイフを腰へ。

ピストルは逆の腰へ。

 

そして楽しげに笑った。

 

 

 

「迎えに行こう」

 

 

 

通路へ入る。

 

這って抜ける配管の隙間。

絶壁の棘じみた岩柱の下。

湿った森。

 

夜の狩場へ、佐藤は一人で歩き出した。

 

待ち伏せをやめ、今度は自分が狩る側になるために。

 

 

 

森は湿っていた。

 

葉の裏に溜まった水滴が落ち、ぬかるんだ地面へ小さな音を立てる。

 

佐藤は鼻歌まじりに歩いていた。

 

拠点を出てからずっと機嫌がいい。

 

 

 

「来るなら来い、と思って待ってたのに」

 

 

 

落ちていた枝を踏み折る。

 

 

 

「来ないなら迎えに行くしかない」

 

 

 

左腕のガントレットをいじる。

 

奪った装備はまだ完全には理解していない。

あの戦闘でマスクは破壊されたが、腕の装置だけは残っている。

 

だから佐藤は、それを玩具のように触っていた。

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

密林の奥。

 

怪物はすでに治療を終えていた。

 

腹部の穴は塞がり、装甲も再装着されている。

 

そして今度は、自らマスクを外して地面へ置いた。

 

捨てたのではない。

 

囮だ。

 

視覚・熱源・通信機能を持つ装備は、それ自体が存在感になる。

機械を追う相手なら、そこへ意識が向く。

 

本体は別位置に伏せる。

 

獲物の視線を一点へ集め、その死角から仕留める。

 

狩人らしい手だった。

 

怪物は木々の高所へ身を潜め、呼吸すら殺して待つ。

 

待ち伏せ。

 

本来の形だった。

 

 

 

 

 

 

佐藤は歩きながら、左腕の装置を適当に叩いた。

 

カチ。

ガチャン。

低い駆動音。

 

するとガントレットの側面から淡い投影が浮かぶ。

 

線。

記号。

地形図めいた立体表示。

 

その中に、ぽつりと一つ、分かりやすい反応がある。

 

だが佐藤は数秒見ただけで笑った。

 

 

 

「露骨だな」

 

 

 

装置の反応がある場所。

そこに本体がいるとは限らない。

 

むしろ自分が相手の立場なら、見つけやすい餌を置く。

 

そして見に来たところを狩る。

 

佐藤ならそうする。

 

だから相手もそうしたと分かった。

 

 

 

「待ち伏せだろう」

 

 

 

根拠は勘ではない。

 

殺し合いの発想が、自分と似ていると理解しただけだった。

 

 

 

「いい趣味してる」

 

 

 

佐藤は自然に光学迷彩を起動しようとして……。

何も起きない。

 

ガントレットをいじる。

沈黙。

 

手首を捻る。

意味不明の音声が一瞬鳴って止まる。

 

 

 

「……違うか」

 

 

 

どうやら透明化は、この腕の装置単体では使えない。

別系統の装備だったらしい。

 

佐藤は少し残念そうに笑った。

 

 

 

「仕方ない」

 

 

 

次の瞬間、背後から黒い粒子が噴き出した。

 

IBM。

 

人型の黒い異形が現れ、佐藤の身体へまとわりつく。

 

肩。

背。

脚。

顔。

 

輪郭が夜の闇へ滲み、存在感が薄れていく。

 

完全な透明化ではない。

 

だが十分だった。

 

視線を逸らし、気配を乱し、存在を曖昧にする自前の隠蔽。

 

 

 

「こっちのほうが好きだ」

 

 

 

佐藤はわざと囮の反応へ向かうように歩き出す。

 

木々の間を抜け、ぬかるみを避け、枝一本鳴らさず進む。

 

そして途中で進路を僅かに変える。

 

本命が潜んでいるであろう死角へ。

 

待ち伏せしているつもりの狩人へ向かって。

 

口元には、いつもの笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

森の奥は、音がなかった。

 

虫の羽音すら遠い。

 

佐藤はIBMをまとったまま、左腕のガントレットをいじりながら進んでいた。

 

適当に触れているだけの装置が、時折淡い投影を浮かべる。

 

線。

記号。

点滅する一点。

 

一定方向へ移動し続ける反応。

 

それを辿っていくと、森が途切れた。

 

岩壁。

 

その中央に、自然物にはあり得ない滑らかな黒い曲面が埋まっている。

 

巨大な船体。

 

半ば擬装されていたが、近くで見れば隠し切れていない。

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

佐藤の笑みが深くなる。

 

 

 

「面白そう」

 

 

 

ためらいなく、開いたハッチへ入った。

 

 

 

船内は広かった。

 

曲線だらけの通路。

青く脈打つ照明。

低く響く機関音。

 

壁に触れる。

 

冷たい金属。

 

床を蹴る。

 

弾むような硬さ。

 

 

 

「いいねえ」

 

 

 

観光客のように歩く。

 

次の瞬間。

 

天井の各所が開いた。

 

無数の散布口。

 

そこから、青白い液体が雨のように降り注いだ。

 

細かな霧と水滴。

 

通路全体。

部屋全体。

船内すべてへ行き渡る勢いだった。

 

佐藤の肩にかかる。

頬に垂れる。

服へ染み込む。

 

 

 

「……なんだこれ」

 

 

 

薬品の匂い。

 

冷たいのに、皮膚へ触れた場所だけじわりと熱を持つ。

 

直後、通路奥の影が動いた。

 

怪物。

 

以前より静かに現れ、以前より迷いなく踏み込んでくる。

 

右腕の刃が閃く。

 

佐藤は笑いながら迎え撃つ。

 

ナイフで受け、左腕のガントレットで脇腹を斬り裂く。

 

深い一撃。

 

黒い血が飛ぶ。

 

だが怪物は止まらない。

 

裂けた脇腹が、目の前で塞がっていく。

 

筋肉が寄り、皮膚が閉じ、数秒で傷が消える。

 

佐藤は一歩下がった。

 

 

 

「へえ」

 

 

 

怪物の拳が飛ぶ。

 

顔面が砕け、壁へ叩きつけられる。

 

その衝撃で佐藤の額も裂ける。

だが、床へ落ちた血が止まり、傷口の痛みが薄れていく。

 

自分の傷も、死なずとも閉じている。

 

天井を見る。

 

降り続く青白い雨。

 

通路の床溝へ流れ込む液体。

怪物の傷が異様な速度で治る現象。

自分にも起きている軽い修復。

 

答えは一つだった。

 

 

 

「再生液か」

 

 

 

佐藤は砕けた鼻を戻しながら笑う。

 

 

 

「船ごと治療室にしたんだな」

 

 

 

怪物は返事の代わりに突進する。

 

傷を恐れない動き。

 

多少斬られてもすぐ戻ると知っている戦い方。

 

佐藤も笑顔のまま構えた。

 

青白い雨の中。

 

二体の怪物が、船内通路で正面からぶつかる。

 

 

 

「最高だ」

 

 

 

青白い雨が降り続いていた。

 

金属の床を叩き、壁を伝い、二人の身体を濡らしていく。

 

怪物の刃が走る。

 

佐藤の肩口から胸まで裂ける。

血が飛ぶ。

 

だが傷口はすぐに閉じ始める。

 

佐藤のナイフが返る。

 

怪物の腿へ深く刺さる。

肉を抉る。

 

だがそこもまた、瞬く間に塞がっていく。

 

壊しても戻る。

砕いても立つ。

 

終わらない。

 

 

 

「ははははは!」

 

 

 

佐藤は笑いながら殴られていた。

 

顔面を砕かれ、肋骨を折られ、壁へ叩きつけられても笑う。

 

立ち上がるたびに傷は薄れ、痛みだけが余韻のように残る。

 

その痛みすら心地よかった。

 

左腕の刃で斬りつける。

 

怪物の腕を半ばまで断つ。

 

だが青白い液が滴るたび、筋肉が繋がり、骨が噛み合い、また握り拳が戻る。

 

怪物の拳が腹へ沈む。

 

佐藤の背中が通路の壁へめり込む。

 

吐いた血が雨に流される。

 

それでも、笑みだけは崩れない。

 

 

 

「いい……!」

 

 

 

息を吐く。

 

 

 

「最高だ……!」

 

 

 

怪物は無言で踏み込む。

 

狩人の本能で理解していた。

 

この獲物は苦痛で怯まない。

死でも止まらない。

ならば砕き続けるしかない。

 

右腕の刃が喉を裂く。

 

佐藤は首から血を噴きながら、その腕へ噛みついた。

 

歯が金属へ軋む。

 

怪物の膝が顎を砕く。

 

佐藤は吹き飛びながら笑った。

 

 

 

「それそれ!」

 

 

 

通路の天井が軋む。

 

床には削れた金属片と血液が混ざり、青白い液体に流されていく。

 

どれだけ戦ったのか、もう誰にも分からない。

 

数分か。

数十分か。

もっと長いのか。

 

時間の意味が薄れていく。

 

佐藤は初めて思った。

 

――これでいい。

 

勝ち負けなんてどうでもいい。

 

殺すでも、殺されるでもない。

 

斬って、砕かれて、治って、また殴る。

 

この循環だけでいい。

 

永遠に続けばいい。

 

青白い雨の中、終わらない戦闘。

 

誰にも邪魔されず、飽きるまで壊し合う。

 

 

 

「……ずっとやっていたいな」

 

 

 

佐藤は本音を漏らした。

 

怪物の拳が頬を潰す。

 

佐藤はその衝撃で回転しながら、心底嬉しそうに笑った。

 

 

 

「うん。これだ」

 

 

 

再生する肉体。

壊れない相手。

閉ざされた船内。

 

まるで、この一戦のためだけに用意された世界だった。

 

佐藤は血まみれの手で床を掴み、また立ち上がる。

 

 

 

「もう一回」

 

 

 

青白い雨は、まだ降っていた。

 

船内の床には血と液体が混ざり、薄い川のように流れている。

 

怪物の拳が佐藤の腹へめり込む。

 

内臓が揺れ、身体が折れ、数メートル先まで吹き飛ばされた。

 

佐藤は床を滑りながら笑う。

 

 

 

「はは……っ、まだまだ……!」

 

 

 

手をついて起き上がる。

 

その時だった。

 

視界の端に、白い糸のようなものが垂れた。

 

髪だった。

 

額へ張り付く前髪が、さっきまでより明らかに長い。

 

頬へかかるほど伸びている。

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

指で払う。

 

その指先に違和感があった。

 

爪。

 

伸びている。

 

白く硬い先端が、数分前より明らかに長い。

 

佐藤は一瞬だけ笑みを止めた。

 

怪物はその隙を逃さない。

 

右腕の刃が走る。

 

佐藤は避けようとして――遅れた。

 

肩口が深く裂ける。

 

血が噴く。

 

 

 

「……あれ」

 

 

 

いつもなら見えていた軌道。

いつもなら動けていた距離。

 

身体が、鈍い。

 

足に鉛でも入ったように重い。

関節の切り返しが遅い。

握力にも僅かな衰えがある。

 

怪物の蹴りが胸へ入り、佐藤は壁へ叩きつけられた。

 

息が詰まる。

 

立ち上がろうとして、膝が一拍遅れる。

 

 

 

「……そういうことか」

 

 

 

佐藤は濡れた床に手をつき、天井を見上げた。

 

降り続く青白い雨。

 

怪物の傷は異様な速度で治る。

自分の傷も閉じる。

だが同時に、髪や爪まで伸びている。

 

再生ではない。

 

活性化だ。

 

細胞そのものを、無理やり加速させている。

 

傷口だけではない。

身体全体。

生きている組織すべてを。

 

 

 

「老けてるのか、僕」

 

 

 

言葉にして、佐藤は笑った。

 

 

 

「はは……なるほど」

 

 

 

皮膚を見る。

 

わずかに張りが落ちている。

筋肉の反応も鈍い。

視界の焦点も僅かに遅れる。

 

短時間で起こるはずのない変化。

 

だがここでは起きている。

 

長時間、浴び続けた代償だった。

 

怪物は理解していたのか、さらに踏み込む。

 

こいつはおそらく若いのだろう。

 

それとも相打ち覚悟でやっているのか。

 

 

 

「やってくれるな」

 

 

 

佐藤は口元の血を拭う。

 

その手の甲にも、薄く浮いた血管が見えた。

 

怪物の拳が迫る。

 

今度はまともに受けた。

 

頬骨が砕け、床へ転がる。

 

再生はする。

 

だが身体性能は落ちていく。

 

青白い雨は止まらない。

 

佐藤は起き上がりながら、楽しそうに笑った。

 

 

 

「最高だ」

 

 

 

不利になった。

 

理不尽だった。

 

知らないルールで削られていく。

 

だからこそ、面白い。

 

伸びた髪をかき上げ、左腕の刃を展開する。

 

 

 

「じゃあ、タイムリミットまでに勝たないとな」

 

 

 

青白い雨の中、二体は同時に踏み込んだ。

 

もう駆け引きはなかった。

 

佐藤の身体は重い。

髪は肩へ届き、爪は獣じみて伸びている。

関節は軋み、反応は鈍い。

 

それでも笑っていた。

 

怪物もまた無傷ではない。

 

何度も裂かれ、何度も治した肉体は、再生液に頼りながらも確実に疲弊している。

呼吸は深く、踏み込みもわずかに荒い。

 

互いに限界。

 

だからこそ、次で決めると理解していた。

 

佐藤は右手にナイフ。

左腕には異形の刃。

 

怪物は右腕のリストブレードを低く構える。

 

 

 

「行くよ」

 

 

 

佐藤が笑う。

 

返事の代わりに、怪物が咆哮した。

 

同時。

 

怪物の突進。

 

佐藤も前へ出る。

 

一瞬で間合いが消える。

 

怪物の刃が佐藤の腹を貫いた。

 

装甲も骨も関係なく、深々と突き抜ける。

 

同じ瞬間。

 

佐藤の左腕の刃が、怪物の喉元から首の奥へ突き刺さった。

 

さらに右手のナイフが眼窩へねじ込まれる。

 

衝撃で二人の身体が絡み合い、そのまま通路の壁へ激突した。

 

金属壁が凹む。

 

青白い液体が滝のように落ちる。

 

怪物の刃は佐藤の腹を裂き上げ、胸骨まで開いた。

 

佐藤の左腕は喉を貫いたまま、首の内部を抉り広げる。

 

互いに致命傷。

 

それでも、まだ止まらない。

 

怪物が最後の力で佐藤の頭を掴む。

 

佐藤は最後の力で刃をさらに押し込む。

 

眼球が潰れ、頸椎が断たれ、腹腔が裂ける。

 

そして――

 

二人同時に崩れ落ちた。

 

床へ。

 

青白い雨の中へ。

 

 

 

 

 

 

怪物は痙攣し、やがて動かなくなる。

 

喉は完全に潰れ、脳まで刃が届いていた。

 

再生液が降り注いでも、もう戻らない。

 

狩人の終わりだった。

 

一方、佐藤も倒れたまま動かない。

 

腹は裂け、内臓は零れ、首は半ば折れている。

 

だが本来なら、これでは死なない。

 

何度でも戻る。

どれほど壊されても立ち上がる。

 

亜人とはそういう存在だった。

 

だが今、佐藤の身体には別の死が近づいていた。

 

青白い雨。

 

細胞を狂った速度で活性化させる液体。

 

傷を塞ぎ、肉を繋ぎ、命を延ばす代わりに――時間そのものを消費する。

 

佐藤の髪はさらに伸びた。

 

皮膚がしぼむ。

筋肉が痩せる。

骨が脆くなる。

 

裂けた腹は塞がりかけては、老いた細胞が崩れていく。

 

再生と老化が同時に起こり、互いを食い潰していた。

 

指が震える。

 

起き上がろうとして、できない。

 

初めてだった。

 

死ねない自分に、終わりが来るのは。

 

佐藤は仰向けのまま、天井を見た。

 

青白い雨が顔へ落ちる。

 

皺だらけになった頬を伝って流れる。

 

 

 

「……はは」

 

 

 

掠れた、老人の声だった。

 

 

 

「そうか」

 

 

 

理解した。

 

これが唯一の終わり。

 

事故でも、銃でも、爆発でもない。

 

寿命。

 

老衰。

 

亜人の唯一の死因。

 

佐藤の笑みは、最後まで消えなかった。

 

 

 

「楽しかったねぇ……」

 

 

 

視界が霞む。

 

骨ばった指先が一度だけ動く。

 

それきり、止まった。

 

青白い雨だけが降り続く。

 

船内には、首を貫かれた狩人の死体と。

 

永遠に終わらないはずだった男の、静かな亡骸だけが残された。




なんか終わりみたいな感じだけど後もう1話書く予定です。
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割とガチで。
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