亜人の佐藤さんinプレデターズ   作:ビタミンK

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次回作はプロットも作るしストックも作ります。
あったほうが絶対楽だった……。


終幕?

夜明け前の森を、ロイスたちは黙って進んでいた。

 

誰も佐藤の名を口にしない。

 

言う必要がなかった。

 

あの男は残った。

自分の意思で。

笑いながら。

 

ノーランドだけが、何度も後ろを振り返っていた。

 

拠点の方角。

もう何も見えない闇の奥。

 

「……馬鹿なやつだ」

 

吐き捨てるように言う。

 

だが声には、どこか寂しさがあった。

 

ロイスは答えない。

 

先頭のまま、進む。

 

彼にも分かっていた。

 

佐藤は置いていかれたのではない。

自分で、戦場に残ったのだ。

 

 

 

 

 

 

やがて一行は、あの処刑場――デスキャンプへ辿り着いた。

 

骨が吊るされ、獣臭と血の匂いが残る場所。

 

そこに、まだ縛られたままの異形がいた。

 

痩せてはいるが、目は死んでいない。

 

鎖に繋がれたまま、こちらを睨んでいる。

 

ノーランドが肩をすくめる。

 

 

 

「こいつを助けるのか?」

 

 

 

ロイスは短く言った。

 

 

 

「地球へ帰る方法が他にあるか?」

 

 

 

それだけで十分だった。

 

生存者たちは周囲を警戒しながら拘束具を外す。

 

異形の戦士は自由になると、すぐには襲わなかった。

 

立ち上がり、一人ずつを見た。

 

そしてロイスへ、わずかに頷く。

 

敵ではない、と理解したらしい。

 

 

 

その後、彼らは戦士の案内で密林の奥へ進んだ。

 

岩山の裏に隠された小型船。

 

傷だらけだが、飛行可能な機体だった。

 

内部へ乗り込む。

 

人間たちは警戒しながら座席らしき場所へ身を寄せた。

 

ノーランドは操縦席へ向かう異形の背を見て、ぼやく。

 

 

 

「人生ってのは分からねえな。宇宙人に送迎される日が来るとは」

 

 

 

誰かが小さく笑った。

 

久しぶりの、人間らしい笑いだった。

 

 

 

船が離陸する。

 

森が遠ざかる。

 

あの狩場の星が、窓の向こうで小さくなっていく。

 

ノーランドは腕を組み、低く言った。

 

 

 

「佐藤のやつ……死んだと思うか?」

 

 

 

沈黙。

 

誰も即答しない。

 

ロイスが外を見たまま答える。

 

 

 

「どうだろうな」

 

「らしくねえ返事だ」

 

「らしい答えならある」

 

 

 

ノーランドが眉を上げる。

 

ロイスはほんの少しだけ口元を緩めた。

 

 

 

「ああいう男は、死んでいても気づかず戦ってる」

 

 

 

何人かが吹き出した。

 

ノーランドも鼻で笑う。

 

 

 

「違いねえ」

 

 

 

しばらくして、彼は真顔に戻る。

 

 

 

「もし生きてたら?」

 

 

 

ロイスは即答した。

 

 

 

「楽しくやるだろう」

 

「この星で?」

 

「ああ」

 

 

 

狩人。

怪物。

密林。

終わらない殺し合い。

 

佐藤にとっては、地獄ではない。

 

むしろ理想郷に近い。

 

ノーランドは窓の外の星を見つめ、肩をすくめた。

 

 

 

「まったく、羨ましい趣味してやがる」

 

 

 

宇宙船は加速する。

 

青い地球へ向けて。

 

その背後で、狩場の星は静かに闇へ沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

別の空。

 

巨大な母船の内部。

 

暗い広間に、複数の異形が並んでいた。

 

壁面には戦闘記録が投影されている。

 

黒い血を流しながらなお立ち上がる人間。

自ら頭を撃ち抜いて再生する人間。

腕を切り落とし、その断面から肉体を増殖させる人間。

老衰するまで戦い続けた人間。

 

映像が止まる。

 

佐藤の笑顔で。

 

沈黙が落ちた。

 

一体の老いた戦士が前へ出る。

 

仮面越しに低い唸り声。

 

未知の獲物。

記録にない生命。

死を拒む存在。

 

今回の狩りで、彼らは亜人という種を認識した。

 

単なる人類の変種ではない。

戦利品でも、獣でもない。

 

研究対象。

あるいは、最上級の獲物。

 

壁面に新たな印が刻まれる。

 

人間種とは別の分類として。

 

狩りは、次の段階へ進んだ。

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

墜ちた宇宙船の内部。

 

青白い再生液の雨はすでに止み、通路には乾きかけた血だけが残っていた。

 

床には二つの骸。

 

首を貫かれた狩人の巨体。

そして、老衰しきった佐藤の亡骸。

 

皮膚は痩せ、髪は長く伸び、指先は骨ばっている。

 

笑みだけが、かすかに残っていた。

 

その左腕。

 

装着されたままのガントレットが、突然かすかに光る。

 

ピッ――

 

無機質な電子音。

 

続いて、赤い警告灯が高速で点滅する。

 

誰にも止められない。

 

数秒後。

 

閃光。

 

轟音。

 

通路そのものが揺れ、金属片が弾け飛ぶ。

 

佐藤の死体は爆圧に呑まれ、粉々に砕け散った。

 

骨は砕け、肉片は壁へ張りつき、乾いた髪は燃えながら舞う。

 

狩人の死体すら巻き込み、周囲一帯を破壊して、自爆は終わった。

 

再び静寂。

 

煙だけが漂う。

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

密林の地表。

 

戦いの余波で抉れた土の上に、一本の足が横たわっていた。

 

以前、リバーゴーストエイリアンにちぎられ、そのまま森へ放置された佐藤の足だった。

 

乾き、泥に汚れ、半ば自然へ還りかけている。

 

周囲には誰もいない。

 

風が葉を揺らす。

 

遠くで何かが走る音。

 

静寂。

 

その足の断面に。

 

黒い粒子が、ふつりと湧いた。




はい。これにて亜人の佐藤さんinプレデターズは完結です!

最後の描写は、老いて死んだ佐藤さんが再生されるのか、それとも足の状態に引っ張られて元の年齢の佐藤さんが再生されるのか。
それは皆さんのご想像にお任せします。

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました!
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