在野の強者のモブパイロットはシビアなSF世界を気楽に生きていたい。   作:その辺の束子

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主人公っぽい奴らVSやられモブっぽい奴ら

 

 センサーに映るのはunknownの文字……どうやら、相当な厄ネタ機体を持ち込んできたらしい。無線は繋がってる……向こうに出た方によっては穏便に済むかも………なんて考えは、徒労だ。

 

『アンタ……まさか例の賞金稼ぎか!?』

「例のかは知らねぇが、バウンティハンターではあるぜ。君の首に金がぶら下がってる。」

 

 レイトは操縦桿を握りしめる。クローアームが威嚇するように回転する……すぐに仕掛けないのは、レイトの甘さだ。この間子供と関わり合ったあとだから、なるべくならやり合いたくない。それが本音だ。

 

 妙に露悪的なのは……何故だろうか。

 

「今すぐ降りて機体と人質の女の子を渡せ。」

『人質?そうなってるのか……!!』

 

 その言葉に違和感を覚えるレイト……だが、次の瞬間目の前の機体が腰からビームでできた剣を抜き出す。ビームサーベルってやつだ。

 

 すると、無線奥の声はしたたかになり、まるで楽しみに蓋をするかのように声を絞り出した。

 

『尚更引けるかァッ……!!』

「なら……!」

 

 次の瞬間、両機のスラスターが全開となりぶつかり合う……アストロスのビームサーベルと、アルバレイスの回転してビームを拡散させるクローが拮抗し、通り抜け互いの身体を掠る。

 

 だが、どちらも致命傷には至らない……ならば射撃勝負だと、アストロスは背中からライフルを取り出す……弾倉式の実弾銃に寄せた冷却用カートリッジ……形状的にはビームライフル。

 

「来な!当ててみせろ!!」

 

 次の瞬間放たれたライフルに対して、アルバレイスは高機動でまるで幽霊のような掴みどころのない動きで回避する……対してアストロスは止まったまま撃ち続ける。

 

『当たらねぇ!』

 

 まだ動きながら撃てないのだ。確実に狙えない……アルバレイスはジグザグに移動して射線を誘導させながらアストロスに飛びかかろうとしてくる。

 

 アルバレイスはクローを回転させてドリルのようにしながら突っ込む……無線機のリドーからは『機体壊すなっての!』と叫び声が聞こえるが、そう構ってやる余裕もない。

 

 長年の賞金稼ぎとしての勘が、目の前の少年がやがて強大な力を持つパイロットになるのを予見させる……動き自体は素人なのに、そのキレは素人のそれではない。まるで歴戦のパイロットが新兵を演じているようだ。

 

 こんな相手は、早めに潰しておきたい……

 

 即座にアルバレイスとアストロスは睨み合うように顔を近づける。アルバレイスのクローがその胴体を狙うが……コクピットを狙う直前、レイトはほんの一瞬だけ手を止めた。

 

 子供が中に二人いる。それだけで十分な理由だった。己の甘さに舌打ちする。

 

『バルト!捕まってください。』

『ナディア。』

「っ!?」

 

 次の瞬間アルバレイスは咄嗟に貫手のような攻撃からアッパーに切り替える。その瞬間、アストロスの動きがわずかに変わった。

 

 まるで機体自身が判断したように……アストロスは下方向へスラスターを全開にして回避してまた向き合う。今度は先ほどと同じように、暑苦しく。

 

 先ほどから何か様子が変だ。先ほどの掛け合い、男と女の声の掛け合い。

 

 少年少女のものとは言え、話では女の子を人質に取ったみたいな用件だったはずだが……どうやら話は違うらしい。まぁ、いつもの事だ。都合の良いように脚色したがる……どいつもこいつも。

 

『ッ!!』

「っし……!!」

 

 だが、関係あるものか。こっちは賞金稼ぎだ……このままもう一度スクリューで……そう思いながら突撃するアルバレイス。アストロスのビーム兵器が飛んでくるが、そのスクリューのクローではじき飛ばして防いでしまう。

 

『ぐっ!?』

「またコクピットだけ抜いて……!!」

 

 そうしようとした時……アストロスのパイロットは驚くべき行動に出た。

 

『まだ……だぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 アストロスは回転したクローアームを掴み、その馬力で無理やり回転を止める。下手をすれば機体ごと風穴が空くし、今も尋常じゃない負荷がかかっているはずだ。それでもなお、やり遂げようとしている。

 

『ぐ……っ!』

「ちっ……!」

 

 このまま回転数を上げてぶち抜いてもいいが……そうなったら修理費が馬鹿にならない。だが、ここまでやりやがる馬鹿は久しぶりに見た。このまま押し通りたくなる気持ちもある。

 

『負け……るか……ナディアは……俺が!!』

「小僧……戦場で女の名前を叫ぶってのはなぁ……なんだっけか。まぁいいかぁ!!」

 

 レイトはペダルを動かしてアストロスを蹴りつけて吹き飛ばす……結局クローが壊れる方を嫌がったようだ。それだけお気に入りの武装ということなのだろう。

 

 だが、さすがに無理やり止められた弊害はあったみたいで、もう一度軽く回転させると、回り方がいつもより鈍くなる……少しパーツが曲がったらしい。

 

「めちゃくちゃやりやがる。見ろ!ところどころ歪んじまったじゃねぇか!」

『そっちのせいだろうが!』

「へへっ、良いなお前。捕まえる前に自己紹介しとくか……レイト・ナモナだ。ただのレイト、賞金稼ぎのレイト、亡霊のバウンティハンター、呼び名は色々だ。こいつは愛機のアルバレイス。教えといてやるよ。」

 

 半ば時間稼ぎではあるが、レイトは相手のことを知りたくなった……まずはレイトの方から自己紹介を始めると、相手の少年は少し面を食らったようになりながらも、改めて声色を強くして答える。

 

『ば、バルト・スミシーだ!こいつは……アストロス!アストロスだ!』

 

 その言葉を聞いて、レイトはunknown表記の機体をAstrosへと変更させる。すると、少し含み笑いを浮かべて問いかけた。

 

「アストロスか、お前の趣味か?」

『違うってば!!……お前、何なんだよ!』

「賞金稼ぎだって……ただの、な!!!」

『金かよ!!』

 

 三度の激突、互いの機体がぶつかり合う……だが、アルバレイスの脅威の一つであるスクリューしたクローの強撃が使えないとなると、少しやり方を考えなければならない。同様にクローの開閉にもラグがある。その間も、やりとりは続いた。

 

『金なんかより大事なもんは幾らでもあるだろうが!』

「そんなモンは前提条件だ!その上で金も大事なんだろーが!!つか、そういう話じゃねぇよ俺がしてんのは!!」

 

 トンファー型のビームピストル?いや、しばらくやり合って分かったが機動力は向こうが上だ。遠距離戦は分が悪い。どうすべきか……レイトが考えている間、アストロスも動かなかった。代わりに、舌戦が白熱する。

 

「お前こそ女の子とロボット盗んでなにする気だ?ランデブーか?ロミジュリ気分かよ?盗人が!」

『そんなんじゃねぇ!……俺は……俺はこうすべきと思ったからやってるだけだ!!正論なんか聞き飽きてるよ!!』

 

 なんという暴論だろう。とんだ我儘坊主だ……多分、バルト自身もそう思っている。それでもなお見て見ぬふりができなくて、バルトはこんな事を始めたんだ。……それは、レイトの勝手な予想だ。

 

 互いに距離を取ったまま、睨み合うような静止が続く。バルトも同じように次の手を探しているのだろう……息を整える時間が欲しいのか、それとも本当に詰まっているのか。

 

(クローが使えないなら……こっちもサーベルで懐に入るか?だが向こうもビームサーベルは持ってる。こっちのサーベルには対ビームコーティングはしてないから鍔迫り合いはできない。)

 

 レイトは右腕のアームを確認する。サーベルはある。ビームピストルも残弾がある。だが装甲の薄いアルバレイスで正面からビームサーベルを持つ機体に踏み込むのはリスクが高い。

 

 ……一応、動かなくてもクローを武器にすることは簡単だが。こっちのクローにかけたビームコーティングも剥げていないなら鍔迫り合いくらいなら可能か?

 

「っし!んじゃそれで行くか……!!」

 

 レイトは瞬時に決めようとスラスターを吹かす……すると、無線から何やら声が響いてくる。何かを相談しているような声……レイトはペダルを踏み込んで向かう。

 

『ナディア!頼む!!』

『フルマニューバ、起動。』

 

 ナディアと呼ばれる少女の静かな言葉………すると、次の瞬間目の前の機体のフレームが輝き出す……まるで骨組みからエネルギーを放出しているようだ。

 

 これは……さすがに何かまずいとアルバレイスは一旦下がる。

 

 全身から瞬く光を放つアストロス……すると次の瞬間、目で追うよりも早くまるで流星や流れ星のように宇宙の彼方へと飛んでいってしまう。

 

 まさに一瞬……刹那の光景だ。あの舌戦も、このエネルギーをためるための時間稼ぎだったのかもしれない。その光景を見たリドーは舌を巻いてつぶやく。

 

『フルマニューバか……また厄介なのが。』

「ご存知か?」

『軍が開発していた超機動超加速機能さ。たいていは機体やOSやCPUの方が駄目になって飛べなくなるんだが……まさか、完成品が盗まれるとはな。』

「誰から聞いたんだそれ。」

 

 レイトの肩をすぼめた呆れ声に笑うリドー。まったく恐ろしいネゴシエーターさまだ……この男の情報はどっから出てくるのやら……

 

『……しかし、バルト・スミシーにナディアか。』

 

 感慨深くそう呟くレイトに、リドーが問いかけた。逃げられた賞金首にここまで感慨深くなるとは。

 

『そんなに気に入ったのか?』

「悪くねぇ腕だった。何より態度が気に入った……まるで、ロボットアニメの主人公みてぇだ。」

『お前マジに何言ってんの?』

 

 相方の突然の珍妙発言に引くリドー……だが、それはレイトにとっては大事なことだ。

 

 かつて、レイトがやったように……見て見ぬふりができなくて、ロボットに乗って戦い、そして一番守りたかったものを護れずに失った。きっと、あのバルトにもそれがあったのだろう。

 

 自分にはできなかったことが彼にはできるんじゃないかという、勝手な期待を背負わせてしまう。なら、なおさらほかの奴らには譲れない。

 

「リドー、そのフルマニューバってのは大きな方向転換はできるのか?」

『一直線上にしか動けないと思っとけ。ジェット機で隣の家の庭に行くみたいなもんだ。』

 

 そもそもフルマニューバと呼ばれるシステムは遠方から単機、もしくは少数での突入での破壊活動……要するにテロ行為じみた襲撃作戦用のシステムだ。速さに関しては抜きん出ても、操作性に期待できる場面はない。

 

「なら、ある程度の場所は追えるな……できることなら政府やらコロニーの保安官より先に捕まえてぇ。」

『おまっ!?マジでか!?』

「久々にマジだ。本気で狙いに行く。」

 

 そう言ってレイトは獰猛な笑みを浮かべた。久々に……本当に狙いたい相手ができた。

 腕前とかそんな話じゃなく……勝手な写し鏡として、バルトを見定めるのだった。

 

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