在野の強者のモブパイロットはシビアなSF世界を気楽に生きていたい。   作:その辺の束子

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大体これがバウンティハンター

 

 結局、事を引き起こしたのは依頼主の慈善家(を装ったチンピラ)だった。なんでも、昔に仲間がレイトとリドーに賞金首としてと捕まって首がまわらなくなったから逆恨みの報復として保安官と鉢合わせて喧嘩させる事を思ついたらしい。

 

 丁度()()()()()()()()()()()()()を探していた連中も居たようで、その連中とつるみ今回のだまくらかしを決行したらしい……やけっぱちの杜撰計画だが、それでも引っかかるのはレイトの頭の空っぽさ故か。

 

 兎も角、ステルス機のパイロット兼、慈善家兼、チンピラである賞金首は捕まり、例外的にレイトにも7割の賞金が支払われることになった。ウハウハである。

 

「アーハッハッ!久々の美味い収入だ!ぱぁっと使わねぇか?レイト?」

「お前それでいつも金欠なんだろーが……俺も同じ気持ちだがな!?ハハハ!!!」

 

 そうディング号の中で笑い合うレイトとリドー……金が入ると分かった瞬間これである。頭が空っぽだ。本当に……それは兎も角として、攫われていた子供達も助け出され、一部は保安局に保護された。

 

 もちろん居場所があるやつはそれを拒否するやつも居たが……それは当人らの問題。レイトやリドーの口出しする問題ではない。

 

 それよりも問題は入ってくる金だ……使い道を考えるだけで笑いが止まらない。そんな二人の笑い声が響くディング号の中……その奥の一室で、一人の少女がゆっくりと目を開いた。

 

 天井が見える。金属の天井だ。知らない天井だった。

 彼女の名前はユウコ、諸々のショックで気を失っていたが、どうやら漸く目覚めたようだ。だが、まだ頭がふわふわする。

 

 体を起こそうとすると、腕に鈍い痛みが走る。思わず顔をしかめると、腕の内側に白いガーゼが貼られているのが見えた。

 

 ……ああ、そうだ。

 記憶が少しずつ戻ってきた。連れ込まれたのは暗い倉庫。男たちの声が下衆に響き、焼けるような痛みが襲う……そこから先は、何も覚えていない。

 

 ユウコはゆっくりと周囲を見回した。狭い部屋だが、清潔にされており毛布がかかっていた。きっと誰かがかけてくれたのだろう。

 

 起き上がって、ドアに手をかける。廊下に出ると、どこかから笑い声が聞こえた。リドーとレイトの声が響いていたが、ユウコにとっては知らない男が二人、何かを言い合って笑っている。知らない声だった。

 

 ユウコは壁に沿って、声と反対方向へ歩き出す。出口を探すように……するとその時。

 角を曲がったところで、誰かと正面からぶつかりそうになった。

 

「っ!?」

「ゆぅちゃん!!」

 

 ミナだった。

 彼女は両手に水の入ったコップを二つ持ったまま、ミナは目を見開いてユウコを見つめている。次の瞬間、コップをどこかに置く暇も惜しいとばかりに、そのままユウコに抱きつき、水がこぼれた。

 

「ゆぅちゃん……!良かった、良かったぁ……!」

「ちょ、ミナ……痛い……」

「あっ、ごめんね!?大丈夫!?まだ痛む!?」

 

 矢継ぎ早に問いかけながらもミナは離れようとしない。ユウコは少し困った顔をしたが、やがてそっと背中に手を回した。

 

「……大丈夫。大丈夫だから。」

 

 その言葉に、ミナは心より安堵した……そして、笑いながらもその言葉を聞いていたレイト達もまた、若干嬉しそうに笑う。

 

 

――――――――――

 

 

『では、我々は出るぞ。』

 

 201コロニーから飛び立つのは、保安局のコルベット艦だ。コルトルや、子供たちを格納したその船はなかで子供たちのはしゃぐ言葉を紡ぎながらその場から撤退するように飛び上がっていた。

 

 通信機に出るのは、例のラディだ。思ったよりアッサリとした別れだ……迷惑をかけられた割に。まぁ、その分も含めての七割賞金なので文句は言うまい。

 

 それにしてもアッサリとしすぎた別れだ……一度、彼女がレイトに彼のことを聞いたくらいか?クワイセランの出身ではないかと……まぁ、レイトは見抜かれるの承知で嘘をぶっこいで違うと言い放ったんだが。

 

 しかし、あんな、事を言うということは……彼女も、クワイセランの生き残りなのだろう。あの時守れたうちの誰か……そう思うと、うれしいようなさみしいような気分だ。

 

 するとそんなレイトの心情を知ってか知らずか、彼女は腕を組み少し笑みを浮かべて言う。

 

『本当なら手を貸してほしいのだがな……お前らの腕なら正式な保安官にもなれるだろうに。』

「んなの、ごめんだ。こっちはもっと気楽に生きてたいんでね。」

 

 レイトがそう言ってやると、ラディは軽くため息をついて頭を抱える……本当にお気楽な奴らだ。そんな、お気楽だから、子供のために自分の機体も盾にできるのだろう。

 

 ラディにとっては数時間の付き合いだが、悪くない縁だったと思いたい。すると、不意に気になったのかリドーが問いかける。

 

「ガキどもに変な真似すんなよ?」

『それじゃあな、子供達の事は任せろ……その子供をさらってる奴らのこともな。じゃあな、賞金稼ぎ。』

 

 その言葉を最後にラディからの通信は切れる………最後まで実直な女だった。

 

 態々でステルス機のパイロット野良世迷言も真面目に信じて探そうとしているのだから………しかし、子供を優先的に狙うなんてロリコン、あんまり見過ごしたくもないが。

 

 それにあのステルス機も武装は兎も角性能は良いものだった……何かバックにいると考えるのは当然だろう。それとやり合うのも、保安官の務めだ……大概はそのバックに飼い慣らされるのがオチではあるがな。そう言う調査は保安官の仕事……賞金首となれば、話は別だが。

 

 ディング号の窓から保安官の宇宙船が飛び立つのが見える。はてさて、次は何処で出会うのやら……それと、次はどんな賞金首を狩りに行こうか……そんな事を考えていると、部屋の扉が開く。

 

 そこに立っていたのはミナとユウコの二人だった。

 ユウコはまだ恐怖心が拭えていないのか、若干ミナの後ろに隠れるようにして立っている。

 

「よぉ、ミナと……ユウコちゃん?だっけ。元気そうでよかった。」

 

 レイトが声をかけると、ユウコはびくりと肩をはねさせるが、逃げなかった。ミナが隣で小さく頷いてくれたからだろう。信頼する相手の頷きには、自然と心を許すものだ。

 

「お前らは残ったんだな。」

 

 リドーが確認するように言うと、ミナは軽く肩をすぼめた。

 

「はい、今さらこのコロニーから離れられませんし。」

「……です。」

 

 ユウコも小さな声で同調する。どんなにひどい場所でも、そこを一度居場所と見定めると、抜け出すのは簡単じゃない。それは分かる。レイトもリドーも、それ以上は何も言わなかった。

 

 しばらく沈黙があった。

 

 レイトは少し考えてから、ポケットをごそごそと漁り始めた……出てきたのは折り畳まれた古いレシートだ、乾燥野菜かなんかのレシートだろう。その裏面を表にして、それをディング号の外装に押しつけて、ペンを走らせる。

 

 字は思ったより下手だった。

 

「ほらよ。」

「これ、は?」

「何かあったら連絡つけて来い。一応助けに来てやる。」

 

 ミナは紙を見つめた。数字の羅列と、最後に走り書きのサイン。読めなくはない。ぎりぎり読める。

 

 これは彼なりの親切心だ……荒事しかできない男に何を頼もうかという話ではあるが、こんなスラムコロニーな201では必要なのかもしれない。

 

 それに、賞金稼ぎ(バウンティハンター)と知り合い……それだけで、多少は手を出されにくくなるだろう。

 

 すると、リドーが面白くなさそうに「あーじゃあ。、」と呟く。そう言って奥に引っ込んだかと思うと、すぐに戻ってきた。手には布の袋が一つある。

 

「俺だけケチみたいになんのも、やだし。……ほれ二人共。」

 

 そう言って二人に渡すのは日持ちする食料だ。味は……豚の角煮味のビスケット。うん、毎度のことながらセンスが壊滅的である。

 

「一応持ってな。食える時には喰っとけよ……ユウコちゃんの、腕の焼印もあとは残るが心配はいらない。場所的に袖で隠れるから隠しときな。薬も少しだが入ってる。」

 

 意外と子供好きと言うか、面倒見がいいのか若干このままほうっておくことに抵抗があるようだが……空でも彼女たちはこのスラムで生き抜いてきた。

 

 どんな目に会おうとも……誰かに同情され不幸に思われるほど弱くはない。

 

「大丈夫ですよ、今までもこのコロニーでやってきたんですから!」

 ミナが胸を張って言う。

「安心してください。」

 ユウコも続けた。声は小さいが、芯があった。返す言葉はとうに消えうせたなかった。よければ一緒に賞金稼ぎでも……なんて誘いはすでに吹っ飛んだ。

 

「ん。」

 

 レイトは軽く手を上げた。雑な別れの合図だ。リドーは腕を組んだまま、小さく顎を引いた。

 ……やがて、ミナとユウコは並んでディング号のタラップを降りた。コロニーの地面に足がつく。

 

 やがて船のエンジンが点火し出航できる状態となる……見納めになるからか、アルバレイスを堂々の格納庫から格納し、子供達は地上で飛び上がるディング号を見上げて手を振っていた。

 

 地面から離れていく船の窓から見えるのはミナとユウコ、そして一時の縁を作った子供達。このままほおっておいて良いのか?ともリドーは思う……だが、そんな、考えを見透かすかのようにレイトがつぶやいた。

 

「俺たちは賞金稼ぎだ。ここにのこってもアイツラにしてやれる事なんてねぇよ。」

「……だよ、なあ。」

 

 わかってる、わかっているのだ。それでも……子供のあんな姿を見て何とかしてやりたいと思え去ってしまうではないか。それが、どんなエゴにまみれたものでも。

 

 ……不意にレイトが問いかける。

 

「お前さんあの子くらいの頃何してた?」

「あの子ら似たようなもん。お前は?」

「ボンボンかな、苦労も知らねぇあまちゃんだったよ。」

 

 レイトは装置行って自身の過去をアッサリと嘲笑する……でなければ、ロボットオタクなんてフェチには目覚めかろうに。

 

 地面が遠ざかり、人が豆粒に見えるよつになる……さて、次は何処に行くのやら……コロニーのゲートを抜けて、飛び上がる。そして、また、いつもの男二人の日常へと戻る。

 

 リドーはまた賞金首を洗い……レイトは棚のロボットフィギュアを恍惚に眺めてから……シャワーを浴びに行くのであった。

 

 大体こんな日々の繰り返しが、賞金稼ぎ……バウンティハンターである。

 

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