からんからんと古風な鈴の音色が人の訪れを知らせる。
手に持つ銀色のトレーから目を離し、いらっしゃいと声を掛ければ差し込む光と共に1人の女性の姿が写り込む。
「マスター?このお店で1番のダージリンティーを」
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私は自称この店の常連客。真夏の炎天下の中、避暑地を求めてたまたま通りかかったこの店で、苦味の強いここのコーヒーを気に入ってしまった1人だ。
大通りから少し外れた細い路地裏。今日も人の少ないこの店で、お気に入りのカウンター席から、いつものようにマスターと他愛のない話に花を咲かせていると、からんからんと珍しく人の訪れを告げる音色が。
「マスター?このお店で1番のダージリンティーを」
入ってきた女性はこの本土では珍しい、青の制服を着たお嬢様。プラチナブロンドの色をした髪を後ろで纏め、優雅に振る舞うその姿は今話題の戦車道で有名なお嬢様学校、聖グロリアーナ女学院の生徒であることを一目に証明している。
しかしおかしい。ここはコーヒー専門の喫茶店。メニューに紅茶などの記載は無かったはずだ。
そう疑問に思い視線を戻すと、案の定店主が項垂れるようにして、こめかめに手を当てていた。
「お客様。ここはコーヒーショップですと何度も...」
ため息混じりにそう返す言葉の中に、何度かこのやり取りをしたのであろう雰囲気が伝わってくる。
お嬢様風に醸す雰囲気に惑わされたが、案外抜けている部分の方が多いのだろうか、注文は的外れのようだ。
ただ、当の本人には聞こえているのかいないのか、信じて疑わないように鼻を高くしたまま。
「あら?聞こえなかったかしら?わたくしに1番のダージリンt「どれだけ言っても無いものはない。帰れぃ」ィを...」
残念ではあるが仕方ないであろう。このお店のメニューには紅茶という文字はないのだから。
しかし当人にとっては余程ショックだったのか、その一言に先程までの優雅さはどこへやら。少女漫画の如く、顔半分に黒のコントラストがかかり、“ガーン”という効果音でもつけたかの如く手の甲を頬へと近づけて絶句している。そして、そのままトボトボと外へと出て行ってしまった。
「最近よく来るんですよ」
そう苦笑いを浮かべながら、改めて銀のトレーを拭き始める店主。
けど、それは別に嫌がってる風なく、それとなく、マスターに気があるから来てるのでは?と冗談混じりに聞いてみると
「ははっ、そんなことあるわけないでしょう。何歳違うと思ってるんですか。私、既にアラサーですよ?」
と返された。別に年齢なんてものは関係ないと思ったのだが、最後には
「私にプラチナブロンド色は勿体無いですから」
とよく分からない返しをされた。
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「はぁ...」
「ダージリン。またダメだったんですか?」
「殿方の気を引くにはインパクトな挨拶が大事だって...」
「まぁ挨拶は大事ですが、どこの情報ですかそれ...。何か猛烈に解釈を間違ってる気がするのですが...」
「あはは...。ダージリン様、お気を落とさず。アッサム様も、深読みし過ぎですよ。ダージリン様に限ってそんなことあるわけ」
「うっ...。何も間違っていないはずなのに、その無垢な眼差しが痛い...」
「ふむ...。そうですね、なら次はオレンジペコも連れて行きなさい」
「ふぇ...!?わ、わたし...ですか?」
「えぇ。私の計算によると───」
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