とあるコーヒー専門のカフェ   作:/Null

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ダージリン

私は自称この店の常連客。相変わらずこの店には私と店主の2人だけ。閑散としたこの避暑地は、依然として仕事の疲れとアスファルトの照り返しを忘れさせてくれる。

 

そんな折、からんからんと扉の開く音が聞こえてきた。

 

いらっしゃいと店主の一声に見れば、前に見た少女ともう1人。

 

それはまるで煌々とした太陽に当てられ、甘みを多く含み育ったオレンジを彷彿とさせるような髪色。店主の声にも純粋無垢そうな笑顔を浮かべている。

 

「ほら、ダージリン様」ボソッ

 

「え、えぇ。───オホン。ほ、本日はお日柄もよく??」

 

「えぇ...?」

 

前回とは違い、軽く胸に手を当てて、今回は淑女っぽい立ち振る舞いで?(果たしてこれは淑女なのか...?)

 

しかし語尾の裏返るそれに、困惑の表情をする店主。ダージリンと呼ばれた少女はチラチラと不安そうに、細目を開け閉めしてこちらを見ている。対して、後ろのオレンジ色の子は微笑んだ表情を崩さず。

 

見た感じは後輩の子のようだが、どっちが淑女なんだこれ...。

 

「はじまして、だね?君の名前は?」

 

「あっ、す、すみません。自己紹介がまだでしたね。聖グロリアーナ女学院オレンジペコと申します」

 

そうぺこりと頭を下げる。

 

「え?外国の方?」

 

「いえ、聖グロリアーナ女学院では代々紅茶の名前をニックネームにするのが伝統なんです」

 

「へぇ。それでオレンジペコ、と」

 

「はい」

 

くだんの少女の名前が(意図せずとはいえ)ようやく分かったというのに、それは華麗にスルーして。目線を合わすようにしゃがみ、後ろの子に話をする店主。

 

「太陽に照らされた君にぴったりだね」

 

「あ、ありがとうございます//」

 

さらにはこの無自覚女たらしな発言である。これには流石の淑女候補も動揺が隠せないようだ。

 

対してダージリンと呼ばれた少女は、頬に空気を溜めてむすっと不機嫌モード。

 

はたしてこれは淑女なのか...(2回目)

 

「すみません、いつもの仕返しについ、ね。よろしければ、あなたのお名前を改めてお伺いしても?」

 

「オホン。聖グロリアーナ女学院、ダージリンと申します。よろしくお願い致しますわ」

 

「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 

くつくつと喉を鳴らしていた店主だったが、咳払いを一つした少女の自己紹介を聞いてそれは柔和な笑みへと変わる。

 

それを見た少女もどうやら機嫌を直したっぽく、頬の空気は抜けたようだ。

 

「それで?わたくしにはニックネームのご感想は下さらないのかしら?」

 

「すみません、代々コーヒー専なもので、ダージリンのイメージが沸かないんですよ」

 

「そう。残念ね」

 

「まぁ、ただ───」

 

「ただ?」

 

「ただ、無理に取り繕っていない、いつものあなたのような味なら気に入りそうかなと」

 

「カァ//」

 

(ダージリン様...。それは流石にチョロすぎでは...)

 

「し、しちゅれい致しますわ汗汗」

 

そう言い残し、結局何も頼まずに2人は帰ってしまった。けど、店主はどこか満足そうにしていた。

 

淑女候補の子とは明らかに対応の違う。けど、当人同士は気付いていないのだろうか、側から見れば店主の気持ちも分かりやすいものである。

 

 

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「はぁ?名前だけ教えて帰ってきた?」

 

「す、すみません。ダージリン様も頑張ってはいたのですが」

 

「彼の方が一枚上手で...」

 

「いや、話するだけなのに一枚上手ってなんですかそれ。まぁ、名前も教えてもいなかった今までよりはまし、ですか」

 

「今までの私の努力とは...」

 

「名前も教えてないでどこが努力なんですか」

 

「うっ...」

 

 

 

「───なら。今度試合にでもご招待してはいかがですか?」

 

 

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