探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第十三話 探偵士、星になる。

 

『アナタは運がいいわ。あの爆発事故で五体満足で生きているのだから』

 

 ……爆発……どうしてリハーサルで火薬が爆発したんだ。

 しかも本番で使用する演出以上のものがなぜ……。

『可哀想に、次回作での主演を奪われた逆恨みで暗殺されかけてしまうなんて……』

 逆恨み……? 

 監督は彼と合意したと言っていたのに。

『不幸中の幸いね。アナタの身体能力があれば組織の役に立つわ』

 組織……? 

 シャロン・ヴィンヤードが所属する映画協会の裏方? 

『良かったわね。オッドアイのお陰でラムの側近になれるかもしれない』

 ラム……? 

『その前に一つ質問をするわね。アナタと彼、どちらを生かしてほしい?』

 そんなの決まってる。

「彼……」

 彼も同じように火傷を追って瀕死に陥っているのなら、人々か求める人間を生かすべきだ。

『お兄さんは歩美達にとって必要だもん!!』

 歩美……? 

「もし逆になってしまっても、貴方が責任を感じることはないの」

 人の命に優先順位がつけられるんだ。

 僕は彼の代わりにはなれない。

『デイヴィスさんはデイヴィスさんですよ!!』

 デイヴィス……? 

 誰のことを言っているんだ? 

『エルダー君、名乗り口上を言ってみてくれ』

 監督……? 

『フランスでならしたスパイの俺は、罪を被せられ指名手配をされたが暗闇に紛れ地下に潜った。しかし、ただ真っ黒になる俺じゃない。いつか星になるために報酬次第で何でもやってのける白黒つけないグレーな男。無理を理屈にし、宇宙を統べる。俺はギルテセブン!!』

 これでいいのかな? 

『兄ちゃん!! 仮面ヤイバーはヤイバ雷神拳だぞ!!』

 仮面ヤイバー……? 

 知らない……スタントマンだからといって日本の特撮を追えているわけではないし……。

『イザラ……子供達を裏切らなかったのね……』

 シェリー? 

 死んでしまったと聞いていたのに……。

『探偵士さん、ちゃんと見ていたからね!!』

 何をだ……? 

 自分は失敗をした……彼を殺してしまった……。

『デイヴィス君、ワシのラボに子供達の教育上よろしくない物品を置いて行かないでくれるか?』

 教育上よろしくない……? 

 あ、もしかして工作用に使ったコンドームを放置してしまったのか!? 

 

「阿笠博士!! 申し訳ありません!! 今すぐ回収に伺います!!」

 


 

「……はぁ……はぁ……」

 

 瞼を上手く開けられない。

 火傷を負った時特有の痛みが背中に走った。

『お! 意識が戻ったようじゃの。……ゆっくり養生せい』

 首を動かすと探偵バッチから音声通信が流れていた。

「はい……」

 ゆっくりと身体を起こして窓際を見ると、見慣れた金髪に褐色肌の男性がパイプ椅子に腰掛けていた。

「ようやく目を覚ましましたね。イザラ……いえ、スタントマンとしてご活躍されていたエルダー・ブルドンさん」

 ……身元は既に割れていたか。

「……貴方は……」

 なぜバーボンが毛利探偵事務所の下に構えている喫茶ポアロに従業員として居るのか、どうしてあの場でシャルトルーズを止めたのか……。

「僕については後で話します。アナタは警視庁、毛利探偵事務所、工藤家邸宅に工作物を仕掛けましたね?」

 ……バレていたのか。

 ホシとして逮捕勾留、後に尋問及び拷問か。

「はい……」

 ジンに殺害計画を立てられたということは、少なくとも組織内部に自分を快く思っていない派閥がある。

 当初の予定通り派手に動き回って内部に入り、その後は地下の施設での安定した生活送る……というていで幽閉されることは先ず無いだろう。

「アナタの工作物、盗聴電波や電気信号的接続を感知した場合に『ダミーのランダム通話』に変換される、いわゆる『対クラッカー』に特化したものだったらしいじゃないですか」

 もう発見解析されたのか……。

「黒田管理官も舌を巻いていましたよ」

 黒田管理官……? 

 つまり、安室さんは警察で……彼こそが組織にとって『裏切り者』だったのか。

「ところで、『警察協力章』を受け、火事から大勢を守った貴方に一つお願いをします」

 火事から大勢を守った……? 

「ま、まさか逃げ遅れた人が……!? それにサーバーや物理的資材はどうなりましたか!? ぐっ……ゴホッ……」

 肺が痛む、煙を吸った後遺症か。

「そんな体ではもう喫煙は出来ませんね。……怪我をした人は居ましたが死者は出ていません。燃えたのも新施設側のロビーと2階部分で本格的な展示物の移行前だったのが不幸中の幸いでした。……データセンターも冗長化されていて火もワンフロアで済んだ。『偽の火災通報』で先に消防が到着していたのも大きい」

 シャルトルーズの火事場泥棒を狙った策が結果として人命と資源を守ったか……。

 

「それでは本題です。……アナタには厚生労働省地方厚生局麻薬取締部の採用試験を受けて頂きたい」

 


 

「ま、麻薬取締部!? それって麻取になれと言っているんですか!? 僕はイザラ、組織の……」

 

 そこまで言って言葉に詰まった。

 組織にはもう戻れないし……戻りたくない。

「ご協力頂けない場合はそれなりの措置を講じます。ご協力頂ければ『組織へのスパイ』としても動いてもらいます。車の免許や医療保険も何とかしましょう」

 それは組織から接触があった場合に、記憶喪失としてのらりくらりと交わしながら情報だけを抜き出せということか。

「最初に『記憶喪失』として警察病院を受診した無保険での診療代を払って頂くのは『保険あり』がいいですか? 『保険なし』がいいですか?」

 誘導尋問じゃないか。

「麻取に受かったとして……情報は誰に渡せばいいんですか?」

 特別司法警察職員になったとして、麻取のルートだけで警察に報連相をするのか? 

「アナタが所属する警察庁警備局警備企画課のゼロ、または黒田管理官に隠れ公安として情報を逐次渡してください」

 公安のサクラ……四課に……!? 

「なっ……話が飛躍し過ぎています!! もし受からなかったら」

「措置を講じるだけです」

 そう言って安室さんは『デイヴィス・阿笠』という名前のパスポート、保険証、スマホ、鍵が付いた拳銃格納ケースをベッド脇のテーブルに置いた。

「阿笠……?」

 確かに身元引き受け人になってもらってはいたが。

「はい。アナタは今まで通り生活してください。それに麻取の仕事と諜報の対象が変わったスパイ活動が加わるだけです。……ケースの鍵は採用されたら渡します」

 求められていることは把握した。

「でも僕が組織にいたことはバレていて、何より組織から『裏切り者』として狙われています!」

 必死に訴えると鼻で笑われた。

「アナタに警護は必要ないでしょう? 麻取として拳銃を合法的に所持出来るのだから」

 違う、そうではない。

「身近な人たちが命を」

「イザラが『裏切り者』だとは僕もベルモットも、他の構成員も思っていませんでした。つまり、アナタはシャルトルーズの計画が失敗したためジンやキャンティ、コルンが起こした火事に巻き込まれたとの認識です。……それに薬剤を投与されたせいで本当に『記憶喪失』になったとも説明がつく」

 それは希望的観測で……。

 

「……何はともあれ……命に別所がないようで何よりですよ」

 


 

「お兄さん!! よかったぁ……」

 

 次の日、少年探偵団のみんなが見舞いに来てくれた。

「兄ちゃんが怪人役になって避難させてくれたって灰原とコナンから聞いたぞ!!」

 ボスッと元太くんに布団の上に乗られて鈍痛が走った。

「ぅ……よかった……みんな無事で……」

 すると光彦くんが怒鳴り声を上げた。

「デイヴィスさん!! アナタも一人の人間なんですよ!? 少年探偵団見習いの自覚を持ってください!!」

 そう叫ぶと嗚咽しながら泣き始めてしまった。

「うぅ……二度と会えないんじゃないかって……」

 歩美ちゃんに元太くんももらい泣きをし始めた。

「うぇぇん……お兄さん……もう危ないことしちゃだめだからね……」

「兄ちゃん……兄ちゃんは無茶しすぎだ……」

 苦笑いしながら頭を掻こうとすると背中に激痛が走った。

「デイヴィス君、スーツケースは新……工藤家に送っといたから、心配することはないぞ」

 それは沖矢さん……ライに無防備状態のスーツケースを渡したことになるが……。

 彼もCIA……若しくは公安なんだろうか。

 

「みんな……心配かけてごめんね。……心配してくれてありがとう」

 

 、、、

 

「探偵士くんはI'll be backすると思ったよ」

 

 次の日、世良さんと蘭さん、園子さんが顔を見せた。

「もう!! ムチャしすぎ!! 眞さんみたいに強いわけでも怪盗キッド様みたいに解決できるわけないんだから!! いいカッコしいしないの!!」

 園子さんにデコピンを食らってしまった。

「園子、言い過ぎだって。……お父さんも心配してました。『探偵士は生きてるか』ってずっとボヤいてました」

 ずっと……? 

「え、僕って何日間寝てたんですか?」

 

「目が覚めたって聞いたのは六日目だよ。……探偵士くん、まさかスマホの使い方が分からないのか?」

 

 、、、

 

「うわぁぁぁん!! デイヴィスさんが生きててよかったぁぁぁ!!」

 

 次の日、梓さんと安室さんが病室に訪れた。

「ぎぃ、痛いので叩かないでください。お見舞いに来てくださってありがとうございます」

 梓さんはバシバシと布団を叩いた。

「何が『僕はスターになりたかったんです』ですかっ!? 本当に死んじゃったかと思って……安室さん言ってやってください!!」

 変に気障なセリフになってしまったか。

 

「デイヴィスさんは『期待の星』になりましたね。……無茶だけはしないで下さい」

 

 、、、

 

「イザラさん、起きたみたいね」

 

 次の日、哀ちゃんとコナンくんが様子を伺いに来た。

「まったく……ヒヤヒヤさせるんじゃねーよ!!」

 コナンくんに叱責されて頭を掻いた。

「ごめん……じゃないね、お見舞いありがとう」

 二人はため息をついて、哀ちゃんがカードを渡してくれた。

 

【挿絵表示】

 

 

「アナタには暇つぶしにすらならないでしょうけど」

 

 、、、

 

「ようやく歩けるな……」

 

 次の日、ベッドから出るとサイドテーブルに紙切れがいつの間にか置かれていた。

『:†? q?); -†98 25-7』

 どうやら……安室さんの話は本当だったらしい。

 

「先が思いやられるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

第一章 イザラ・ヴェール 完

 

 







 あとがき 


今回の暗号表
エドガー・アラン・ポーの黄金虫の解読に時間がかかってしまった
哀ちゃんのは順番

【挿絵表示】

なかみについて(期間限定アンケ)

  • ややこしい(かため)
  • 分かり易い(やわらか)
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