探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第二章 ヴィオレ
第十四話 探偵士、試験を受ける。


 

「早めに退院出来て良かったですね。」

 

 何故か、急遽退院する日が前倒しになったにも関わらず、沖矢さんが警察病院に迎えに来てくれていた。

「あ……はい。ありがとうございます……。わざわざご足労いただいて……。」

 結局、ライが何処に所属しているか判らず終いだな。

 本人に面と向かって『どこの諜報機関に所属しているか』なんて聞けないからな……。

 安室さんが公安なのであれば、彼のことを紹介するはず。  

 いや、調査能力を試すためにわざと仲間を隠匿しているかもしれないが……。

 警察庁警備局警備企画課に所属する者同士が身内を把握していないのはいくらなんでも不味いはず。

 ライが死亡した話を聞かされていたが、NOCであり消されたとは知らなかった。

 ……つまり、末端の構成員には全ての情報が渡されていないか、エンジニア落ちした自分だけに伝わらなかっただけなのか。

 いずれにせよ、情報戦で不利な立場には間違いない。

 色々と考え事をしながら荷物と共に後部座席に乗り込むと、運転席に乗り込んだ沖矢さんがバックミラーを動かしながら咳払いした。

「俺が何者なのか、計りかねているようだな。」

 日本の警察組織であれば伝達がある。

 自分のように隠れ公安候補であっでも所属を共有するはずだ。

「流石に数ある諜報機関から特定組織を今ある情報だけで絞り込むのは難しいですね。」

 確実なのは、彼が組織に所属していたスナイパーで、組織より暗殺されたというていになっている事だ。

 名を変えて定住し潜伏しているということは、この米花町に『組織にとってアキレス腱になにうる何か』があるのだろう。

 それがシェリーが哀ちゃんになった、そして恐らく工藤 新一がコナンくんになった事象が鍵であるならば、自然に見えるように二人を警護しなければならない。

 梓さんには同じく組織に現役で所属している安室さんが警護にまわり、コナンくんと工藤 新一の幼なじみである蘭さんには毛利さんと世良さんが居るが、ライ……沖矢さんが何を目的に工藤邸に住まいを借りているかが分からない以上、阿笠博士と哀ちゃんの警護は『助手』として、更には少年探偵団のみんなには『見習い』として自分が関与したほうがいい。

 ジンは僕の暗殺に失敗したことを安室さんが報告するより前に知ったはずだ。

 そしてベルモットも警察病院で『記憶喪失』が演技ではなく本物になったとして腑抜けになった自分を見ている。

 次は必ず確実な暗殺、つまりスナイプになるはずだ。

 あの一件で、一般市民を巻き込むリスクは露見されたからな。

 

「……イザラ、君が夜の闇に溶けきらない限り、俺は君の良き友人であろう。」

 


 

「ところでだ、君に手紙が届いていた。助手席に置いてあるから自分で取ってくれ。」

 

 運転中の沖矢さんの代わりに白い手袋をして封筒を取ると、送り主名が『厚生労働省地方厚生局麻薬取締部』と毛筆体で記載されていた。

「まっ、麻取!?」

 消印を見ると5日前になっている。

「デイヴィスさん、指紋はもう採っていますよ。」

 急に余所余所しい言い方をされ、窓の外を見ると工藤邸に向かう道とは別の方向に車が走っている。

 慌てて封を切り、中にある書類を取り出すと『臨時採用試験』なる試験の日程と開催場所についてのみ端的に記載がされていた。

「なー……何!?試験日、今日じゃないですか!!麻薬取締部の東京支部って……」

 スマホから地図アプリを開いて住所を入力すると、GPSがデフォルトでONになっていたため直ぐ近くまで来ているとわかった。

 もう隠匿はできないが、あとで措置を講じなければ。

 

「今向かっている。せいぜい実力を発揮できるよう足掻いてみることだ。」

 

、、、

 

「筆記試験……薬学に知見があるわけでは無いから……落ちていたらどうしようか。」

 

 沖矢さんに支部に送ってもらった後、時間ギリギリで試験会場入りする形になってしまった。

 そもそも、スーツ姿ではないし普段の作業着で採用試験を受験している。

 しかも、受験室には自分一人。

 お誂えで催された『臨時採用試験』、合格しなければ本当に勾留等の拘束措置を受けるだろう。

 麻薬取締部の長い廊下で次の指示をただただ待った。

 

「デイヴィス阿笠さん、面接会場にご案内します。」

 

、、、

 

「志望動機……上手く説明出来たか分からないな……。」

 

 あまり『役を演じるように』話すより、自然体で答えた方が『元々組織の人間であった』と周知されているため、良いかと思ったが、ウケなかったように感じる。

 ため息をついてポケットにあるタバコを探すが、喫煙所が見当たらないし、火災の煙を吸ってしまったため咳込んでしまうのが関の山。

 役作りの暗示の為に喫煙していた『ギルテスター』ではあるが、もう出番は無いかもしれないな。

"本物の俳優はな!ゲン担ぎのルーティンの一つや二つがあるもんなんだよ!"

 棗アンゼリカもといシャルトルーズの名を持つ構成員になっていた彼、アクション俳優のスター街道真っしぐらだったジェロームの専属スタントマンになってからは、良くも悪くも経験と学びを得る実りの多い日々だったことを思い出す。

 後日、一次試験がもし不合格が判明すれば娑婆で生きることは叶わなくなるたろう。

 

「アナタがデイヴィス阿笠さんですか?」

 


 

「はい、そうですが。」

 

 通用口の方から神経質そうな眼鏡に短髪の男性がツカツカと革靴を鳴らして近づいてくる。

 歩き方が警察組織に属していると示すように背筋が伸びて上半身があまり動いておらず、大股であるが……。

「私は公安の風見だ。一つ伺いたいのだが組織の情報は何処まで把握している?」

 ……警察病院の個室ならまだしも、麻薬取締部の渡り廊下で公安と名乗り情報の授受をしようとするか?

 まず警察手帳に準じる身元証明を提示するべきだ。

 ベルモットやシャルトルーズのように組織の人間が他者に変装し内部に紛れ込んでいる可能性を考慮しないと。

「さぁ……何も知りません。」

 そう言ってスマホを操作した。

 いずれガラケーのガワに改造しよう……折りたたみ式のヤツに。

「はぁ?情報を渡さないならば抵抗と見做して勾留しますが、よろしいですね?」

 ふぅ、とため息をついてスマホから目線を外した。

「『組織』というのは『どの組織』について指しているのでしょうか。……なにぶん記憶喪失なこともあり、具体的に指定して下さらないと判断に困ります。」

 風見と名乗った男性は苛つきを見せた。

「『警察協力章』を受章したとは思えませんね。取り消しもあり得ますよ。」

 彼もスマホを取り出してなにやら打ち込んでいるが、スワイプとタップの親指と手首のスナップからおおよその入力内容に見当がつく。

 『協力要請を断りました。彼は組織側の人間かもしれません』

 ここでもまだ名乗りはない。

「取り消しかどうかは兎も角、上司の方に『彼』はどうなったかを聞いていただけませんか?それが気がかりで。」

 彼、つまりシャルトルーズの死体があがったかどうかを安室さんから聞けず終いだった。

 仮に生きていたとする。

 組織であれば死体が出たとして死亡を確定させれば自分に対してプレッシャーを与え、とすれば彼の動きを考慮させずに運用できる。

 死んでいないとすれば証拠として虚偽の入院先を渡される。

 そうすれば患者リストを目暮警部達に照会をかけてもらい、公安との名乗りが虚偽となる。

 仮に死んでいたとすれば死者リストを照会すれば申告が虚偽かどうかが分かる。

 

「……彼の死体は上がっていない。……血痕だけを残し骸は何処にも発見出来なかったと聞いている。」

 


 

「……それで、貴方の上司の方のお名前を伺ってもよろしいですか?」

 

 暫くの間沈黙が続き、面接を行った部屋に再度案内された。

「安室さん、彼を連れて参りました。」

 部屋の扉を開けるなり黒田管理官が面接官用の椅子にドッシリと構えていた。

 安室さんは居ないが……無線通信でリモート中継をしているのか。

「デイヴィス君、我々には情報提供出来ないということか。」

 いや、相手の職位を知らぬまま報告は出来ないだろう。

「そうですね。仮に持っていても地方自治体の施設で機密情報に当たるものを渡すことは出来かねます。」

 そう言ってチラリと目線の先にある四方を見るが、小型の機器類といった設置物は見受けられない。

 ……後で違法電波を感知したらメッセージを表示する機能をガラケー改に付け足すか。

「ならば最後に一つ、言いたいことはあるか?」

 こうなると安室さんが現役組織であることを考えると風見さん、黒田管理官も内部に侵入した組織のスパイの可能性まで出てきたな。

 こうなれば、組織だろうが警察だろうが自分の道は決まったも同然か。

「……火災事件の三日前、都内のPPビル前にある公衆電話で誰かと話したような。公衆電話が鳴ったので、必ず割り込み装置が何処かで噛まされていた筈です。そして『公衆電話長居男』の挙動を監視カメラで追った方がいいかと思います。自分以外が電話を取らないよう、同じ時間帯で公衆電話を巡って不審者を装っていた可能性がありますから。……記憶喪失なこともあって具体的に何を話したかは覚えていませんが。」

 冷静に考えて、公衆電話を鳴らすとなればそれ相応の下準備が必要で、他者が介入する可能性もあった。

 ジンは演出の為であれば下っ端構成員のことやコストを考えないからな。

「そうか。合格だ。」

 そうだよな、やはり組織の人間を隠れ公安として麻取にするなど……。

「はぁ!?ご、合格ですか!?」

 あまりに想定外過ぎて声が上擦ってしまった。

『風見、デイヴィスさんに鍵と拳銃、保険証とパスポートを渡せ。』

 風見さんは指示通りに室外へ出て拳銃が入ったアタッシュケースと紙袋を持ってよこした。

 

「これからは私と君は同じ黒田管理官と安室さんを上司に持つ同士、同僚になる。……しっかりと報連相をするように。」

 


 

「合格とはいえ、逮捕術や警棒操法がどの程度か確認させてもらうぞ。」

 

 黒田管理官と風見さんと共に柔道訓練室に連れてこられてしまったが、実際に運用されている日本の逮捕術と警察操法など殆ど初見に等しい。

 そして黒田管理官と風見さんが上着を脱いだことから、一般的な犯人像ではなく『対武術経験者』を想定しろということか。

「始め!」

 黒田管理官が叫ぶと同時に風見さんが足を踏み込んで右肩を引いた、つまり空手の突き技がくる。

 左側に体を反らして突きを受け流そうとすると左脚が浮き、そのまま胴に蹴りを入れて右拳が叩き落とす形で振り抜かれた。

 少林寺系の動きか、予備動作が早い。

 肩に落とされた右拳を掴んで右脚に足払いを掛けるが動かない。

 掛けた足をすくわれるようにして地面に体がついた。

「スタントマン風情が図に乗るな。」

 そう零しつつ目線が離れた隙に風見さんの両膝を思い切り蹴り押してバランスを崩させると、バク転の要領で頭突きをかました。

「グッ……卑怯だぞ……」

 そして脇に向かって打撃を加えた後、両方の二の腕を掴んで顔から地面に向かって投げつけた。

「逮捕術や警棒操法を知らない人間に対して……おっと」

 意識の外に居た黒田管理官の手が伸びて、襟を掴まれよろけると一本背負いされかけてしまい、慌てて方向を変えて背中にしがみついた。

「知らないならば、毎週の訓練を通して一から覚えたまえ。」

 首を絞めて落とそうにも体躯が大き過ぎる。

 いや……体格差を言い訳にしていたらステゴロになった場合、生き残れない。

 黒田管理官が腰に携帯していた警棒を左手で抜き取るとヒュンと伸ばして左の太腿を叩いた。

「その前に予行練習をさせてくださいよ!リハーサルや指導、教本があるから出来るのであって!!」

 蹌踉めきそうにも無かったので警棒を猿轡のようにして頭を固定して、力一杯背を反らして力を掛けた。

「止めろ!!初日早々上司を殺す気か!!ストップだストップ!!」

 風見さんが立ち上がって手を叩いたのを見て、背中から飛び降りた。

 

「死んだりするものか。……よし、次は射撃訓練だ。」

 


 

「S&W M360J……回転式拳銃か。」

 

 黒田管理官とはその場で分かれ、場所を警察所有の射撃訓練場に移動した。

 風見さんから渡されたアタッシュケースに入っていた目新しい銃。

 恐らく普段はオートマチックのグロック19とセミオートマチックのSIG SAUER P230JPを使っているため、勝手が違うな。

「ちなみに、警察学校生で100点満点。しかも20発全弾中心点を撃ち抜いた者がいますから。」

 最高成績を警察学校に在籍時点で取れる人間が警察組織にいるとして、緊張でもさせる気なんだろうか。

 用意されたイヤーマフを着用し、銃を構えた。

「好きに撃っていいですね?」

 外にいる風見さんから許可を得るとトリガーを弾いた。

 1発、2発、……20発。

 回転式拳銃の方が動作ブレを考慮しなくて良さそうだ。

 拳銃をしまっていると風見さんから声がかかった。

 

「96点……予想以上だ。」

 

、、、

 

「それでは、連絡先を交換しよう。」

 

 スマホを提示されて固まった。

「すみません、メールアドレスか電話番号を教えてください。」

 すると呆れたような声と共に表向きの名刺が渡された。

「君の名刺は後日渡す。捜査官としては麻薬取締部の特別捜査課に配属されるが、情報管理分析課や鑑定課の機材の使用許可が出されている。……名目上、麻取としての内偵任務や報告も行ってもらう。」

 病み上がりには厳しい注文だ。

 ただ、地上で生きていくには全て必要なこと。

 ……おっと、いけない。重要な事を確認してないな。

 

「給料の支払いは銀行ではないんですか?」

 

、、、

 

「はい。こちらが見舞金とお渡しできていなかった給与になります。」

 

 やっぱり隠れ公安になるという事は上司が安室さんなわけで……。

「ありがたく頂戴いたします。」

 卒業証書を受け取るように仰々しく茶封筒を受け取った。

 手渡しの方が有り難みがあるけれど、安室さんが長期間不在になってしまった場合は麻取の給与は0になるんじゃないのか?

 警察庁警備局警備企画課のゼロだけに。

 いや、冗談を言っている場合ではないな。

「デイヴィスさん!!退院祝いをしようって安室さんや世良さん達と話をしていたんですが、都合がいい日ありますか?」

 梓さんが神々しい天女のような笑みを浮かべている。

 エンジェルラダーによって天に召されてしまいそうだ。

「そういうの、ドッキリでやるタイプかと思ってました。」

 すると彼女は頬をプクーッと膨らませた。

 

「デイヴィスさんは目を離すと直ぐに何処かに行っちゃうじゃないですか!!……ちゃんと捕まえておかないと逃げちゃうから事前に話してるんですよ。……はぁ、本当に猫の大尉みたいな人ですね。」

 


 

「阿笠博士!!借りたお金を全額返済しに参りました。」

 

 運転免許や実技を伴う資格類についても、死亡したとされている本名のときに取った実績を考慮して研修期間を経ずにペーパーテストと実技試験を受けさせてもらえる特別措置を敷いてもらってしまった。

 なんだか過程をすっ飛ばして有利な結果だけを渡されたというズル、一種のチーティングをしている気になってしまったが『試験を合格していることには変わりない』とされて、良心に小骨が刺さったような心境ではある。

 ……御託はいい、つまり日本の運転免許を取得して愛車で乗り付けて来たのだ。

「デイヴィス君!!金の心配はせんでいいと言ったのに!体調の方はどうじゃ?」

 愛車について言及はなかったが、庭で草刈りをしている阿笠博士に深々と礼をした。

「養子縁組までしていただけるとは……。なんとお礼をしていいか。」

 公安が用意した『デイヴィス・阿笠』というパスポートと保険証……本拠地が『米花町2丁目22番地』になっている。

 何処まで懐が深いんだ。

 まるでマイク・D・バーロウのようなドッシリとした安心感を醸し出している。

「養子縁組?そこまではしとらんよ。」

 ズルッとズッコケてしまった。

 警察組織に対する名義貸しか……まあ自分が組織の人間であった以上、民間人に必要以上の責任を持たせるのは不適切だから当然か。

「新一から頼まれたんじゃ。デイヴィス君の新しい人生の為に力を貸してほしいとな。」

 新一……やはり工藤 新一はコナンくんの姿になっているとほぼ確定していいだろう。

「コナンくんには住まいの提供から身分の証明までお世話になってしまって……」

 頭を掻くと玄関から少年探偵団のみんなが飛び出してきた。

「ちょっと!!酷いですよデイヴィスさん!!僕たちもお世話してますからね!!」

 光彦くんを皮切りに言葉の弾丸を浴びせられる。

「そうだぜ!!兄ちゃんが起きるまでずっと話しかけてたんだぞ!!」

 病院内での探偵バッチによる遠距離通信はどんな通信規格を備えた精密機器に影響を与えるか分からないから、あまり褒められる行為ではないけれど……元太くん達の呼びかけがなかったら自分は植物状態のままだったかもしれない。

「ありがとう……全部聴こえていたよ。」

 本当に子供達の直向きさには頭が上がらない。

 

「お兄さんの為に折り紙でお星様のモビールを作ったんだ!!あとでプレゼントするね!!」

 


 

「で、探偵士さんは金を返しに来ただけじゃないんだろ?」

 

 縁側の方からコナンくんと哀ちゃんが真剣な顔をして現れた。

 そうだよ、君たちに伝えなければならない事がある。

「まさかとは思うけれど、取り付けてきた軽……カーリースではなく……買ったの?それ、中古車よね……。」

 よくぞ訊いてくれたシェリー。

「フッ……そうなんだ。まとまった金が入ったからね……。どうだい!?中古車にしては状態がいいだろう?荷台は改造すればキッチンカーにもなるし、なにより軽トラだから山道や畦道でもへっちゃらなんだ!!」

 胸を張って軽トラを指さした。

「え……お金が入って真っ先にすることが中古の軽トラを買うことなんですか?もっと別のことに使ってくださいよ!!」

 光彦くんの容赦ない指摘にズブリと良心に矢が刺さった。

「えー……どうせなら7人乗りの車が良かったな……」

 悪意のない失望の言葉にまた矢が突き刺さる。

「色も真っ黒だしよ……兄ちゃんセンスないんじゃねえか?」

 トドメを喰らってガックリと肩を落とした。

 

「お前ら、その辺にしとけ。これでも探偵士さんは真剣なんだ。」

 

、、、

 

「ちょっとコナンくんと哀ちゃんとお話がしたいから待っていてくれるかな?少年探偵団の見習いとして出されていた試験問題があって、それの答え合わせをしたいんだ。」

 

 三人はそう話すと顔を見合わせて笑顔で了承してくれた。

「あとで僕たちにも情報共有してくださいね!!」

 阿笠博士と共にラボに入り、静かに告げた。

「……ご存知の通り、僕は組織の構成員、コードネームはイザラ。リキュールの名でした。そして生存してしまっている。」

 そこまで話すとシェリーが口を開いた。

「つまり、アナタを仕留め損ねたジンがあなたに刺客を送り再び暗殺を企てるかもしれない。……ということね。」

 その通りだ。

「それで、オレ達にも被害が及ぶかもしれねーってことか。もしかして、組織側から接触があったのか?」

 彼らは安室さんのことを何処まで知っているのだろう。

 言える範囲で伝える他ない。

 

「病室にメッセージカードが残されていた。……『:†? q?); -†98 25-7』つまり『You must come back』とね。」

 


 

「警察病院に入り込むとしたらベルモットやキュラソー、ピンガのように人に化けることに特出した人間だったとしか考えられない。」

 

 組織の構成員の多くは諜報活動のために変装や人に成り代わり演じ抜く技術を求められるが、警察の管轄内に堂々と潜り込めるのはコードネームを付与されたも者とみてまず間違い無いだろう。

「そう……少なくとも組織側はアナタを『裏切り者』だと完全に見做していない。……記憶喪失として懐に潜り込む作戦を継続中だと認識している可能性があるのね……。」

 それがブラフである事も充分に考えられるのが悩ましいが、このジレンマを与えて身動きを封じようとしているのかもしれない。

 ならばあえてスパイとして警察内部、麻取に入ったとして派手に動き回ったほうがいい。

 裏切り者が堂々と表を歩けるわけがなく、警察に減刑を願い出るなどして、組織に対する後ろめたさで動きが鈍るのが定石だ。

 なにより、安室さんがベルモットに『薬剤の影響で、本当に記憶喪失になってしまったようだ』と仲介してくれているはず。

「探偵士さん、組織側から接触があれば必ずアンタの上司やオレに伝えてくれよ。……オレはまだ、アンタを完全に『組織から寝返った』と信じれねーからな。」

 心理として命を狙われる覚悟を持って組織から警察に寝返るとは俄には信じがたい。

 組織からスパイ行為を継続しろと命が降ったと睨むのが筋。

 妥当な判断だ。

「ワシはデイヴィス君を信じとるから。一人くらい味方がおらんと辛いからのう。」

 ……阿笠博士、何処まで人格者なんだ。

 

「私は信じている。……それでも、もしアナタが子供達の信頼を裏切ったら容赦しないから。」

 

、、、

 

「それで試験内容は何だったんですか!?」

 

 リビングルームに戻ると光彦くん達がソワソワしている。

 

【挿絵表示】

 

 

「これだよ。キーワードは『TRACK』、鍵は『Izarra』。暗号文は『45 67 36 66 53 58 73 90 24 43 35 57 64 77 36 53 36 45 77 99 24 44 26 36』……みんなも解いてみてね。」

 

 

 






 あとがき


 ネタバレにはまだ詳細が書かれていない ニヒリスト暗号方式です。

なかみについて(期間限定アンケ)

  • ややこしい(かため)
  • 分かり易い(やわらか)
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