探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第十五話 探偵士、ペットを飼う。

 

「はい!これがお星様のモビールだよ!!」

 

 歩美ちゃんが渡してくれたモビールは折り紙を切り貼りして立体的に作られてる本格的なものだった。

「ありがとう、部屋に飾るね。」

 続いて光彦くんが渡してくれたのはパッケージに入った星型の蓄光ステッカーだった。

「これで部屋を光らせてください!!」

 ありがたい。

 蓄光ステッカーなら昼間に誰かがカーテンを空けたり電気を付けた等の形跡が多少なりとも分かる。

「ありがとう、部屋が星でいっぱいになるよ。」

 最後に満を持して元太くんが後ろに回していた手を前に突き出した。

「オレからは『仮面ヤイバー』のフィギュアだぜ!!お菓子売り場に売ってるやつの中でも一番高けーやつだから間接も動くんだ!!」

 渡された仮面ヤイバーのフィギュアを手に取ると、塗装はチープに見えるが関節部分が可動するようになっていて、食玩にしてはよく出来たフィギュアだ。

「ありがとう、いろんなポーズをさせてみるよ。」

 受け取ったものを黒い軽トラックに載せていたコンテナボックスに詰め込んだ。

「私と江戸川君からは渡すものが特に無いから。子供の財布事情って、結構厳しいの。」

 哀ちゃんとコナンくんからの懐疑心が滲み出る視線を浴びながら頭を掻いた。

「大丈夫、分かってるから。」

 自分が同じ立場であれば、組織から離反する意思を抱きつつ表向きでは警察内部に入り込み、組織と通じようとしている人間をそう安々と信じることなど出来ないからな。

「そうじゃデイヴィス君!!軽トラックもあることじゃし、バーベキューにでも行かんか?」

 阿笠博士の心遣いに涙が出そうになる。

 円熟味を感じさせ、一番彼と話しているときが気が安らいで落ち着ける気がしてくる。

 リラクゼーション……まるで森林だ……。

「はい!是非行きましょう!!」

 意気揚々と沸き立つと子供達から手が上がった。

「オレ、軽トラックの荷台に乗りてぇ!!」

 元太くんが荷台部分に手を伸ばしてジャンプしている。

「歩美も乗りたい!!」

 歩美ちゃんも挙手をして、光彦くんもソワソワしている。

「えっと……軽トラックの荷台に人を乗せたら道交法違反になってしまうし、そもそも危ないからダメ。助手席に一人だけ乗せて、阿笠博士に車を出してもらおう。」

 すると思わぬ人から声が上がった。

 

「ワシも荷台に乗りたかったぞい……」

 


 

「光彦くん、本当に助手席でいいの?」

 

 他の四人は阿笠博士のビートルに乗って、光彦くんだけが軽トラックの助手席に乗り込んだ。

「はい!デイヴィスさんとは二人っきりでお話をしたいと思っていて……。」

 そうだったのか……一体何の話だろう。

「……前に、お兄さんが好きなゲームを……バカにした感じで決めつけちゃったじゃないですか……」

 好きなゲーム……『キャット・ザ・リパー』を持っていった時の話か。

「あの後灰原さんやコナンくんとプレイしてみたら、結構面白くって……その……好きなものを笑ってしまってごめんなさい。」

 あんな些細なやり取りをずっと覚えていて、それが胸につかえていたのか。

「気にしなくていいよ。誰だってその場の勢いで不用意な発言や他者をとぼしめるニュアンスを入れてしまうものだし……でも謝ってくれてありがとう。その心遣いがうれしいよ。……言わなくていいことを言ってしまったら、今度は言い辛い事をいう。そうすれば誤解は解けるし、理解が深まる。……光彦くんが誠実な人だって、よく分かったから。」

 ずっと下を向いていた光彦くんの顔が上がった。

 

「はい!僕もデイヴィスさんが少し痛いだけの大人だって分かって良かったです!!」 

 

、、、

 

「この間のバーベキュー場だったよね?道の途中に食料品を扱うお店みたいなバンガローがあったから、そこで買い出しして行っちゃおうか。」

 

 ニコニコと頷かれたので阿笠博士のビートルを先に見送って、食料品店の駐車場に軽トラックを停めた。

「じゃあ僕、具材を選びますね!!デイヴィスさんだとお肉ばっかりになりそうですから!!」

 扉から飛び出していく光彦くんをゆっくりと目で追いながらバンガローに向かった。

「へぇ……珍しい食材が沢山あるね……精肉鮮魚店も顔負けだ。」

 バンガローの店舗部分には冷凍庫が沢山設置されており、エビや魚といった海鮮類やタマネギにトウモロコシ等の野菜だけでなく牛のテールやカイノミ、イチボや鶏のセセリにボンジリだけでなく、ダチョウ肉にカンガルー肉、ラクダ肉やワニ肉もラインナップされていた。

 そして、店の一番奥の小さい冷凍庫にはマウスとウズラ、ヒヨコにミミズ類が置かれている。

「いらっしゃいませ。」

 商品を吟味していると中から店主と思わしき若い男性が現れた。

「凄いラインナップですね!!オーナーさんはゲテモノ好きなんですか!?」

 光彦くんが無遠慮な質問をすると男性は苦笑いを浮かべた。

 

「うちの父がオーナーでね……変わり者なんだよ……。」

 


 

「あぁ……お客さんか……どうもねぇ……九、ラブドフィスちゃんは何処に行ったかの……」

 

 男性の背後からパジャマ姿のご老人がひょろひょろと現れた。

「お父さん、寝てなくちゃだめじゃないか。ちゃんと探しておくから。」

 成る程。

 

「探し物なら僕達少年探偵団にお任せください!!ね?デイヴィスさん!!」

 

、、、

 

「探偵団ねぇ、なら……お父さんが設定したパソコンのパスワードとか推測できたりしない?」

 

 初見の人物のパスワードを推測する事はあまりにも無茶難題だが、ガラケー改によって総当たり……辞書攻撃をすれば突破できる事はできるが、流石に実行には移せない。

 ここは推測だけに頼るしかない。

「パスワードを忘れちゃったんですか?」

 そもそも身内とはいえ、許可なく他者のパスワードを解析のは問題だろう。

「お父さんがアルツハイマーになってしまって……大切な書類にアクセス出来なくて困ってるんだ。」

 それにしても関係性がハッキリしないとなぁ……。

「貴方とお父さんの関係性を証明するものはありますか?」

 すると、運転免許証を提示された。

「私は阿留 九、阿留 或の息子です。母は亡くなっていて、兄妹が二人ほどおりまして……実は遺書を父がパソコン内に保存しているらしいんですよ。」

 光彦くんがビックリした顔をした。

「遺書をパソコンに保存ですか!?」

 驚くのも無理ないが、『デジタル公正証書遺言』はデジタル署名等基準を満たせば法的な効力を持つ。

 そこまで機器を扱え、且つ『遺言を残した』と明言される関係性の父親であっても、いざという時のパスワードの共有……エンディングノートの類が用意されていないのか。

 セキュリティ的には正しいとも言えるが、本当にアルツハイマーとは恐ろしい病だ。

 

 寝室と思わしき場所に三人で移動した。

 ベッド脇には巨大なアクリルケースと温度計、置き時計と小型冷蔵庫が置いてあり、窓はカーテンで閉め切っている。

「分かりました。やってみましょう。……ん?パソコンに付箋が貼ってありますが。」

『818 1029 1010 714 L130 818 48 119 69 1133 914 69 46 69 [112] 19』

 九は苦笑いして頭を下げた。

「その数字を入力してみたんですけど、まったく関係無かったみたいで……。」

 2桁から4桁の数字が羅列してあるが、空白があるので完全に連続した数列では無いんだろう。

 パソコンデスクは整然としてあり、掛け時計に掛けカレンダー、壁掛け水槽が有るのみだ。

 

「デイヴィスさん……暗号……ですね!!」

 


 

「光彦くん、何か思いつく事はあるかい?」

 

 光彦くんはウンウンと唸りながら頭を悩ませている。

「コードブック暗号ってやつですか?そうなると手の打ちようが無いですね……」

 確かにコードブック暗号は単語と数値を紐付けているから、同じ暗号表を共有していなければ解読は困難だ。

 ふと、周辺を見るとサインペンで枠取りされているものを見つけた。

「光彦くん、一つこの壁に不自然な物があるみたいだけど……。」

 そう言うと腕組みしながら壁を凝視し始めた。

「壁……水槽にはなにもいない、時計は正しい時刻を刻んでて…時計カレンダーが1月の……1月!?もうとっくに過ぎてますよ!!」

 カレンダーを破こうとするのを手で制止した。

「カレンダーには触れないようにと言われていましたか?」

 九はコクリと頷いた。

「はい、デスク周りに手を加えたら成らぬと……」

 ならば確定したな。

「あーっ!!1/12に枠がついてますよ!!1/12……あ![112] と同じ!?ならカレンダーが鍵ですね!!」

 閃いた光彦くんはカレンダーにサインペンで枠を掻き始めた。

『818 1029 1010 714 L130 818 48 119 69 1133 914 69 46 69 [112] 19』

 これに対応する日付は以下になる。

『8/18 10/29 10/10 7/14 L1/30 8/18 4/8 1/19 6/9 11/33 9/14 6/9 4/6 6/9 [1/12] 1/19』

「11/33……あ!11月のページにある12/3にマークをすればいいんですね!!」

 そして、そのままフリーズしてしまった。

「……マークしても……うーん……意味が……」

 すかさず十徳ナイフで昨年にあたる1月の12/30の枠を切り抜いた。

「あ……ああーっ!!枠の下から『節分』が出てきましたよ!!なら1/12は『成人の日』じゃないですか!!もしかしたらもしかするかもしれません!!」

 ページを捲って切り抜いていくと、新たな日付が現れた。

『9/22 11/3 11/5 8/11 2/3 9/22 5/6 2/23 7/7 12/31 10/12 7/7 5/4 7/20 [1/12] 2/23』

 

 まとめると以下になる。

 9/22 国民の休日

 11/3 文化の日

 11/5 七五三

 8/11 山の日

 2/3 節分

 9/22 国民の休日

 5/6 憲法の日

 2/23 天皇誕生日

 7/7 七夕

 12/31 大晦日

 10/12 スポーツの日

 7/7 七夕

 5/4 みどりの日

 7/20 海の日

 1/12 成人の日

 2/23 天皇誕生日

 

「ステガノグラフィを活かしたカルダングリル、しかもアクロスティック……折り句まであるみたいだね。」

 


 

「えーっと……『こぶしやせこけてたおすたみうせて』……『拳痩せこけて倒す民失せて』……あ!!開きました!!パスワードが合っていたみたいです!!」

 

 画面が正常に起動された事を示すメッセージを映し出すと部屋の外から悲鳴が聞こえた。

「蛇が……蛇がお父さんを噛んで……。」

 冷蔵庫がある売り場に戻ると背にチェッカー模様があり上半身がオレンジがかって全体的に深緑色の蛇が倒れている阿留さんの側に這っていた。

「僕は少年探偵団の見習いマスターオブディテェクティブ、探偵士です。現場保存のために場を荒さないでください。エドワード法により検察及び警察より72時間優先して捜査ができますので。」

 というより今回の事件の内容によっては麻取として特別司法警察職員として家宅捜索や取り調べが出来るから、このまま逮捕も出来るな。

「退いて!!探偵士さん!事件か!?」

 入り口の方を見ると、コナンくんが走ってきたようで息を荒くして立っていた。

「ああ、殺人未遂事件だね。コナンくんは警察と救急に連絡して。念のためにヤマカガシの血清も用意してもらうように。光彦くんはAEDを探してきてくれるかな。」

 そう言ってヤマカガシに近づくとコナンくんから怒号が上がった。

「探偵士さん!!ソイツは毒ヘビだ!!」

 知っているよ。

 手を差し出すと、ヤマカガシは頭を下げた。

 だいぶ人馴れしていて、頭がいい。

 そのまま胴体と首を持って頸部の毒腺に触れぬよう軽トラックに積んである鍵付き箱罠に入れた。

「噛まれた跡と言うより注射針を2本刺したように見えますが……九さん。」

 九はわなわなと震えだした。

「蛇が噛んだんだよ!!この目で見た!!」

 コナンくんに目線を送ると眉をひそめて顎に手を置いた。

「確かに……ヤマカガシなら皮下出血や噛み跡から出血している筈で……皮膚に赤らみがない……」

 推理は東の高校生探偵に任せて阿留さんの脈を測りつつ腹部を確認した。

「やっぱり。彼はインシュリン注射をしていたのですね。だから注射針を容易に用意できた。……で、何を打ったんですか?……殺人か殺人未遂かでは罪状が異なりますよ。」

 すると九は大声で叫んだ。

「ならあの蛇は何なんだよ!偶然部屋にいたとでも言うのか!?」

 そんなの決まっているじゃないか。

「阿留さんのペットでしょう?あの蛇が阿留さんが探していたラブドフィスちゃん。ラブドフィスはヤマカガシ属の別名ですから。だからヒッソリと角に配置されてある冷凍庫の中に食用でないマウスやヒヨコがあった。それがラブドフィスちゃんの餌でしょう。巨大なアクリルケースを飼育ケースにしていた。」

 九は顔を青ざめさせて頭を抱えて絶叫した。

 

「普通は蛇に噛まれただけだって思うだろ!!はぁ……フグの肝臓から吸引したものを入れたよ……。蛇なんて怖くて触れないから……。」

 


 

「僕たちがパスワードを解読してしまったからでしょうか……。」

 

 確かに、パスワードを解析してしまえば遺書の文書を改竄したり消去することで九が遺産相続による相続争いを優位に進めようとし、邪魔になった阿留さんを殺害しようとした可能性はある。

「光彦くんが解読していなくても、悪い人は悪いことをしていたよ。君が罪悪感を抱えることはないよ。」

 背中をポンと叩いて救急車で運ばれていく阿留さんを見送った。

「デイヴィスさん、コナンくん、事情を説明して頂きたい。」

 アベック刑事ペアがズカズカと歩いてくるのでコナンくんにパスしようとすると、背中をどつかれた。

 

「はーい!探偵士さんが説明してくれるって!」

 

、、、

 

「捜査協力、ありがとうございました。……デイヴィスさん、アナタは私達の味方であるという認識のままでいいんですね?」

 

 佐藤刑事にキッと睨まれて後退りした。

 やはり、組織の構成員として警視庁に工作物を仕掛けたことも周知されているか。

「はい……同じ警察権限を持つ麻取ですから。」

 そう言って『麻薬取締官証』を見せた。

「ああ!やっぱり記憶喪失は麻取のおとり捜査の一環だったんですね!!自分たちには一言言ってくれても良かったのに!!」

 高木刑事の話しぶりからして『元々麻取に所属しており、組織に対してスパイをしている』という周知になったようだ。

「はは……箝口令が敷かれていましたので……。」

 頭を掻くと再びコナンくんにどつかれた。

「あの蛇、どうするつもりなんだよ。」

 あ、いけない。

「そうだ!特定動物飼養保管許可申請を出さなくちゃ。」

 ガラケー改でメールアドレス帳から『かんゆん』を指定してメールを打ち込んだ。

『飼養者が不在となったヤマカガシを保管するために特定動物飼養保管許可申請を出すので動物愛護管理行政担当部局に口添えしてくれると助かります☆(`・ω・´)ゞ愛玩目的なので禁止事項にあたりますから(;´∀`)』

 送ってから数秒も経たぬうちにレスポンスが返ってきた。

 

『貴様がやれ!!m9 (=_=) JustDoIt』

 


 

「色々ゴタゴタはあったが、みんなで食べるバーベキューは美味いのう!」

 

 結局、阿留さんを襲おうとした九に対して威嚇したヤマカガシの阻止によって針からのテトロドトキシンの注入は上手くいかなかったらしく、阿留さんは命を取り留めることができた。

 その安否の連絡が搬送先から来ると、阿留さんからの『冷凍庫の中から『3万円分』の商品を持って行っていいが必ず持ち出した商品を写真に撮ってリスト化しておいてくれ』との言伝も伝えられた。

「阿留さん、アルツハイマーのフリをしてパスワードを渡さなかっただけだったとは……。」

 殺害を試みる九が逐一世話をしていたとは考えにくい。

 つまりはインシュリン注射を自分で定期的に打つことが出来る状態であって、だからこそ水浴び用の水槽の水を変え、アクリルケースも清潔に保っていられたたのだろう。

「そうだね、演技派だったみたい。……ラクダ肉美味いな。」

 阿笠博士とコナンくんは哀ちゃんと歩美ちゃん、元太くんをバーベキュー場に降ろしたあと、一度買い出しに戻り買い物を終えて戻るその道すがらバンガローに停車している黒い軽トラックを見て慌てて駆け込んできたらしい。

「よくそんなゲテモノ食べられるわね……。」

 哀ちゃんから冷ややかな言葉を浴びせられて頭を掻いた。

 3万円分持ち帰っていいらしいと話しても、アナコンダ肉やカエル肉を見た瞬間にみんなは拒絶反応を示したので、自分が食べる分とヤマカガシの餌分だけを貰ってきた。

 それとアクリルケースや飼養に係る備品類も。

『ラブドフィスちゃんをしばらく頼みます』

 自らが担架で運ばれながらも、ペットが殺処分されないように意識が混濁していた中で必死で預け先を探した彼には頭が下がる。

「ねーねー、探偵士さんって『自分は他人と違う』ってことを勲章みたいに思ってる人じゃない?だから凄いんだぞって思っていそう。」

 コナンくんの棘のある言い方に思わずクワッと声を荒げた。

「食わず嫌いは良くないよ!!アザラシ肉をお食べ!!」

 皿に取り分けた肉を渡すと、頭の後ろに腕を組んでプイッと横を向いた。

「いらなーい!!お腹壊しちゃったらやだし。」

 確かに、子供にゲテモノを食べさせて食あたりをさせたら困るな。

「それよりさ……兄ちゃんって腕っぷしに自信あんのか?」

 な、なんだいきなり……。

 元太くんが真剣な眼差しを向けてくるが、仮面ヤイバーごっこをキャンプ場でするのか?

「自信が無いとは言わないけど……どうしてそんな事を聞くんだい?」

 すると元太くんは珍しくモジモジして顔を反らした。

「お……オレを肩車できるくらい力自慢なのかなって……」

 ……そうか、元太くんは発育がいいから肩車やおんぶといったコミュニケーションを他の子供達よりされた経験がないのか。

 

「お安い御用だよ!さあ、背中に乗って。」

 


 

「ってなことがありまして……車を買ったんですよ。」

 

 閑散とした時間帯の喫茶アポロで安室さんに話題を振った。

「……車ですか?近くの駐車場に停めたのなら店の月極駐車場を使えるようにオーナーに言いますよ。」

 皿を洗いつつ、ため息をつきながら口を開いた。

「えへへ……実は店の直ぐ近くのコインパーキングに停めてあります。」

 そう答えると安室さんは目をカッと見開いた。

「ま……まさか黒の軽トラック……」

 流石だ、店の周囲にある月極と定期的にコインパーキングを利用する車種とナンバーを把握しているのだな。

「はい!軽トラなので食料品や物資の運搬はお任せください!」

 すると肩を掴まれた。

「な……軽トラ……いえ、給与の使い道はアナタの自由ではありますけど……かえって目立つでしょうが……一体何を考えて……ハッ!まさか何も考えていないのか!?と見せかけて裏の裏の裏をかく……」

 安室さんが動揺しているの初めてみたな。

 頭の回転が良すぎる人は一つの事象から百を想定するから大変だ。

 店先の窓ガラスを拭き終わった梓さんが不思議そうな顔をしてこちらを見た。

「安室さん、どうかしたんですか?」

 彼はハァと深いため息をついて食器を無心で拭き始めた。

「いえ……別に……」

 明らかに不機嫌になっている。

「あ、そうだ!ペットも飼い始めまして!」

 今度は梓さんが食いついてきた。

「何を飼ってるんですか!?見てみたいです!」

 ご要望にお答えしてガラケー改を出そうとすると、安室さんに制止された。

「……写真はいいですから。種類と名前だけを教えてください。」

 仕方がない、指示に従おう。

「ラブドフィスの『近松』です。」

 そう述べてテーブルにある調味料の補充を進めた。

「ラブラドールは犬、ラグドールは猫ですよね?ラブドフィスっていう種類がいるんですか?……近松はニャロメ関係?」

 確かに赤塚先生の代表作『もーれつア太郎』や『おそ松くん』から名前をとっても良かったか。

「蛇ですよ!名前は好きなゲームから名付けました。」

 梓さんはウンウン頷いたあと、思い切り叫んだ。

「デイヴィスさん蛇を飼ってるんですか!?……ひぇー……えー……」

 空気が抜けたようになった二人に笑顔で応えた。

「家に見に来ますか?」

 

「「遠慮します!」」

 

 






 あとがき


 訂正:1/30でなくL12/30(1月のページの去年の12/30)です
 しばらくお休み(頭冷却)

なかみについて(期間限定アンケ)

  • ややこしい(かため)
  • 分かり易い(やわらか)
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