探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第二話 探偵士、アルバイトの面接に挑む。

 

「それでコナン君……こちらの男性は?」

 

 高木刑事と呼ばれた男性に呼び止められる。

 ま、まあ事件現場に居合わせた事だし、普通に事情聴取を受けるよな……。

「えっと……僕は……デイヴィスといいマース。日本、よく、ワカリマセーン」

 頭を掻きながらニカッとはにかむと高木刑事はズイッと寄ってジロジロと全身を見廻した。

 汚れの少ないプリーツが入ったグレーの作業服、雑な蛇口マークのワッペン。

 何処からどう見ても不審者だ。

「やはり外国籍の方ですか。金髪で背も高いし……それに黄色と緑色のオッドアイとは珍しい。初めてお見かけしました」

 ……え? 

「え? 僕はそんな見た目なんですか!?」

 驚いて声を上げると哀ちゃんが作業服の裾を引いて手鏡を渡してくれた。

 ……確かにゆるい金髪に左目が薄茶色に白がかった黄土色、右目がヘーゼルのように薄茶色に緑がかった緑土色のオッドアイで、コンタクトが無いか指で角膜に触れたが何もない。

 虹彩異色症だとしてもこの組み合わせは殆ど例がなく、後天的な場合はコンタクトが無ければ眩しさで目が眩むだろうから先天性か? 

 この髪の長さで髪を結わえていないのは作業員として不適格、作業帽を何処かで紛失した? 

「えっと……はは、デイヴィスさんは愉快な人なんですね……」

 刑事さんドン引きしてるけども。

「デイヴィスお兄さんは探偵士なんだよー!!」

 歩美ちゃん達がドタドタと駆け寄ってきた。

「た、探偵士? ……ってなんだい?」

 もう後には引けないな、記憶喪失の探偵士として押し通そう。

「高木刑事!! デイヴィスさんは頭を打って記憶喪失なんです!!」

「この兄ちゃん、スマホすらわかってなかったぞ!!」

 頭が痛いのは痛いんだけれど、打ったというか頭が割れるような痛みで……うーん。

 ……警察組織に記憶喪失だと進言されてしまった。

「き、記憶喪失!? ……デイヴィスさん、身元を証明出来るものはありますか?」

 ……作業服の全てのポケットひっくり返して見せて、白い手袋しかない状況を説明した。

 ん? 白い手袋……

「あれれ〜? どうして軍手じゃなくてホテルマンがするみたいな手袋なの?」

 コナンくんに思っていたことを言われてしまった。

「それに、水道のマークがあるのに社名が無いわ。訪問修理であるなら自社名はあるはず」

 哀ちゃんに追い打ちをかけられる。

 そうなんだよな、これでは完全に空き巣狙いだ。

「き、君たちこそどうしてアパートにいたんだい?」

 話を逸らそうと歩美ちゃんに尋ねると、笑顔で返されてしまった。

 

「猫ちゃんを追いかけてきたんだよ!! ちょうどデイヴィスお兄さんと同じ眼の色をしていたの!!」

 


 

「署までご同行願います」

 

 まさか拘置所送りになるとは……。

 鞭打ち刑だ……ラバースーツを着たボインちゃんにビシバシと……。

「スコットランドヤードみたいに地下送りですか……」

 肩を落とすとコナンくんに肘鉄を食らった。

「オイオイ、まだ頭がボケてんのか?」

 ムッ、小学生にツッコミを入れられるとは……仕方ない……明らかに不審者だ……。

「高木刑事、後から阿笠博士と向かいます」

 哀ちゃんとコナンくんは高木刑事に頭を軽く下げると歩美ちゃん達少年探偵団を引き連れて現場を離れた。

「バイバイ!! 探偵士のデイヴィスお兄さん!!」

 歩美ちゃんに光彦くん、元太くんに手を振ってパトカーの後部座席に座った。

 

「バイバイ……少年探偵団……」

 

 、、、

 

「まず最初に。脳に異常は見当たりません」

 

 高木刑事はパトカーに乗せると、取り調べより前に警察病院に運び入れてくれた。

 MRIやCTまで撮って血液検査に知能テストもした。

 それでもって脳に異常がないなら……

「解離性遁走ですかね?」

 医者はコホンと咳払いをしたので、口を噤んだ。

「強いストレスを受けた等の事情によって一時的に記憶が飛んでいるのかもしれません。一過性乖離健忘か逆行性健忘の可能性があり、記憶は戻る場合と戻らない場合が……」

 最悪ベースを仮定して記憶は戻らないとする。

 ……ど、どうすればいいんだ。

 

「あ、はい……ありがとうございました」

 

 、、、

 

「それで……あなたの身元なのだけれど。犯罪者データベースに該当する指紋はなかったわ」

 

 診察室から出て待合所まで戻るとショートカットのキツめの美人が高木刑事と肘が当たる距離で立っていた。

 成る程、二人は出来ているのか。

 職場恋愛アベック刑事二人組……。

 キッドとピンクちゃんみたいなものか。

「歯型も調べてはいますが……」

 人員不足なのに、わざわざ時間を取らせてしまって申し訳ないな。

「それで……僕は拘束されるんですか?」

 基本的に犯罪者ではなく記憶がないだけなら拘束はされないだろうが、無一文ではなあ……。

 運転免許証が無いから運転は出来ないし、戸籍を証明出来ない為に銀行口座を新規に作れず、住民票が無いから住居を借りることも出来ない、つまり職にすらつけない。

「いいえ。拘束はしない。……でも一時保護する形になるわ」

 保護……施設にはいるのか……。

 

「お待たせ〜!! 探偵士さん!!」

 


 

「博士、彼が探偵士のデイヴィスさん! ……ちょうど博士が助手を探してたんだ! 佐藤刑事、お兄さんを引き取ってもいい?」

 

 コナンくんと哀ちゃんが小太りのご老人の背中を押して反対側から現れた。

「阿笠博士、彼の身元を引き取って頂けるのであれば、あちらで詳しく今後の方針をお話した後、こちらの書類にサインを頂きます」

 佐藤刑事と呼ばれた女性は書類の束が入った封筒を取り出して阿笠博士と呼ばれたご老人に渡した。

 さ、流石に見知らぬご老人に軽く投げられる量の書類の束ではない。 

「ちょ、ちょっと待って」

 三人が別室に消えるのを追おうとすると哀ちゃんに止められた。

「いいの。それともあなたは宿無しのままで雨風に打たれて暮らしていきたいのかしら?」

 宮沢賢治じゃないんだから、住まいは欲しいけれど見ず知らずの他人のご厄介になるのは……。

「でもね、大人は」

「バーロー。情けは人の為ならずってことだよ。お兄さん」

 コナンくんに肘鉄を食らった。

 小学生にバカ呼ばわりされてしまったが、致し方ない。

 自分について何も思い出せないからな……。

「それにしても灰原、よく博士の家に住まわせるのOKしたな」

 さっきの博士の家にご厄介になるとして、哀ちゃんという小学生の女子が居るご家庭だと色々と不味いだろ。

「あら? 江戸川くんのお家に住まわせるに決まってるでしょ」

 ……まあ、男子がいるくらいなら。

「ば、バーロー!! 蘭がいるだろっ!!」

 蘭? 姉妹か? 

「探偵士さんはJKに手を出すタイプなのかしら?」

 じ、女子高生!? 

「な、な、なっ……女子高生に手を出すわけないからねっ!? 僕は模範的な成人男性であってロリコンじゃない!!」

 ……あ、あああ!? 

 小学生の前でロリコンやらJKやら不適切ワードを連呼してしまった。 

「少なくとも、探偵士さんは日本に永く住んでいる事が分かったわ。そして海外にも居た可能性があるようね」

 そうなのか? 

 ……あ、よく語られがちな範囲を特定したのか。

「新一!! 書類作成に手間取りそうじゃから先に帰るか?」

 阿笠博士が息を切らせて走りよってきた。

 ……新一? 

 

「ちょ、もー! すぐに従兄弟と間違えるんだから!! 博士……待ってるよ!!」

 


 

「それでデイヴィス君、住まいは新一……というコナンの親戚の家を貸し出しておっての。家が広いもんで一部屋借りられないかと話しておったんじゃ」

 

 阿笠博士が運転するビートルの助手席に促されるまま乗りこんだはいいものの。

 それって相部屋というより同居になるんじゃ……。

 相手が女性だったらどうしたら……。

「昴さんはいいってさ」

 昴……男性、いや女性名もありうるな。

「東都大学の大学院生よ。良かったわね」

 ……東都大学? 新設の大学か? 

「そうなんだ……あのさあ……」

 フロントガラスで流れた案内標識を見て絶句した。

 米花町など都内の町名では聞いたことがない。

 他の道府県で合併があったなら兎も角……。

「どうしたんじゃ?」

 スマホなる機器も知らなかった。

 診察室のパソコンやテレビまでもが薄型だった。

 博士に渡された西暦が……。

 記憶喪失……やはり解離性健忘、解離性遁走に近いのだろう。

「またボーッとして……。しっかりしないとアルバイトの面接、そんなことでは落ちるわよ」

 哀ちゃんがため息をついたが、アルバイト? 

「あれ? 言ってなかったっけ。探偵士さんも無職じゃ困るからって面接だけしてほしいってお願いしといたから。コネ採用はしないタイプだろうけど、ま、頑張って!」

 

 、、、

 

「はじめまして。オーナーの代わりを務めさせて頂く、採用担当の安室です」

 

 喫茶店の付近にビートルが止まると褐色肌に金髪の男性が現れてバックヤードに案内された。

 物腰は柔らかいように見えるがプレッシャーを放っている。

「で、デイヴィスです。よろしくお願いします」

 バックヤードにあるパイプ椅子に対面して座ると、安室さんはふうと息をして話し始めた。

「ちねしねそみあまそらつか」

 ……ああ、あめつちの歌か。

「いやはや、ロゴマークからしてブルーカラーだとは思うんですけれど……あのー……記憶喪失でして……」

 苦笑いをして頭を掻くと安室さんはボールペンの先を机に向かってツーツートンツー トンツートン トントンツーと叩いた。

「えっと……雇って頂けるなら何でもします」

 すると突然腰の後ろに手を伸ばしたので咄嗟に自分のはだけた作業服の両脇に手を突っ込むが何もない。

「……デイヴィスさんは随分とセッカチさんみたいですね」

 安室さんの声が低くなり、鋭い眼光がこちらを睨みつける。

「す、すみません……」

 どうすれば雇ってもらえるんだ……。

 知識が無いから技術的なハンディキャップが大きく、作業場や工場に行っても実技で落ちる可能性が高い。

「好きなものを教えてください。プライベートな話です」

 ……プライベートを聞くのか。

 確かに記憶喪失だからと『風俗』『賭博』など不適切な内容を話すかどうか、社会適合性を知るには手っ取り早いか。

「好きなもの……ゲームの『キャット・ザ・リパー』ですかね。それだけはハッキリ覚えています」

 味があるポリゴン、一癖も二癖もあるキャラクター。

 あれ……確か……

 

「聞いたことがないタイトルですが……この場は『料理』って答えて欲しかったですね」

 


 

「では、採用の場合は三日以内に電話で……電話は阿笠博士のところに掛けますね。不採用なら連絡は差し上げません」

 

 この感じだと、落ちたな……。

「安室さん! ちょっといいですか?」

 ガチャリとドアが開けられてロングヘアの可愛らしい女性が顔を覗かせた。

 先ほど店内で見かけた店員さんだ。

 もし採用になったら同僚になるのか……。

 そうなったら薔薇色の職場になるな……。

「梓さん、面接中ですよ。……どうかしました?」

 安室さんの眼が朗らかになり、表情筋が和らいだ。

 何だよ……アベックか……。

「男手が2人になったなら重たいものを買い物してきてほしいなって……」

 既に店員として見てくれている……なんてチャーミングな女性なんだ。

「はいはい! 行きます!」

 パイプ椅子から立って挙手すると梓さんはニコッと微笑んで手を握ってくれた。

 ……まだ可能性はある! 

「これが買い物リストです」

 握られた手にメモが1枚挟まっていた。

 

「仕方ない。デイヴィスさん、備品の調達にお付き合い頂けますか?」

 

 、、、

 

「ありがとうコナンくん、哀ちゃん……一緒に来てくれて……」

 

 阿笠博士を喫茶店に待たせることになってしまったが、彼らがいてくれると安室さんのプレッシャーが幾分マシになる。

 買い物リストの一つに個人商店が指定されてあったため、大人二人子供二人で住宅街を歩いた。

「探偵士さんポンコツみたいだからさ〜!」

 コナンくんに馬鹿にされ続けている……。

「……あなたがもし……なんでもないわ」

 哀ちゃんはこちらを見て何か考え事をしている。

 ……自分が空き巣狙いの犯罪者でないことを自分も祈ってるよ。

 そうだよな、こんな不審者を紹介した手前『管理監督しないといけない』という気持ちを抱いたとしても仕方がない。

 小学生に負担をかけてしまって……。

「デイヴィスさん、しっかりしてくださいね」

 はぁ……採用されなきゃこれで終わりなんだよな。

 

「ギャァァァ!! し、死んでる!?」

 


 

「皆さん!! 僕はマスターオブディテェクティブ、探偵士です!! 現場保存のために遺留品に触れたり遺体に触れたりしないでください!!」

 

 ついうっかり悲鳴が上がった花があふれる邸宅に向かって叫んでしまった。

「探偵士……か」

 安室さんの視線が痛い。

 そうだよな、実在しない職業を名乗ってるんだから引かれて当然。

「まあまあ、安室さん。様子を見てみようよ。警察には通報するから」

「ええ、お手並み拝見といきましょう」

 何だか二人とも手慣れてるなぁ。

 事件現場なのに……死体を見てもリアクションが殆どない。

 近頃の小学生は淡白なのかな。

 

「すみません。皆さん、事情を伺ってよろしいですか?」

 邸宅の庭にはイングリッシュガーデンが広がっており、蔓薔薇がアイアンフェンスに誘引されていて園芸雑誌の表紙みたいだ。

 そのジギタリスやレースフラワーに混じってエプロンに身を包んだ年配の女性が這性薔薇が絡まるフェンスに背中を貫かれて亡くなっていた。

 というのは推測で、背中から血は既に出ておらずフェンスの先であるフルール・ド・リスは腹部から突き出ていない。

 その遺体から距離を置いて別々の色をした作業服姿の男性が二人立ちすくんでいた。

「お、俺たちが来たときには井伊さんは死んでたんだ……」

 茶色い作業服の中年男性は後退りして、手が震えている。

 邸宅の方を見ると庭に向いた防犯カメラがあったので証言の裏は後で取れるか。

「本当です……信じてください……あ、そうだ……防犯カメラがあります!」

 黒っぽい作業服の若い男性は慌てて防犯カメラを指さした。

 まさか防犯カメラに映るように殺害はしないだろうし、細工をしたとしても此処まで目立つオープンガーデンで昼間っから犯行に及ぶか? 

 

「その前に貴方がたの関係性を尋たい」

 


 

 彼らの話をまとめるとこうなる。

 

 庭の持ち主は新米ガーデナーの井伊(76)。

 園芸雑誌の『薔薇が咲く庭』コンテストに挑むべく三年前から薔薇をメインにガーデニングを始めたらしい。

 普段着と思われるシャツにズボンとエプロンをして長ぐつを履いている。

 腕にアームカバーはなくシャベルや肥料類もそばに無いことから本格的な作業を開始する前だったと思われる。

 既に亡くなっており、死後硬直がピーク時に近いことと眼の乾燥斑と瞼が閉じていないことから死後12時間程度だと推測する。 

 住宅街で発見が遅れたのはオープンガーデンとは言いつつトレリスで薔薇が目隠しになっていたのだろう。

 コンポスターからは悪臭が防臭処理されず漂っているので死臭や血の匂いに気付かれなかった。

 口はだらんと開けて涎が垂れている。

 身体がアーチ状に反っているため、悲鳴を上げる間もなく悶絶しうめき声になってしまった可能性がある。

 アームカバーがないため薔薇の棘で腕が血が乾いた跡で複数の線が網目のように変色している。

 そして背中側には高さ90cmのアイアンフェンスのフルール・ド・リスが突き刺さっているようで幅90cmの真ん中が凹んでいる。

 そして血溜まりがグランドカバーのイワダレソウに掛かって葉と花に染み付いている。

 全体は蒼白化しており、爪先は青紫色に変色している。

 

 彼らについて。

 彼らは井伊が仕事を世話した者たちで、コンテストの為に肥料や土を運搬しに来た。

 茶色い作業服の中年男性は衛府(56)、井伊の紹介で農場勤めをしており、鶏糞や馬糞を運んでいた。

 黒っぽい作業服の若い男性は寺印(27)、井伊の紹介で釣具店に勤めており、魚の死骸を運んでいた。

 コンポスター用にしても都会では苦情が来そうなラインナップだ。

 

 現場について。

 イングリッシュガーデンを目指してアイアンフェンスが庭の境界から60cmの場所に180cm、120cm、90cm、60cmと大小さまざまに設置してあるがどれも薔薇が誘引されていて触れに行こうとは思わない。

 コンポスターは庭の南北の壁沿に一つずつ置かれている。

 

「もしかして井伊さん、近隣住民と揉めていましたか?」

 彼らは顔を見合わせると頷いた。

「はい……コンポスターが臭いとか、薔薇の誘引が隣接する家に這ったとか、人の迷惑とか考えない人だったんで……」

 寺印は目を逸らしながら苦悶の声を漏らした。

「馬糞に鶏糞は肥料としても高額なのに『世話してやったから』とただで提供させられて……」

 衛府も汗をかいて下を向いている。

 成る程、二人ともよく思っていなかったのは確かか。

 

「どうしてお二人は井伊さんを引っ張り上げようとしなかったんですか?」

 


 

 見立てについて。

「井伊さんは不慮の事故のような形で背中からアイアンフェンスのフルール・ド・リスに倒れて亡くなった」

 

 そう言うと二人は安堵したように膝から崩れ落ちた。

 コナンくんが口を挟もうとしたが、無視をして話を続けた。

「しかし、不慮の事故は作られた。この『土』によって」

 井伊さんが亡くなっている近い場所で足を踏むと40cm以上の深い穴に足が取られた。

「モグラ……だね」

 コナンくんが正解を言ってしまった。

「も、モグラ!? な、なら俺たちは関係ない」

「それが関係あるかもしれませんよ」

 道具がなかったので近くの枝を折ってバラの周りを掘ると大量のミミズが現れた。

「薔薇は『肥料食い』と言われるほど肥料を必要とし、土がスカスカになります。そのため肥料を大量に必要とした。しかし『イワダレソウ』がグランドカバーになっていると茎が絡まり掘り起こすのは困難。……井伊さんはミミズが苦手で貴方がたに『肥料を入れろ』と作業を任せていたのでは?」

 二人はポカーンとしてこちらを見た。

「だったらなんなんですか?」

「肥料を入れたから罪?」

 ここからが難しいところ。

「加えて『ミミズが大量発生』した時に起こるのが『ミミズを食するモグラによって引き起こされる土壌の変形』です。このような40cm以上の深い穴が突如として現れてしまう。しかもグランドカバーによって『モグラ特有の土の山、モグラ塚』が可視化されない。『見えない落とし穴』が作られてしまった。この深さなら足を取られてよろけてしまい、蔓状になるグランドカバーの『イワダレソウ』によって更に足を引っ掛けて転倒するのは十分に考えられる」

 二人が反論しようとしたとき、遮るように話を続けた。

「お二人が近づかなかったのは『穴に嵌る』と理解していたから。貴方がたの位置からだと井伊さんの足元の穴はイワダレソウで見えない。にもかかわらずただ見ていた。つまり『事故を予見』していた」

 ……『事故を予見』していたから殺意として裁けるのか。

 というより、なんと言っていいか……。

「ぼ、僕は釣り餌用のミミズを大量に入れたらいつか井伊さんが驚いて腰を抜かすかなって……。そのままぎっくり腰になって入院してくれればと……」

 うーん、高齢女性にしていいドッキリではないな。

「俺はただ、捕獲したモグラを放して土をダメすれば薔薇が根腐れして園芸コンテストに出場できなくなるって……」

 ……おっと。

 過失致死になるかもしれないか? 

「……それは少なくとも鳥獣保護管理法に抵触しますね」

 後から見守っていた安室さんがボソリと呟いた。

 その隣でコナンくんと哀ちゃんがすんとすまし顔でこちらを見ている。

 

「後は警察に任せましょう? 探偵士さん」

 


 

「荷物の運搬ありがとう御座いました。デイヴィスさん」

 

 安室さんと缶詰類を倉庫に収納し終わると改まって礼を言われてしまった。

「いえいえ、情けは人の為ならず……ですから」

 ついコナンくんに言われたセリフが口から出て、顔をしかめる。

 ……自分は影響されやすいのかな。

 何だか自信がなくなってきた。

「あ! デイヴィスさんだったんですね!」

 振り返ると梓さんがトタトタと近寄ってきて、つま先立ちで顔を近づけてくる。

 な、いきなりキス!? 安室さんの前で!? 

「……取れました。ほら、バラの花びらです。襟に挟まってましたよ。いい香りがしたから辿ってきちゃいました!」

 彼女の指を見ると黄色い薔薇の花弁がガクと一緒についていた。

 さっきの庭で付いたのか……。

 とほほ、なんとも情けない。

 

「……デイヴィスさんは……ついているのかもしれませんね」

 

 






 あとがき




【挿絵表示】

【挿絵表示】

これは使った上杉暗号改 
ってわかるかーい。改だけに
(今回の問いは濁点と半濁点使用なし)

読み方
今回はあめつちの歌とする
平文いろは → あらめらつら となる
同じ表を持っている前提です
遊んでみてください

ちなみに実際に同条件で転んだので皆さんも気をつけてください

水平線(罫線、──)の有無

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