「どーも!!来ちゃいました〜!!」
「すみません、ご迷惑でしたか?」
喫茶ポアロのドアベルが鳴ると、赤髪のショートヘアにスモックのような服を着た玄地さんと、シャツワンピースを着て黒髪を一つ縛りに束ねた熊津さんが手を振って立っていた。
「熊津さん!玄地さん!早速来てくださったんですね!」
聖母のような笑顔を湛えた梓さんがテーブル席に案内すると、キッチンで仕込みをしている安室さんの動きが一瞬静止したのを見逃さなかった。
安室さんでも不意な接触には動揺するか。
「へぇ……沢山メニューがあるんですね……。迷っちゃいます。」
接客は梓さんに任せて安室さんの出方を伺った。
「はい。オリジナルブレンドがオススメです。」
彼は何事も無かったかのように朗らかな笑みを浮かべてカウンターから三人の居るテーブルに向かった。
手には何も持ち合わせておらず、目配せや指によるサインもない。
「ならオススメを下さい!ハムサンドも!熊津さんも同じでいい?」
熊津さんが頷くと、安室さんは注文を復唱しキッチンに戻ってハムサンドを作り始めたので、自分もオリジナルブレンドコーヒーをドリッパーでドリップしてコーヒーカップに注ぎ淹れた。
「……英知さんはボンちゃんと一緒に米花町を離れるみたいですね……。元々ご自宅が火災になって賃貸だったのもあったらしく……寂しいです。」
彼女にガラケー改と財布を渡し、連絡先を交換した指紋の付きやすいパルプ製のメモから採取した指紋で合致したものについては、殆ど掠れていた。
「それでも配信は続けるみたいですから、また遊びに来てって言ってました!……早く良くなるといいですね。」
熊津さんが郵便局員と名乗っていた事を考えると、日々の仕分け作業の摩擦によって薄くなるのはよくある事。
……内勤職員ならな。
「お待たせしました。ハムサンドとオリジナルブレンドコーヒーになります。」
ハムサンドを順当に置き、コーヒーカップの持ち手を彼女達から見て左側にして置くと、二人は眉をしかめて手のひらをこちらに向けた。
玄地さんは右利きで中指と人さし指にタコがある。
熊津さんは左利きで中指にタコがあり、人さし指と親指の皮膚が厚くなっている。
「ちょっと!いじわるしないで下さいよデイヴィスさん!」
ムスッとむくれた玄地さんの爪には磨かれた後があるものの乾燥や沈着、変色や割れが見られない。
逆に熊津さんの爪は摩擦黒皮症ぎみで短く切りそろえられている。
「すみません……英知さんが心配で……。」
下を向いてポツリと零すと、玄地さんがニマッと笑った。
「あっ、そっかあ!ですよねー!でも、ボンちゃんに危害を加えた犯人は死んだみたいですから一安心ですよ!!」
「え、そ……そうだったんですか?一体どうして……」
梓さんの顔が真っ青になって震えだしたので、安室さんにアイコンタクトをして隣に来てもらった。
「ニュース見てないんですか?あのオバサン、警察から事情聴取された後は勾留も何もされなかったみたいで、その日のうちに杏の種とアーモンドを誤食したらしいです!」
すると安室さんが重たい口を開いた。
「確かに杏の種には青酸カリに近い成分が含まれていますが……大量接種しないと……」
玄地さんはケロッとした顔で話続けた。
「アーモンドパンとして手作りパンに沢山練り込んでたってやってましたねー!パンならパクパク食べられちゃうから!」
梓さんと熊津さんの顔色が曇っていく。
「ああ、だから『恥辱より死を望む』とおっしゃったのですね。ダリのパン籠は、かの独裁者に対するメッセージとして描いたとされている。そしてかの独裁者の死の方法は」
「デイヴィスさん、流石に不謹慎ですよ。」
冷えた空気に鋭利な氷柱のような安室さんの言葉に水を差された。
言うことも特にないので沈痛な葬儀会場と化したテーブルを後にして、調理道具の洗浄に取り掛かった。
「あ……あ、そうだ!それでアタシあの教会に住むことになって、さっきまで不動産屋と話をしていたんです!あそこで絵画教室を開くので是非見学に来てください!!……嫌な出来事はドリームキャッチャーで取っ払っちゃって前向きにいきましょう!!」
安室さんは眉を痙攣させ、女性陣は下を向いた。
よく昨日の今日で入居話になったもんだ。
「そうですね……梓さんもまた英知さんの手芸サークルや玄地さんの絵画教室に一緒に行きませんか?」
熊津さんが梓さんの顔色を伺うように静かに問いかけた。
「はい。心配ですし、何より顔を見たいから……行きます。」
吹っ切れた様子の梓さんを見てほっと胸をなで下ろすと、熊津さんと玄地さんの顔がこちらを見た。
「あとはデイヴィスさんと……金髪の彼も!」
ついでのように名を呼ばれて口元を緩めた。
「紹介していませんでしたね!彼が喫茶ポアロの看板!安室 透さんです!……安室さんも来てくれませんか?」
「……なぜ彼女が此処に居る。」
梓さんが上がったあと、額に青筋を浮かべた安室さんに詰められた。
「彼女……?まさか組織の構成員でしたか。組織も大所帯ですから、コードネームだけは知り得ていても全員の顔と偽名、現在の職務を把握しているわけではないので……。」
ある一定の組織内地位を持つと付与されるコードネームが酒に由来するものであること、名無しは組織関係者か否かぐらいしか知り得ず、任務内容によってようやく顔とコードネームと職務を知り得るくらいの状態なのは事実だ。
「デイヴィスさん、早速公安を裏切るおつもりですか。」
気が早いが、眼光を光らせるジャッカルのような眼差しに胸ポケットから透明なフィルムを出してみせた。
「まさか。この採取した指紋を麻取の鑑定課に持ち込むつもりでしたよ。自分に連絡先の交換を申し出た者は皆、組織の構成員かと疑うようにしています。職場に来るとは思いもよりませんでした。」
真剣な顔をして見つめ返すと深い溜息が溢れた。
「なら、風見に連絡を入れてください。」
そう来ると思っていたのでガラケー改に届いたメールを開いて見せた。
「その前に安室さんにご意見を頂戴したく……偽装アドレスで海外サーバーを複数経由していましたが最終的な送り元は日本のサーバーでした。送り主は『親愛なる妹』……これって……。」
首を傾げてガラケー改を差し出すと、彼は顎に手をおいたまま考え込んだ。
「マリー・アントワネットの暗号か……。『Are you planning to turn white?If so, I won’t forgive you.』『白になるつもりか?』つまり、『寝返るなら許さない』というメッセージ……鍵は『use Z』と言う意味とアナグラムでの『Suze』か……。だから『親愛なる妹』と……。」
安室さんは暫く考え込んだあと、こちらを見た。
「現在、アナタに対して組織からの特段の指示は出ていません。……僕の知る限り。……ただ、アナタが『警察に入り込んだスパイ』として離反を企てていないか、または組織に混乱をもたらすのではないかと考えている者がいます。……そして、シャルトルーズのように『特別な任務を任されたアナタ』に対して苛立ちを覚え、失脚させて地位を奪おうとする者が出てきてもおかしくはない。」
点と点を結ばないと。
「そうみたいですね……警戒します。」
「スッゲー!?デッケェ絵だな!!」
元太くんが十字架のある建屋に入るなり大声で叫んだ。
「スゴイでしょー!!F100サイズだからね!」
玄地さんがニコニコしながら絵を指さした。
リアルタッチで描かれた油絵は田舎の畦道の空間をそのまま切り取ったようであり、生えている草木も種別が分かるほどに描き込まれている。
「すごいね!でも、哀ちゃんも来られれば良かったのに。」
スーズからのメッセージが入った事をコナンくんと哀ちゃんにも伝えたが、彼女はスーズの残忍さを伝え聞いていたらしく恐怖がフラッシュバックして部屋から出られなくなってしまったらしい。
「残念ですけど、灰原さんの為に絵を描いて送りましょう!」
光彦くんが拳を握って発破をかけると三人は拳を上げた。
「おー!私たちは少年探偵団だもん!」
目線を反対側に移すと厳しい表情をしたコナンくんと目が合った。
『絵画教室に行くが、自分に接触を図ってきた人物であるため、組織側の人間かもしれない』
そう告げるとコナンくんは同行を申し入れ、シェリーは猛反対した。
『駄目よ江戸川君!!絶対に駄目!!スーズは男か女かもわからないのよ!?それに……スーズは暗殺する瞬間を作品として見立て殺人をする残忍な人間なの……』
怯えるのも無理はない。
スーズはただの悪ガキで、加減を知らないからな。
「探偵士さん……本当に彼女なの?顔見知りじゃないならどうやって組織の人間と断定するつもり?」
コナンくんが玄地さんの素性を気にかけているが、それよりも探偵団のみんなまでもが場にいる状況を説明して欲しい。
……いや、住所と時間を指定して現地集合にした自分に非があるな。
少年探偵団は好奇心旺盛で止められなかったか、勝手に口裏を合わせて来てしまった可能性もある。
……好奇心は猫を殺す。
それだけは絶対に避けないと。
「ここが例の……。」
爽やかな声に振り向くと安室さんが腰に手を当てて佇んでいた。
「安室さん!!来てくれたんだね!!」
コナンくんが道標を見つけたように駆け寄って行った。
自分はまだ、星に成れていない。
「よっ!!落ち込んだ顔してどうしたんだい?」
肩を叩かれて振り向くと世良さんが堂々とした面持ちで立っていた。
……予定では梓さんが来るはずでは。
「残念そうな顔をするなよ!!梓さんは英知さんって人の引っ越しの手伝いをするらしいから、ボクが代理で来てやったんだ!!感謝してくれよ探偵士くん!!」
「まるで写真のように写実的な絵ですね。何処をテーマに描いたんですか?」
安室さんが油絵に顔を近づけて描かれている対象をまじまじと見ている。
「これは北海道の旭川にあるママの実家を描いたんです!!涼しくていいところなんですが雪が降るので大変で!!」
玄地さんが笑って終わらせようとしたので遮った。
「どうして嘘をつくんですか?」
すると世良さんに安室さん、コナンくんが勘付いていたようだった。
「は……嘘?もーっ!デイヴィスさんアタシにいじわるばっかりしますね!」
頬を膨らませて拳を握りしめる彼女に淡々と語った。
「だってこの植生、関東エリアのものでしょう?同じ耕作地植生でも草木の種類はまるで違います。竹林はまだしもシイノキにミカン、ホトケノザ、ノカンゾウですし。」
玄地さんが反論しようとする前に世良さんが口を開いた。
「そうだね。乾性油の揮発が激しく変色が始まっていて、おまけにクラックが多い。最近描かれたものではないな。」
続けて安室さんが話し始めた。
「確かに目に見えるクラクリュールがありますね。それにリネンの張りが無くなり、ほつれが出来ていますしカンバスストレッチャーもガタが来ている。」
トドメにコナンくんがキャンバスの裏に回って声を上げた。
「あれれ〜?裏側がカビっぽくなってる!どうして?玄地さんってまだ二十歳くらいのお姉さんに見えるのに、ボクと同い年くらいの小さい時にこの絵を描けたなら天才だね!!コンテストや美術評論誌に応募しなかったの?」
玄地さんは息を大きく吸って深く吐いた。
「あ、勘違いされているようですけど、アタシが描いたんじゃなくてママの作品なんです。つい実家の畦道かなって思っちゃって。」
話を切ると玄地さんは手を叩いた。
「はーい皆さーん!!画材があるテーブル席に座ってねー!!」
何事も無かったかのように振る舞われたので、取り敢えず皆で着席すると、テーブルの上に正方形のキャンバスにアクリル絵の具と複数のメディウム、筆とペインティングナイフ、エプロンが椅子の分だけ用意されていた。
「皆さんにはテクスチャーアート、通称3Dアートを描いてもらいます!!」
「3Dアートってなんですかコナン君!」
コナンくんが答える前に講師である玄地さんが教卓をバンッと叩いた。
「……アタシが説明するね!3Dアートはアクリル絵の具にモデリングペーストっていう粘土みたいなものを混ぜて立体的に見せる絵のこと!!実践してみせるからねー!」
玄地さんはパレットに黃色のアクリル絵の具を出して、次にモデリングペーストを出すペインティングナイフで混ぜ合わせた。
「絵の具とモデリングペーストは1:3を目安に混ぜ合わせてねー!これをキャンバスに波のように塗ると、そのままの状態で固まって凹凸がある絵が生まれるの!!完成見本を用意してあるから触ってみて!!」
差し出された絵画は有りがちな抽象画ではなく、立体的な黄色いゲンチアナが描かれていた。
「触っていいの?やったー!!」
歩美ちゃんが手を伸ばそうとするのを右手を伸ばして静止した。
「表面がザラザラしているから危ないよ。それに許可されているとはいえ、他人の作品に触るのはあんまり良くないからね。」
万が一皮膚から吸収されるタイプの毒物が練り込まれていたら不味い。
「デイヴィスさんは過保護過ぎますって!!ボクたちの自主性を尊重してくださいよ!!」
光彦くんに叱咤を受けたが、こればかりは譲れない。
「止めとけ光彦。」
仲裁を買って出たコナンくんに頭を下げながら、見本を返した。
それを受け取ると玄地さんは虚無顔になったが、直ぐに切り替えて手を叩いた。
「早速作ってみよう!!分からないことがあれば聞いてね!!」
手元にあるアクリル絵の具とメディウムの匂いを確認するが独特な匂いの他に変わりはないように感じられ、大きく吸い込んでも体調に変化はない。
「オメーら、ペインティングナイフの扱いにだけは注意しろよ。」
コナンくんの釘を差しに三人は「はーい!」と返事をしてキャンバスにペインティングナイフを滑らせた。
「ペインティングナイフじゃなくて筆を使ってもいいからね!!」
世良さんと安室さんの方を伺うと、玄地さんの動きを確認しながら絵を描き始めている。
仕方がない、描くか。
緑色の背景に黒い耳、赤い口に白いギザ歯、鋭く伸びた白い爪をかざした黄色い目の猫を描いた。
「なんだそれ、兄ちゃんは化け猫を描いたのか?」
元太くんの無邪気な問いに事実を答えた。
「これは自分……好きなゲームのキャット・ザ・リパーを描いたんだ。」
「はい!皆さん全員が作り終わったところで見せ合いっ子しましょう!!」
なんとも言えない空気のなか、歩美ちゃんが最初に教卓の前に立って絵を見せた。
「歩美はお花!!哀ちゃんにあげるの!!」
純粋な思いに、きっと彼女も喜ぶだろう。
「僕は川とホタルです!!河原の凹凸感がうまくいったと思います!」
次は光彦くん。昆虫が好きなのか。
「オレはうな重!!うまそーだろ!!」
元太くんは勢いがあっていいな。
うなぎの肉厚感がよく出ている。
「ボクはピカソの模写!!顔No.197!!」
コナンくんは普通に上手いな。
……流石に子供の体と指の使い方には慣れているか。
「次はボクかな?双子星だよ!」
世良さんは抽象画か。
ダイナミックでコズミック……。
「僕はダリの記憶の固執の模写です。」
トリはを飾るのは安室さんか。
しかし、いくら何でも巧すぎる。
この人は何でも卒なくこなしてしまうな。
「みんなで拍手をしたら終わりです!感想はおうちに帰ってから言ってね!!」
パチパチという拍手の音が響いて、各々が画材の片付けに入った。
そのタイミングを見計らって玄地さんに声をかけた。
「先ほどは難癖つけて恥をかかせるようなことをしてしまって申し訳ありませんでした。……実は身内がエウリアンによる高額絵画売りつけ詐欺に遭ってしまって苛ついていて……玄地さんに八つ当たりのようなことをしてしまい……本当に申し訳ありませんでした。」
深々と頭を下げると、鈴を転がしたような声が落ちた。
「気にしないで!絵を商売にしてる以上品定めの確認や値切りの難癖には慣れてるから!!目立つ所に置いたのに作者表記をしなかったアタシも悪いし!」
玄地さんはペインティングナイフを回収しながら下を向いた。
「ボク達も探偵士さんの悪ノリに乗っかっちゃってごめんなさい。」
コナンくんが頭を下げて、世良さんと安室さんも続くと子供達の元気な声が響いた。
「「「今日はありがとうございました!!」」」
片付けが一段落した後、帰り支度を整えていると脇を突かれた。
「ところでデイヴィスさん、探偵士って何ですか?」
悪戯な笑みを浮かべる彼女に淡々と名称を説明した。
「マスターオブディテェクティブ。エドワード法により検察及び警察より72時間優先して捜査ができるんですよ。」
「彼女、特段変わったところはなかったなー。ただ、右手の中指と人さし指にタコが合ったから銃を扱う人がなる『ガンタコ』かもしれないけど、絵画用のナイフで重たい絵の具を塗るからついたタコかもしれないよね。」
子供達を家まで見送るとコナンくんからの見立てを聞いた。
「コナン君、絵画教室にあったフラッグガーランドの配色に気づいたかい?ボクは怪しいんじゃないかと踏んでるよ。」
世良さんの言った通り、絵画教室の室内には装飾が施されており、以下の通りのフラッグガーランドが下がっていた。
長方形の旗で左側が黄色、右側が青色。
長方形の旗で上段が青色、中段が白色、下段が青色。
長方形の旗で上段左側が黄色で右側が黒色、下段左側が黒色で右側が黄色。
「旗旒信号ですか……『連絡をしろ、さもなくば危険物を渡す、こちら側につけ』とも受け取れる。……警戒はするべきですね。」
安室さんの総括が終わると、おもむろに世良さんが先ほどまで描いていた絵画をこちらに渡した。
「これは渡せなかった退院祝いさ!良かったら受け取ってくれ!!」
突然の出来事でどう返すか迷っているとコナンくんからどつかれた。
「へー!!よかったね探偵士さん!!」
受け取った絵画を指でなぞるとザラザラとした触感がノイズが渦巻く内心とリンクしたようで居心地が悪くなる。
「ありがとうございます……部屋に飾りますね。」
頭を下げると、心配そうな世良さんと安室さんの瞳と目が合った。
「大丈夫かい?少し休息を取ったほうがいいんじゃないか?」
世良さんが顔を覗き込むと、コナンくんがボソッと呟いた。
「……命を狙われてるんだ。常に気を張ってしまうのは仕方がないよ。」
、、、
「また部屋に星が増えるな……。」
彼らと別れて歩道を歩いていると大きな赤いリアボックスのバイクが減速して隣に付けた。
「デイヴィスさんじゃないですか!……もしかして玄地さんの絵画教室に行ってきた帰りですか?」
ヘルメットから顔を見せたのは熊津さんだった。
「はい。良い体験が出来て良かったです。見ますか?」
そう言って自分が作った絵画を渡すと、不安げな声色が一変して楽しげな声になる。
「わぁ……切裂き猫ですね。いいなぁ……。」
熊津さんが絵画を指でなぞるので、言葉を返した。
「良かったら差し上げますよ。」
すると彼女はパアッと表情を明るくして絵画を抱きしめた。
「うれしいです……!大切にしますね。」
、、、
「さて、どうしたものか。」
部屋に戻って世良さんからのプレゼントを壁にかけ、椅子に座って尖らせた鉛筆を手慰みにしながらドリームキャッチャーを眺めた。
『風力階級:KLGQNHPVJLNHAMHDXYBKJDWWPSAYTMOIWEDHIGJRJHUI』
作業着のバックポケットに入っていた印刷物を眺め終わるとタッセル人形の頭に向かって鉛筆を刺し投げた。
「今のところ、こちらから動く必要は無さそうだ。」
あとがき
自分ちの周りの植生をみて、ロケ地になったら風景から地元だと分かったりしますよね
なかみについて(期間限定アンケ)
-
ややこしい(かため)
-
分かり易い(やわらか)