探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第二十六話 探偵士、探偵になる。

 

『探偵士くん!!明日の東都パークのセレモニー予行演習に君も行くのかい!?』

 

 工藤邸に戻って沖矢さんに玄関先で手土産を渡した後、突然ガラケー改が鳴った。

「すみません、誰からもその内容の話を伺っていませんね。」

 世良さんは本当にアグレッシブだな……。

 東都パークは確か没入体験型の複合施設として新設されるという情報を耳にした程度で、公安からもヴェルヴェーヌ経由から掴める組織の動向の導線にも無い。

『毛利探偵がセレモニーに呼ばれてるって話!!コナン君から聞いてないのか……』

 ……何も聞いていないな。

 ついさっきまで一緒にいたのに……。

 まあ……少年探偵団見習いというだけで、組織の構成員イザラとして認識されている要注意警戒人物だから、仕方が無いか。 

「聞いていないので……はい……」

 気不味くなった空気に沖矢さんが口を開こうとした時、唐突に声が張り上げられた。

『この間の謎の小島でチケットを貰ったろ?一緒に行かないかい?あのチケットは君を探偵として認めるものだからね!!』

 え……そんなこと言っていたっけ?

 がま口に折り畳んで入れておいた7枚のチケットを確認すると、確かに『謎解き名探偵』というスタンプが押されている。

「あー……でしたら他の人も誘いますか……。」

 沖矢さんの方に目をやると、手でバツマークを作って自室へと立ち去っていった。

『……梓さんでも誘ったらどうかな?……フェネックのぬいぐるみの件で誤解させてしまったようだし……』

 ……確かに世良さんと行くなら定例通り梓さんを誘うのが自然か。

「一度切りますね。」

 通話を切って、梓さんのメールアドレスに明日の予定を訪ねる文を送ると、程なくして『先約がありまして、今回は残念ですが行けません。また誘ってください』との連絡があった。

 そうそう直近の予定が空いているわけがないからな。

「もしもし、世良さん。梓さんは行けないそうです。」

 暫く受話口は静かだったが、落ち着いた様子で話は続けられた。

 

『そうか。……残念だね。……明日、いつもの公園で待ち合わせをしようか。9時に。2時間前に居るとか止めてくれよ!!』

 


 

「探偵士くん!!本当に2時間前に待っているなよ!!まったく……」

 

 公園でギルテスターに火をつけてふかしていると世良さんに背中をどつかれた。

「別に待っていたわけじゃなく……散歩していただけです。」

 吸い殻入れにタバコを押し付けると煙を下に向けて吹いた。

「屁理屈言うなよ!!」

 世良さんはベンチで隣に座りながら帽子の位置を手直しして笑った。

「帽子、似合ってますね。」

 ジーンズにシャツのボーイッシュな装いで、いかにも探偵を目指している者が着る衣装と言ったところだ。

「……ありがとう。」

 ……空気が滞りはじめたな。

 

「時間は早いですが、もう東都パークに向かいましょうか。高速が混むかもしれませんから。」

 

、、、

 

「ようこそいらっしゃいました名探偵の皆様!!『未来と過去の謎解きテーマパーク』である東都パーク『ワープターミナル東都』をご紹介致します!!」

 

 スーツを着た中年の男が両腕を広げてみせた。

 結局、サービスエリアでソフトクリームや軽食を食べたりして時間を潰す羽目になったが、世良さんが楽しそうならいいか。

 東都パークには特別なスタンプが押されたチケットを持つ数人と毛利探偵とコナンくん、そしてネットで見知った顔もおり、内装はシンプルながらも至るところにプロジェクター機器と音響装置が各所に設置されていた。

 床と天井には切れ目があるので香料やスモークなどが焚かれたりするのだろう、このような白い部屋が部屋がいくつかあり、別空間の風景を映していくことを『未来と過去』と『ワープターミナル』とするのだと伺える。

 ただ、此処とは別場所に本物の建屋を要する大規模な撮影所を用意してロケやコスプレの会場にするとも記事に記載があり、このエリアまではエレベーターで降りてきたため、地上が実物ロケセットエリアで地下が投影エリアの二段構成なのだろう。

「お!!工藤……くー……どうしてたボウズ!!」

 その中の一人、服部 平次がコナンくんを『工藤』と呼んだ。

 ……西の高校生探偵であるから、東の高校生探偵の秘密を共有されているのか。

「もー!!平次兄ちゃんったら!!」

 どうやら服部さんは『組織に工藤新一の生存が知られたら不味いことになる』との認識が甘いらしい。

 そして隣りにいる女性は背格好からして遠山 和葉だろう。

 ……他には背が高くジン程の背丈がある長い前髪で瞳が見えない緩いパーマをかけた茶髪に黒いジャージ姿の大男と、金髪にグリーンのメッシュを入れた若い男と、ウェーブした黒髪に垂れ目の男が居るが……。

「毛利小五郎大先生!!僕、またご一緒できて光栄です!!毛利小五郎オタクとしての栄誉っ……!!」

 くねくねと動くウェーブした黒髪の男に対して金髪にグリーンのメッシュの男が怒鳴り声を上げた。

「うるせぇぞ石川 元気!!」

 黒髪の男は石川 元気というらしい。

「怒らないでよ夏目 安慈くん!!まだ何もしてないでしょう!?ヒドイよ!!ね?毛利小五郎大先生?」

 金髪の男は夏目 安慈というらしい。

 随分とまあ……安直だな。

「毛利小五郎さんには別室でセレモニーの打ち合わせをさせて頂きますので……」

 中年の男は毛利さんを恭しく案内し始めると抗議の声が上がった。 

 

「オレ達はどないすればええんや!!人を呼んどいて後はご勝手には無いやろ!!」

 


 

「もちろん服部様には明日、ご登壇頂きます。セレモニーの予行演習ですので皆様には自動で案内がなされます。」

 

 中年の男はそれだけ告げて毛利さんと廊下に消えていった。

「探偵士も来てたのか!!あとで飯でも食いに行こう!!」

 毛利さんに手を振ると場には八人が残された。

 ① 自分

 ② 世良さん

 ③ コナンくん

 ④ 服部 平次

 ⑤ 遠山 和葉

 ⑥ 石川 元気 

 ⑦ 夏目 安慈

 ⑧ 謎の男

「とりあえず名前と職業を名乗っとくか?オレは西の高校生探偵 服部平次!!こいつは遠山 和葉……幼馴染や!!」

 指揮を執ったのは服部さんだった。

「ども……遺品整理士の蓬原(ふつはら) 喜八っす。」

 謎であった茶髪の大男は蓬原 喜八……。

「あー……俺はタクシー運転手の夏目 安慈、こっちは同僚の石川 元気です。よろしくどうも……。」

 夏目と目が合ったが一睨みされて視線はそれ以降一切合うことは無かった。

「僕はデイヴィス阿笠……探偵士です。」

 頭を掻いて苦笑いすると世良さんが前に出た。

「ボクは女子高生探偵の世良 真純!!よろしくな!!」

 更に前にコナンくんが出て手を上げると元気よく挨拶してみせた。

「少年探偵団の江戸川 コナンです!!よろしくお願いします!!」

 自己紹介をし終えると、壁に色が付き始め景色が変わっていき、みるみるうちに天井まである本棚に囲まれ、革張りの椅子と重厚感がある木彫りのデスクに緑のバンカーランプが四方から光線の錯視により立体感を持ち始めた。

『名探偵の諸君。皆には犯人の特定をしてもらいたい。協力し力を合わせ、三人寄らば文殊の知恵と言うだろう!?ハッハッハ!!』

 デスクの向こう側から声がして、皆で顔を見合わせた。

「ええーっ!?僕たちが名探偵になるってことー!?」

 石川さんが両手で顔を押さえて叫びだした。

「うるせぇっつってるだろうが石川 元気!!話が終わってねぇ!!」

 夏目のほうがうるさい。

 

『デスクの上に犯行声明文がある!!まずはそれを解読してくれたまえ!!』

 


 

「わー!!紙が浮かび上がってきたよ!!」

 

 コナンくんが指差す先には犯行声明文と思わしき紙が投影された。

『0x49 0x20 0x61 0x6d 0x20 0x61 0x20 0x64 0x65 0x74 0x65 0x63 0x74 0x69 0x76 0x65』

 ……えっと。

「なんだよ簡単じゃねえか!!ASCIIコードで『I am a detective』だろ!?」

 夏目が得意げに答えるとファンファーレが鳴り、風景が切り変わった。

『その通り!!探偵からの挑戦状だ!!その裏にはまだ何か書いてあるぞ!!』

 裏側に回ると投影が変わった、まるでレンチキュラーレンズのようだ。

『123 223 3 133 223 3 133 312 2 21 3 331 223 223 122 133 223 313 3 33 333』

 これは……。

「……マイヤーの円盤っすね。南北戦争で使われた手旗信号……。『Go to the rooftop.』……合ってます?」

 蓬原が此方を見下げて確認するとファンファーレが鳴った。

『御名答!!さあさあ屋上にやってきたぞ!!』

 声がする通り、場面が屋上に切り替わった。

 そして5階建て程度の屋上の風景になると街路樹が大風に揺れるに伴って一方向から風が実際に流れてきた。

『名探偵の諸君!!北はどっちかな!?』

 流石に夕方の風景で星空に一番星が見えないようなこの状況から方位を絞り込めと言うならば

「あっちじゃないですか!?偏西風なら北はあっち!!」

 石川さんが指をさすとまたファンファーレが鳴った。

『その調子だ!!おっと、君たちに犯人からの電話が鳴っているぞ!?』

 携帯の着信音が鳴ると、自動で受け答えが成された。

『今からヤマハレに逃げる』

 音声には防災無線のメロディと轟音、レールが軋む音が乗っている。

「この音……防災無線の家路だ。家路を採用している市は多いけど愛知……千葉茨城埼玉東京で使われていて特有な轟音……路線はエクスプレスだね。」

 世良さんが答えを述べると、服部さんが付け加えた。

「それに『ヤマハレ』はツクバを示しとるからな。間違いないやろ。」

 またしてもファンファーレが鳴り、景色は河川敷に移り変わった。

 

『ククク……よくぞ辿り着いたな……名探偵諸君』

 


 

「あほらし、はよ終わらせんと。」

 

 服部さんが溜め息をつくとナレーションが始まった。

『君たちが乗っている渡し船のエンジンが壊れてしまったようだ。』

 観光船サイズの渡し船の映像と共に他の人間たちが隙間に投影され、慌てふためいている。

 同時に黒煙が下から流れ込んできた。

 ……黒煙はリアルな熱を持っている。

 そもそも川幅と底が狭いイバラキの河川敷に観光船サイズが現れたら運航不能になるのも頷けるが。

『ラッキーだな!!そうこうしているうちに救命艇が着いたぞ!!この隙に船長に化けた犯人を探し出してみたまえ!!』

 投影された像から割り出すにしたって

「あ!!分かった!!乗客さん早よ救命艇に乗って!!最後に残った人が船長や!!」

 ……そう都合良く『The captain goes down with the ship』の精神で犯人が船長として乗っているか?

 乗っていたようでファンファーレが鳴ると遠山さんがぴょんぴょんと跳ねた。

「当たった!!やっぱりアタシも勘が冴え渡ってるわ!!」

 壁の景色が変わると広い湖畔と水面が映し出され、冷たい風と共に靄がかかり始めた。

『名探偵諸君、ここはどこか分かるかな?仙人の衣住外に潜むもの……ククク……』

 それを聞いた瞬間にコナンくんが挙手をした。

「はーい!!仙人の衣住外、つまり『食』に潜むもの、仙人は霞を食べるんでしょ?霞の裏側、カスミガウラだ!!」

 ファンファーレが鳴ると靄がライトアップされキラキラと光始めた。

『よくぞ霞の探偵である私を追い詰めた!!君たちを真の名探偵と認めよう!!』

 真の名探偵ってなんだよ。

 ナレーションが終わるとエンディングソングが流れ『ミッションコンプリート』と天井に映し出された。

「なんや、もうこれで終いなんか?案外あっけなく終ったな。」

 服部さんが溜め息をつくと投影された映像が消え去り、木枯らしのような強風が吹き抜けて元の白い壁と床が現れた。

 

「平次兄ちゃん、最後に投影されたベストタイム見なかったの?想定では1時間以上掛かるようになってたみたいだから、15分で終わるのは想定外だったんでしょ!!」

 


 

「おれ達のグループ、フリーWiFiが提供されてるのにスマホで検索すらしなかったんで……早い方だったんじゃないっすかね……。」

 

 蓬原がボソボソと相づちの言葉を述べると、和葉さんが首を傾げた。

「早く終わったなら次の指示があるんちゃう?部屋を出てくださいとか、待機してくださいとか。」

 確かに謎解きをするにあたって人間が回答すれば正解ないし不正解の映像や音源を流しているのだから、流石に全AI化では無いだろうからトラブルや詰まった人間に対する介入をする監視員が居るはずだ。

 スモークや風等を機械が判断して自動送風しているとしたら安全管理に問題がある。

「手を振ってみないか?……おーい!!もうクリアしたよー!!」

 世良さんが天井に向かって手を振ってみせるが何の反応も無い。

「ハァ……とりあえず目の前にあるドアから出ようぜ。入ってきた側のドアは施錠されてる。」

 夏目が髪を掻き上げながら両開き扉の取っ手部分を握って開けると、鉄錆に似た臭いが室内に流れ込んできた。

「血の臭いまで再現するとは企業努力の方向性が……」

 その後に続いて歩く服部さんの足が止まった。

「……人が亡くなってる。」

 コナンくんが駆けていき、それを目で追うと複数の部屋に繋がっているであろう廊下の左端で亡くなっている女性を視認した。

「来るな!!ホンマもんの事件や!!素人の出る幕はない!!」

 服部さんが叫ぶと、すかさずコナンくんが横槍を入れた。

「探偵士さんは一応少年探偵団の一員なんだ!!だから捜査に加えてあげてくれない?」

 その言葉に服部さんは顎に手を置くと、此方を睨んだ。

「探偵士ぃ?まさかキッド・ピストルズからの引用や無いやろな……アンタ何者なんや?それにタッパのデカい蓬原っちゅうたっけ?アンタもそうや……なんで拳銃を携帯してるのか説明してもらわん事には犯人の有力候補にするしかないやろ。」

 ……今日に限ってはヒップホルダーではなく上着のショルダーホルダーに仕舞って居たのに、作業着の外見で見破るのは至難の業の筈。

「僕は少年探偵団の見習いマスターオブディテェクティブ、探偵士です。」

 余計な名乗り口上はせずに麻薬取締官証を見せた。

 それを聞いた蓬原は服部さんに歩み寄って何かを提示した。

「おれは入国警備官です。……関税から模造拳銃の設計図面が押収されたと聞いて拳銃を携帯していました。」

 ……設計図面は紙か電子なのかは分からないが、入国警備官がプライベートで拳銃を携帯しては不味いだろう。

「入国警備官の拳銃の携帯許可は業務中のみの筈だろ?」

 世良さんが見上げるようにして蓬原に詰め寄ると、深い溜息を吐いたあと別の手帳を見せた。

「……これはあなたたちを信頼してみせています。おれは警察庁警備局警備企画課……公安のゼロに所属している者です。」

 ……そう来たか。

 

「……ま、アンタが公安なのかは知らんが、探偵士といいアンタら二人は信用できへん。止めはせえへんから、現場だけは荒らさんでくれ。」

 


 

「遺体はこめかみを拳銃で撃たれている……。」

 

 硝煙の臭いは残っておらず、血液の飛沫が少なく血溜まりが頭部の周りに出来ている。

「キャアア!!毛利小五郎大先生を呼ばなきゃ!!呼んできますっ!!」

 石川さんが駆け出そうとするのを夏目が首根っこを掴んで止めた。

「バカ!!第一発見者が逃げてどうすんだよ!!スマホを使え!!」

 閃いたような顔をして石川さんが毛利さんに電話をかけ始めたが繋がらないようだ。

 その間に和葉さんが警察に連絡を済ませた。

「……妙じゃないか?この遺体、事務員のジャケットにタイトスカート、ハイヒール……なぜキチンと身につけて仰向けで倒れているんだ?」

 世良さんが指摘するように、遺体の女性は着衣に乱れはなく、何よりハイヒールを履いている。

「襲う目的やなかったからバンッて撃って逃げたんやない?」

 その視点ではない。

「このご遺体はハイヒールを履いているんです。仰向けで大の字になっているのに。撃たれた場合、前方でも後方からでも倒れたときに靴が脱げたりズレる筈ですからね。」

 その説明を聞くと夏目が声を上げた。

「タイトスカートがズレていないからな!!普通は衝撃で脚が動いて乱れるだろ!!」

 廊下を行ったり来たりしていた蓬原が服部さんにボソボソと報告をし始めた。

「……弾頭が見当たらない。薬莢は持ち去ったのかもしれないですが、弾痕が無いので殺害場所は此処では無いのかもしれないっす……。」

 静かに聞いた平次さんは遺体の手にあったメモを開いてみせた。

『sh sh sh lh lh sh sh sh sh sh lh sh lh』

 ボールペンで書かれており、ボールペンも手に握られている。

「中身は『? VA』……謎は終わった……という意味でしょうね。」

 するとコナンくんが静かに否定の言葉を零した。

 

「謎は終わっちゃいねーよ。……これは被害者が残したダイイングメッセージなんかじゃない……犯人からの挑戦状だ。」 

 


 

「なんてこった……殺人事件とは……。」

 

 毛利さんと千葉刑事、目暮警部が現場に駆けつけて容疑者を集合させた。

 

 彼らの話をまとめるとこうなる。

 遺体の女性は接客担当の打部(26)。

 こめかみを撃たれて即死だったであろう。

 死後硬直は始まっていない。

 瞼は両目とも閉じられている。 

 口元に涎が流れているのみ。

 争ったような形跡、着地の乱れは無い。

 タイトスカートやハイヒールの状態から別の場所で殺害されたのだろう。

 

 彼らについて。

 彼らは同僚であり、予行演習ということで限られた人数で回されていた。

 女性は柄区(27)、風や匂い、音の調整をする演出担当だった。

 男性は湧井(28)、監視と実行処理担当だった。

 もう一人の男性は瑞(25)、倉庫物品担当だった。

 柄区と瑞は倉庫におり、湧井は監視ルームに居た。

 

 現場について。

 廊下の左端はスタッフルームに繋がっており、臭気を流す監視ルームと倉庫、従業員待機室があった。

 その従業員待機室には弾痕とそれを隠そうとするパテが塗りかけで残っていた。

 倉庫には大型の台車が残されており、台車には血痕をふき取った痕があった。

 

「ま、犯人は分かったわ。アンタら二人がそれなりの人間ちゅうなら見立てを言うてみい!!」

 

 見立てについて。

 打部は従業員待機室で銃殺され台車に運ばれた。

 

「ま、待ってくださいよ!!私たちは従業員待機室の直ぐ真隣に居たんですよ!?白い部屋……投影エリアは没入体験のために防音になってますが、監視ルームと倉庫の壁の厚さなら発砲音が聴こえますよ!!」

 柄区の言うとおりだろう。

「倉庫では発煙する物品があった……なら発泡スチロールもあったんじゃないっすか?」

 瑞は頷いた。

「はい!!発泡スチロールは有りました!!」

 それならばこうだ。

「発泡スチロールをサイレンサーの代わりに使ったんでしょう。」

 すると枠井が声を上げた。

「なら発泡スチロールは何処に行ったんですか!?」

 仕方が無いので監視ルームに向かうと、続く別室に煙を焚く可燃室が併設されていた。

「此処で燃やした。だから黒煙がやたら熱を持ってリアルだった。最後の風は客を一酸化炭素中毒にしないためではないですか?」

 湧井はわなわなと震え始めた。

「私が打部さんを殺害したと!?監視ルームに居ましたよ!!」

 それが決め手であるんだよな。

「……監視ルームに居なかったから、おれ達が早くに終わった事に気づかなかったんじゃないっすか?」

 自分達の推理を聞くと服部さんが口を開いた。

 

「……瞼が閉じとったからな……アンタが閉じさせたんやろ。スカートもハイヒールもキチンと履かせて。……指紋で分かる。」

 


 

「結局、ストーカーが模造拳銃を作って殺害し遺体を整えてしまった。模造拳銃は可燃室の炉の中に隠されていた。……今日だった理由は『彼女を名探偵に看取られる悲劇のヒロインにしたかった』からという身勝手極まりないものだった。」

 

 千葉刑事と目暮警部はコナンくんと毛利さん、服部さんから事情を聞き始めたので、その場を後にしようとすると視界を黒いジャージが塞いだ。

 ……僕も沖矢さんや安室さんと背格好が似ているから高い方だと思っていたが、認識を改めるか。

「……どうも、トリックスターさん。」

 見下げた瞳には感情が映って見えない。

「初めまして。……テクニシャンの蓬原さん。」

 差し出された右手を握った。

「……探偵士くん、知り合いかい?」

 世良さんが不安げに顔を覗き込んだ。

「……デイヴィスさんは警察以外でも国家公務員の中で噂になってるっす。……異例の経歴ってことで。」

 当たり障りのないことを答え、名刺交換をした。

 チラリと夏目の方を見ると『毛利小五郎大先生の推理ショーがっ!!』と騒ぎ立てている石川さんを羽交い締めにして止めていた。

「なあなあ、えーっと蓬原さんとデイヴィスさんやったよな?平次が失礼なこと言ってすみません。悪気はないんです。」

 遠山さんが駆け寄ってきてペコリと頭を下げた。

 拳銃保持者を警戒するのは至って当然のこと。

「いえ……僕は別に……。」

 頭を掻いて頭を下げると遠くから大声が聞こえた。

 

「オレはアンタら二人を認めたわけやないからな!!」






 あらすじ


 事件を考えるの出来るときと出来ないときある

なかみについて(期間限定アンケ)

  • ややこしい(かため)
  • 分かり易い(やわらか)
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