探偵士、少年探偵団と出会う。   作:ummt

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第七章 ノワール
第四十六話 探偵士、覚悟を決める。


 

『アナタの再現したミニ・パシフィック・ブイは明後日ラムの元で実演なさい』

 

 ベルモットは相互許可であった盗聴器を外し、秘匿通話で連絡をして来たが、ジンが襲来するであろうことは周知の事実であるからか、言及は無かった。

 パシフィック・ブイで潜水艦の中に直美・アルジェントと供に捕らえられているシェリーの方は毛利さんと白鳥警部、それに黒田管理官が居れば救い出せるだろう。

 ピンガの方は変装しているにせよ、同じ方舟に居るのだから逃げる事も隠れる事も出来まい。

 あの場にはコナンくん……工藤 新一もいる。

 それに技術者とシェリーかどうかも分からない子供を殺害する程、キールは愚かではない。

 ……ジンが潜水艦に降りる前に問題は解決するだろう。

 自分が動けば動く程『哀ちゃんがシェリーではないのか?』という疑念が燻り再び湧き上がる。

 

「分かりました、ベルモットさん。明後日にラムの使者が来るという認識で戻っていますよ」

 

 、、、

 

「……とっくに退勤時間は過ぎていますよ? デイヴィスさん」

 

 八丈島から一足先に戻り、喫茶ポアロで身辺整理と仕込みをしていると、窓の外の暗闇から声がかけられた。

「……八丈島からもうお戻りでしたか」

 ……バーボン、何故コナンくん達と同行していないんだ。

 公安警察官は貴様だろうが……。

「あれ? 八丈島に居たとよくご存じでしたね……誰の命令で動いていたんですか?」

 ……本当に『個別に』動かされていたのか。

 ベルモットが動き、ラム直下の指示ではないなら…………あの方の意図が働いていた……ならば、『防犯カメラネットワーク』の認証システムを組織の面々から隠す形で個別にバックアップを取る必要があった。

「え? ……僕はパシフィック・ブイを見に行っただけです。アナタが黙って出ていき、行き先が普段の落ち合う場所ではないなら……何かの指令でしょうから」

 バックアップを初日に取るのならメインマシンに不具合が発生することを見越すか、メインマシンを要しない……。

 成る程。

「それはアナタに関係ありません。組織の指示系統と公安の指示は別物です」

 関係あるだろうが。

 それよりもあの方だ。

 あの方が再現したバックアップの所有者になる目的ともすれば、あの方個人の使用……つまり『老若認証システム』にあの方自身に都合が悪くなる情報がある。

 ……あの方もアポトキシンを服用して若返りをしている? 

 または、現在のあの方自身の姿があの方を知る旧知である者達の認識とかけ離れている? 

 性別、年齢、姿形が異なっているため詮索されると不味いのか。

 

「なら貴方にも関係ありませんね。僕は今日限りで辞めさせて頂きます」

 


 

「……は? アナタは梓さんがわざわざ引き留め、僕に頭を下げて『クビを撤回して下さい』と願い出たことをご存じ無い?」

 

 存じ上げるわけ無いだろうが。

「……そうですか。彼女には悪いことをしたな……」

 梓さんというカードを切るんじゃねえよ。

「彼女、いつもアナタが居ない時に『私に魅力が無いのか』と相談を持ちかけてきて、必死にアナタの心を掴もうとしていたんですよ?」

 ……その惚気は聞いた。

「……はぁ、馬鹿な女だ。ハーフだからって擦り寄ってきて……鬱陶しい」

 オーバーリアクションで手を広げると襟を掴まれ、青筋を立てた情報と目が合った。

「……彼女を馬鹿にするな。デイヴィス……」

 その言い草が互いの逆鱗に触れ、思い切り殴りつけると顔面にストレートを喰らった。

「トリプルフェイスが恋愛ごっこ出来るわけが無いだろうが!!」

 テーブルと椅子を薙ぎ倒して取っ組み合いに発展し、メニューの角で互いの肩を殴り合った。

「デイヴィス!! お前はトリプルフェイスであっても梓さんと交際くらいできるだろうに、それをせず出来ない言い訳を述べて僕に八つ当たりしているだけだろう!!」

 無言でバーボンの腹を殴った。

「……組織」

 再び腹を殴った。

「組織がなんだ!! 梓さんを愛する覚悟が足りないだけの卑怯者だ!!」

 バーボンから腹を殴られ、形勢が逆転した。

「一般女性を愛するという事は……組織から狙われるウィークポイント、人質にしてしまうという事だろうが!!」

 床に背をつけた状態で首に手を回すと腕を掴まれた。

「ウィークポイント!? 自分の力で組織から梓さんを守り抜けばいいだけだろう!!」

 駄目だ、もう我慢ならない。

「365日!! お前なら組織から守れると誓えるのか!!」

 バーボンは躊躇いもせずに言い切った。

「ああ!! 僕なら梓さんを守り抜ける!!」

 ……手の力が抜けた。

 圧倒的な無力感と脱力感……事実と実績により裏付けされた自信という頂に勝てるものなど何もない。

 

「……そうですか。……僕にはもう関係ないので……失礼します」

 


 

「デイヴィス……行くのか……」

 

 ズタボロになったシャツを羽織り直して店外に出ると、路地の先で風見さんが立っていた。

「はい。……風見さんには色々とお世話になりました」

 頭を下げて公安から配給された物品と貸与された銃、麻薬取締官証を渡した。

「……これを渡すということは、君は今『組織側』であると証明するようなもの。……逮捕勾留してもいいんだぞ」

 そうやって聞いてくれるということは、道を開けてくれるのか。

「僕にはやるべき事がありますから……」

 苦笑いして頭を掻くと腕を掴まれた。

「私は君を信じている。……まだ二人でカブトムシを捕りに行っていないだろう」

 真剣な顔をしている成人男性から出てくる言葉とは到底思えず、思わず笑みが溢れた。

「そうですね……カブトムシ……」

 言葉に詰まり、下を向くと手を握られた。

「握手だ。初めて君にあった時もそうしただろう」

 彼の手のひらは硬く苦労が伺えるカサついた表皮をしている。

「そうでしたね。……貴方が公安の同僚で良かった」

 固い握手を交わすと、風見さんはポケットからイヤホンが付いたMDプレイヤーを手の平に差し出した。

「……これは君からの盗聴音声でよく流れていた、みんなのうただ。……君に送ろう」

 イヤホンを片耳に入れると、爆音トラップだとかの類は一切なく『マスクド・カメロ』が流れ始める。

「……僕、この歌大好きなんです。みんなそれぞれの役割があって……光の中、喝采を受ける者だけが主役なのではないって教えてくれる気がして……」

 イヤホンを聴きながら、ひたすら涙を流す僕を風見さんはただ何も言わずに見守っていた。

「そうだな。誰が主役かは捉えるものによって違う。レフェリーや観客かもしれない」

 MDプレイヤーをシャツの胸ポケットにしまうと、最後にもう一度深々と礼をした。

「黒田管理官にも『お世話になりました』とお伝え下さい。……残された人達のケアもよろしくお願いします」

 そして、スラックスのポケットにしまっていた星型の蓄光シール一枚を彼の手に渡した。

「……ダイイングメッセージのつもりか。……生きて帰ってこい」

 感極まった声に、また涙腺が刺激するのをグッと堪えた。

「僕は星になって風見さん達を見守りますから!! 僕を信じてくれてありがとう!! 風見さん!!」

 そう言って手を振って、その場を後にした。

 

「……死ぬな、デイヴィス」

 


 

『玉手箱は木っ端微塵になったわ』

 

 ピンガもろとも破壊するとは……。

 いくらシステム設備や施設を破壊したところで技術の進歩により第二第三の後継機器は必ず生じてくるのだが。

 それでも猶予を優先したか……。

 ベルモットからのメールに『了解』とだけ返信した。

 明後日のラムとの面会間での間に必ずジンはウォッカから『イザラが被験者の可能性がある』との一報を耳にして必ず暗殺に訪れる。

 潜水艦とヘリによる移動は必ず港と飛行場に停泊、着陸しなければらないため此処に辿り着くまでには時間がかかる。

 残された時間はあと半日ほどといったところか……。

 工藤邸に戻るわけにもいかず、いつもの公園で夜を過ごしていると聞き慣れた足音が忍び足で近づいて来るのがわかった。

「世良さん、何のご用でしょうか」

 振り向かずに真正面を見据えたまま声をかけると、足音は止まった。

「なんだよ探偵士くん。……気づいてたのか」

 流石に素人の足音を聞き逃すヘマはしない。

「ランタンの修理は終わったはずです」

 世良さんは冷たく言い放つ口調を気にする様子はなく、ベンチの隣に腰掛けて宇宙を見上げた。

「君のダイイングメッセージは分かりづらくてさ!! いまのうちにヒントを貰っておこうかとね!!」

 声は若干震えを帯びて、瞳は潤んでいる。

「死者になる前に解説を願い出るとは突飛な発想ですね」

 彼女に渡したランタンを囲む銅板は二つのメッセージが仕込まれている。

 一つは六畳間の中央に置いた時に床壁天井に映し出される一連の光線の流れがある河川の流れに見えるもの。

 一つはパンチング加工された穴を河川付近の拡大地図に照らし合わせると、一つの新たな座標が生まれるもの。

 その新たな座標が星にした者たちの『慰霊のための供養塔』を示している。

 彼女に解けないはずがない。

「……ボクは君に……行ってほしくないんだよ」

 声は弱々しくなり、シャツの袖を握られる。

「残念ですが、それは無理な相談です。……風邪を引きますから早く戻りなさい」

 手首を掴んで袖から剥がすと、震えた声でベンチの座面を握りしめた。

「ボクじゃ……ボクじゃ駄目なのか?」

 深い溜息をついて天を仰いだ。

 

「貴方には託した使命があるでしょう……。貴方は特別ですから……」

 


 

『あら、まだ米花町に潜伏していたとは驚きだわ』

 

 深夜、森に囲まれている立地のせいで真っ暗な闇に包まれた公園のベンチで仮眠を取っていると探偵バッチからシェリーの声が聴こえてきた。

 明後日……いや、明日にラムと対面するのに拠点としていた米花町から離れてしまえば、それこそ『離反謀反の企て』の証左としてラムからの信用を失い、ジンに『裏切り者は消す』という大義名分を与えることになる。

「え? ああ……うん……」

 ベンチの硬い座面に寝そべりながら話を続けた。

『……私や江戸川君は貴方の計画を知らないのに、貴方は私達の動きを先回りして知っている。……こんなの不公平じゃない』

 そう言われても、僕の本来の業務は諜報員だからな……。

「それは不公平にはならないよ。哀ちゃん達だって僕の探偵バッチに内蔵されたGPSで、所在地を確かめれば良かったでしょう? 違うかな」

 ただし、内蔵された位置情報を秘匿する手段を手法を変えて幾度となく試したから……前提条件が成り立っていないが。

『そんなことを言って、肝心な時に限ってアナタの位置情報が追えなくなる……流石ね。でも一つだけ、アナタは重大なミスを犯したわ』

 ミス……? 

 ベンチに座り直して、慎重に失敗した箇所を問うた。

「ミスってどんなミスかな? 今後の参考にするから、教えてくれない?」

 小さな探偵バッチを握りしめて発話を待った。

『……八丈島で私を追うために海に飛び込んだ江戸川君を助けたのはアナタでしょう?』

 江戸川 コナンを助けた事がミス……? 

「さあ、知らないな……コナンくんは夜の海に飛び込んだの? 寒くて暗かったろうに……風邪とか引いていないといいけど」

 シェリーが無事米花町に戻り、探偵バッチを経由して連絡を取ってきている事実からコナンくんも大きな怪我を患ったり風邪を拗らせては居ないだろう。

『惚けないで。博士が海岸から立ち去るアナタを見たと言っているの。光の届かない海中から彼を救い出す芸当なんて出来る人間なんてアナタを置いて居るはずがないもの』

 ……沖矢さんやバーボンの可能性もあった筈だ。

「買い被り過ぎだよ。……ところで、肝心のミスって何かな」

 脱線した話を戻すと、淡々と過ちを述べられた。

 

『アナタのミスは悪役に徹しきれなかった事。……アナタは研究施設で働く私に逃亡ルートを命懸けで渡していた、軽薄で浅はかな構成員を演じていたイザラだからよ。弱く優しいアナタだから……アナタの計画は失敗する。……だから子供達の下に戻って。……お願い』

 


 

 。。。

 

「デイヴィスさん、大好きです!!」

 

 梓さんがニコッと笑って抱きついてきた。

 "僕もです"

 そう口に出したくても声が出ない。

「……はあ? 無視ですか? 最低……あ! 安室さん!!」

 隣を見ると微笑みを称えたバーボンが腕を広げて立っていた。

「梓さん、好きです。僕と結婚しましょう」

 "行かないで"

 彼女を引き留めようと藻掻くが、身体が金縛りに遭ったように動かない。

「はい!! 安室さんはイケメンだし優しいしスマートだし何でも出来ちゃう完璧な男性だから大好きです!! 抱いて下さい!!」

 梓さんはバーボンの胸に飛び込んで固い抱擁を交わした。

 "梓さん"

 声が出ない、どうして? 

「梓さんったら……可愛い人ですね」

 バーボンは彼女の顎を引いて深い口付けを何度も交わした。

 "見たくない"

 必死に目を閉じようとしても、瞼が固定されてしまっているように動かない。

 バーボンの手が彼女の背中を撫で、下に降りていく。

 "やめて"

 次の瞬間、背後から腹に手が回された。

「探偵士くん……ボクじゃダメかな?」

 世良さんの声だった。

 振りほどこうとしても、動くことが出来ない。

「君が好きなんだ……旅館で見た光景を……ボクでしてよ」

 シュルリと浴衣の帯が抜かれた音がした。

 "貴方とは出来ない"

 背中には体温が伝わってくる。

「梓さんがダメなら、ボクでいいじゃないか」

 "そんな理由で貴方を傷つけられない"

 すると体温は急に冷たくなった。

「意気地なし」

 その言葉で前を向くと、目の前には大人の姿のシェリーが立っていた。

 冷たく廃棄物を眺めるような目で僕を見た。

「研究施設を抜け出してアナタと一緒に暮らそうと思っていた私が馬鹿だったわ。アナタは見てくれも悪いし、要領も悪いし失敗ばかり。アナタみたいなどうしようもない男を愛する女性などこの世に存在しないわ」

 そう言って手を叩くとバーボンと梓さん、世良さんと沖矢さんが現れた。

「私、安室さんの事がずっと前から好きだったの……」

「僕もですよ梓さん……二人で幸せになりましょうね」

「兄貴、ボクはツマラナイ男に時間を盗られちゃったよ」

「真純、駄目な男に引っかからないようにしなさい」

「何がトリプルフェイスよ。何もなし得なかったくせに」

 そう言って五人は光の射す方へ歩いていった。

 "置いて行かないで"

 手を伸ばして叫ぼうとしても身体が動かない。

 "僕を一人にしないで"

 藻掻こうとしても何も出来ない。

「だって、アナタは空っぽ、模造品の紛い物なんだもの。代役は居るから心配しないで」

 シェリーが振り返ることなく、ヒールを鳴らして光に入っていった。

 "僕は空っぽなんかじゃ……"

 そう言いかけると、自分の身体が透明になっていく。

「あれあれ? どうして消えていくのかな〜?」

 声の主はおさげの三つ編みに千鳥柄のハンチング帽と同じ柄のケープとサロペットワンピースを身につけて、指を顎につけてふらふら揺れた。

 "知らないよ"

 早くしないと透明になってしまう。

「あたしは『看破探偵 希望峰ラセンちゃん』だよ? トリックわかっちゃいました!!」

 "早く教えて"

 希望峰はくるりと回ってワンピースを翻した。

「頭が悪くて可哀想なデイヴィスさんには教えてあげな〜い!!」

 "どうして"

 その間も身体はどんどん消えていく。

「だって、答えは『既にある』から!! やった〜事件解決ね!!」

 希望峰は此方を見てケタケタと歯を見せて笑った。

 "助けて"

 涙を流すと透明になった身体と混ざり合って消えていった。

「本当は答えを知っている。それを見ようとしないのはお前だ。エルダー」

 すると希望峰の顔が真っ黒になり、黄色い目に赤い口、白いギザ歯を見せる『キャット・ザ・リパー』の姿になった。

 "本当に何も知らない"

「デイヴィス阿笠、イザラ、ギルテセブン、エルダー・ブルドン」

 猫は歯を剥き出しにして笑った。

「お前は透明になり、チェシャ猫になるんだよ!!」

 何処からともなく無数の鏡が湧き出てきて、本来映るはずの僕の姿は無く、笑う口だけがそこにあった。

 

「そうか……僕が真犯人だったのか」

 

 。。。

 


 

「おお! 阿笠さん。朝早くからいらしたとは……お身体の具合はよろしいんですか?」

 

 悪夢を見た翌朝、朝一番に玉木古書店の店長である玉木さんの下を訪れた。

「頼み事をしたくて……もし僕を訪ねてくる人がいたら、以前僕が購入した本のリストを提示して欲しいんです」

 すると穏やかな笑みを浮かべていた表情は段々と曇っていった。

「……構いませんが。それはつまり……阿笠さんは遠くに越されるという事ですか?」

 年の功と言うやつか、察しが良い。

「ええ……まあ。そんなところです。玉木さんには色々とお世話になりました」

 深々とお辞儀をして頭を下げた。

「……頭を上げて下さい。……見慣れない身なりのせいか、以前と雰囲気が違うように思います。……身に纏った空気が鋭い。……何か重大な事をするんですか?」

 今の自分は、そこまで思い詰めて崖から飛び降りるような表情をしているのか? 

「あはは……心配をかけてしまったのならすみません。今日は新しい仕事の面接なんです。購入リストは僕と同じ暗号マニアが玉木古書店を訪ねたいと言っていたので、リストがあった方が本選びにいいかと思った次第です」

 作り笑いを浮かべながら頭を掻いた。

「そうでしたか……私はてっきり……」

 玉木さんは安堵の溜息をつくと、了承の頷きをしてくれた。

 

「ありがとうございます玉木さん。……お世話になりました」

 

 、、、

 

「夏目」

 

 前に仕込んだGPSを外していなかった夏目 安慈……シャルトルーズが停留所で待機しているタクシーの運転席の窓を爪で叩いた。

「……夏目 安慈」

 シャルトルーズは無視を決め込むつもりのようで、スマホで『ニルズ・ファージング監督がギルテセブンIIの撮影開始!? 東都パーク内ワープターミナル東都は貸切中!! 見学のご予約は抽選となっております!! 詳しくは……』という東都パーク公式サイトを無心で眺めている。

「……シャルトルーズ」

 コードネームを呼び、手の甲で窓ガラスを叩くが反応が無い。

「シャルトルーズ」

 仕方がないので後部座席側に回り込み、思い切り拳で窓ガラスを割ると流石に驚いたようで後ろを振り向いた。

「……お前……一般のタクシー配車会社の車だぞ……何ぶち破ってんだ……」

 強化ガラスは粉々に砕け散り、車内に流れ込んだ。

「タクシーを使いたい」

 左手に刺さったガラス片を取り除きながら反対側の後部座席に乗り込んだ。

「馬鹿か……後部座席が粉々のタクシーなんざ直ぐに警察に止められるぞ」

 シートベルトを締めると持ってきた工具箱を隣に置いた。

「交通課や捜査一課に顔見知りが居るから、万が一止められても問題無い。早くしてくれないか?」

 シャルトルーズは大きく溜息をついてエンジンを駆けた。

 

「行き先は『ワープターミナル東都』だろ……。法定速度遵守でかっ飛ばして行くから身を乗り出しするなよ!!」

 

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