夢とロマンの物語   作:蛍火ハル

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夢とは、なんなのでしょうか?
ロマンとは、なんなのでしょう?

そして、勇気とは?

本当は怖い、怪我をするかもしれない、死んでしまうかもしれない。でも、君と一緒なら、僕は勇気を出せる


『君が僕を信じてくれたように、僕も君を信じます』


他者を信じる心、自分を信じる心、それが、勇気を生み出す


第1話

・夢とロマンの物語・

 

さそり座の胴体に位置する豊かな惑星とその星雲が、その日、星の海から消えてなくなった。

 

地球にやってきた若き光の魂は、1人の少女の前に降り立った。

 

『僕の名前はテオ。僕の故郷は、あのさそり座の中心にありました』

 

少女--絵鈴の意識の中で語りかける、ひとりぼっちの宇宙人。

 

「どうして私のところに?」

 

『それは、わかりません。気がついたら僕は、ここに、あなたの中にいました。』

 

絵鈴は先日拾ったクリスタルを手に取る

 

「私がこれを拾ったから?」

 

『そうかもしれません。それは恐らく、僕の大切な物…僕の一部と言ってもいいかもしれません』

 

それがなんなのか、テオも分からなかった。あるいは思い出せないだけなのか

 

「教えて。私はあなたに、何ができるの?」

 

『それは、…そうですね。あなたがよければ、僕をあなたの中で、しばらくの間、休ませてくれませんか。決してあなたの心に立ち入るようなことはしません』

 

絵鈴の答えは最初から決まっていた。

 

「もちろん、OKよ。そしてもし可能なら、私の体を使うことだって許します。」

 

『本当に?ああ、なんて優しい心を持っているんだ』

 

「私は別に…。でも、そう…ひとつ言えるのは、この星も、前ほどそんなに穏やかなところでもないから…」

 

『それは、どういう意味ですか?』

 

「この地球に、数ヶ月前から、怪獣と呼ばれる存在が出現するようになって…そんな生物は、元々…少なくとも私たち人間が知る限りは、存在していなかったはずなのに。…上手く言えない。」

 

『もしかしたら、僕の星と、同じ運命を辿ろうとしているのかも』

 

「…あなたの話を聞いて、私もそう思った。でも、だからと言ったら変だけど、私は帰る場所もない。…ごめんなさい、言葉が下手で…」

 

テオは、少女がまだ秘めている次の言葉を急かすようなことはせず、ただ静かに耳をすませていた

 

「私は、どうなったっていいの。だから、あなたがこの体を使って何をしても自由だし、少し羽を休めたら、次の安息地をみつける旅に出たって、構わないの」

 

『…君は、君自身と、君の星の未来を、諦めているのですか』

 

少女の声は、いつしか震え始めていた

 

「そうかもね。でも、あなたほどツラくない。少なくともそう思うわ」

 

『…分かりました。僕は、君の言葉に甘えて、君の体を時々…借りることにします』

 

「ええ」

 

『でも、それは僕の自由にするという意味ではありません。恐らく、地球時間で3分間程にはなりますが、僕の力を、君に貸したい。』

 

「それは、どういうこと?」

 

『僕が思うに、この星は、僕が活動するには向いていない環境と言えます。ですが、君の体を借り、3分間という時間であれば、恐らく活動が可能となるでしょう』

 

その言葉を聞いても、絵鈴には意味がよく分からない

 

『…僕が思うに、君の目から溢れるその液体は、君の心と繋がっていると考えます。君は、君自身とこの星を、諦めたくはないのではないですか?』

 

「…それって、あなたが私の体を使って、…いいえ、私とあなたで、怪獣と戦う…という事を言ってるの?」

 

『ええ、簡単な事では無いとは思うし、危険が伴うとも思います。だからこそ、君さえよければ』

 

「…私は、構わないわ。むしろ、願ってもないくらい」

 

体を持たずに語りかけるテオが、力強く頷いた気がした

 

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あの会話から3日の時が経ち、まるであの時間が夢だったのかと錯覚する程に、テオの気配は消え、絵鈴はいつもの生活に戻っていた。

 

スマホの通知が叫ぶように鳴り、確認すると、彼女が住む大きな街の海に突如怪獣が現れたとの事だった。

 

例え宇宙人との会話が夢だとしても、怪獣だけは現実から消えてはくれなかった

 

絵鈴はどうすることもできず、スマホの画面を眺めていたが、突然カバンの中が青く光りだす

 

慌てて中を確認すると、光っていたのは、あの日拾ったクリスタルだった。それが現実に存在するということは、ある事実を裏付けることになる

 

絵鈴は、クリスタルを1度カバンの奥底にしまいこんで、人目がつかない場所に移動した

 

「応えて、テオ。怪獣が出たの。…あの時のことが嘘じゃないなら、どうか…応えて」

 

 

 

『怪獣が、現れたのですね。僕にお手伝い、できるでしょうか』

 

「テオ…!」

 

声がまた聞けたというだけで、心丈夫と言えた

 

「そうなの、私の体を使って…、いえそもそも、使うって、私が言ったことだけど、どうすればいいの?!」

 

『落ち着いて、絵鈴。まずは、僕と君の心を、ひとつにする必要があります』

 

テオの言葉を聞いて、ゆっくりと深呼吸する絵鈴

 

「…いいわ、落ち着いた。…そしたら、どうすればいいの。もしかすると、これを使えばいいのかしら」

 

青く輝くクリスタルを手に取る。心を静かに落ち着けることに意識を集中し、ゆっくりと呼吸すると、クリスタルの光が白に変わる

 

『恐らくはそうです。そのクリスタルを、握って、僕と重なり合うようにイメージしてください。』

 

絵鈴は、星に願うように、あの日手にした天からの贈り物を握りしめ、胸に当てた

 

その時、彼女達を包み込むように暖かく眩い光が溢れ、大きくなっていった

 

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気がつけば絵鈴は、空にいた。今までのどの目線よりも高い場所から、怪獣が迫る海に向かって飛行していた

 

《これは、どうなったの》

 

『成功したのです。今は君の体を借りて、僕の本来の姿になっています』

 

《テオの姿に?本当に成功したのね》

 

伸ばした両手は銀と青。絵鈴の体は、碧い巨人へと姿を変えていた

 

海から迫る怪獣の姿が明らかになった。

 

その姿は、なんとも異質なもので、まるで2次元に描いた線がそのまま3次元に現れたかのような違和感

 

怪獣が迫る港に降り立ったテオは、弱々しく構える

 

《テオ、あなたもしかして、戦ったことなんてないんじゃないの》

 

『その通りです。僕は対等な存在とも、動物とも、怪獣とも本気で戦ったことはありませんし、そのような訓練を受けた経験もありません。本当は、すごく怖くて、この場にいるのもやっとの思いです』

 

《それなら、どうして…》

 

『絵鈴。僕も、君と同じ気持ちだからです。僕はいくら故郷の星を想っても、もうそこに帰ることはできません。ですが、この星は、この地球にはまだ、可能性が残されています。だったら僕は、この地球と、この地球に生きる生命を、君を、諦めたくない』

 

《…あなたも、涙の味を知ったのね》

 

『涙。それが、心と繋がっている、目から溢れる液体の名称なのですね』

 

怪獣はテオに向かって波飛沫をあげて迫ってくる

 

《落ち着いて、あなたは独りじゃない。私がいるもの。あなたの心に。私も一緒に戦ってる、だから安心して、飛び込みなさい》

 

『わかりました、絵鈴。あなたが僕を信じてくれたように、僕もあなたを信じます』

 

 

テオはコンクリートの地面を蹴って、迫り来る怪獣に飛びかかった。その巨大な頭部を抑え込み、何度かチョップを浴びせる

 

しかし、通用しているとは思えなかった

 

その時、怪獣の手のような部分に赤い殺意の光が集まり、ゼロ距離でテオの腹部に放たれる

 

爆発を受け、テオの体は吹き飛び、陸地に背を打ち付ける

 

《ッ…ちょっと熱いけど…でも、死ぬほどじゃない…全然平気…あなたの体って丈夫なのね!》

 

『大丈夫ですか、絵鈴。僕は…怖いけど…、もう一度やってみます』

 

再び、今度は高度まで上昇し、急降下チョップを繰り出す

 

怪獣の頭は海面に沈み、そのまま海底に打ち付けられる

 

《また同じ手を食らう訳にはいかないわね。先に相手の攻撃を封じ込めましょう》

 

絵鈴の声を聞いて頷き、怪獣のビーム発生器官を掴む

 

『ウオォォ!!』

 

そして、フルパワーでへし折る

 

《いいわ!…ちょっと!クリスタルが赤く光ってる!胸が…強く鼓動するみたい…》

 

 

テオの精神内、インナースペースに存在する絵鈴は、首からネックレスのようにクリスタルを下げている。そのネックレスは、テオの胸に装着されたクリスタルと連動し、赤く点滅している

 

『おそらく活動限界が近いのでしょう。この光が消える前に、終わらせる必要があります』

 

戦闘行動を続けながら淡々と説明するテオ

 

《こんな所で元に戻ったら溺れて死んでしまうわ…どうにか一気にケリを付けるには…》

 

胸のクリスタルに手を触れ、祈る絵鈴

 

その時、クリスタルが一瞬、エメラルドグリーンに輝く

 

『…これは』

 

《…そうだわ、テオ、心をひとつに…胸のクリスタルに、手を触れて。私と一緒に》

 

テオ、頷いて怪獣から距離を取り、同じようにクリスタルに手を触れる

 

すると、2人の心がシンクロし、胸の光が広がって、テオのカラーが青からエメラルドグリーンに変化

 

《今!》

 

『ハァッ!』

 

溢れる想いを光の矢に載せて、怪獣に放つ

 

見事、弱点を射抜かれた怪獣は崩れ落ち、爆散する

 

《よし…!さぁ、帰りましょう!》

 

絵鈴の声に頷き、空へ飛び立つテオ

 

『シュワッ!』

 

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上空から、元いた場所に戻った絵鈴

 

スマホのニュースには、戦うテオの姿が映し出されている

 

「無事に帰ってこれたのね…ああよかった」

 

『初めての戦い、たくさん絵鈴に助けられました』

 

「感謝したいのは私の方よ。本当にありがとう」

 

『ありがとう。…それが、この気持ちを伝える言葉なのですね』

 

「そうよ。地球には沢山、色んな言葉があるの。ゆっくり勉強していけばいいじゃない」

 

『それはいい考えです。沢山の言葉を、教えてください』

 

「もちろんよ、任せて。」

 

『…ありがとう』

 

最後の声は、少し照れくさそうに感じた





1人では怖くても、2人なら怖くない

君は僕で 私はあなた

2人で1人の宇宙人が互いを支え合いながら《ウルトラマン》へと成長していく…かもしれませんね
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