夢とロマンの物語   作:蛍火ハル

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雨が続く憂鬱な日々

窓もカーテンも閉め切ってしまえば、雨音さえすれど、人は雨と無縁の生活をこなせます

けれど、時には雨に濡れて自然と一体になる事も、この星で生きる者としては大切なことかもしれません


それでもなお、皆さんにとって雨の日は憂鬱な物かもしれません

ですが、私の生み出した怪獣達は、雨の日であれ、暴れ足りないようです

お待たせしました。

夢とロマンの物語 第2話。
ぜひ、雨音を想像しながら、ゆっくりとお楽しみください


第2話

・夢とロマンの物語 2・

 

最初の戦いを経てから1週間。クリスタルは少女・絵鈴の手元から消えることなく、そして何よりネットニュースで大々的に取り上げている碧い巨人の映像や画像のおかげで、絵鈴は宇宙人・テオの事を忘れることはなかった

 

それはつまり、あの戦いの直後から、体、あるいは心、あるいは精神の中に宿っているであろう宇宙人・テオの声が聞こえなくなった事だ

 

記憶は残ってる。それでも、クリスタルと公的に残された映像のみが、テオの存在を確固たるものとする唯一の証拠となっていた

 

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ここ2、3日、東京の空は悪天候が続いていた。曇り、時々雨

 

怪獣の気配はひとつも無い、いつもと変わらない日常だった

 

それもそうだ

 

怪獣とは元々、いつ現れてもおかしくないというのは間違えてはないが、だとしても、そう頻繁に現れるものでもない

 

地震や台風、嵐なんかの自然災害と同じだが、違いとすれば、なんの気配もなくいきなり現れては、人里に辿り着く前に軍が駆除するか、勝手に消えるか、あるいは人々の驚異として時にその命と生活圏を壊していくぐらいだ。

 

そう考えると、自然災害ともだいぶ違うような気もする

 

実は絵鈴の故郷も、怪獣によって滅ぼされていた。なんて事ない地方…とも言えるが、正直、他県の人からどんな風に自分の県が見られていたのかは今も分からない

 

一時は、東京の次の首都の候補だ なんて根も葉もない噂に名を挙げられていたこともあった気がする

 

正直そういう話はよくわからなかった

 

どの道、怪獣に踏み荒らされて、少なくとも絵鈴にとっては、自分の居るべき場所ではなくなってしまったのだ

 

憂鬱

 

特に外に出るでもなく、雨の音しか聞こえなくなった時は、余計なことばかり考えてしまう

 

気が付けば時計は15時03分を指していた

 

微妙な時間。今日は時間がゆっくり進んでいた

 

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気が付けば絵鈴は、夜の公園にいた。よく周囲を見渡してみると、夜というよりは、公園の外だけ黒色で塗りつぶしたようにも感じる

 

ああ、これは夢だ

 

そう直感して、何気なくブランコに腰を掛けてみる

 

いつの間に眠ってしまったんだろう なんて考えていると、隣のブランコがひとりでに揺れ始める

 

『面白いですね。これが地球の遊具ですか』

 

隣のブランコから声が聴こえた

 

「テオ?あなたなの?」

 

感じたままに、聞いてみる

 

『はい、絵鈴。僕ですよ』

 

「よかった…もう貴方に会えないのかと思ってたのよ」

 

ブランコの動きが一瞬止まる

 

『どうしてですか?』

 

「どうして、って。あなたの声も気配も、普段の生活では何も感じないもの」

 

ブランコが再び動き出す

 

『それは、ご心配お掛けしました。でも僕は、この星においてあなたの他に居場所はありません。少なくとも、勝手に居なくなるようなことはありません。僕はあなたと一緒にずっと、存在していました』

 

もう、この宇宙人ときたら

 

「…それならいいんだけど。ところで、なんで今、声を掛けてくれたの?」

 

『ひとつは、君の意識が、僕の意識と対話する準備を整えていたからです』

 

「ああ、いつの間にか眠ってしまってたから。恐らくそれが丁度良かったのかも?」

 

『もう1つは、怪獣の気配を感じたので、それを伝えたかったのです』

 

その言葉に、一瞬胸が強く鼓動した

 

「どういうこと?あなたには、怪獣の気配?予兆?みたいなものが分かるの?」

 

『上手くお伝えできるかはわかりませんが、前回、初めてこの星の怪獣と相対した際に覚えた気配、嫌悪感のような感覚を、再び感じています』

 

「つまり、この前あなたに備わった怪獣センサーが初めて反応している、というわけね」

 

『ええ』

 

「でも、どうすればいいのかしら。現実では怪獣なんて現れていないし。現れてから、どうにかするしかないのかしら」

 

『恐らく、今のところはそうするしかないでしょう。でも、おそらく近いうちに、怪獣が現れます』

 

「その時はまた、一緒に戦ってくれる?」

 

『もちろんです。君が一緒に居てくれるなら、僕は、戦えます』

 

「随分可愛いことを言ってくれるのね」

 

『可愛い、ですか?』

 

「ああそうね、うーん、それはつまり、あなたは素敵というような意味よ」

 

『そうなのですか。ありがとう』

 

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気が付けば、スマホを手に持った状態でベッドで目覚める

 

時計は15時33分を指していた

 

「意外とそんなに時間経ってなかったのね」

 

それにしても、と絵鈴はカーテンを開けて空を眺める

 

今のが夢じゃなかったとしたら、本当に怪獣が近いうちに現れるのだろうか。恐らくは、そうなのだろう

 

絵鈴は少しの不安を表すような曇り空に、きっと私達なら上手くやれると言い聞かせ、カーテンを閉めて遮断した

 

 

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微睡みの中でテオと話してから約20時間後

 

絵鈴はあの会話の後、軽い夕飯を済ませて早めに眠りについていた

 

その時は、夢の中でテオに会う事はなかったが、疲れが溜まっていたのか、普段よりも長く眠っていた

 

時計が午前11時28分を指していたところで、窓の外の喧騒で絵鈴は目が覚めた

 

 

慌てて飛び起き、カーテンを開ける

 

いつの間にか大雨が降り注ぎ、雨音の中に阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえる

 

「どういうこと…」

 

呟いた瞬間、スマホが振動と共に叫び出す。怪獣の確認を知らせる防災速報だ

 

思わず心臓が飛び跳ねる。胸を押えて冷静さを取り戻す

 

この日本に怪獣が現れるようになってから、ある程度の避難方法は固まってきている。少なくとも、地震や津波のように、高台、高い建物に逃げ込むのは推奨されていない

 

まず怪獣と定義される存在の特徴として最もわかりやすいのは、人間を遥かに越える大きさを誇るということ

 

そんな巨体が単純に街を歩き回り、建物にぶつかれば、圧倒的質量を誇る怪獣の方が建物に打ち勝ち、建物は簡単に倒壊する

 

そして何より、怪獣の行動原理というものは発見されてはいないが、明確に分かっているのは、人間を執拗に追いかけ回すことはしないが、行動を邪魔するものであれば、人間であろうが戦闘機であろうが船であろうが巨人であろうが、容赦はしないということだ

 

 

つまり、絵鈴の自宅のマンション周辺で人々が痛々しい悲鳴をあげているということは、この近くに怪獣が迫っている可能性が高いということ。そして、そんな状況であれば、今自宅にいるというのは、最善の策ではないと言える

 

絵鈴は貴重品をまとめたカバンとクリスタルを持ち、玄関に走った

 

怪獣と姿は見当たらないが、とにかくこの場から離れなければならない

 

近隣の住民と声を掛け合って非常階段を使って1階を目指す

 

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1階に着いたところで、思わず悲鳴をあげてしまった

 

痛い、痛いと呻く雨に濡れた人達が自動ドアの近くで倒れていた

 

「どうしたんですか!」

 

倒れて呻いている男の近くに駆け寄る

 

男の体に外傷や出血はみられないが、とてつもない痛みを感じているのだろう。体をくねくねと動かし痛みに悶えている

 

「あ、あ、雨、雨に」

 

雨?雨がどうしたの

 

男はあまりの苦しみに気絶してしまった。その周りで倒れてる人達も同じような感じだった

 

一先ず、一緒に避難していた人達に待っててもらうようにお願いし、外に出てみることにした

 

しかし、雨粒の冷たさはいつも通りで、特に変化は感じられない

 

大丈夫?と声を掛けて出てきたおばさんが、雨にあたった瞬間に物凄い悲鳴をあげて倒れた

 

「まさか、雨。雲の上?」

 

1度雨を振り払って、苦しむおばさんを連れてビルに戻る

 

更新されたネットニュースを確認すると、衛星により上空から撮影された画像が挙げられており、その画像からは、何かが雲の上に存在している事が読み取れた

 

「この雲の上に、怪獣が。この雨は、怪獣が降らせてるんだわ」

 

今まで、怪獣が現れた時はすぐに建物から出て、とにかくその場から離れることが鉄則だったのに。ここに来てそれを裏切るようなのが出てくるなんて

 

ここでじっとしていても、何も解決はしない

 

昨日みたあの夢を、夢でないとすれば、あの時のテオとの会話を信じるならば

 

「皆さん、ここはお願いします。決して外に出ないでください」

 

そう言い残して絵鈴は非常階段の中に隠れる

 

そして、テオと自分の繋がりの証であるクリスタルを取り出す

 

「テオ、怪獣が出たの。それもとんでもないやつが」

 

クリスタルが白く輝き、宇宙人・テオの声が聞こえる

 

『予感は的中してしまいました。絵鈴、心の準備は出来ていますか?』

 

「ええ、ええ。もちろん。覚悟は決まってる」

 

『僕もです。では、あの時と同じように。心をひとつに』

 

絵鈴は、ゆっくりと深呼吸する。その呼吸に合わせてクリスタルが白く輝く

 

みんなを守りたい

 

故郷を失った、宇宙人であるテオと地球人である絵鈴の心は、同じだった

 

祈りを込め、クリスタルを胸に当て握りしめる絵鈴の体を光が包み込む

 

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マンションの前に眩い光と共に、巨人が現れる

 

青と銀、絵鈴の体を用いて本来の姿に戻ったテオの姿だった

 

《成功したのね》

 

テオの精神内世界 インナースペースに、首からストラップでクリスタルを下げた絵鈴がいる

 

『ええ、成功です。怪獣は雲の上でしたね、いきましょう』

 

両腕を揃え、自身の重力を制御して雲の上へ飛翔していく

 

あっという間に雲まで到達し、雲の上でみたのは、前回と同じように、2次元に描いた何かを3次元に無理やり呼び起こしたかのような違和感

 

輪が縦と横に重なり合うような構造で、それは十字架や塔のようにも見えた

 

その塔を構成する輪から、新たに生成された雲が雨雲に混ぜられている

 

十中八九、こいつが原因だろう

 

『テァッ!』

 

接近し、塔のような怪獣を殴り付ける

 

怪獣は高速回転し、左右の腕をでんでん太鼓のようにテオにぶつける

 

『グワァアッ…』

 

テオが苦悶の声をあげる

 

《いっ…たいけど…まだ、負けてない!テオ、1度離れて、この前やった技をお見舞いしましょう》

 

絵鈴の声に頷き、1度距離を取って心を重ねるように、インナースペースの絵鈴と同時に、胸のクリスタルに手を触れる

 

2人の心がシンクロし、体色が青からエメラルドグリーンに変化。そして想いを載せた光の矢を放つ

 

 

 

 

 

だが、怪獣の輪は矢を打ち砕いた

 

 

 

 

《そんな…これが通じないの》

 

 

『絵鈴、まだやれるはずです。諦めないで』

 

《ええ、もちろん。でも、手強いわね。でも、考えてる時間は…。………そうだわ》

 

『絵鈴?』

 

《あの怪獣を引っこ抜くのよ、雲から》

 

『なるほど。そうすれば、少なくともあの雨は防げます』

 

テオは、怪獣の下部に組み付き、ウオオと声をあげる

 

 

《あなたはひとりじゃないわ、私もあなたと一緒に戦ってるわ!》

 

頷き、最大の力を込めて怪獣を引き抜いた

 

《きた!》

 

ここで2人の胸のクリスタルが赤く点滅し始めた

 

テオはこの地球上で、およそ3分間しか活動できない

 

2分経過すれば胸に装着されたクリスタルは赤く明滅し、

 

残り30秒で高速で明滅する。

クリスタルの光が尽きた時、テオは二度と立ち上がる力を失ってしまうのだ

 

 

『このまま、宇宙まで運び去る!』

 

怪獣を抱え、宙へ飛び立つ

 

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大気圏を越え、青空を抜ける

 

《すごい…私、宇宙なんて初めてきたわ!》

 

『宇宙も素敵なところでしょう。さて、宇宙空間には地球での制約はみられません。思う存分、戦えますよ』

 

宇宙に投げ出された怪獣の体は、どんどんと凍りついていく

 

《雨を生み出す怪獣も、宇宙の寒さを受けたらカチコチになるってことかしら。なら、みんなの痛みを思い知らせてやりましょう》

 

 

二人で胸のクリスタルに手を当て、思いを重ねる

 

重なり合った思いは、テオの体色をパープルに変化させる

 

そして、光をノコギリ刃の付いた輪に変えて

 

『フッ!』

 

解き放つ

 

まっすぐ飛んでいった光輪は怪獣の凍りついた体をバラバラに切断し、爆散させた

 

《ふう、お疲れ様。》

 

『ありがとう、絵鈴。お疲れ様。…地球の様子が気になります。戻りましょう』

 

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雲を抜けて地上の様子を確認する

 

どうやら、雨に濡れた人々に起こっていた激痛は、怪獣と共に消えたようだった

 

安堵の思いで頷くテオ

 

《よかった…じゃあ、戻りましょうか》

 

 

ゆっくり頷き、上空から消えるテオ

 

 

そして同時に、避難階段に現れる絵鈴

 

「皆さん、大丈夫でしたか?」

 

声をかけると、全員どこか興奮した様子だった

 

話を聞くと、全員、ライブ配信に映っていた碧い巨人を必死で応援していたらしい

 

まだ2回だけの登場なのに、みんなを苦しみから解放してくれようと必死に頑張る姿をみて、応援してくれていたのだ

 

思わずみんなに「ありがとうございます!」なんて言ってしまいそうになったがグッと堪える

 

「皆さんが無事で良かったです!」

 

とだけ、言ってその場はお開きにした

 

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自宅に戻る道中のこと

 

「ねえ、テオ。私たち、みんなに応援されてたのね」

 

『そうみたいですね。応援していたと言っていたあの人達の心は、とても暖かく、まるで太陽の光のように感じます』

 

「…そうね。どれだけ酷い雨が降っても、人間の心は、いつだって光になれるのよ、きっとね」

 

『僕はこれからも、みんなを守りたい。怖いけど、頑張りたいです』

 

「ええ、一緒に頑張りましょう」

 

 

テオと絵鈴の心は、その時はなんだか少し、くすぐったく感じていた

 




今回の文章のどこかで誤字がひとつあります。見つけた方はおめでとうございます


地球人の少女との出会いが、1人の宇宙人の心を強くしていく

テオが自分の力で頑張らなくちゃ、と思った時、絵鈴は必ず《あなたは独りじゃない、私も一緒に戦ってる》と伝えます

それでも怖いものは怖いけど、でも、立ち向かう勇気は溢れてくるのでしょう
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