夢とロマンの物語   作:蛍火ハル

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その顔はなんだ!その目はなんだ!その涙はなんだ!

今の時代、スパルタやパワハラだと簡単に言われるような事が、実は人が、1人の人間としての限界を超えた力を発揮する機会を奪っていると言えるかもしれません

そんな時代だからこそ、私も、絵鈴も、人に押し付けることはせず、自らに鞭を打って、日々、自分自身と戦い続けています

完全な余談でしたね


第4話、お楽しみください


第4話

・夢とロマンの物語4・

 

 

 

深夜、怪獣との戦いに敗れ、自室で目覚めた絵鈴

 

その体は傷一つなく、それは自身に宿る宇宙人・テオが全力を持って治療しているからだ

 

 

絵鈴は怪獣に敗れ、今、この部屋にいるが

 

テオは今も尚、戦っているのだ

 

その命を掛けて、この瞬間も絵鈴の肉体を守っている

 

 

それならば、今こうして1人、眠っている暇はない

 

 

絵鈴はシャワーを浴びながら、攻撃を受けたであろう自身の体の見えない傷を撫でる

 

「テオ…、私、負けない。私の中で、見ていて」

 

 

熱いお湯を頭の先からつま先までくまなく浴びて、決意の炎を燃やす

 

 

身を清めた絵鈴は髪を結んで、この時間、人っ子1人いない河川敷へ走った

 

 

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謎の男、モニターの明かりが照らす暗い部屋で、夕陽に照らされた光の巨人と怪獣の激闘が記録されたLIVEカメラの映像の録画を観ている

 

 

「元々、高い身体能力を持つ宇宙人なのに、どうしてこうも戦いに消極的なんだろうか?てっきり、最初は神が遣わした光の勇者か何か、もしくは、僕と同じような者に造られた何かだと思っていたけど」

 

 

男は手探りでチョコレート菓子の袋を探し、雑に掴んでは口に運ぶ

 

粉がこぼれようが、菓子が落ちようが気にする様子はない

 

 

その時、誰かが扉をノックする

 

「んー?」

 

扉を開けて入ってきたのは、和装の男とは正反対の洋装の女だった

 

「まだみてるの?あの宇宙人のビデオ」

 

スカートの裾を持って、足の踏み場もない汚部屋に慣れたように入っていく

 

「まだ観てるというか、僕、寝てたからね」

 

食べる?と菓子を差し出すも、洋装の女はやんわりと断る

 

「あの怪獣、どうなったの?」

 

 

「勝ったよ、宇宙人に」

 

 

どんな感情が込められているのか、あるいはなんの感情も込められていないのか

 

そこにあるようでそこにない、独特の空気感で2人は会話している

 

 

「へえ、勝ったんだ?でもなんでまだみてるの?」

 

 

女は少し興味を持つ様子でモニターを覗き込む

 

「勝ったっていってもさ、なんか、なんていうのかなぁ。手応えがないんだよね」

 

 

「手応え?」

 

女は先程拒否したはずのヒョイっとつまみ食いする

 

男は少し不満気な視線を送るが、あえて見送りつつ話を続ける

 

「うん。なんか、こう、"やった"手応え?っていうのがなくてさ。多分、また出てくると思うよ」

 

 

「ふーん。そしたらどうするの?」

 

 

男の動きが一瞬止まる

 

「……またやるかな。うん」

 

 

「なにそれ 。まぁ、いいけど。とりあえず、早めに寝なさいね」

 

女は障害物を跨ぎながら汚部屋から脱出する

 

 

「んー」

 

気の抜けた返事だけして、男はまだモニターを観察していた

 

 

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深夜の河川敷

 

遠くの街の明かりが夜の闇に混ざり混み、星空の景色を薄めている

 

 

絵鈴は心を落ち着かせ、夕陽に立つ怪獣の姿を思い浮かべる

 

そして、右手を開いて前に伸ばし、左手は胸の横で拳を作る

 

それはテオの咄嗟の構えを再現したものだった

 

空想の怪獣は、長い足を首に目掛けて勢いよく伸ばしてくる

 

絵鈴は左手を使い、空想の怪獣の初手を弾く

 

「だめ、これじゃ、横の建物を壊してしまう」

 

もう一度、空想の怪獣と自身のポジションを振り返る

 

今度は怪獣よりも先に動き、チョップをお見舞いする

 

 

空想の怪獣の頭部は後ろに倒れ地面に激突する、がしかし、振り子のような動きの頭突きを絵鈴の胸にお見舞いする

 

「ッ!」

 

背中から地面に倒れる絵鈴

 

「これも…違う…、」

 

瞳を閉じたまま、立ち上がり、今度は振り子攻撃を回避してみる

 

だが、そうすれば怪獣の側頭部に備わるビーム発生器官を直で胸に受けてしまう

 

 

そして、怪獣の漏斗から発せられる得体の知れない黒煙を浴びせられる

 

 

「これも、全部だめ…。…!というか、この怪獣、前に出てきた目玉と雲の上の怪獣の良いとこ取りじゃないの!」

 

 

それぞれの弱点をそれぞれの特徴で補い、そしてそれぞれの長所を活かした攻撃をしてくる

 

 

「それらを防いだとて、今度はあの怪獣だけの持つ武器が牙を剥く…」

 

 

だったら、答えはひとつしかない

 

「あいつの技を全て封じ込めるか…技を放たれる前に、終わらせる…ここまでで、何分!?」

 

既に空想の怪獣を前にシミュレーションを開始してから、2分半が経過していた

 

 

「この判断じゃ、遅すぎるわ!」

 

こうなれば、やることはひとつ

 

絵鈴は河川敷に流れついていた丸太を引っ張りあげ、手頃な場所に立たせる

 

 

「最小限の攻撃で、この丸太をかち割る!」

 

 

気合いの一声を上げ、一気に駆け寄り、本気の拳を打ち込む

 

「〜〜〜ッ!!」

 

丸太は倒れる

拳は激痛

 

 

「…まだまだ、夜明けまで時間はある…命を掛けて、完成させてみせるわ、テオ」

 

絵鈴の気合いの声と、丸太に拳を打ち付ける音が、何時間と続いた

 

 

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そして、朝日が昇る頃

 

 

眩い光が、絵鈴の赤い頬を照らす

 

 

額から流れ落ちる汗がスターターピストルとなり、絵鈴が心の炎を燃やす

 

 

「ふー…ふー…。…ふッ!テイヤァァァッ!!タァッ!!」

 

 

駆け出し、飛び上がり、放った拳は朝日を浴びて、まるで燃えるように輝き、太い丸太を見事、砕き割った!

 

 

「出来た…!…出来たのよ!」

 

 

絵鈴は切迫した表情から、年相応の若い女性の顔に戻り、技の完成を喜んだ

 

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自宅に戻り、仮眠を取る絵鈴

 

 

その短い夢の中で、友との再会を果たすことになる

 

 

絵鈴は、そこが夢の世界であると認識していた

 

 

星空を撫でるように右手を伸ばした絵鈴のその手に、輝く流星が落ちてきて、光が結晶に姿を変える

 

「テオのクリスタル。これは、私とあなたの、出会いの記憶」

 

『そうです。絵鈴』

 

手のひらに握られたクリスタルが、宙に浮き、それを中心にテオの姿が星座のように浮かび上がる

 

 

「テオ、もう大丈夫なの?」

 

 

『絵鈴、君のおかげです』

 

星の光で形作られたテオが、胸のクリスタルに手を当てる

 

『君の光が、僕の記憶の一部を呼び覚まし、そして、僕の胸の宝石を青く輝かせました』

 

「あの日手にした光の結晶は、私にとって、神様からの贈り物。思い出したの。それを、地球の言葉で「テオ」というのよ」

 

 

『僕の名前と同じ言葉が存在していたなんて』

 

 

「テオからの贈り物…私とテオの大切なクリスタル…そうね、これは、テオクリスターと言ったところかしら」

 

 

『テオクリスター。とても、いい名前です』

 

 

「私とあなた、また1つ、深く繋がれたと思わない?」

 

 

『ええ、僕も、それをとても感じます』

 

 

夢の世界で、風が吹く

 

『さぁ、そろそろ目覚めの時間です』

 

星空が白い光に包まれた

 

 

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絵鈴が目覚めた時、仮眠を始めて4時間が経過していた

 

 

時計の針は10時を指している

 

 

机に置かれたテオクリスターを手に取る

 

クリスタルの光が、白く輝いた

 

「テオ、やっぱり戻ってきたのね」

 

 

安心した表情で、テオクリスターを抱きしめる絵鈴

 

 

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11時頃

 

 

絵鈴はバイト先のコンビニに来ていた

 

 

現場が近かったが、奇跡的に被害は最小限に済んでいた

 

 

店に入ってきた絵鈴の姿をみて、店長は無事を喜んでくれた

 

「ああ無事でよかった!助かったよ、昨日の怪獣被害で来れない子もいてさ。来てくれてありがとう」

 

 

絵鈴は笑顔で返事して、すぐに制服に着替えて仕事に取り掛かった

 

 

被害を受け、物資を求めた多くの人々が店にやってくる中、笑顔で声をかけてくれる常連客の姿もそこにあり、絵鈴は安心していた

 

 

その一時間後

 

 

再び地響きが起き、怪獣警報が鳴り響く

 

 

絵鈴は事務所に駆け込んで制服を机に脱ぎ捨て、カバンを手に持つ

 

 

「絵鈴!こんな時に、どこへいくんだ!」

 

 

パニックの客達を宥める店長が絵鈴を呼び止める

 

 

「行かせてください、店長。…お願いします」

 

 

絵鈴の目に、何かを感じた店長は目を瞑る

 

「…わかった、ここは任せなさい」

 

 

「ありがとうございます、店長!」

 

 

カバンを握りしめ、外へ駆ける絵鈴

 

 

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再び街に現れた怪獣は、まるでテオを待っているかのように、黒煙を周囲のビルに吹き付けながらその場を動かない

 

 

 

「テオ!!」

 

白く輝くテオクリスターを、握りしめながら走る絵鈴

 

 

怪獣の黒煙を受けて脆くなったビルが崩れ落ち、流れ込む砂煙と瓦礫が、絵鈴の体を包み込む

 

 

眩い光が輝き、蒼い光の巨人が現れる

 

『テアァッ!!』

 

巨大化と同時に、怪獣の足をすくい上げて転倒させるテオ

 

 

『…、』

 

両手をみて、その体が以前と違うことを実感するテオ

 

 

あの時と同じように怪獣が細長い足を勢いよく突き出す

 

 

テオ、今度は攻撃を受ける前に怪獣の脚を掴む

 

『ッ…グオォォ…!!』

 

《テオ!負けないで!》

 

『ダァァッ!』

 

怪獣の攻撃を弾き返し、跳躍し、急降下キックを胴体に放つ

 

怪獣、呻き声のような音を出してよろめく

 

 

『…!』

 

 

初めてこの怪獣にダメージを負わせたことに、テオの心に一瞬の隙が生まれる

 

 

その隙を突くかのように、怪獣は黒煙をテオの顔に浴びせる

 

 

『グッ!?』

 

《顔が…、身体が…痺れる…!》

 

 

顔を押さえ、動きが止まるテオ

 

一転攻勢と言わんばかりに、怪獣は頭部の"返し"が付いたツノをテオの腹部に突き刺す

 

 

『ウグァァアッ!?』

 

《ぐッ…うぅ…ぁああ…!…!まだ、負けてない!テオ!このまま怪獣を掴んで、海まで運び出す!》

 

インナースペースで、歯を食いしばり、涙を飲み込む絵鈴

 

 

2人の胸の光が赤く点滅を始める

 

『デイアァァッ!!』

 

絵鈴の心に燃える炎で痛みを押し殺し、怪獣の球体上の頭部を腹部に押し付けたまま、飛翔

 

被害を最小限に抑えられる海を目指す

 

 

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テオの音速を超える飛行は、さほど時間をかけることなく、あっという間に海に到達した

 

 

《この…タコ野郎がぁぁっ!!》

 

力づくで、返しが腹の中に食い込む痛みさえ押し殺し、怪獣と自分を分離させるテオ

 

 

金色の光が血のように噴き出す

 

 

『このままでは…、』

 

 

《恐れるんじゃない!テオ!!私達が勝たなきゃ…この地球はどうなるってのよ…!…守りたい人達は、その家族は…!……あなたの弱音で、あの怪獣を倒せるってのならやってみなさいよ!……悔しかったら、その怒りを、攻撃に変えるのよ!》

 

インナースペースの絵鈴の腹部からも、金色の光が噴き出している。絵鈴はテオに、何も八つ当たりをしている訳でも、虐めているわけでもない

 

同じ痛みを受け、涙を流し、その涙さえも、絵鈴は力に変えているのだ

 

 

『ッ!』

 

テオの胸に、故郷を失った悔しさと、今、目の前の怪獣に挫けかけた自身に対する怒りの感情が沸き起こる

 

 

2人の感情が1つになる

その時、太陽の如く燃える熱い光が溢れ出す

 

 

《ハァッ…!》

 

『ムッ…!』

 

2人同時に、それぞれの胸に輝くテオクリスターに手を触れる

 

 

炎のように熱い光が、テオのボディをブルーからオレンジに変化させる

 

 

河川敷で汗を流した絵鈴の姿が、テオに重なる

 

全身に纏ったオレンジの光を拳に集束させ、テオは海を駆け、跳躍

 

 

『テイヤァァァァァッ!!』

 

熱い炎の拳を、怪獣が反撃を繰り出すよりも早く、打ち込む!

 

 

その2人の想いを載せた拳は、6000℃を越えていた

 

 

 

名付けるならば

 

 

 

『《ビッグバンテオナックル…!》』

 

 

怪獣は内側から融解を始め、そして、爆発

 

 

 

 

その場に残ったのは、蒼い身体のテオ

 

それは、怪獣だけでなく、自身との戦いにさえ勝利した光の巨人の勇姿であった

 

 

ゆっくりと頷き、

 

『シュワッ!』

 

 

上空に飛び去るテオ

 

 

 

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和装の男と洋装の女は、二人でリアルタイムで観戦していた

 

「ねえ?負けちゃったけど」

 

小馬鹿にするように女が言う

 

「んー…負けたね」

 

ほんの少しだけ残念そうに呟く男

 

 

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人気のない路地裏に戻ってきた絵鈴

 

「イッ…ダァァ…!」

 

腹部を押さえて蹲る

 

手に温かくぬるっとした感触

 

 

『絵鈴、大丈夫ですか』

 

 

「そっちこそ。…ま、お互い全力を出し切ったってことよね…。…やればできるじゃない、テオ?」

 

 

『絵鈴のお陰です。本当に、本当にありがとう』

 

 

照れくさくなって笑うも、より一層腹部の傷が痛む絵鈴

 

どうしようかと思ったその時、

 

「絵鈴!?絵鈴か!!おーい!大丈夫かぁ!」

 

店長が制服姿のまま駆けてくる

 

 

「店長…!」

 

 

安堵する絵鈴

 

 

「どうしたんだよその怪我!と、とにかく病院、病院な!」

 

 

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その後、病院で処置を受けて、なんとか大事に至ることはなかった

 

 

「でも店長…お店の方は…?」

 

へへっとどこか嬉しそうに笑って

 

「実はな、これそうにないって言ってたヤツが、怪獣と宇宙人がどっかいったタイミングで駆けつけてくれてな。それで、俺はお前が心配になって、探しにきたんだよ」

 

 

バイト仲間の無事を知った絵鈴は、緊張の糸が切れたのか涙が自然に溢れ出した

 

 

「よかった…店長、ありがとうございます…」

 

 

困ったように、それでいて照れくさそうに店長は「あいつにもお礼、言っとくんだぞ」と言って、また笑った

 

 

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胸の炎を燃やす2人

ついにテオが新たな姿に目覚め、新しい技を掴み取った

次回は第5話。眠っていた伝説が目覚める…
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