いや、死神とか聞いてないし   作:わお

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一章
九話:何でそうなるの


こんにちわ。ボクだよ。

 

「なぁおい。この程度で終わりなのか?」

 

ボクの眼前にあるのは、地に伏す血だらけの人相の悪い人間。

 

そして一人の首を鷲掴みにする某破壊神の姿だった。

 

どうしてこうなっているんだろう……。

 

 

 

 

 

 

時は遡ること少し。

 

ボクと破壊神ヴァルスは早速街を見つけていた。

 

「へぇ……第三世界の街ってのはあんな感じなのか」

 

「ザ・中世の異世界って感じの街並みだね」

 

街全体を眺めることのできる場所から全体像を眺める。

 

魔法と城壁で覆われた街はRPGにでも登場しそうな、レンガのような素材で作られた建物が並んでいる。

 

「で、行くか?」

 

ヴァルスがボクを見てくる。心なしかワクワクしているように見える。

 

でも何故ボクに聞いてくるんだろう。ボクの許可なんて必要ないのだから行きたいなら行けばいいのに。

 

まぁボクも行くんだけど。

 

「うん。でもさ、この恰好のまま行くのは不味くない?」

 

ボクは視線を下ろす。

 

今のボクの恰好は神界にいた時と同じ。つまり自ら人間でないとカミングアウトしているようなものである。

 

そしてヴァルス。

 

「……ほぼ真っ裸の状態で街中を歩く気なの?」

 

神界に居る時からずっと思っていたけど、その隠す所だけ隠したような原始人もびっくりの服装は何なのだろう。やめて欲しい。主にボクの目のやり場がない。

 

「なんだ、ダメなのか?」

 

「当たり前じゃない……?流石にそんな恰好で歩く人いないと思うよ」

 

「そうか?」

 

ズイッと身を寄せてくるヴァルス。やめて欲しい。目のやり場が……

 

「ふぅん……まさかワタシの姿に恥ずかしがってんのか?」

 

「い、いや違うよ」

 

ここは否定である。弱点は見せたら終わり、というが自然と身に付いた知見なのだ。

 

「本当か?」

 

「そうだよ」

 

「本当か?」

 

「そうだよ。それよりも変装していかなきゃならないんじゃない?」

 

誤魔化しのように言う。だけど変装って絶対楽しいと思うんだ。

 

 

 


 

 

 

「凄いなぁ。やっぱり近くで見ると違うね。思ったより高い」

 

ボクは感嘆の息を吐く。そんな今のボクは、短髪の黒髪をした中世的な見た目の男の子になっている。

 

何故男かと言われたら、前世が男だったからだ。折角変装するならと思って試してみたら神パワーでどうとでもなってしまった。

 

「……チッ。なんでこんな格好しなきゃならないんだ」

 

隣でヴァルスが舌打ちする。今の彼女は赤髪を刈り上げ、動きやすい軽装を纏っている。

 

目付きが人を殺せるほど悪いのが難点だけど、本人曰く今の服装が動きにくいかららしい。全裸基準だというのがイカれている。

 

「まぁまぁ我慢我慢。さ、早く中に入ろうよ」

 

城壁に沿って歩いていくと、入口の門が見えてきた。たくさんの人が並んでおり、長蛇の列ができている。

 

「あの列に並ぶみたいだね」

 

「並ぶ?なんだそれ」

 

「あの人たちの後ろに並んで、入る順番を待つんだよ」

 

「?何故後ろに並ぶんだ。全部ぶっ壊して入ればいいだろ」

 

「……」

 

流石は破壊神。初手がその発想とは恐れいります。上位神は怖いね。

 

何とか説得し、ボク達は一番後ろに並ぶ。

 

「なぁあんたら」

 

どれくらいの時間待てば通れるんだろう?

 

「なぁって。おい」

 

列の動きを見る感じ、そこまで待つ必要はなさそうだね。

 

「なあって!!」

 

「え?ボクかい?」

 

「そうだよッ!何で気づかないんだよ!」

 

前の若い男がどうやらボクを呼んでいたらしい。

 

叫んだからかぜぇぜぇと肩で息をしている。

 

「あんたら、この辺のモンじゃねぇだろ?」

 

朱色の力強い目がボクを見る。

 

「確かにそうだけど、何で?」

 

「俺はサリオ。行商人をやってる。最近は雰囲気見るだけで遠くから来たかどうか分かるんだ。で、あんたら遠くから来たって思っただけだ」

 

へぇ行商人、ね。確かに言われて見れば服装は割と高級そうな見た目をしており、身なりがキチンとしている。

 

「ふぅんそうなんだ。何か用?」

 

ボクが胡散臭い目でサリオを見ると、サリオはまぁまぁと笑う。

 

「そう怪しまなくていいって。俺は遠くから来たモンにここのこと教えるのが好きなだけだから」

 

「十分怪しいんじゃないかなそれは。そんな人いないと思うけど」

 

初めて聞いたよそんな趣味の人は。

 

「つってもこの国のこと知らねぇだろ?」

 

「まぁ……確かに」

 

「ここは自由がモットーの国、ジユーケーザ貿易国さ。んでここは首都のメルポリンでな、多くの商会の本部が集まってる貿易の中心拠点なんだわ。因みに俺が運営してる商会もここに本部があるんだ」

 

自慢げに話すサリオ。すると隣で大人しくしていたヴァルスが苛立ち気に舌打ちした。

 

なるほど彼女は自慢されるのが嫌いらしい。

 

「と、取り敢えず話はボクが聞くよ……」

 

「お?そうか?イケメンだな。じゃあまずは一言。ようこそ自由の国へ――――てね」

 

サリオは朗らかな声で叫ぶと、ニコリと笑った。

 

 

 


 

 

 

暫く話を聞いていると、何となく今から入ろうとしている街のことが分かった。

 

ここは商会が集まって形成した貿易の為の国家らしい。戦国時代の大阪のような感じで捉えるといいかもしれない。

 

民主制なのに法なしの自由。ただし責任は自分で、というのがルールらしい。

 

サリオは別れ際、迷った時は俺の商会に来たらいいと言っていた。そういう打算もあったようだ。

 

「お次の方どうぞ~」

 

ようやく呼ばれ、ボクとヴァルスは軽い手続きを済ませ入国許可を貰う。

 

そうして苦節5時間。ボク達はようやく街中へ足を踏み入れた。

 

「うわぁ……!やっぱり近くで見ると迫力が違うなぁ!」

 

「はしゃぎすぎだろ……」

 

前世人間のボクから見れば、こんな中世の建物を見れるのがどれだけ嬉しいことか。

 

魔法が浸透しているものの、古風な街灯、レンガ調の道、建物……昔を懐古させるようなものがたくさんある。

 

「にしても貿易の都市って言っていただけあって出店が多いね」

 

肉詰めのように人の行き交う大通りの両端には所せましと店が並んでいる。

 

サクラだったり通行人だったりの声が混じり重なり、凄い活況を生み出していた。

 

楽しいのは楽しいのだけど、歩いていると10秒かからず誰かとぶつかる。

 

「ッて……人凄いね」

 

「そうだな……めんどくせ。おい、あっちの道抜けようぜ」

 

ヴァルスが指さしたのは路地裏。誰も入ろうとしていないのか閑散としている。

 

「え?あそこ行くの?―――――ってあちょっと待って」

 

ボクの返事を待たずにヴァルスがさっさと路地裏の方へと人をかき分けていく。

 

強者から離れるのが嫌なボクは溜息を吐いて追いかける。

 

しかし路地裏へ一歩足を入れた途端、空気が変わった。

 

大通りとは一変してピリピリと張り詰めたような空気が肌を刺す。

 

「ねえこれ進んで大丈夫なの?」

 

「さぁ?だが人混みの中歩くよりかマシだし面白そうだ」

 

ずかずかと進んでいくヴァルスの後ろをボクは恐る恐る進んでいく。

 

だが―――――

 

「おいおい、この道誰に断って通ってんだ?あん?」

 

突然道先にガラの悪い男が何人も現れる。

 

「何だお前ら。女とガキ?」

 

男の視線がヴァルス、そしてボクへと移る。神界で受けるものとはまた違う恐ろしさのある視線だった。

 

「へぇ……見た目いいな。よし決めた。今からお前らは捕まえてボスの奴隷にする」

 

下卑た笑みを浮かべる男たち。ヴァルスが傍にいるので余裕だから思うのだけど、まるでお手本のような性格だった。

 

「……ふぅん?」

 

俯いたヴァルスの声が低い。しかし明らか愉快そうにしているのが分かる。

 

「勘違いすんなよ?元はと言えばこの道に勝手に入ったお前らが悪いんだ」

 

一人がキラリと光るナイフを向けながらこちらへと近づいてくる。

 

ヴァルスが下を向いているのがビビっているのかと思ったのかニヤリと笑っている。

 

違う。ヴァルスが下を向いているのはビビってるからじゃない。ありえない。

 

戦いが大好きな彼女のことだ。きっと今、笑っていることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――そして現在に戻る。

 

ボクは頭を抱えた。

 

 

 




遅くなりますた。現実が忙しく……恩赦をください。

みなさん脂が好きなんですね。作者は塩派でした……(^Д^)(^Д^)

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