いや、死神とか聞いてないし 作:わお
ボクは改めて状況を見る。
舐めプしようとして半殺しにされたやつらと、その真ん中で突っ立つ某破壊神さん。
事案だ……こんな様を誰に見せられようか。
「ねぇこれどうするの? 目立ちまくる気がするんだけど」
「? 目立ちたくないなら殺して破壊すれば跡形も残らない。それでいいだろ?」
物騒な物言いに、倒れている何人かがビクリと肩を震わす。
「い、いやーそれはどうかな……」
「消せば全部解決だ。効率的だろ?」
ヴァルスが一番近いガタイのいい大男を片手で掴み上げる。あ、これは駄目なやつだ。
―――――そう思った時だった。
「おいッ! 何をしている!」
路地裏の中をはきはきとした男の声が響く。振り返るとそこには黒光りするマントをはためかせる、緑色の制服の集団がいた。
「我らはメルポリン警備隊である! 詳しく話を聞かせてもらうぞ!!」
一番前に立つ男の声と共に、何人もの警備隊員が這いつくばっている人含むボク達を囲む。
剣に手をかけているから剣呑な雰囲気が漂っている。
ボクは大人しく手を挙げた。
「……ここは大人しく、捕まった方がいいと思うよ?」
「チッ……」
ヴァルスがパッと手を離す。地面に落ちた大男はカエルみたいな声を出して泡を吹いた。
そしてボク達は捕まった。
「……で、どこから来たって?」
「遠い所から」
「それは聞いた。具体的にどこから?」
「……アメリカ?」
「あめりか? そんな国あったか?」
訝し気な表情をしながら隊員の一人がボクに質問をしてくる。今ボクは取調室のような場所にいた。結局ボクらは正当防衛という扱いになったはずなのだが、一応ということで色々問われることになった。
困った。ボクはこの世界の人間でないので、そもそも神なので、真面目に答えてもただの頭のおかしいやつと認識されることだろう。
「はぁ……取り敢えず疑いはないからいいものの……お金とかあるの?」
そう聞かれボクはハッとした。神界から直接来たので全くお金を持っていないのだ。
持ってないと伝えると、隊員は呆れた表情をした。
「……逆によくここまで来たな、無銭で」
「まぁ色々あって」
ボクも曖昧な表情を浮かべる。誤魔化す以外の手段を思い浮かばなかった。
しばらく隊員と無言で見つめ合っていると、コンコンと部屋のドアが叩かれた。
「そっちはどうだ?」
入ってきたのは路地裏で会った時一番前にいた男だった。周りの隊員よりも細身に感じるのに、そのオーラは圧倒的に上だった。
「色々誤魔化されてますけど、まぁ問題ないと思いますよ。やつらの方は?」
「あいつらは既に国外追放で決定した」
「そっすか。流石は隊長。で、彼らどうしますか?」
隊員がボクを見る。つれて、隊長と呼ばれた男がボクを見た。
「どうやら無一文らしくて」
「ほう」
面白そうな目でボクを見る。
「今日からどうするつもりだ?」
「うーん……」
ヴァルスがいればどうとでもなりそうだという思いのまま来た結果、ボクは何も考えていなかった。お金がなければ路頭に迷うのは常識。
初めての異世界だから観光しようというウッキウキの気分は消え失せた。
さてどうしようかと思っていると、隊長が驚きの発言をした。
「なら俺の家来るか?」
「すみません、でもいいんですか?」
ボクは大きな屋敷の前に立っていた。そう、隊長さんの家である。
「構わん。俺の屋敷はそういうためでもあるからな。大きいのはそのせいだ」
隊長さんがこれまた大きな玄関扉を開ける。中へ入ると、大きなエントランスがボクを迎え入れた。見惚れていると、隊長さんがいつの間にか外に出ていた。
「あとは好きに使ってくれて構わん」
「え?」
「ああ、お前の仲間は既に来ている」
それだけ言い残すと、扉をしめて去っていくではないか。ボクは何が何だから分からなくなった。
取り敢えず探検をしようと思い、あちこちを見て回る。途中で部屋を開けると、隊長さんのいう仲間はいた。
「おー来たか」
「やぁヴァルス。無事だったんだね」
「そりゃそうだろ。ワタシを誰だと思ってるんだ」
ソファで座って優雅に本を読んでいる破壊神。前世のボクならそんな破壊神がいることを信じなかったことだろう。
そして最も信じられなかったのは、尋問を平穏にパスしたということである。
「無事に尋問パスしたんだね」
「? ワタシは何も聞かれなかったぞ」
そうなの? どうやら隊長さんは聞く相手の取捨選択ができるらしい。感心しながら、ボクは近くの椅子に座る。
広い。だけど荷物ばかりだ。あちこちに何かの荷物、荷物……
見回していると、ふと端に一つ、随分綺麗に保管されているものが視界に入った。
「ん? 何だろう、あれ」
「あれか? 確かドラゴンの卵だな。何でも、魔力を相当込めないと生まれないらしい。この世界の人間じゃ無理な量だから、数もあってただの骨董品みたいなもんだ」
「へぇそうなんだ。じゃあボクじゃ無理なのかな」
「……冗談だろ」
どういう意味の冗談だろう。そんなに魔力量が必要なのか。気になったボクは席を立ち、ドラゴンの卵の前に立った。
「よし、本気を出して魔力を込めてみよう」
神としての威厳を示そうではないか。ボクは元人間だけど。
片手をかざし魔力を込めようとすると、ヴァルスが一瞬驚きの表情を浮かべた後、面白そうにニヤリと笑った。
「流石は死神だな。確かに改めて思うと面白そうだ。ドラゴンの卵は魔力を込めた主の影響を強く受ける。一体どんなドラゴンが生まれるんだろうなぁ」
生まれるか分からないって。けどやれるだけやってみよう。
ボクは魔力をありったけ解放すると、ドラゴンの卵はそれをグングンと吸い込んだ。
「あ、隊長お帰りなさい。お疲れ様です」
隊長――――――メルポリン警備隊隊長である男は部下にそう労われた。
「彼らは隊長の屋敷に?」
「ああ。無一文がこの自由経済の国で生きていけるわけもないからな」
「相変わらず優しいですね隊長は」
「別に。ただ使わん屋敷を有効活用しているだけだ。それに特にあの女の方は目の届く範囲に置いておいた方が良い。当分はあの家から離れることはないだろうからな」
「確かに。ここで寝泊まりする隊長が尋問するなっていうくらいですもんね。俺も目合った時死ぬかと思いましたよ。まぁやれと言われたらやりますけど」
溜息を吐きながら隊員は部屋の隅に置かれている簡易テントを指さす。職場で寝泊まりをしている何よりの証だった。
だが隊長は涼しい顔をしたままだ。
「別にいいだろう。それに今はうかうかしてられんのも事実だろう」
「あー確かに。しかし例の情報本当なんですか?」
例の情報、という言葉に隊長は一瞬険しい顔をした。
「……どうだろうな」
「だったらそこまで警戒しなくても―――――――」
「いや、するべきだ」
剣そのものような鋭さのある言葉に、隊員は息を呑む。
「この都市は人間にとって重要な貿易拠点だ。失うわけにはいかない。たとえ相手が―――――魔王軍将軍だとしても」
届いた報告書を見る。
そこには確かに第三将軍がこの都市を狙っていることが書かれていた。
上位神が全力で魔力込めるとか怖すぎてワロス。
視点についてのご相談
-
死神視点多めで
-
勇者君視点多めで
-
破壊神視点とかで
-
脂多めチャーシュー少なめで
-
私こそが視点だ!