「まだこの国に来ていただいたばかりで悪いのですが、一つお願いしたいことがありまして」
聖国ヴィムガルドに来てから数日が経った頃、訓練場にやってきたランが一枚の紙を差し出した。
「……これは?」
「この国と同盟を結んでいる隣国から少々気になる報告が上がってきまして」
差し出された紙を受け取り、目を通す。
内容は聖国ヴィムガルドに国端にある寂れた教会の調査をしてほしいということだった。
どうやらつい最近そこから膨大な魔力が観測されたらしい。
「これがどうして気になるんだ?」
「私もついこの間、神が召喚された気配を感じたからです。恐らくこの世界には本来いてはならない存在が何柱もいるようです」
「……!神が?!一体何の神なんだ?!」
「そこまでは流石に分かりませんが……恐らくは上位の神だと思います」
俺は神界でのことを思い出す。
戦神ヴァルハ、剣神セクア、知恵の神ハフト、武神ベアリス。
そして破壊神に死神。
俺は背筋が凍りついた。
「破壊神とかだったら不味くないか?!」
「そうですね……私達にどうこうできるような存在ではないですし。流石にこの国にもそんな神を封印できたりするような代物はありません」
「マジかよ……」
「だからこその調査依頼というわけです。膨大な魔力が観測されたということは、間違いなく何かしらの神が召喚されたのは間違いありませんから」
「なるほど……」
「そこで是非あなたに行って頂きたいのです」
ランが微笑みながら俺を見る。
「短くとも神と接してきた経験がありますし、何よりもこの世界をより知るには冒険がいい手段でしょう。こちらから何人か選出してパーティーで行って貰おうと思っているのですが、いかがですか?」
「確かにいい経験に、なるか」
俺はまだ聖国ヴィムガルド以外の国に実際に入ったことがない。勿論知恵の神から借りた本で世界情勢は理解しているが、やはり実体験に代わるものはない。
「分かった。そろそろ動きたいなと思ってたしな」
俺がそう言うと、ランは俺の考えを後押しするようにもう一度微笑んだ。
「分かりました。では明日パーティーメンバーを紹介しますね。紹介するのは3人で、どの方も優秀ですよ」
「ありがとう」
「聖国ヴィムガルドとしても勇者に何かあっては困りますからね。お気になさらず」
ランはそう言って訓練場を後にする。
今のは素直に喜ぶべきなのだろうか……まぁ少なくとも安全は確保してくれるということと考えておけばいいだろう。
「……にしても、神の召喚、か……」
知恵の神の本が言うには、神の召喚は神のランクが上がれば上がるほど大量の供物などが必要になるそうだ。
上位神には俺が会っていない神だってたくさんいる。知恵の神にも智慧の神という上位神の上司がいる。前にこき使われると愚痴っていた。
「破壊神とか、死神じゃなきゃいいんだけどな……」
そう願うばかりだ。
次の日。
応接間へと呼ばれた俺は、そこでパーティーメンバーを紹介された。
「ゆ、勇者様!!は、初めましゅ――初めまして!!私は僧侶をしてます!アール=フォン=ミシュアルデですっ!!」
三人のうちの一人、綺麗な純白の法衣を纏った少女が綺麗な笑顔と共に一礼する。噛んでいたのは気のせいだろう。
「やぁ、僕は魔術師のアリアと言う。一応魔術はそんじゃそこらに負けないくらいの自信はあるよ。よろしく」
次に分厚いローブに身を包んだ背の小さい少女が俺に手を差し出す。
「ああ、よろしく」
差し出された手を握らないわけにはいかない。
「最後に俺か。俺はチュエリ。タンクをやらせてもらってる」
一番奥に立っていた、いかにも分厚そうな鎧を付けた大柄な男が軽く頭を下げる。
「こちらの三人が今回一緒に調査に行くパーティーメンバーです。では軽い自己紹介も済ませたところで、早速調査に行って貰います。私に付いてきてください」
ランが微笑みながら歩き出す。
俺とすれ違う瞬間。彼女は俺に小さく耳打ちした。
「もしかすれば、この調査以降もパーティーを続けるかもしれませんから、今のうちに仲良くなっておいて下さいね。まぁ彼らが生きていればの話ですけど」
「?それってどういう―――――」
聞き返す前に彼女は俺から離れた。
「隣国までは転移魔法が繋がっているのでそれで行きましょう」
俺達は彼女の後をついていく。
ここはこの国の中心なだけあってかなり広い。恐らくはディズニーランドよりも広いだろうな。
廊下を何回も曲がると、ちょっとした広間に出る。
その地面には複雑な魔法回路が張り巡らされていた。
「おーこれは中々興味深い。初めて見たよ、転移魔法は」
「転移魔法は国家が保有する程度のものですから」
ランが中央に立ち、魔力を迸らせる。
「転移先は相手国の王城です。既にアポイントはあるので相手に従って調査してください。くれぐれも失礼のないようお願いします。それでは」
俺達が何かを言う前に、魔法陣がカッと光る。
「あのいきなりすぎじゃ――――――――」
俺の心内を代弁するように驚き顔のミシュアルデが叫ぶが、それも光に包まれて消えた。
いや突然過ぎだろ!
やがて光が収まると、景色は一変していた。
白い大理石のような石の床ではなく、レッドカーペットの敷かれた明るい広間。
「ああ、聖国ヴィムガルドからいらっしゃった皆さんですね」
かけられた声に振り返ると、身軽そうな鎧を纏った中年くらいの男が立っていた。
「ようこそヴルムガルド王国へ。今回は調査の依頼を受けていただき感謝します」
「あ、ああ」
「では早速移動しましょうか」
「早速?!」
「うるさいぞミシュ」
ミシュアルデが素っ頓狂な声を上げる。隣ではアリアが耳を手で塞いでいる。
「移動に二日かかりますから。こちらへ来てください」
男の後ろを付いていく。
「いやー助かりました。我が国は神関連となると門外漢でして、どうしても頼らざるを得ないんですよ」
「あーそうなんですね」
「そうですよ。万能な帝国と違って我が国は偏りがありますから」
一見自虐にしか聞こえないが、何だろう……帝国批判を感じた。
そんなことを思っていると、視界が開け、日光が俺達を迎える。
「では出発しましょう。こちらの準備は既に整っていますから」
男の視線の先には、馬車が二台ほど止まっていた。
準備万端ってわけか。
「……俺は乗れるのか?」
さっきまで無言だったチュエリが聞く。まぁその体格+鎧は相当なものだろうからな。
「我が国の馬車は耐久性には自信がありますのでどうぞ」
チュエリが先に馬車に座ると、馬車はミシミシと音を立てたものの耐えた。
「おーこれが馬車か……」
思えば初めて乗るな馬車。日本じゃ乗ることなんて滅多、ほぼないからな。
実際乗ってみた感想というと……
まぁ車の席が木製になったようなものか。少し嬉しいと感じると同時に、よく漫画で尻が痛くなるという描写があったが納得した。
「乗るのは初めてなのかい?」
向かいに座ったアリアが問いかけてくる。
「ああ、この世界に来たのも最近なもんで」
「なるほどね……まぁゆっくり楽しみ、興味を持つといいさ。魔法なら僕が教えてあげよう」
「いやまぁ……神界で色々学んできたからなぁ」
「ほぅ……それはさぞ素晴らしい魔法を学んでいそうだ。是非今度ゆっくり聞きたいね」
アリアが目を光らせる。なんか地雷を踏みぬいたか……?
「それでは出発します!!」
外から声が聞こえると同時、ガタンと揺れながら馬車は動き出した。
これから俺達は調査に向かう。別に魔王軍と戦うわけじゃない。
けどなぁ……なんか嫌な予感がするんだよなぁ。
例えばそう……死神が召喚されてました、とか。
流石にないか。
勇者君大当たり!!おめでとう!!
景品はないけど!!
アール=フォン……フォン?!
いつから幼女のミドルネーム仲間に……?!
ということで主人公視点はもう一話続きます。
こんな場所にこの話入れるべきだったのかねぇ……もうちょっと後でもよかったかもねぇ。
物語構想弱者極まりないねぇ。
視点についてのご相談
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死神視点多めで
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勇者君視点多めで
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破壊神視点とかで
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脂多めチャーシュー少なめで
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私こそが視点だ!