いや、死神とか聞いてないし 作:わお
「まずはそなたにスキルを授けよう」
目の前で荘厳な見た目をした筋肉隆々の男が言った。
現代日本から神の住まう世界、神界に勇者として召喚されてから一夜が明けた。
正直未だに理解が追い付いていないのもある。だが、ライトノベルを読み漁っていた俺にとっては言っちゃ悪いが割と馴染み深いものがあった。
目の前の大男は”戦神”ヴァルハ。俺を召喚した張本人らしい。
ヴァルハが俺に手の平を向けてくる。手の平から透明感のある光が俺を包む。
その瞬間、体が突然軽くなったような感覚に見舞われた。
「そなたに第三世界にて使われるスキルの、基礎を授けた。あとは訓練をし、そなた自身の戦闘技術を培うのだ」
「あの」
「何だ」
「訓練というのは?」
「実技である。この神界には戦闘のできる神がたくさんおる。相手を頼み鍛えて貰うが良い。だが忠告しておく。上位神には頼むべからず。そなたら人間ごときが相手できる存在ではない。上位神には首筋に紋様がある。そして……」
ヴァルハの視線が鋭くなる。それだけで、俺の体はまるで石になったかのように固まった。それほどまでに、洗練された恐ろしい視線だった。
「死神や破壊神には近寄らぬことだ」
「死神とかもいるんですか?」
「然り。この神界にいる。死神は我らが最高神に次ぐ存在であるが、決して近づいてはならん。加えてそなたら人間が扱えるようなスキルは一切持っていない。触らぬ神に祟りなし、という言葉がある通りである」
「わ、分かりました」
俺が頷くと、戦神ヴァルハは一度頷いてから一瞬で姿を消した。
広い採光の取れた部屋にポツンと一人取り残される。
取り敢えず探検するしかないか……
俺は歩みを進めた。
「ふぅ……広いな」
探検した所、神界は実に広かった。
俺が召喚された中央の棟から様々な世界や環境を模した庭園があちこちに広がっており、それぞれに神がたくさんいた。
多すぎて全て回ろうと思うと数日はかかるだろう。
俺は中央棟へと続く広々とした廊下の端に座って休憩していた。
「お茶とかないのか……」
自販機をいっこうに見かけない。まぁそりゃ神界だからか。
ふと視線を上げると、廊下の向こうから何かが歩いてきているのが見えた。
鮮烈の赤の髪を首あたりで刈り揃えた、鋭い目つきの女神で、原始人のような布服だけで身を隠していた。
明らか他の神とは何かが違う。直観がそう告げた。
「まさか……あれが死神とか破壊神?」
俺は廊下の端に並ぶ巨大な柱の陰に隠れる。
やがてその女神は傍を通り過ぎて行く。チラリと首筋を見ると、破壊を連想するようなガラスが割れるような紋様。
あれが破壊神なのか。もっと邪悪そうな印象だったが。
小さくなっていくけどどこか恐ろしい背中を見つめて……
「――――おい?ワタシが気づいてないとでも思ったか?」
「―――ッ!!」
気づけば目の前に破壊神の顔があった。
視線と視線が合う、その瞬間。俺は本能的に恐怖を感じた。
「お前が例の勇者だろ?可愛いツラしてんなぁ?」
固まる俺に対し、破壊神は不気味に口端を吊り上げた。
「そう怯えんなって。どうせまた会えるんだから」
「え……?」
「ハハッ。楽しみだなぁ」
パッ。一瞬にして破壊神はまた遠くへと動いていた。
消えていく背中を見送ってから、俺は漸く肺の空気を吐いた。
「はぁッ……あれが破壊神……こえぇぇ」
恐ろしかった。全身鳥肌が立っていた。
何だったんだよ。マジで。神のする表情じゃないだろアレは。
そう心の中で愚痴った時だった。
「大変だったね」
空気に溶けているような、そんな錯覚を覚える静かな声がした。
振り返ると、そこには少女が廊下の端に座っていた。
黒を基調にした服で、その上から外套を一枚羽織り、頭の上には小さな王冠の乗った軍帽のようなものを載せている。
黒色の手袋を手に付けていた。
「破壊神と見つめ合うなんてボクでも嫌だからね」
少女が苦笑する。普通のことだ。だがどこか、何か違和感があった。
そうだ。音がなかった。声がかけられるまで、いることさえ分からなかった。
「え、あ。あなたは……」
「ボク?ただのしがない下っ端神。お茶でもどうだい?」
少女の隣には湯気のたつ湯呑に入った緑茶があった。
格の設定は割とノリです。
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アレだよ、そう、アレアレ。
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普通のものには興味ありません(変化球)