いや、死神とか聞いてないし   作:わお

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三話:少しづつ用意を

「取り敢えず座りなよ」

 

手をこまねく少女。しかし、この神界にいるということは確実に神だ。

 

断るべきではないと考えた俺は大人しく少女の隣に座った。

 

「緑茶もどうぞ」

 

さっと湯呑が差し出される。

 

喉が渇いていた俺にとって断る理由もなかった。

 

恐る恐る受け取り一口、ズズと飲む。

 

「……旨ッ」

 

水と完璧な配合で作られている。俺が日常で飲んでいたものが霞んで見える。

 

「ここは神界だからね。食堂でいくらでも飲めるよ」

 

「え、食堂……?」

 

「うん。神は食べなくても無問題だけど、食を楽しむからね。中央の棟の地下にあるよ」

 

地下だったのか……どうりで地上を探すだけでは見つからないわけだ。

 

少女はほっこりな表情で湯呑を傾ける。それはどこか神々しいというより、人間臭い感じがした。

 

「それで、君は勇者だろう?」

 

「知っているん、ですか」

 

「まぁ上位神が呼び出すってことで知名度あるよ」

 

「そうなんですね……」

 

それで俺が散歩しているとき見掛けた神達からコソコソ言われていたのか……。納得である。

 

「あそうだ。お菓子もいるかい?」

 

スッと見慣れた包装のチョコレート菓子が差し出される。そんなんもあるん?

 

「神界には基本何でも揃っている。便利だろう?ずっと居たくなるくらいにはね」

 

「ま、まぁそうですね……」

 

お菓子を受け取る俺の脳裏を過ったのは破壊神の存在。

 

正直もう神界に長居したくない、というのが俺の今の心境だった。

 

ここは一般の人間には居心地が悪い。

 

「そういえば、戦神から何か課されたんじゃない?」

 

「はい。神に教えてもらってスキルとかを鍛えろ、と」

 

「へぇそうなんだね……」

 

興味深そうに頷く少女。すると何かを閃いたように俺を見た。

 

少女と目が合うその瞬間、ゾクリとした。

 

見ているようで、何も見ていないような漆喰の目が全てを飲み込まんとするかのごとく俺を貫いた。

 

だが少女は無邪気に続ける。

 

「じゃボクからもスキルをあげよう!といってもボクは下っ端だからね、欠点だらけだけど」

 

俺が返事する前に少女は俺に手の平を向けてくる。

 

すると何かが自身の体に入ってくる感覚が俺を襲う。ドスンと落ちるような、戦神ヴァルハの時とは何かが明確に違った。

 

「ボクが授けれるスキルは制限がない分強力だけど、比例して代償が必要になる。だから、いざって時に使うといいよ」

 

は?代償だって?という言葉を俺はすんでのところで飲み込む。

 

神から貰ったスキルの代償、文字だけでも恐ろしい気分だ。使ったら死にそう。

 

―――そういえば、結局この少女は何の神なんだ?

 

首筋を見るのを忘れていた俺は、こっそりと視線を向ける。

 

少女の首筋にあったのは、”鎌”のマーク

 

上位神じゃないか。しがない神ではない、というのは火を見るよりも明らかだ。

 

では本当に何の神なのか。

 

「さて、ボクはそろそろ行くよ」

 

少女が立ち上がるところで、思考が現実へと戻される。

 

「ま、ゆっくり修行するといいよ。神界の時の流れは第三世界とは根本的に異なるから、ここでどれだけ過ごそうとも、向こうではほとんど経っていないことになる」

 

「はい、お茶、ありがとうございます」

 

「教えてもらうなら”剣神”とかが良いと思うよ。じゃ、頑張って」

 

少女が満足げに頷き去っていく。俺は小さくなっていく背中を見送った。

 

にしても鎌……鎌……何かの関連だった気がするが、何だったっけな……

 

「くっそぉ、喉まで来てるんだがなぁ……」

 

もっと勉強しておくんだったか……

 

俺は残った緑茶を飲み、釈然としない気持のまま立ち上がった。

 

 

 


 

 

 

「―――――まだ、天啓の勇者は来ないのですね」

 

世界最大の大聖堂の檀上。そこで煌びやかな法衣を纏った少女が呟いた。

 

傍に控えていた一人の騎士が甲冑を鳴らしながら前に出て屈む。

 

「帝国が勇者召喚を行ってから既に一か月です。このままでは、我が国は対外での交渉で大きく後れを取ってしまいます」

 

「そうですね……しかし私達は待つしかありません。それに、魔王が迫ってきている今それは問題ではないでしょう」

 

「しかし昨夜大規模な召喚魔法が行使されたという情報も……」

 

「勇者召喚でないのは確かです。恐らく……神の類いでしょう」

 

少女の発言に大聖堂がざわつく。

 

しかし、少女が手を挙げると一瞬にして静かになった。

 

「待つしかありません。我らが神が送る勇者はきっと素晴らしい方であることでしょう。そして果たして、我が聖国は魔王討伐の実績を得ることでしょう」

 

大聖堂の中が歓声で満ち満ちる。

 

少女はそれを一瞥してから法衣を翻し、大きな神像を見つめた。

 

「既に魔王は地上の半分を支配しました……どうか、早く」

 

痛切な一言。

 

事実、この世界―――第三世界における魔王は神の想像よりも成長し、今や世界の半分を死の大地へと変えた。

 

あの魔王は一刻も早く殺さねばならない。さもなければ、いずれ神にも――――――。

 

少女は冷や汗をかいた。

 

 




スニッ〇ーズをほぼ食べてないんです。ポッ〇ー教信者なので……

時間軸について一言。完全に別次元の世界同士なので、向こうの時間がこっちでは何時間、といった変換はできません。(神界には時計とかありません)

欲しいものは……

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  • 閑話的なアレ
  • アレだよ、そう、アレアレ。
  • 普通のものには興味ありません(変化球)
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