いや、死神とか聞いてないし 作:わお
燃え盛る数多の家屋。
道に溢れかえるのは村人達の動かなくなった体。
「がぁ……ッ」
地面に這いつくばりながらも、満身創痍ながらも、何とか生きていた男が視線を上げる。
「何故こんな、ところに……魔王軍、が……」
視線の先、道路の中央。
そこに立っていたのは人ではない存在。
「クク……この国の村は滅ぼしやすいなぁ」
謎の言語があしらわれたフード付きのローブを被った小さな背格好の少年がケタケタと笑う。
異質だった。魔王軍は大半がゾンビやスケルトンといった完全な人外であるからこそ、人間そっくりの少年は村を襲った魔王軍の中でも際立っていた。
「勇者はまだかなぁ?もう待ちきれないなぁ。神が遣わすってだけで強そうだもんなぁ。あぁ早く殺したいなぁ。きっとキラキラした性格のやつなんだろうなぁ。嫌だなぁ」
村の惨劇など全く気にしていないかのようにブツブツと呟いて笑う。
男の意識はそこで途切れた。
「こっちか……?」
俺は駆け足で爆発と煙の渦巻く場所へと向かっていた。
嗅覚が焼け焦げる異臭を感知する。もう近い。
「ここか……――――――ッ!」
視界が開けた瞬間、飛び込んできたのは日本では見たこともない村の光景。
たくさんの家から火の手が上がり、道には血だらけの人々が倒れ伏している。
「マジ、かよ……」
ネットで見た戦争の写真ような風景が、リアルに、目の前にあった。
異世界を俺は少し楽観視していたのかもしれない。すべてが生々しい。焼ける、むせ返る、鉄さびのような臭い……
どこからか聞こえた呻き声で俺はハッと我に返った。
「一先ず俺にできることをやらないと!」
俺は覚悟を決め、燃え盛る村の中へと歩みを進める。
重くなる胃を抑え、一歩、一歩とまた進む。
真ん中あたりまで進んだ時だった。
カシャ、と何かが擦れるような軽い音が前から響いた。
「な……あれはスケルトンか……」
先にいたのは数体の動く人体模型。スケルトン。知恵の神から借りた本に載っていた。
その手にはキラリと輝く細長い剣。間違いなく本物だ。
スケルトン達は俺を視界に入れた途端、狂ったように剣を振り上げながら襲い掛かってきた。
対抗しようと俺も異空間から剣神謹製の日本刀を取り出す。
だがスケルトンから濁った殺意を向けられた瞬間、無意識に体が固まった。体が竦んだのだ。
「――――――グッ!!」
振り下ろされた剣を何とか受けるものの体勢の悪かった俺は力で押され、地面を転がった。
すぐに態勢を戻し、スケルトンを睨む。
遅い。剣神の剣に比べればぬるま湯にも程があるほど。
剣神の剣は視認する前に振りぬかれ、俺の体を切り刻んでいたのだから。
だが剣神と違う点がある。スケルトンは本気で俺を殺す意思を持っている。
それが俺を縛っているのだろう。
いつかテレビで聞いたことがある。達人というのはいかに自身の無意識を騙せるかに重点を置いている、と。
今になって分かる気がする。車に轢かれた時、大抵の人間は体を無意識に硬直させるが、実は弛緩している方が怪我の具合が軽くなるのと同じ理屈だ。
だが今すぐに本能的な行為を騙すなんてできようか。
迷う俺。だが視線を落とした視界の傍に、地面に横たわる物言わぬ人の姿が映る。
……そうだ。俺は勇者だ。神に教えてもらった勇者だ。一年の努力を信じないでどうする。
俺は迷いを捨てるように一度頬をパンッと叩き立ち上がり、剣を構える。
タイミングよくスケルトンが襲い掛かってくる。
だがやつらの剣筋はずっと見えている。
「――――――スキル!幾千斬!」
加速する刀が滑線を描き、一瞬にしてスケルトンをいつかのサイコロ先輩のごとく細切れにする。
いける。戦える。流石は剣神に教えて貰っただけのことはあった。
「一気に終わらせる!スキル、十文字斬り!」
文字通りの十文字の斬撃が残りのスケルトン達をバラバラにしていく。
残ったのは斬撃の跡と、骨の山になったスケルトン。
「ふぅ……取り敢えず、勝てた、な……はぁあああああこれが本当の戦い、かぁ」
この世界では修行した神界と違って死んだら終わり。緊張が解け、思わず肺の息を吐きつくす。
だが周囲からのボウッという炎の音でハッとなる。
「やっぱ熱ッ!クソ、誰か生きてるやつはいないのか?!」
せめて助けるやつは助けなければ。これは勇者関係なくだろう。
骨身に染みるほどの熱量を受けながら俺は村の中を走り回る。
「!いた!」
呻き声を頼りに、俺は生存者を見つけた。
暫く経ち、俺は唯一焼けなかった村の離れの家にお邪魔していた。
「うぅん……ここ、は……」
ベッドに寝かせていた生存者が目を覚ます。
結局生き残っていたのは彼だけだった。既に焼け落ちた村から新しい生存者が出てくるのは期待するだけ無駄だと分かっている。
「目が覚めたか?」
「!あ、あなたは……私は確か、もう助からない怪我を……」
「俺の持つスキルに回復系のものがあるからな。ほぼ完治してるはずだ」
「そ。そんなまさか。回復スキルを使えるのは、聖女くらいのはずでは……」
驚く彼。少しやさぐれているが、優しい雰囲気を纏った三十歳くらいの見た目と相まって、猶更驚きの表情が目立っている。
俺は少しだけ身を乗り出す。
「取り敢えず話を聞かせてくれないか?ここで何があったか。一体、誰がこんなことをしたんだ」
聞かれた彼は何かを思い出したのか、ゴクリと喉を鳴らした。
うす暗い森の中、小枝を踏み割る音を奏でながら歩く人影。
ローブを深々と被った謎の少年が突然ピタリ、と歩みを止める
「……ふぅむ?あの村に置いてきた部下の反応が消えたねぇ」
背後でピタリと止まったスケルトン達を一瞥する少年。
「何だろうなぁ。あの村にもうスケルトンを殺せるほどの存在はいなかったはずなんだけどなぁ。……クク。何か来るかなと思って一人生き残らせておいて良かったなぁ。面白くなりそうな予感がするよぉ」
ローブ越しでも高揚しているのが伝わるほどの、極端に抑揚の効いた声で言った。
死神くんの視点が一話以降ないという……主人公置き換わってる?
欲しいものは……
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