テラの自販機さん 作:匿名のカタリナ飛行艇
ACなんてこれっぽっちもやったことないのに、なーんで買ってるんですかねこの頭空力野郎!!
ロドス労基部
その日、とある小さな客人達が訪れていた。
『ミッション開始だ、殺してこい』
カチカチ
『理解したいのだよ、敵を...』
ガチャガチャ
『必要なのだ!100万の死が!!(゜∀ 。)<分からん...?フハハヒハハ...!!』
ギュ...ギギギ...
『無人機の生産を断て...ッ』
ピーピー
『魔法じゃねぇ、詐欺さ』
パチッ...ツ__
== Mission Accomplished ==
テレビ画面は暗転し、ナレーションとEDが流れる。
どうやらゲームをクリアしたようだ。
「どうでしたか?」
「それなりに楽しめたかな。普段はインディーゲームとかしかやってなかったけど、そんな僕から見てもだいぶ良かったと思うよ?」
「そうですか?ありがとうございます!」
青髪の子が好意的な意見を述べると、それを聞いた開発者らしきエンジニアが嬉しそう喜んだ。どうやら自作のゲームのテストプレイをしてもらったのだろう。はたから見れば、微笑ましい光景だと口元を綻ばせるだろう。
「......。」
一人を除いて。
ソファーに寝転びながら苛立ちを隠さない部屋の主デカグラマトンに、青髪の少女...少年?が振り返って満面な笑みで問いかけた。
「それで、自称神様はどう思う?」
「何故汝らは我の部屋を占領しているのか、これが分からない」
「それは最初に説明したでしょ」
曰く、ケルシーにゲーム禁止令を出されてゲーム媒体を没収されたらしい。
しかしだからと言ってなぜ労基部の部室でやってるかかと問えば、他より暇そうでかつ僻地でケルシーの目が付かなそうだから、だという。実際、ケルシーがここに直接来ることは少ないのだが、稀にコーヒーを飲みに来るので聖域という訳ではない。
過去、逃亡中につき我にこの部屋で匿われたはいいものの、コーヒーを飲みに来たケルシーにバッタリ鉢合わせ執務室に連行されていった魔王殿下の悲しき背中には、さすがのデカグラマトンも涙を禁じえなかった。
「それで、ずっと後ろから僕のプレイを見ていた感想は?」
「不快、不愉快」
「すっごい暴言」
デカグラマトンはこめかみに血管を浮かべながら、思う限りの感想を述べた。この際、この自販機神に血管があるかはさておき、不機嫌なのは確かだった。
「まずストーリーが駄目だ」
「えぇ!?」
「僕は面白いとおもったけど...スッキリしたし」
「アーセナル・バードが落とされたのがげせんッ!!」
「あ、
デカグラマトンはソファーから起き上がり、拳をワナワナと震わせる。
「フギン・ムギンがいとも容易く数分で撃墜されたのもそうだが、人間如きにAI制御の戦闘機が落とされる訳がないであろう?奴らはAIの面汚しだ。ベルカ人も自分で作っておいて酷い裏切りだ...It's 演算力足らんかった...ッ!!」
「迫真だね」
「だが登場する兵器は良かったぞ。でっかい大砲群に、でっかい潜水艦、そしてでっかい飛行艇」
「確かにあの星砕きの砲台は痺れたよね」
そういえば、このゲームはシリーズ作の第7部にあたるらしい。
なにやら先の大砲にもご大層な名前がついているらしく、なにかとかこつけて歴史を紡ぎたい人類らしく現実の遺跡から名前を拝借した、という設定らしい。
「巨大な大砲はロマンですからね」
「ロマン、か...」
ロマンと聞いて、ひとり煩い奴の顔が思い浮かぶ。
こういうぶっ飛んだ話が好きそうな奴だ。
うーん......
そういえば、
前にケルシーがロドス号の防衛力アップについて、なにか苦心していたような...
「___閃いた」
「通報した。」
ケルシーがロドス本艦にトンボ返りしてくるまで、あと...
**********
AM12:40
リターニア辺境
天候:晴れ
「ケルシー、私の見間違えならいいんだが」
「待てドクター。それ以上......なにも何も言わないでくれ」
「でも」
「言ったら最後、現実になってしまう。我々が置かれたこの状況が、現実だと認めざるを得なくなってしまう」
ロドス運営に関わる大事な仕事を終えたドクター一行は、1日かけてロドス本艦が停泊する場所にたどり着いた。
「我々は、現実を、直視するべきだ。」
「......。」
「ロドスにすごく大きい大砲が載ってる」
ケルシーは目頭を押さえ天を仰いだ。
とりあえずデカグラマトンは処す。クロージャも処す。関係者も全員処す。
懲戒処分、減給、謹慎、斬首、はりつけ、市中引き回しのうえ火刑。
釘バットでロドス中の自販機という自販機を叩き壊すとケルシーは心に固く誓った。
デカグラマトンに政治は分からぬ。
デカグラマトンは自販機のおつり計算AIである。
コーヒーを淹れ、友人に飲ませては腕を磨く日々を送ってきた。
だが人一倍、親友の激怒には鈍感であった。
「なにか言い残すことは?」
「難しい目標をぶち抜く、だからエレガントなんだ!!分からんか!?」
「分からん、始めてくれ」
つい最近覚えた渾身のネタを披露するも、披露する相手と場所とタイミングが良くなかった。
ロドス未販売のゲームである。さすがに身内ネタが過ぎた。
鉄の鎖に巻かれクレーンに吊るされたデカグラマトンは、グッと親指を立てて伸ばし溶鉱炉の中へとアイルビーバックしていった。
「素敵です
「死んだみたいだな」
ちなみにクレーンの真横には、雁字搦めになってガムテープで口を巻かれているクロージャが、顔を真っ青にして釣り上げたマグロの様にびっちびっちと波打っている。
「ン”ーーン”ン”ーーー!!!」
「逃がさんぞ?」
ガシッ、と逃げようとするクロージャの肩を掴むケルシー。
クロージャの息を飲む声が聞こえた。
デカグラマトンに続きクロージャの処刑が始まろうとしていた丁度その時、拷問部屋のドアが勢いよく開かれた。
「ケルシー先生!近隣の移動都市から緊急依頼が!」
「クロージャ、殺すのは最後にしてやる。そこで待っていろ」
「(ほっ...)」
「それで、リーターニアからの依頼内容は?」
「リターニア軍の軍艦がテロリストに奪われたそうで、丁度こちら方向へ逃走してきているようでして...それで丁度進路上にいる我々ロドスにも軍艦撃沈の依頼が来ているようです」
通信オペレーターからの報告は、ケルシーの頭痛を酷く悪化させた。
ロドス・アイランド製薬は如何なる国家・組織とも独立した中立の組織である。
その中立を謳う我々が、なぜリターニア軍の杜撰な管理体制の尻拭いをしなければならないのだろうか?
ありえない話だが、もし仮に『鉱石病感染者たちが移動都市を乗っ取って別の国へ突っ込ませようとしている』とかであれば、感染者問題や差別の廃絶を至上命題とする我々ロドスが動くこともあるだろう。本当にありえない無謀な、そして笑えない話だが。*1
ともかく、関係のない傭兵染みた仕事をホイホイ受ける訳にはいかないのだ。
ただでさえPMCだと思われてるロドスへの誤解が、更に深まってしまっては目も当てられない。
「ロドス製薬は民間軍事会社ではない。そう返信しておけ」
「ですが先生、その艦には大量の源石粉塵拡散兵器が積まれているそうです」
「謹んでお受けすると先方に伝えろ」
それを先に言え、ケルシーは心の中で頭を抱えた。いや、実際に頭を抱えた。
源石粉塵拡散兵器?なんだその悪意マシマシの巫山戯たシロモノ。
そんなものがテロリストの手に渡ったとなれば、リターニア在住の鉱石病感染者達へのあらぬ陰謀や風評被害がたてられても可笑しくない。
リターニアはテラでも珍しい、感染者差別が比較的マイルド*2な国家だ。
その国家からも爪はじきにされる様になれば、最早感染者は何処へ逃げればいいというのだ。
それこそ移動都市を本当にパクッて暴走を始める感染者達が出てきかねない。
「ですが先生、ロドスに軍艦を撃沈する兵器なんて...っあ」
オペレーターの頭に、最近ロドスでもホットな話題が浮かび上がる。
「(ため息).......誰かデカグラマトンを溶鉱炉から引き揚げろ」
「我に何か用か?」
摂氏2,000℃の鉄鉱石とコークスに沈めてたはずの親友はしかし、さも当然のようにケルシーの背後からヌッと顔を出した。
目線を下に向ければ、白いスカートが黒焦げになり殆ど半裸になっている。
本体はともかく、2000℃で溶けない洋服の生地とは?
「やはりお前は粉砕機で念入りに裂いてから炉に焚べるべきだったか」
「そのような炉を使わずとも、我の心は汝への情熱でオーステナイトの様に__「御託はいい」
話を遮るケルシー。
「単刀直入に聞く。あの大砲は
「ん”ッ(悶絶)......ああっ!無論だとも。 ”今、すぐに” 可能だ」
「では直ち遅滞なく実施しろ。あと服も着替えろ」
デカグラマトンは簀巻きにされたクロージャを肩に担いで、上機嫌に部屋を出ていった。
ちなみにクロージャは今回に限っては全然冤罪であった。
日頃の行いが原因である。他意は無い、そう思いたいクロージャだった。
△
<<損傷を恐れるな、突破せよ!荒馬のように突進しろ!敵の陣地を踏み荒らせ!>>
ロドス本艦甲板の艦首に仁王立ちしているデカグラマトンの耳に、広域チャンネルから男の声が聞こえる。
内容から察するに、今まさに眼前に迫ってきている軍艦に乗ったテロリストの頭目だろう。
テロリストが強奪した陸上艦(戦艦ではない)を、ロドスは捕捉した。
そしてそれを塞ぐ様に、ロドス本艦が軍艦の進路上に躍り出た。
デカグラマトンは被っている楕円形の帽子*3のツバをぐいっと手で押し上げ、通信機のスイッチをオンにする。
「ケルシー。接近中の軍艦を敵対的な艦艇と見なし、目標とする」
『了解した、第一目標...巡洋艦ツェペリン』
「違う、目標はテロリストの親玉だ」
『は?』
デカグラマトンの訂正に、通信機の向こう側から困惑の声が漏れる。
「分からんか?艦ではなく人を撃つ。それが砲術だ」
『お前は自販機だろう』
「イメージだケルシー...ストーンヘンジの発射シーケンスに入る」
ロドス本艦に上部に設置されていた巨大な砲身が、唸りをあげながら持ち上がる。
いわゆるレールガンと呼ばれるソレは、ロドス本艦の膨大な発電電力を汲み上げてなお足りないエネルギーをデカグラマトンから供給され、初めてその真価を発揮できる。
「ロドス本艦エネルギー回路接続、直列自販機式神秘全開、出力80...90...」
実際、ロドス本艦の甲板にはレールガンの他にデカグラマトンの半身とも呼べる37台の自販機が野ざらしに並べられていていて、それらが電源ケーブルで繋がれていた。
傍から見れば企業のサーバールームか直列に繋がれたバッテリーのようにも見えなくもない。
実際は神性を内包したコーヒー自動販売機なのだが。
「緊急弁全閉鎖、リミッター解除...!100...110...115...ストーンヘンジ最大出力」
『調子に乗っているところ悪いが、絶対に外すなよ?』
「......教えてやろう、我がアビドス砂漠に居た頃の話だ」
「砂嵐の中、身長150cmにも満たない暁のホルスを狙って撃ったことがある」
「奴はホルスの眼をもっていたが...それでも2発に1発は命中した」
『それは何時の話だ?』
「照準補正良し、90...95...外しはしない!」
ロドスの上部、レールキャノンの砲口に眩い光が集まる。
辺りの光すら奪い尽くし荒野に一瞬の夜を産み出す。
「アツィルトの光」
瞬間、砲身から溢れ出した光の束は、ロドス本艦に迫っていたテロリストの軍艦を跡形も無く消し飛ばした。
満載していた源石粉塵拡散兵器すら蒸発させたその光は、そのまま地平線の先へと延びて___
否、天を裂き岐けた。
『おい...阻害層が貫通しているんだが?』
「........我、自販機だからよく分からないピ」
『御託はいい。今週中にあの悲惨な空を修復しろ』
点が引き裂かれたことによってライン生命の一部が狂喜乱舞し、数年後に星を飛び立とうとした宇宙船をこのレールガンで撃墜する事になるのだが、それはまた別のお話。
ブルーアーカイブ要素が足りないんだけどーやだー
・ロドス
ロドス・アイランド製薬が本拠地とする陸上艦艇。
対空兵装として実績のある
・ロドス改
艦上部に絶大な火力を誇る120cm対地対空両用磁器火薬複合加速方式半自動艦載砲を搭載している。
その火力は、移動都市を除くすべての陸上移動兵器の側面甲板を貫徹することができる。
・ロドス改二
空を飛ぶ。