【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.ⅩⅧ

弦十郎からもらったこの非常勤講師と云う仕事

資格をもらった直後は「楽そうでいっか」と浮かれていた

そんな過去の自分に会えるのなら言っておきたかった

この仕事―――刹那も楽じゃないからっ

そんなことを考えながら鏡華は一番下に設置された壇上で楽譜記号の読み方を教えていた

 

まず当たり前の事だが、大勢の視線がこちらに向けられている

以前にも言ったかもしれないが、鏡華は人前で何かをすることに慣れていない

次に雑用が多い

正職員である講師からたびたび雑用を頼まれるのだが、それがまた地味に重いし多いのだ

最後に給料が少ない

いや、これは別にどうでもいいことかもしれないが(むしろ非常勤なのだから当たり前だろう)、ソングライターをしていた時の十分の一程度なのだから嘆きもする

 

まだソングライターの方が楽だった

 

(ま、今は自分から休業中にしてるんだけど)

 

どんな楽だろうと、稼げようと、鏡華が歌を作るのは特定のユニットだけだ

それすなわち―――ツヴァイウィング

もしくは翼か奏個人限定

それ以外は、どんなに金を積まれようと、どんな高貴な人間からの頼まれごとだろうと

引き受ける気はこれっぽっちもなかった

 

例外があるとすれば、鏡華が興味を持ったモノについてのみ

それは曲だったり、人だったり様々だ

小日向の曲がそれに該当するだろう

しかし―――

 

(今の小日向にはあの時と同じ演奏はできないよな……)

 

ちらりと斜め左上を見上げる

響と未来がいつも通り隣同士で座っているのだが、響はちらちらと未来を見て、未来はそんな視線をまるで感じないかのように黙々と鏡華が板書する文字をノートに写している

 

あの後、正確には後から帰宅した響がどう対処したのか鏡華は知らない

険悪―――ではないが、どこか気まずい雰囲気を出している(響だけが)

 

「―――と云うわけで、D.C.の読み方はda(ダ・) capo(カーポ)。capoは『はじめ』と云う意味や英語でhead(あたま)を意味し、daは英語で言うfromに相当する前置詞として扱われます。この二語を英語で合わせるとfrom head。つまり『頭から(演奏せよ)』になります。簡単に言ってしまえば、そう云う意味を持つイタリア語の書き込みに過ぎないんです。もしテストがあれば、この時期であれば意味を答える問題が多いので、できれば意味は覚えておいてください」

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

「鏡華、食事はちゃんと取っているか?」

 

「藪から棒だね翼さん。一応これからのブランチ(朝昼兼用の食事のこと)と夕食はふらわーのお好み焼きで取ってるけど……」

 

四時間目終了後、午後からの授業がないことを理由に翼のお見舞いに来ていた鏡華は、突然の質問に瞬きする回数を増やしながら答えた

場所は病院の屋上。部屋でもよかったのだが、天候も良かったので外に出たのだ

 

「い、いや、鏡華は料理ができなかったでしょ? だからもしよかったら作ってあげようかと思って……」

 

「……翼。自分が何言っているか理解してる? 俺は確かに簡単な料理しかできないよ。でもね、それ以上にできない翼に言われたくないんですが?」

 

しらーっと、見つめる鏡華に翼はうっと言葉に詰まる

一緒に暮らしてた頃は基本的に弦十郎が食事を作ってくれたりしていたので鏡華達は料理をあまりしたことがなかった

おかげでと云ったら語弊が生じるのだが、鏡華達はそろって料理が苦手だ

ただ、上手い順に言うと意外にも奏、鏡華、翼の順になる

一見がさつそうに見える奏は、実は細かな作業が得意だったりする

りんごを向いてうさぎ―――それもリアルなタイプ―――掘り起こした時は全員で驚いたものだ

閑話休題

 

「まあ、気持ちだけ受け取っておくよ。翼は早く良くなることを優先しなきゃ」

 

「身体に異常はない。絶唱の反動だって完治した。ただ、司令が最終検査を終えるまでは入院していろとうるさいんだ」

 

「男手一つで俺達三人を数年育てたからねぇ。若干親馬鹿入ってるんだよなあのおっさん」

 

「ふふっ、言えてる」

 

実際小学校の授業参観などあると報告すると、必ず仕事をサボってでも来ていた

しかも盗撮まがいの方法で鏡華や翼を撮っていた

本人曰く、「これはあれだ、死んだあいつらの仏前に置くためだ」とかなんとからしい

中学校からはほとんど出席できなくなり、そんなこともなくなったが

 

「ねぇ、鏡華」

 

「んー?」

 

「えっと……そのね」

 

「うん」

 

「奏は今、どうしてるの?」

 

突然の質問に鏡華はまた、瞬きの回数を増やした

一秒ほど固まった後、苦笑を浮かべた

 

「突然だね」

 

「突然じゃない……前から、完全聖遺物(アヴァロン)のことを教えてくれた時から考えていたんだ。鏡華は一人で何もかも背負う感じがしたの。だから、もしかしたら奏のことも、って」

 

「……参ったね、こりゃ」

 

自分では隠してきたつもりだったのだが

―――最近の翼は鋭いね

それとも、自分が甘くなってきたのか

 

「確かに、翼の読み通りだ。奏の肉体は二年前からゆっくりとだけど、完治に向かっている。絶唱の反動も無くなったし、奏を蝕んでいた薬も体内から浄化された。眠ってはいるけれど、話すこともできる。―――もうすぐ、眼が覚める」

 

「……ほん、と?」

 

「うん。本当」

 

鏡華の言葉に翼は顔に手を当て、ややあって「そう……」と呟き俯いた

太陽の光で目元がうっすらと何かに反射した気がした

 

「あいつが目を覚ましたらさ、俺が住んでいるところに案内するよ。それで……」

 

「うん……うん……!」

 

頷く翼を見て、鏡華は知らぬうちに笑みをこぼす

 

これで目指していた理想へ手が届く

もうすぐ―――もうすぐだ

後少しで全てに片が付く

そのために―――

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