(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』   作:微糖コーヒー

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番外編②:次元 vs 転生者(デッドヒート・ドロウ)

 

 

 乾いた風が吹く荒野。

 

 遠くで錆びた看板が軋む音だけが響いていた。

 

「――ここなら文句ねぇだろ」

 

 帽子のつばを押さえ、次元大介が言う。

 

 俺――クロガネ・ユウは肩をすくめた。

 

「わざわざ人のいない場所選ぶあたり、本気だな」

 

「当たり前だ」

 

 次元はゆっくりと煙草に火をつける。

 

「遊びじゃねぇ。確認だ」

 

「何の?」

 

「お前の“ズレ”が、どこまで通用するか」

 

 ……来たな。

 

「やるのはいいけど、条件は?」

 

「殺しはなし。急所は外す」

 

「十分物騒だろ」

 

「俺はいつもこんなもんだ」

 

 煙を吐き、次元はニヤリと笑う。

 

「逃げていい。止めていい。好きにやれ」

 

「了解」

 

 俺は軽く手を振る。

 

「こっちも遠慮しない」

 

 静寂。

 

 風が止む。

 

 ――その瞬間。

 

 発砲。

 

 速い。

 

 だが――

 

「遅い」

 

 俺の視界では、弾丸はゆっくりと空気を裂いてくる。

 

 指先で掴める。

 

 避けられる。

 

 そう思った。

 

 だが。

 

「……っ!?」

 

 弾道が、わずかに“曲がる”。

 

 指をかすめて、背後の岩に当たる。

 

「今のは……」

 

「勘だ」

 

 次元が言う。

 

「お前が“そう動く”って読んで撃った」

 

「未来予知でもしてるのか?」

 

「してねぇよ」

 

 次元は肩をすくめる。

 

「ただの経験だ」

 

 ……厄介だな。

 

「もう一発いくぞ」

 

 再び発砲。

 

 今度は二発。

 

 連続。

 

 俺はズラす。

 

 時間の流れから半歩外れる。

 

 弾丸はスローモーション。

 

 だが。

 

 片方が外れ、もう片方が――

 

「近い!」

 

 頬をかすめる。

 

「……マジかよ」

 

「いい反応だ」

 

 次元は淡々と言う。

 

「だが甘い」

 

「どこが」

 

「お前、“見てから”動いてる」

 

「それの何が問題だ?」

 

「遅れる」

 

 次元の目が鋭くなる。

 

「俺は“撃ってから考える”」

 

 再び発砲。

 

 今度は三発。

 

 ランダム。

 

 読めない。

 

「……!」

 

 俺はズラす。

 

 だが弾の一つが、腕にかすった。

 

「チッ……!」

 

「だから言ったろ」

 

 次元が言う。

 

「チートにも穴はある」

 

 俺は一度距離を取る。

 

「なるほどな……」

 

「何か分かったか?」

 

「お前、“未来を作ってる”」

 

「大げさだな」

 

「いや、本質だ」

 

 俺は笑う。

 

「予測じゃない。強引に“当てに来てる”」

 

「当たればいい。それだけだ」

 

「シンプルで厄介だな」

 

 俺は深く息を吸う。

 

「じゃあ、こっちもやり方変える」

 

「ほう」

 

「“見てから”じゃなく、“ズレたまま動く”」

 

 同期を外す。

 

 完全じゃない。

 

 だが――

 

 世界が二重に見える。

 

「行くぞ」

 

 俺は踏み込む。

 

 次元が撃つ。

 

 だが。

 

 俺は“予測されない位置”にいる。

 

「……!」

 

 弾が空を切る。

 

 初めてだ。

 

「今度はこっちの番だな」

 

 俺はナイフを投げる。

 

 だが次元はすでに動いている。

 

「甘ぇ」

 

 かわす。

 

 即座に反撃。

 

 発砲。

 

 近距離。

 

「……っ!」

 

 俺はギリギリでズラす。

 

 弾が肩をかすめる。

 

「近づけばいいってもんじゃねぇ」

 

 次元が言う。

 

「距離は関係ない。勝負は“瞬間”だ」

 

 数分。

 

 撃って、避けて、ズラして。

 

 砂煙が舞う。

 

 呼吸が荒くなる。

 

「……はぁ……」

 

「どうした、息上がってるぞ」

 

「そっちは余裕そうだな」

 

「慣れてるからな」

 

 煙草を捨てる。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

「同感だ」

 

 最後の一発。

 

 次元が構える。

 

 俺も構える。

 

 ズレを最大に。

 

 全神経を集中。

 

 ――同時。

 

 発砲。

 

 時間が伸びる。

 

 弾が近づく。

 

 俺はズラす。

 

 次元は――迷わない。

 

 結果。

 

 弾は互いの頬をかすめて通り過ぎた。

 

 静寂。

 

「……ドローだな」

 

 次元が言う。

 

「だな」

 

 俺は息を吐く。

 

「面白ぇ能力だ」

 

「そっちもな」

 

「だが」

 

 次元はニヤリと笑う。

 

「実戦じゃ遠慮しねぇぞ」

 

「こっちもだ」

 

 遠くから声。

 

「おーい、終わったかー?」

 

 手を振っているのは、ルパン三世。

 

 その隣には、峰不二子。

 

「派手にやったわね」

 

「服汚れてるじゃない」

 

「うるさい」

 

「で、勝ったのはどっち?」

 

 不二子が聞く。

 

「引き分けだ」

 

 次元が答える。

 

「へぇ」

 

 ルパンが笑う。

 

「いいじゃねぇか」

 

「何がだ」

 

「お互い、“殺せる距離にいる”ってことだろ?」

 

「物騒だな」

 

「最高だろ?」

 

 ……確かに。

 

 悪くない。

 

 こうして。

 

 転生者とガンマンは――

 

 互いの“底”を少しだけ知った。

 

 そしてそれは、次の仕事で――

 

 確実に役に立つ。

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