(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』   作:微糖コーヒー

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番外編⑥:銭形と共闘(アンライクリー・パートナー)

 

 

 雨。

 

 路地裏。

 

「……最悪だ」

 

 俺――クロガネ・ユウは壁にもたれていた。

 

 その隣。

 

「同感だ」

 

 濡れたコートを払いながら言うのは、銭形警部。

 

 ――なぜこうなった。

 

 数十分前。

 

 いつも通り、ルパン一味で仕事中。

 

 ターゲットは“変装も監視も全部すり抜ける”厄介な盗賊。

 

 その名も《ゴースト》。

 

「姿が見えねぇ」

 

 次元大介が眉をひそめる。

 

「センサーにも映らない」

 

 峰不二子が端末を叩く。

 

「斬る対象がない」

 

 石川五ェ門が静かに言う。

 

「いいねぇ」

 

 ルパン三世は笑っていた。

 

「最高に面白そうじゃねぇか」

 

 ……嫌な予感しかしない。

 

 そして現在。

 

 なぜか俺は銭形と二人。

 

「で、なんであんたと組んでるんだ」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

 銭形が即座に返す。

 

「本来なら貴様も逮捕対象だぞ!」

 

「分かってるよ」

 

「だが今は――」

 

 銭形は拳を握る。

 

「奴を捕まえるのが先だ」

 

 ……真面目すぎる。

 

「で、そのゴーストってやつ」

 

「痕跡がない」

 

 銭形が言う。

 

「だが、盗みは確実に起きている」

 

「つまり“結果だけ残る”タイプか」

 

「そうだ」

 

 ……どっかで聞いたような能力だな。

 

「ユウ」

 

 銭形が俺を見る。

 

「お前の力、使えるな」

 

「まぁな」

 

「貸せ」

 

「雑だな頼み方」

 

「命令だ」

 

「断る」

 

「むぅ……!」

 

 少し考えて、銭形は咳払い。

 

「……協力してくれ」

 

「最初からそう言え」

 

 現場。

 

 高級美術館。

 

 警備は厳重。

 

 だが――

 

「……もう盗まれてるな」

 

「何?」

 

 銭形が振り向く。

 

「展示ケースの“空気”がズレてる」

 

「分かるのか?」

 

「なんとなくな」

 

 俺は目を細める。

 

 ズレる。

 

 時間の流れを落とす。

 

 すると――

 

「いた」

 

 ほんの一瞬。

 

 空間に“揺らぎ”。

 

「そこだ!」

 

 銭形が突っ込む。

 

 躊躇なし。

 

「待て!」

 

 俺が叫ぶ前に。

 

 銭形が何もない空間を“掴む”。

 

「……!?」

 

 その手の中で、“何か”が暴れる。

 

 姿は見えない。

 

 だが確かにいる。

 

「捕まえたぞぉぉぉ!!」

 

 ……マジかよ。

 

「なんで掴めるんだよ」

 

「刑事の勘だ!」

 

「それで済ますな!」

 

「逃がさん!」

 

 ゴーストが暴れる。

 

 姿は見えないまま。

 

「ユウ!」

 

「分かってる!」

 

 俺はズレる。

 

 見えない対象の“輪郭”を探る。

 

 触れる。

 

 そこにある。

 

「そこだ!」

 

 俺が位置を固定する。

 

 銭形が手錠をかける。

 

 ――カチン。

 

 その瞬間。

 

 姿が現れる。

 

 黒いスーツの男。

 

「くそ……!」

 

「観念しろ!」

 

 銭形が叫ぶ。

 

「ルパンではなく、私に捕まるとは運がいいと思え!」

 

「それ、褒めてるのか?」

 

 俺がツッコむ。

 

 数分後。

 

 事件解決。

 

「……やるな」

 

 銭形が腕を組む。

 

「お前」

 

「そっちこそな」

 

「いや」

 

 銭形は首を振る。

 

「お前がいなければ捕まえられなかった」

 

 ……素直だな。

 

「で」

 

「なんだ」

 

「俺、逮捕される?」

 

「……」

 

 一瞬の沈黙。

 

 銭形は空を見上げる。

 

「今回は見逃す」

 

「珍しいな」

 

「借りだ」

 

「律儀だな」

 

「だがな」

 

 銭形は俺を指差す。

 

「次に会った時は容赦せん!」

 

「はいはい」

 

 そのとき。

 

「おーいユウ!」

 

 遠くから手を振る影。

 

 ルパン三世。

 

 その後ろに、いつもの面々。

 

「迎えに来たぜ!」

 

「遅い」

 

「いいとこ見てたからな」

 

「最低だな」

 

「最高だろ?」

 

「ルパァァァン!!」

 

 銭形のスイッチが入る。

 

「やはり貴様らもいたか!!」

 

「じゃ、またなとっつぁん!」

 

 ルパンが笑う。

 

 全員で逃走開始。

 

 俺も巻き込まれる。

 

「結局これかよ!」

 

「これが日常だ!」

 

 ……否定できない。

 

 走りながら思う。

 

 敵にも味方にもなる。

 

 追う側にも逃げる側にもなる。

 

 この世界は、ほんとにめちゃくちゃだ。

 

 でも――

 

「悪くないな」

 

「だろ?」

 

 ルパンが笑う。

 

 こうして。

 

 一時的な共闘と、いつもの追跡劇は――

 

 何事もなかったかのように終わる。

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