(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』   作:微糖コーヒー

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番外編⑦:主人公が盗まれる日(ステール・ザ・プレイヤー)

 

 

 

 

 朝。

 

 珍しく平和だった。

 

「……静かだな」

 

 俺――クロガネ・ユウはコーヒーをすすりながら呟く。

 

「嵐の前ってやつね」

 

 ソファに寝転がる峰不二子が笑う。

 

「やめろよそういうフラグ」

 

「事実だもの♡」

 

 ――その瞬間。

 

 ガチャン、と扉が開いた。

 

「ユウ!」

 

 ルパン三世が勢いよく入ってくる。

 

「仕事だ!」

 

「嫌な予感しかしない」

 

「今回のターゲットは――お前だ」

 

「帰る」

 

「待て待て待て」

 

 ルパンが腕を掴む。

 

「話を聞け」

 

「聞きたくない」

 

「お前、“高値で売れる”らしいぞ」

 

「余計聞きたくない」

 

 事情はこうだ。

 

 裏社会で、“時間をズラす人間”の噂が広まっている。

 

 当然、欲しがる連中も出てくる。

 

「で、その連中が“お前を盗む計画”を立てた」

 

 煙を吐きながら次元大介が言う。

 

「つまり?」

 

「つまりだ」

 

 ルパンがニヤリと笑う。

 

「盗まれる前に、俺たちが“盗む”」

 

「意味が分からん」

 

「簡単だ」

 

「説明しろ」

 

「お前を囮にする」

 

「帰る」

 

「安心しろって」

 

 ルパンが肩を組む。

 

「ちゃんと助ける」

 

「信用できるか」

 

「できるだろ?」

 

「半分くらいな」

 

「十分だ!」

 

 ……ダメだこいつ。

 

 作戦開始。

 

 俺は一人で街を歩く。

 

 完全に囮。

 

「……来るぞ」

 

 イヤーピース越しにルパンの声。

 

 周囲の空気が変わる。

 

 視線。

 

 気配。

 

 そして――

 

 背後から手。

 

「いただきだ」

 

「やっぱりな」

 

 俺はズレる。

 

 掴まれない。

 

 ……はずだった。

 

「捕まえた」

 

「……は?」

 

 普通に腕を掴まれる。

 

「なんで!?」

 

「対策済みだ」

 

 黒服の男が笑う。

 

「ズレる前に掴めばいい」

 

「雑だけど正解だな!」

 

 そのまま袋を被せられる。

 

「ちょっと待てルパン!?」

 

『想定内だ!』

 

「絶対嘘だろ!」

 

 目隠し。

 

 移動。

 

 数分後。

 

 椅子に縛られていた。

 

「……マジでやられた」

 

「高く売れそうだ」

 

 黒服たちが話している。

 

「能力者は貴重だからな」

 

 ……やばいなこれ。

 

 ズレる。

 

 ロープを外す。

 

 だが――

 

「無駄だ」

 

 男が言う。

 

「拘束具は時間干渉対策済みだ」

 

「なんでもありかよ」

 

「金をかけているからな」

 

 ……納得したくない。

 

「さて」

 

 男が近づく。

 

「その力、どんなものか――」

 

 その瞬間。

 

 ガラスが割れる。

 

「派手に行くぜ!」

 

 飛び込んできたのは――

 

 ルパン三世。

 

「遅い!」

 

「演出だ!」

 

 銃声。

 

 煙幕。

 

 次元大介が援護射撃。

 

 石川五ェ門が拘束具ごと斬る。

 

「助かった……」

 

「礼はあとだ!」

 

 不二子が叫ぶ。

 

 峰不二子はすでにデータを抜いている。

 

「全部いただいたわ♡」

 

「仕事早いな」

 

 脱出。

 

 いつもの流れ。

 

 屋上に到着。

 

「……で?」

 

 俺はルパンを見る。

 

「想定内?」

 

「もちろん」

 

「嘘つけ」

 

「ちょっとだけ想定外だった」

 

「だろうな」

 

「でもよ」

 

 ルパンが笑う。

 

「盗まれる気分、どうだった?」

 

「最悪だ」

 

「いい経験だろ?」

 

「二度といらん」

 

「ははっ!」

 

「でも」

 

 不二子が近づく。

 

「分かったでしょ?」

 

「何が」

 

「あなた、ちゃんと“狙われる側”なのよ」

 

「……だな」

 

 今までは使う側だった。

 

 でもこれからは違う。

 

「守りも考えろってことか」

 

「そういうこと♡」

 

「まぁ安心しろ」

 

 次元が言う。

 

「お前が盗まれても」

 

「取り返す」

 

 五ェ門が続く。

 

「当然だ」

 

 ルパンが笑う。

 

「俺たちは“怪盗”だからな」

 

「……頼もしいな」

 

「だろ?」

 

「でも次は断る」

 

「無理だな」

 

「なんでだよ」

 

「面白いから」

 

 ……ダメだこの連中。

 

 こうして。

 

 転生者クロガネ・ユウは――

 

 “盗まれる側”の恐ろしさを知った。

 

 そして同時に。

 

 その状況すら楽しむ連中と、改めて関わっていることも。

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