(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』 作:微糖コーヒー
夜の海上要塞。
黒いシルエットが、波に浮かんでいる。
「今回の相手は“全部入り”だ」
ルパン三世が言う。
「時間、記憶、存在――全部まとめて管理する装置」
「また厄介なの来たな」
俺――クロガネ・ユウはため息をつく。
「名前は“トリニティ・コア”」
「三つね」
峰不二子が静かに言う。
「ちょうどいいじゃない」
「ただし」
ルパンが指を立てる。
「今回は単独じゃ無理だ」
「珍しいな」
「三人同時じゃないと起動しねぇ」
「……なるほど」
俺は頷く。
「だから“三人”か」
沈黙。
でも、前みたいな迷いはない。
「行くか」
俺が言う。
「当然」
不二子が答える。
「決まりだな」
ルパンが笑う。
侵入。
警備は異常。
センサー、トラップ、全部が複雑に絡んでいる。
「右、三秒後に閉じる!」
「了解!」
俺がズレてルートを読む。
ルパンが最短で抜ける。
不二子がロックを外す。
完璧な連携。
誰も迷わない。
「いいねぇ」
ルパンが笑う。
「やっと“形”になってきた」
「最初からできてたろ」
「違う」
少しだけ真面目な声。
「今は“噛み合ってる”」
最深部。
中央に、トリニティ・コア。
三つのスロット。
「配置につけ」
ルパンが言う。
俺、不二子、ルパン。
三方向。
「同時だ」
「分かってる」
「ミスるなよ」
手を伸ばす。
その瞬間。
警報。
敵の起動。
空間が歪む。
「来た!」
時間が乱れる。
記憶が削れる。
存在が揺れる。
「ユウ!」
「任せろ!」
俺はズレる。
時間の崩壊を抑える。
「不二子!」
「分かってる!」
彼女が制御を書き換える。
記憶の流れを繋ぐ。
「ルパン!」
「任せろ!」
ルパンが飛び込む。
核心へ一直線。
無駄ゼロ。
三人が、それぞれの役割を果たす。
「今だ!」
ルパンが叫ぶ。
三人同時に、キーを差し込む。
光。
爆発。
そして――
静寂。
システム停止。
成功。
「……やったな」
俺が息を吐く。
「当然よ」
不二子が笑う。
「決まってた」
ルパンが言う。
その瞬間。
コアが不安定に揺れる。
「まだだ!」
俺が叫ぶ。
「制御が崩れる!」
「どうする!?」
「三人で押さえるしかない!」
同時に動く。
俺が時間を固定。
不二子が情報を安定。
ルパンが核心をロック。
「……持て……!」
ギリギリ。
限界。
そして。
完全停止。
静寂。
「……終わったか」
「終わったな」
「疲れたわ」
数秒。
誰も動かない。
「なぁ」
ルパンが言う。
「これが答えだな」
「何の」
「三人でやるってやつの」
俺は少し考えて。
頷く。
「悪くない」
「悪くないどころじゃないわ」
不二子が言う。
「これが一番よ」
ルパンが笑う。
「だろ?」
夜風が吹く。
さっきまでの緊張が、全部流れていく。
「結局さ」
俺が言う。
「選ぶとかじゃなかったな」
「そうね」
不二子が頷く。
「全部持ってけばいいのよ」
「それがルパンだろ?」
「それが俺たちだ」
ルパンが笑う。
その瞬間。
三人の距離が、ぴたりと揃う。
もう、競い合いでもない。
奪い合いでもない。
“並んでる”。
それが、一番しっくりくる。
こうして。
転生者、怪盗、女盗賊。
三人の関係は――
ようやく、一つの形に辿り着いた。
それは恋でも、勝敗でもない。
ただの――
“最高のチーム”だ。