(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』   作:微糖コーヒー

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番外編⑰:休日強盗(ホリデー・ハイスト)

 

 

 

 

 昼下がりの街。

 

 人通りも多く、平和そのもの。

 

「……やっぱ落ち着かねぇ」

 

 俺――クロガネ・ユウは紙コップのコーヒーを見下ろす。

 

「何度言うのよそれ」

 

 隣で歩く峰不二子が笑う。

 

「平和なのが落ち着かないって、だいぶ毒されてるわね」

 

「否定はしない」

 

「で、今日はほんとに休みなんだな?」

 

「そうよ」

 

「仕事なし?」

 

「なし」

 

「追跡も?」

 

「なし」

 

「……怖い」

 

「もう黙りなさい」

 

 そのとき。

 

 ドンッ、と大きな音。

 

 通りの先、銀行の前が騒がしくなる。

 

「……来たな」

 

「来たわね」

 

 二人同時に呟く。

 

「全員動くな!!」

 

 怒鳴り声。

 

 覆面の男たち。

 

 銀行強盗。

 

「ベタね」

 

「ベタすぎる」

 

「どうする?」

 

 俺が聞く。

 

「放っておく?」

 

「無理だろ」

 

「無理ね」

 

 不二子が肩をすくめる。

 

「よし、軽く片付けるか」

 

「休日なのに?」

 

「むしろ軽い運動だ」

 

「言うようになったわね」

 

 銀行内。

 

 人質多数。

 

 強盗三人。

 

「動くな!」

 

 銃を構える。

 

 だが――

 

「遅い」

 

 俺はズレる。

 

 時間を落とす。

 

 弾道を読む。

 

 動きを制限。

 

「何だ!?」

 

 強盗が戸惑う。

 

 その隙。

 

「いただき♡」

 

 不二子が銃を奪う。

 

「ちょっと借りるわね」

 

 残り二人。

 

 俺が位置をずらす。

 

 足元を狂わせる。

 

 バランスを崩す。

 

「うわっ!」

 

「なんだこれ!」

 

「終了」

 

 不二子があっさり言う。

 

 数秒。

 

 それで終わり。

 

「……あれ?」

 

 人質の一人が呟く。

 

「もう終わった?」

 

「終わったわよ」

 

 不二子が笑う。

 

「大丈夫?」

 

「え、あ、はい……」

 

「静かに出るぞ」

 

「了解」

 

 外。

 

 人混みに紛れる。

 

 警察が来る前に離脱。

 

「……あっけなかったな」

 

「軽い運動って言ったでしょ」

 

「その通りだった」

 

 そのとき。

 

「ルパァァァン!!」

 

 聞き慣れた声。

 

 振り向くと――

 

 銭形警部が走ってくる。

 

「やはり貴様らか!!」

 

「違うって」

 

「銀行強盗の犯人だな!」

 

「違うって言ってるだろ!」

 

「説明するの面倒ね」

 

「逃げるか」

 

「逃げましょ」

 

 全力で走る。

 

 銭形が追う。

 

 いつもの流れ。

 

「なんでこうなる!」

 

「日常だ!」

 

「嫌な日常だ!」

 

 路地裏。

 

 曲がる。

 

 跳ぶ。

 

 ズレる。

 

 距離を離す。

 

 屋上。

 

 着地。

 

「……逃げ切ったか」

 

「逃げ切ったわね」

 

 数秒後。

 

 遠くから。

 

「ルパァァァン!!」

 

 まだ聞こえる。

 

「元気だなぁ」

 

「ほんとね」

 

「なぁ」

 

 俺が言う。

 

「これ、休みか?」

 

「違うわね」

 

「だよな」

 

 そのとき。

 

「いやーいい運動だったな!」

 

 背後から声。

 

 振り向くと――

 

 ルパン三世。

 

「どこから湧いた!?」

 

「見てた」

 

「手伝えよ!」

 

「だって面白かったし」

 

「で?」

 

 ルパンが笑う。

 

「銀行強盗、どうだった?」

 

「軽すぎた」

 

「だろ?」

 

「じゃあ次はもっとデカいの行くか?」

 

「やめろ」

 

「賛成」

 

「あなたもか」

 

 不二子が笑う。

 

 風が吹く。

 

 昼の光が眩しい。

 

 こうして。

 

 休日は結局――

 

 “いつも通り”に終わる。

 

 でも、それがいい。

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