(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』 作:微糖コーヒー
夕方の街。
オレンジ色の光が、少しだけ優しい。
「……で、これは何だ」
俺――クロガネ・ユウは、横を歩く女を見る。
峰不二子。
「見て分からない?」
「分かるけど認めたくない」
「デートよ♡」
「やっぱりか」
「安心して」
不二子が笑う。
「今日は仕事なし」
「その言葉、信用できない」
「ひどいわね」
「実績がある」
並んで歩く。
平和。
普通の街。
普通の時間。
……落ち着かない。
「ねぇユウ」
「なんだ」
「手、空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあ貸して」
そのまま、自然に腕を絡めてくる。
「……おい」
「何よ」
「距離が近い」
「デートだもの」
……反則だろこれ。
数分後。
カフェ。
「意外と似合うわね」
「何が」
「こういうの」
「似合って嬉しくないランキング上位だな」
「ふふ」
コーヒー。
静かな時間。
……いい感じだ。
珍しく。
本当に。
「ねぇ」
不二子が少しだけ身を乗り出す。
「このあと――」
ドンッ!!
窓の外で爆発。
「……ほら来た」
「来たわね」
「全員動くな!!」
外で騒ぎ。
どう見ても強盗。
「無視する?」
「できると思うか?」
「無理ね」
「……三分で終わらせる」
「了解」
外。
ズレる。
強盗三人。
銃。
だが。
「遅い」
数秒。
それで制圧。
「終わり」
「終わりね」
戻る。
席に座る。
コーヒーはまだ温かい。
「……続きいいか?」
「いいわよ♡」
不二子がまた近づく。
さっきより近い。
「さっきの話だけど――」
「ルパァァァン!!」
「……」
「……」
振り向くと。
全力疾走で迫ってくる――
銭形警部。
「なんでだよ!!」
「知らないわよ!!」
「貴様ら!!銀行強盗だな!!」
「違うって!!」
「逃げるぞ」
「賛成」
全力で走る。
完全にいつもの流れ。
数分後。
屋上。
「……はぁ……」
「……疲れた」
「これデートか?」
「違うわね」
そのとき。
「おーい、楽しそうだな!」
声。
振り向くと――
ルパン三世。
「なんでいる!」
「見てた」
「帰れ」
「やだね!」
「邪魔しないでくれる?」
不二子が言う。
「してねぇよ」
「してるわよ」
「いや、俺は応援してる」
「いらない」
ルパンがニヤリと笑う。
「でもさ」
「なんだ」
「こういうの、嫌いじゃねぇだろ?」
……否定できない。
そのとき。
不二子がまた近づく。
「ねぇユウ」
「なんだ」
「今なら邪魔されないかもよ?」
距離ゼロ。
完全に。
キス――
パトカーのサイレン。
「……」
「……」
「タイミング悪すぎでしょ!!」
「ほんとね!!」
数秒の沈黙。
そして。
不二子が笑う。
「じゃあ、続きはまた今度ね♡」
「ちゃんと続きあるんだろうな」
「もちろん」
軽くウインク。
こうして。
ラブコメは進む――
“進まないまま”。