(本編完結)『スローモーションの怪盗譚(ルパン・クロノス)』   作:微糖コーヒー

29 / 29
番外編㉑:ついにその時(ファイナリー・キス)

 

 

 

 

 夜の屋上。

 

 またこの場所だ。

 

 でも今回は違う。

 

 風は穏やかで、物音一つない。

 

 ――不自然なくらいに静かだ。

 

「……逆に怖いくらいね」

 

 峰不二子が呟く。

 

「同感だな」

 

 俺――クロガネ・ユウも頷く。

 

「絶対何か来る」

 

「フラグ立てないでよ!」

 

 数秒。

 

 何も起きない。

 

「……あれ?」

 

「……来ないわね?」

 

 沈黙。

 

「じゃあ」

 

 不二子が一歩近づく。

 

「今のうち?」

 

「今しかないな」

 

 距離ゼロ。

 

 呼吸が重なる。

 

「ユウ」

 

「なんだ」

 

「今回は――」

 

 ゆっくりと。

 

 迷いなく。

 

 キス。

 

 ちゃんと。

 

 最後まで。

 

 数秒。

 

 世界が止まる。

 

 離れる。

 

「……」

 

「……」

 

「……成功したな」

 

「したわね」

 

 しばらく、何も言わない。

 

 ただ、余韻。

 

「……ねぇ」

 

 不二子が小さく言う。

 

「どうだった?」

 

「聞くか普通」

 

「聞くわよ」

 

「……悪くなかった」

 

「素直ね」

 

「今回はな」

 

 不二子が少しだけ笑う。

 

 でも――

 

 いつもと違う。

 

 完全に“本気の顔”。

 

「じゃあ…」

 

「なんだ」

 

「これで逃げられないわね?」

 

「逃げる気ない」

 

 その瞬間。

 

 パチパチパチ。

 

「いやー、ついにやったな!」

 

「……」

 

「……」

 

 振り向くと屋上の影から現れる――

 

 ルパン三世。

 

「見てたのか」

 

「もちろん!」

 

「帰れ!」

 

「やだね」

 

「……いつから」

 

「最初から」

 

「最悪だ!!」

 

「最悪ね!!」

 

「いやーでもさ?」

 

 ルパンがニヤニヤしてる。

 

「これは祝うべきだろ?」

 

「いらない」

 

「乾杯でもするか?」

 

「しない」

 

 そのとき。

 

「ルゥパァァァァァァァァン!!!」

 

「……」

 

「……」

 

 屋上のドアが吹き飛び、勢いよく飛び出してくる人影。

 

 銭形警部登場。

 

「現行犯だ!!」

 

「何のだよ!!」

 

「知らん!!」

 

「逃げるぞ」

 

「賛成」

 

「当然よ」

 

 全力で走る。

 

 いつもの流れ。

 

 屋上から勢いよく飛ぶ。

 

 ワイヤーによる空中移動。

 

 夜の空には人の影。

 

「ははっ!」

 

 ルパンが楽しそうに笑う。

 

「最高のタイミングだったな!」

 

「最低だ!!」

 

 数分後。

 

 いつものごとく銭形からの逃走に成功し別の屋上に。

 

「……はぁ……」

 

「……ほんとにもう」

 

 数秒の沈黙。

 

「なぁ」

 

 俺が言う。

 

「なんだ」

 

「さっきの、なしにはしないよな」

 

 不二子がこちらを見る。

 

 少しだけ意地悪な顔。

 

「どうしようかしら?」

 

「おい!」

 

 そして。

 

 少しだけ近づく。

 

「……ちゃんと覚えてるわよ」

 

「なら…いい」

 

「でも」

 

「なんだ」

 

「次は、もっといい場所でね♡」

 

 ……ほんと…注文多いな。

 

 その距離。

 

 さっきより自然に。

 

 もう“あと一歩”じゃない。

 

 ちゃんと――進んだ。

 

 ただし。

 

 静かに終わることは、一生ない。

 

 こうして。

 

 二人の関係は――ついに一線を越えて。

 

 でもやっぱり騒がしいまま、続いていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

縦横家の祖 鬼谷子(作者:お腹ぽんぽん)(原作:Fate/)

縦横家の祖が大陸を影から操ってみた▼Aiを利用しているため、話の流れがおかしかったり、誤字があると思います。設定もあやふやなので悪しからず。▼


総合評価:9/評価:-.--/連載:30話/更新日時:2026年05月25日(月) 23:39 小説情報

『ONE PIECE:黒雷の流儀』(作者:トート)(原作:ONE PIECE)

【悪魔の実を持たぬ最強の覇王が、勝気な少女に恋でひれ伏す新世界長編】▼悪魔の実の能力を持たず、絶大すぎる覇気だけで2年前から「8億4000万」の懸賞金を懸けられていた伝説の男・シルバ。▼ただ睨むだけで男を失神させる「王の眼(覇王色)」を持つ彼には、「女には絶対に手を出さない(女にだけ負ける)」という不器用な流儀があった。▼2年後の新世界――。▼海軍を壊滅させ…


総合評価:29/評価:-.--/未完:13話/更新日時:2026年05月23日(土) 00:25 小説情報

杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~(作者:redhot)(原作:多重クロス)

昭和58年夏、北海道の小さな港町・岩内に突如として「ダンジョン」が発生した。▼銃火器が通用しない怪物たちに、自衛隊は三十階で足止めを食らう。▼そんな中、七歳の少年・佐藤トオルがダンジョンに飲み込まれた。▼普通なら即死の150階に落ちたトオルが触れたのは、封印された超魔導兵器の杖――レディ・アヴァロン、通称「杖くん」。▼彼女の力で目覚めたトオルの魔力は、規格外…


総合評価:41/評価:-.--/連載:241話/更新日時:2026年05月16日(土) 17:55 小説情報

神竜を宿りし者(作者:ヒロケン)(原作:ハイスクールD×D)

異世界で神龍と出会い魔神を倒すも自爆に巻き込まれて死んでしまい転生した男があらゆる者たちを救う物語である。


総合評価:50/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年04月08日(水) 08:31 小説情報

範馬刃牙VS陸奥九十九〜修羅の門と刃牙道と〜(作者:中村鹿男)(原作:範馬刃牙)

『刃牙シリーズ』と『修羅の門』の二次創作です。▼pixivにも同様の内容を掲載しています。▼修羅と鬼が、ついに交わる。▼最強の親子喧嘩、範馬勇次郎VS範馬刃牙の対決は地上波でネットで全世界に配信された。▼運命か必然か、海堂晃との対決を終えたばかりの千年不敗の陸奥圓明流継承者、陸奥九十九もそれを見た。▼陸奥九十九の次なる門は地下闘技場の王へと続く。それはまさに…


総合評価:181/評価:8.25/連載:18話/更新日時:2026年04月11日(土) 09:39 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>