その狂愛が視るものは   作:Othuyeg

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原作のストーリーがあると筆が進まなくなる癖に、原作がないと設定を盛りすぎて収拾がつかなくなるクソ作者、それが俺です。


第10節 実は前回の裏で地味に先生がヒナとたっぷりお話していた場合

 ヒナノの策と獅子奮迅の活躍により、被害を抑えた上で海辺の騒動を収束した風紀委員会。いったん先生をオペレーションルームに呼び戻し、状況の再確認を始めた。

 

 「とりあえず片付いたみたいだけど……どうだった? あと、(ひざまず)くのはやめろ」

 

 「スケバンの方もヘルメット団の方も、まだただの先遣隊の様子でした。

 4時間後の全面戦争では、アレとは比べ物にならない数が集まるものと推測されます」

 

 「いや話聞けって」

 

 イオリの制止を無視し、跪いた姿勢を貫くヒナノの報告に、「先遣隊?」と先生が尋ねる。その疑問に答えたのはチナツだった。

 

 「つまり、先ほどのはただの前哨戦だったようです。

 本格的に衝突した際に少しでも戦況を有利にするために、地雷や罠などを設置しようとしていたのだと思います」

 

 「お互いに同じこと考えて、鉢合わせ……ってとこかな。

 ……おい、早く立て。いつまで跪いてるんだ。足でも舐めるつもりか?」

 

 イオリの言葉に、彼女の足を舐めんばかりに(こうべ)を垂れて跪いていたヒナノが、ヌッと頭を上げ、問う。

 

 「舐めて欲しいというのであれば、喜んで舐めますよ? 舐めましょうか? 舐めますね」

 

 「やめろキモい! 何言ってるんだお前マジで!」

 

 「分かりましたやめます」

 

 「何なんだよ本当にお前は……」

 

 先生が「待って、イオリの足は私のだよ!」と割って入り、状況をさらにカオスにさせる。ヒナノの眼光が鋭くなる。

 

 「は?」

 

 「やめろお前ら! 私の足はどっちのでもないし、状況がややこしくなるから黙ってろ!」

 

 ボケ倒す暴走特急二人にイオリは(ひたい)を押さえ、当のヒナノは立ち上がって服についた砂を払う。イオリは咳払いをして続ける。

 

 「……で、どうする? 4時間後には全面戦争、今回はヒナノが事態を収束させてくれたからどうにかなったけど、次は同じ手が通じるとは思えない」

 

 「そうですね……規模もかなり大きくなりそうですし、これは委員長に報告した方がいいのでは……?」

 

 二人が顔を見合わせる。ヒナノは待ちの姿勢だ。イオリの意見に従う、ということらしい。……と、そこに通信が入る。アコからだ。

 

 《待ってください!》

 

 「アコちゃん!?」

 「アコ行政官……?」

 「……」

 

 息を巻いた様子で二人を引き止めるアコ。

 

 《よりにもよって最悪のタイミングで万魔殿の横槍が入りましたが……。

 ここで諦める私ではありません。こうして委員長を海までお連れすることができ――》

 

 「アコ行政官。決意表明はその辺りにして、本題を。

 こうして連絡してきたということは何か進展があったということなのでしょう?」

 

 ヒナノが話を急かす。アコはまた、その物言いに怒りを感じるが、一理あると思い直して本題に入る。

 

 《このっ……! いえ、そうですね。本題に入ります。

 海岸に集まっているスケバンとヘルメット団については、情報部に調査をしてもらいました。既にまとめてありますので、関連資料をデータで送ります》

 

 「行政官、いつも以上に仕事が早いですね……」

 

 アコがそういうと、風紀委員たちの端末にデータが転送される。アコが説明を続ける。

 

 《まずはスケバンの方ですが、自称スケバン集団『破茶滅茶』と名乗るグループでして、そこの海岸区域には最近になってやってきたようです。

 どうやら一ヶ月ほど前に別の海岸地区で色々あった結果、勢力争いに敗北してしまい、そこへ流れ着いたという経緯のようですね》

 

 アコの報告を聞き、ヒナノが嘲笑するように吐き捨てる。

 

 「名前も経緯も小物臭(ダセ)ェな」

 

 「ヒナノ?」

 

 イオリに問いかけられ、ハッとした顔で口元を隠すヒナノ。自分の口調が過去のものに戻ってしまったことを恥じているらしい。

 即座に正座し、自らに拳銃※1を押し付ける。

 

 「……申し訳ありません、昔の癖が。死んで詫びますので誰か介錯を」

 

 「するな! しなくていい! やめろ!」

 

 《……んんっ、話を戻しますよ》

 

 アコがうんざりした顔で咳払いをし、話の流れを引き戻す。

 

 《そしてもう片方は『びしょびしょヘルメット団』。以前からずっとホテル近くのスラム街に拠点を構えていた、海辺の問題児集団です》

 

 「既にどちらも、勢力の規模と装備のレベル、数などは全て把握済みです」というアコのセリフと共に、手元の資料に情報が追加され、空中にもホログラムで情報が投影される。なるほど、かなり精度の高い情報が集まっているらしい。先生は関心する。

 

 《その上で、結論から申し上げましょう。

 作戦は続行。委員長には報告せず、私たちだけで解決します!》

 

 「それ、本当に大丈夫か……?」

 

 イオリが不安げに零す。チナツの表情と嘆息も、「相当無茶をすれば、でしょうね」と物語っていた。

 

 《スケジュール通りに動いてくだされば、ヒナ委員長が外に出るのは四時間後の歩行訓練から。

 そして全面戦争が予定されているのも四時間後。そこに焦点を合わせて準備するのではなく、その前に両集団を各個撃破します!

 そして、この作戦の要はヒナノさん、貴方です!》

 

 「ヒナノが?」

 

 アコの宣言にイオリが疑問符を浮かべる。不良とてそこまでアホではない。先程の手がまた同様に通じるとは思えないが……。

 

 《そうです。彼女の戦法はやや残虐なきらいがありますが、委員長の平穏な休息のためには、こちらもなりふり構っていられません!》

 

 拳を固く握りしめ、強く言い放つアコ。そこに、ヒナノの確認が差し込まれる。

 

 「アコ行政官。当然作戦はあるものと考えてよろしいですね?

 いかに私でも、無策の突撃では無理がありますよ」

 

 《ええ、もちろん。作戦はこうです。

 まず、ヒナノさん単騎でスケバンに奇襲をかけ、状況を荒らして敵を混乱させ、そこに増援を投入します。

 ここで戦意を喪失してくれれば御の字ですが、そう容易くは行かないことでしょう。

 ですので、ヒナノさんたちの部隊にはそのまま囮として、スケバンたちを誘い出してもらいます》

 

 アコが説明した作戦を聞き、静かに頷くヒナノ。

 

 「……なるほど。

 戦意を喪失しない様子なら、敢えて劣勢を演出し、誘い出した先で集中砲火を浴びせて撃破しよう、と。そういう作戦ですね?」

 

 《流石、理解が早くて助かります》

 

 アコは満足そうな笑顔で頷いた。まあ、同時に「いつもこうであってくれたら楽なのに」とも思っているのだが。

 

 《イオリとチナツは、風紀委員の六割強の指揮権を渡しますので、ヒナノさんが時間を稼いでいる間にヘルメット団を撃破してください。

 この作戦の成功は、ヒナノさんの時間稼ぎと状況演出力に懸かっています。

 負担の大きい役割ですが……ヒナ委員長の、キヴォトスの平穏のために、できますね?》

 

 「当然です。イオリさんの平穏が懸かっていますから」

 

 「二人とも大袈裟なんだよな……まあ、やれるだけやってはみるけどさ」

 

 イオリが嘆息し、銃の手入れを開始する。チナツもまた、待機中の風紀委員に連絡を入れ、準備を開始した。

 

 《先生は、委員長のお相手を。

 とにかく、絶対に部屋から出さないでください。少なくとも、確実に戦場には近づかせないでください!》

 

 強く念押しするアコに「うん、了解」と確かに請け負う先生。

 

 《つまり、私たちの目指すことは変わりません! まず今は委員長を部屋から出さないように!

 そのためにも、この騒動を気づかせてはなりません。勘づいてしまったら、委員長はまた働かれてしまうはずです!》

 

 「ヒナ委員長の夏休みのために!」と奮い立つアコに半ばうんざりしながら、風紀委員会幹部たちは動き出す。

 

 ――その計画に、たった一つの致命的な誤算が含まれているとも知らずに。

※1
コンテンダーの方




我ながらサブタイのヤケクソ具合が酷い。
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