その狂愛が視るものは   作:Othuyeg

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基本的にどこから読んでも大丈夫なようにはしてありますが、次回以降はちょっとした続き物を書く予定です。


第5節 カズサ・ノノミの場合

 「「……あっ」」

 

 その言葉を発したのは、果たしてカズサとノノミ、どちらからだったろうか。

 何かに気づいた様子の2人に、先生は「どうしたの?」と声をかける。

 

 「あっ、えっと、あー……」

 

 「私はヒナノさんのことを思い出してたんですけど……もしかしてカズサさんも?」

 

 「いや……あー、うん。確かにヒナノのことだわ」

 

 平然としているノノミに対して、やけに歯切れの悪いカズサ。先生はその様子に大方の内容を察して、「大丈夫。ノノミは笑ったり茶化したりしないよ」とフォローを入れる。

 

 「いや、まあそれはそうなんだろうけどさ……。

 単に私の踏ん切りが着かないっていうか、黒歴史晒したくないっていうか……」

 

 「……あら。そういう事でしたら、無理に話して頂かなくても構いませんよ〜?

 私にも、言いたくない過去の話の一つや二つありますし〜」

 

 ノノミもなんとなく察し、フォローを入れる。しかし、それが逆にカズサの決心を固める要因になったようだ。

 

 「……いや。言うよ。ノノミさんにもそういう話があるって聞いて、少し楽になった。

 でも、私のはホントにくだらない話だし、話すのはノノミさんからで大丈夫」

 

 「あら、そうですか? では、私から話させていただきますね☆

 ……と言っても、私の話もそんなに大したものではないんですが……」

 

 少し困ったように笑うノノミに、先生は「大丈夫。くだらないお話も大したことないお話も、むしろ大歓迎だよ」と笑ってみせる。

 それを見て、ノノミはクスクスと淑やかに笑うと、話し始めた。

 

 「ヒナノさんとは、確かにあの時が初対面だったんですけど……その前に一回、名前を聞いていたことを思い出したんです〜」

 

 

 


 

 

 

 「……アコ。この状況、きちんと説明してもらう」

 

 ゲヘナの風紀委員会がアビドスに進軍してきて、風紀委員長さんがそれを止めにやってきたあの日。確かに私たちは、ヒナノさんの名前を聞いていたんです。

 

 「え、えっと……委員長、全て説明いたします」

 

 「……いや、もういい。だいたい把握した。

 察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認および排除。そういう政治的な活動の一環ってところね」

 

 あの時の風紀委員長さんはとても怖かったですね……。オーラみたいなものまで見えた気がします。

 

 「でもアコ、私たちは風紀委員会であって生徒会じゃない。シャーレ、ティーパーティー、それに連邦生徒会長。そういうのは、『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)』のタヌキたちにでも任せておけばいい。

 詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎してなさい、アコ」

 

 「……はい」

 

 確か……その後でした。通信が切れるよりも早く、イオリさんに風紀委員長さんが話しかけて……。

 

 「それと、イオリ。今すぐゲヘナに帰って」

 

 「えっ、私? なんで?」

 

 「ヒナノが、アコがあなたを含めた風紀委員会の大部分を連れてアビドスに向かったって話を聞きつけたみたい。今すぐにでも暴れ出しそうなの。

 ナックルダスターまで装備して、アコもろともアビドスを殲滅しようか迷ってたわ」

 

 「えっ」

 

 「すぐ帰る! あのバカ、また余計なこと……!」

 

 「……アコ。あなたも早く戻りなさい。ヒナノに顔面を二倍にされるわよ」

 

 「っ、は、はい!」

 

 

 


 

 

 

 「……待って? 私、政治的なこととか全然分かんないけど、それって学校間問題一歩手前だったんじゃ……?」

 

 「まあ、そうですね〜。私たちアビドスはどう言い繕っても弱小未満の学校なので、風紀委員長さんが来なければどうなっていたことか……」

 

 「大したことないってなんだったのさ……普通に重い話じゃん」

 

 カズサが頭を抱える。しかしアビドスにとってはこれが実際に「大したことない」寄りのエピソードであるのはその通りであるため、先生もノノミも苦笑いするしかなかった。

 

 「はぁ、なんか私の悩みとかバカらしくなってくるよ……。

 ノノミさんが結構なカロリーの話してくれたお陰で、私の綿飴より軽い昔話もしやすくなった気がする」

 

 カズサが肩を竦めて言う。

 

 「あら。人の悩みに重い軽いは無いと思いますよ〜?」

 

 「はは、ありがと。んじゃ話すんだけど……これ、他言無用で頼むね。恥ずかしいから」

 

 

 


 

 

 

 私が中学生の頃の話。今じゃ恥ずかしくてたまらないけど、つまりは私が「キャスパリーグ」なんて呼ばれてた頃の話。

 

 私は、ヒナノと戦ったことがある。

 

 お互い名前も知らないまま、些細なことで喧嘩に発展して、そのまま周りを巻き込んで大乱闘。

 今思えば、あいつもきっと「伝説のスケバン」ってやつの一人だったんだと思う。荒れてた当時の私と競り合って、互角以上の戦いを繰り広げた。

 

 「ッラァ!」

 

 「撃滅(ほろ)べ……!」

 

 お互い弾も足りなくなってきて、近接格闘でやり合うくらいの激戦だった。なんで忘れてたんだろってくらい、激しい戦い。

 私が殴りかかれば、あいつが逸らす。

 あいつが膝蹴りを放てば、私が受け止める。

 私が引き撃ちに転じれば、あいつが弾を受けながら追う。

 あいつが単発銃(コンテンダー)で弾を撃てば、私が避ける。

 そんな攻防が何分か続いた後、私たちはそれぞれの学校の治安組織に連行された。お互いボロボロだったけど、今度会ったら絶対倒す、って心に決めたんだっけ。

 

 

 


 

 

 

 「だから多分、ヒナノは変わっちゃった私に気付かなかったんだろうし、私は私以上に雰囲気が変わっちゃったヒナノに気付かなかった。

 ……まあ、そんな感じ。どう? ノノミさんのに比べたら、大したことないでしょ?」

 

 カズサは苦笑いしながら、ため息を吐く。

 それに対し先生は、「そんなことないよ。若気の至りも青春の一部だもの」と、フォローしているのか揶揄っているのかよく分からないセリフを差し込む。

 

 「えー、それフォローしてんの? 先生。

 ……まあいいや。雑談もそろそろ終わりにして、仕事終わらせちゃお」

 

 カズサの言葉に、先生とノノミは少しハッとして、そして笑う。そういえば、二人はシャーレの当番としてここにいるのだし、仕事はまだまだ山積みなのだ。

 先生はバツが悪そうに、机に向き直るのだった。




永峯ヒナノ、情報更新
名前ヒナノ
フルネーム永峯ヒナノ
武器種HG
学園ゲヘナ学園2年生
部活風紀委員会
年齢16歳
身長169cm
誕生日9月20日
趣味人間観察(特にイオリ)、精密射撃、読書、ゲーム、筋トレ、レスリング、卓球、登山、天体観測、絵日記、DIY、タロット占い、動画配信、6弦ベース、ビオラ
基本情報
ゲヘナ学園所属、風紀委員会のポイントマン。

徒手格闘と異種二丁拳銃を組み合わせた独特の近接戦闘を得意とする、前線維持のスペシャリスト。
観察力に長け、無鉄砲なイオリのサポーターとして戦場を駆けることが多い。
だが、どうも彼女に向ける視線が異様だとの風紀委員会での専らの噂となっている。


固有武器
Analyse & Verifizierung
詳細
ヒナノの携帯する二丁の拳銃。
それぞれモデルが異なっており、「解析」の名を持つ方がオートマチック、「検証」の名を持つ方が単発式。

どちらも近接戦での役割を持たせた、特注のカスタマイズが施されている。


愛用品
使い古した万年筆
詳細
ヒナノが記録を書き留めるためにいつも使っている、使い古した万年筆。
とても大切に扱っているのか、状態がかなり良い。
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