その狂愛が視るものは   作:Othuyeg

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ここから数話程度「ヒナ委員長のなつやすみ!」編を書いていこうと思います。


記録:夏季合宿訓練、及び委員長強制休養作戦
第6節 夏休みの場合


 「バカンスに行きます!」

 

 「そうですか。勝手にしてください」

 

 「ひどすぎませんかヒナノさん!?」

 

 急に呼び出されたかと思えば、唐突にそんなセリフを吐かれても……。その場にいたアコを除く全員の感情が一致した。チナツとイオリもため息をつきながら話に加わる。

 

 「緊急の呼び出しと聞いて、何のことかと思ったら……。

 バカンスに行かれることは構わないのですが……私たちには関係ないと言いますか、それを聞かされても困ると言いますか……」

 

 「まあいいけど。で、アコちゃんはどこにバカンスに行くの?」

 

 「……はい?」

 

 ここに来て、ようやく話に致命的なすれ違いが生じていることに気が付いたアコ。慌てて訂正する。最初から誰のかを言えばいいものを。

 

 「何を言ってるんですか、私の休暇の話ではありません!

 と言いますか……もしかして私、ただ自分の休暇を自慢するためだけに皆さんを呼び出したのだと思われていたんですか?

 普段の私、そんなことをする人に見えていたんですか……!? ショックです……」

 

 「特に興味ないのでさっさと本題をお願いします、行政官さん」

 

 「あなたはそうでしょうね!?」

 

 ヒナノに冷たくあしらわれた風紀委員会の行政官様は、懲りずに続ける。

 

 「まあ、それはさておき。今回の『バカンス』というのは、私たち風紀委員会……

 いえ、正確には、委員長のバカンスのことを言ってるんです!」

 

 その場にいた、アコ以外の全員が首を傾げる。

 

 「委員長の……?」

 

 「どうしてまた急にそんなことを……?」

 

 「……ん? ああ、何かおっしゃいました?」

 

 ……いや、ヒナノは傾げるどころか全くもって話を聞いていなかった。

 なお、アコに対してはヒナノは常にこうだ。任務の指令と指揮命令以外の話を、基本的に何一つ聞いていない。本題を急かしたのも、自分が聞くためではなく、イオリがちゃんとアコの話を聞こうとしていたからだ。

 上司の雑談に何一つ耳を傾けず、聞いている素振りすら見せない。

 有り体に言って割とクソである。

 

 「あなたは本当に私の神経を逆なでするのが上手ですねヒナノさん……!

 今日という今日こそは許しませんよ……! 反省文を書かせますからね!?」

 

 「はい。そういうのはいいので、早いとこ計画をお話しください。最初の時点でだいたい話の筋は把握しているので」

 

 「この……!! ふぅ、落ち着きましょう。ヒナノさんの私への無礼はいつもの事です。

 ……さて、それでですが。こんなことを話したのには当然理由があります」

 

 ヒナノの雑な扱いにキレそうになるも、自分を落ち着けるアコ。満を持してという様子で理由を話し始めるも、またもヒナノがインターセプト。

 

 「おおかた、ヒナ委員長の様子がおかしいとかそんなことでしょう。

 アコさんの淹れたコーヒーの味に好意的に言及するだとか、何か普段ならしない初歩的なミスをするだとか」

 

 「話すべき内容を全部取らないでもらっていいですか!?」

 

 「アコちゃん、落ち着いて。こいつがこうなのは今に始まったことじゃないだろ」

 

 「それが問題なんじゃないですか! 全く……落ち着けなんて、イオリに言われちゃおしまいですよ」

 

 「おい待てそれどういうことだ」

 

 「殴殺(シバ)きますよ」

 

 唐突にイオリへ向かう流れ弾。そしてどんなに軽くともイオリへの悪言には鋭敏に反応するヒナノ。アコは愚痴を一つ(こぼ)して話を続ける。

 

 「普段からこのくらい話を聞いていてくれればいいものを……。

 まあですが、ヒナノさんの言う通り、委員長の様子がおかしいです。ストレスがひどくなったのか、心配になるほどのご様子で……」

 

 「委員長だけのバカンスならわざわざ我々を呼び出したりしないでしょうあなたは。

 おそらく、風紀委員会そのもの……おそらくは風紀委員会の夏季訓練か何かを利用して委員長を休ませようとか、そんな話ですね?」

 

 「だから話すべき内容を全部取らないでもらえますか!?!?

 全く本当にこの人は……話が終わったら本当に反省文を書いてもらいますからね!」

 

 「わかりました。では、イオリさん、失礼します。夏季訓練の準備をしてまいりますので」

 

 「あ、うん……」

 

 話の腰をベキベキにへし折った挙句、勝手に退室して準備を始めるヒナノ。まさに(荒らし)のようである。

 イオリはゲンナリした顔でそれを見送ると、アコに向き直った。

 

 「何故止めないんですかイオリ!」

 

 「いや、引き止める理由無いでしょ……。

 第一、ああなったあいつに居残ってもらったとして、なんか意味ある?」

 

 肩を竦めてため息を吐くイオリ。アコも内心それを分かってはいたらしく、軽く歯ぎしりをするだけで反論は続かない。

 

 「くっ、なぜ毎度ヒナノさんのことになると、イオリの方が正論を言うような状況に……!

 ……はぁ、まあ、いいです。仕方ありません。とにかく、私のコーヒーに『美味しい』などと感想を言ってしまわれる今のヒナ委員長には、すぐにでもしっかりとした休息が必要です。

 ゆえにゲヘナ風紀委員会の行政官たるこの私、天雨アコは、ここに宣言します」

 

 「あぁ、本当に『美味しい』って言われたんですね……」

 

 チナツの小さな呟きを無視して、一度言葉を切ったアコは、よりしっかりとした声で宣言する。

 

 「全ては委員長と風紀委員会……そしてキヴォトスの未来のために!

 風紀委員会の行政官として、緊急特務命令を発令します! 何としてでも、あの忙しい委員長にお休みを!

 

 「今回の夏季訓練は海で行いますよ!」と意気込むアコの姿に、イオリとチナツは小さく言葉を交わす。

 

 「ホントにヒナノが言ってた通りの内容なんだな……」

 

 「イオリ、それは言わない方が良いですよ……」

 

 その場に、二人のため息が残った。




1章分書き終えてから投稿しようとすると、なかなか執筆が進まないので、今回は書き終わったらさっさと投稿することにしました。
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