【連載版】我は呪いの書   作:J坊

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第10話

『我は呪いの書。中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。まさに禁忌の書物』

 

 

 

『本が喋った……』

 

 

 

 ある日の放課後。

 オカルト研究部の面々が集まったのを見計らい、我は名乗りを上げた。

 本がしゃべり出すと言う事態に、当然、室内にいた人間全員が困惑する。

 ギョッとした表情で、こちらを見る愛実・龍幸・拓郎を始め、ペンを落とす美羽。

 取り出したハトをどこかへ飛ばしてしまう茉莉。

 メガネが割れる山南。

 各々、あまりの出来事に呆気にとられている。

 

「え? なにこれ、ドッキリ?」

『ドッキリなどではない。今、我は貴様らの脳内に直接語り掛けている』

 

 愛実のつぶやきに応えると、全員、顔を見合わせる。

 茉莉のハトが「ぽっぽー」と旋回しながら鳴いている。

 まぁ、これが普通の反応だろう。

 本が突然喋るなど、ショッキングにもほどがある。

 

「いや、こんなのトリックでしょう。どこかに仕掛けがあるはずだ」

 

 唯一、科学部だった山南だけが未だに信じておらず、予備のメガネを装着し、我を調べようと手を伸ばす。

 うむ、これも奴の性分。信じないのは仕方あるまい。

 

 ――なので、分からせることにした。

 

『そいや!』

 

 バンッ‼

 我へ伸ばされた手を思いっきり挟んだ。

 

「………………」

 

 予想外の出来事に固まる山南。

 その隙を突き、我は手を連続で挟む、挟む、挟む‼

 

『カカカカカカカカカカッ‼』

「おぎゃああああああああああああ!?」

『や、山南さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼』

 

 以前もどこかでみたようなショッキングな光景に、部員全員の悲鳴が木霊する。

 結局、山南泣くまで、手を挟むのを止めなかった。

 

 

 

「痛いよ“ぉ……」

「ひでぇ……右手がミットみたいになってやがる……」

「これが、呪いの書の恐ろしさ……」

「物理的な意味で?」

 

 ようやくうるさい山南が黙ったところで、話を元に戻す。

 愛実と龍幸を除く全員がバリケードの中に避難し、茉莉のハトが「くるっぽー」と旋回する中、我とオカルト研究部の面々は初めて、対話することになった。

 

「部長、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫よ。私はこの部の部長だもの。こういう時、矢面に立たないと……」

 

 流石に呪いの書たる我と対話するのは緊張するのだろう。

 おそらく、返答を間違えたら命を落とすとか考えているに違いない。

 我はそんなこと微塵も考えてないが。

 そんな震える愛実に龍幸がそっと寄り添った。

 

「大丈夫です。なにかあったら僕が部長を守りますから」

「龍幸……」

 

 うむ、これが見たかった。

 さりげなく漢を見せる龍幸に頬を赤らめる愛実。

 いいぞ、もっとやれ。

 

「そ、それで、呪いの書さん? あなたの目的はなんなのかしら?」

 

 若干上ずった声で、目的を尋ねる愛実。

 我は龍幸の出したお茶を飲み(後方で他の部員が「え? お前、茶とか飲めるの⁉」という顔をしている)今回、唐突に話しかけた理由を語り始めた。

 

『先ほども名乗ったが、我は呪いの書。様々な呪いが記された黒魔術書だ』

「うん、それは知ってるけど……」

『我がここに来てから約三ヶ月、その間、様々な人間が我に記されし闇の儀式を行ってきたのだ』

「それも知ってる」

「なんなら部長もやりましたよね。未遂だけど」

「うむ、龍幸があの場面で告白したのは予想外であったな」

「ちょっと、今は待って。みんないるから」

 

 当時のことを思い出しストップをかける愛実。

 するとバリケードの奥から茉莉が挙手し、質問。

 

「ちなみになんて告白したんですか?」

「だから良いって言ってるでしょ!」

『うむ、あの時は――』

「あんたも言うな‼」

 

 我が返答を遮る愛実。

 仕方ない。あとで茉莉にこっそり教えよう。

 

『とにかく、我の力を利用する人間が後を絶たなかった。が、それは最初の数日だけであった』

「え?」

『最後に我を欲したのは、生徒会長。その後はピタリと誰も来ないで、暇な日が続いた』

 

 まぁ、その間青柳がやらかしたり、雑事をこなしたりした訳だが置いておく。

 つまるところ……

 

『ぶっちゃけ、暇なのだよ、我。これなら、正体明かしてマリ〇カートとか、みんなでワイワイやりたいくらいだ』

「いや、そんな理由で!?」

「っていうか、どうやってマリ〇を?」

『念力』

「即答した」

「マジか」

 

 マジだ。

 なんなら格ゲーや落ちゲー、ジェンガもできるぞ。

 

「いや、〇マンジと遊戯〇とかみたいなデスゲームの主催者的存在がなに言ってんの?」

『そう言うこともできるけど、趣味じゃない。あれはフィクションだからいいのであって、実際にやるのは抵抗がある』

「ほんとに呪いの書か、これ?」

 

 ほんとに呪いの書だよ。失礼な。

 

『こないだは我と言うものがありながら、こっくりさんとかやり始めるし……なんか野良動物霊いたから、吸収しといたけど』

「あ、あれ、なんとかしてくれたのアンタだったんだ」

『とにかく、我もアオハルしたいから、これを期に我に意志が宿っていることを明かしてみた』

「その場のノリで動いたんか……」

「自由ね、あんた……」

「たまんねぇな、そのライブ感」

 

 茉莉が肩に乗せたハトに餌をやりながら、同意する。

 なんとなく、この娘とは波長が合うな。

 

「で、でも、呪いの書さんも寂しかったんだよ。仲間に入れて上げようよ……」

「僕、手を挟まれたんだけどね」

 

 好意的に我に接する美羽。

 対極的に恨みがましい目でこちらを見てくる山南。

 まったく、ケツの穴の小さい男である。

 

「ひょっとして、俺が魚住を助けようと、儀式が成功したのもあんたのおかげだったのか?」

『うむ、いろいろ手順が間違えてたから、そこは我に封印されてた魔女の魂を絞りつくしてカバーした』

「やっぱりそうか‼ ありがとう‼ おかげで陽平が助かったぜ‼」

「いや、創造主、犠牲になってるわよ?」

 

 熱く感謝の意を伝える拓郎に我は『例には及ばない』と返す。

 ぶっちゃけ、あの魔女、封印されてる身で偉そうだったからね。

 いい加減、縁切りたかったんだよね。

 

 ――兎にも角にも。

 我と言う存在はすんなり、みんなに受け入れてもらえた。

 これで、放課後、暇を持て余すこともなくなるだろう。

 思う存分、ゲームもできる。

 いいこと尽くめである。

 

 

 

 ……しかし、それも長くは続かなかった。

 

 

『では早速、スマ〇ラでもやるか』

「いや、さっそくってなに? やんないわよ? 動画の編集とかあるし――」

「本が喋ってる‼ う、噂は本当だったんだ‼」

『⁉』

 

 突如、一人の少年が部室の扉を開けて叫んだ。

 どうやら、今のを見られたようだ。

 仕方ない。記憶を消す呪いを掛けてなかったことにしよう。

 そう思った矢先、少年は頭を下げてこんなことを言い始めた。

 

「いきなりですいません‼ その本、貸してください‼ 時間を巻き戻したいんです‼」

 

 これが、我らの活動を更なる段階へと導くことになるとは。

 この時、思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




◆登場人物◆
・ハト
 茉莉の飼ってる手品用のハト。オス。くるっぽー。
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