【連載版】我は呪いの書   作:J坊

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第11話

 我は呪いの書。

 中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。

 使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。

 まさに禁忌の書物。

 

 ――そんな我が正体を明かしても、すんなりと受け入れた奇特な連中・オカルト研究部の前に一人の少年が現れたことから、物語は動き始めた。

 

「えー……お名前は?」

榎本利樹(えのもととしき)と言います。一年生です」

「でー……時間を戻したいというのは?」

 

 出されたお茶に手も付けず、俯く利樹に愛実が尋ねる。

 利樹は声を震わせながら、語り始める。

 

「俺にはずっと、いっしょに過ごしてきた幼馴染がいます。けど、その娘が、今度、アメリカに留学することになったんです……」

 

 いつまでも一緒にいると思っていた。

 しかし、留学の話を聞き、居ても立っても居られなくなり、放課後、呼び出し告白。

 しかし……

 

『ごめん。利樹とは付き合えないよ』

『な、なんでだよ⁉』

『だって、この間、聞いちゃったもん。私『そんなんじゃない』んでしょ?』

『⁉ あ、あれは――』

 

 その言葉を聞いて思い出す。

 数日前、友人に幼馴染との関係を冷やかされ、ムキになって否定してしまったことを。

 おそらく、その時、近くにいたのだ。

 そして、彼女の心を傷つけてしまったのだ。

 利樹は必死に謝罪したが、彼女の心の傷が深く結果、そのまま口を利かない日が続いた……

 

「そこで俺は、仲直りをしようと近所のお祭りに誘いました。けど……」

 

 苦労の甲斐あってか、機嫌も直りムードも出てきた。

 告白するなら今だ。

 そう思い、覚悟を決めた――はずだった。

 

「そこで日和って尻込みしてしまったと」

「はい」

「花火の音で告白をかき消されたとかではなくて?」

「はい」

「それで、時間を戻してやり直したいと」

「はい、情けない話、仲たがいしたまま別れちまって……こういうの駄目だと思うけど、もう一度、チャンスが欲しいんです‼」

 

 そう言って、頭を下げる榎本。

 その姿を見て、我がやるべきことは一つだ――

 

『甘ったれるなぁぁぁぁぁ‼』

「おぎゃあああああ!?」

 

 我は空中に浮きあがると、勢いをつけて回転しながら額に角を突きつけた‼

 さながらドリルのように‼

 

『ようは貴様の根性なしが原因じゃろうがい‼ それで時を戻したいとか、しばくぞ、貴様‼』

「う、うう……正論すぎる……」

「キャラが変わった」

 

 怒声を浴びせられ、動転する榎本。

 そこはもう、ちゃんと注意しておかないといけないからな。

 いったん締めておく必要がある。

 

『ったく、我以外の呪いの書だったら、貴様は呪われているところだったぞ‼ 感謝しろよ⁉』

「は、はい……」

『って言うか、あんた以外にも意思を持った呪いの書があるんかい』

 

 声をそろえてツッコミを入れる部員たち。

 当然のことを聞くな。我だけのはずがなかろうて。

 

『ともかく、今回は幼馴染への想いに免じて特別に協力してやろう。感謝せぇよ。お前』

「はい、すいません……」

「だからキャラが……」

「『中世ヨーロッパの魔女の作った』って設定どこいった?」

 

 知らん。どっか行った。

 ともかく、この愚かな榎本の願いを叶えるため、我はとっておきの魔法を使うことにした。

 

『出でよ‼ アスタロト‼』

 

 我が叫ぶと同時に、魔法陣が現れ中から巨大なドラゴンのような悪魔が出現。

 時空を操る悪魔・地獄の公爵アスタロトである。

 

『愚かな人間よ、我を召喚するとは、望みはなんだ?』

「ひっ! え、とその……」

 

 アスタロトから放たれる威圧感にビビり、しどろもどろになる榎本。

 仕方なく、代わりに我が事情説明。

 その結果……

 

『お前、それを早く言わんかい‼ ボケェ‼』

「ひぃぃぃぃぃぃ‼」

 

 めっちゃ怒られた。

 そりゃもう、すごい剣幕で。

 

『お前、幼馴染の娘さん、絶対、お前のこと好きやん! 告白されるの待ってたやん‼ なんで、そこで日和っちゃうかなぁ、もう‼』

「す、すいません……」

『ほんま、お前、アカンわ‼ ちゃんと勇気出して告白しとったら、こないなことになってへんやんけ‼ 仕方ない奴やのぉ‼』

「なんで地獄の公爵、関西弁なのよ」

 

 知らぬ。我に聞くな。

 

『まぁ、なってもうたもんはしゃあない。時間戻してワシがフォローしたるさかい、今度はちゃんと、告白せぇや』

「は、はい! ありがとうございます‼」

 

 まぁ、なんだかんだで協力はしてくれるようだ。

 

『でもな、時間戻すの、めっちゃ魔力使うねん。なんで、生贄がいるんやけど』

「い、生贄っすか?」

 

 物騒なワードに思わず身構える一同。

 まぁ、一応これ黒魔術だからな。なんらかの代償が必要なのだ。

 

『まぁでも、おたくらは呪ちゃんの知り合いやさかい、手ごろな怪異二~三体でも大丈夫やで~』

「手ごろな怪異と言うパワーワードよ」

 

 微妙に納得いかない表情を浮かべてる愛実、

 まぁ、怪異とは負の感情の塊。その辺の人間やら山羊やらよりも、効率よく魔力に変換できるのだからしょうがない。

 

「まぁ、こうなったら乗りかかった船よ。山南は怪異を捕獲する道具作って‼ 私は怪奇現象が頻繁に起きてるっていう心霊スポットを見繕っておくから‼」

「おぉ‼ まるで、オカルト研究部の活動のようだ!」

「いや、オカルト研究部の活動だから‼」

 

 茉莉のボケにツッコミを入れながら、オカルト研究部による怪異捕獲作戦を計画。

 こうして、物語は最終章に向かうのであった。

 

 

 




◆登場人物◆
・アスタロットさん
 気のいい地獄の公爵様(関西出身)
 呪いの書ことを呪さんと呼ぶ。
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