【連載版】我は呪いの書   作:J坊

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第5話

 我は呪いの書。

 中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。

 使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。

 まさに禁忌の書物。

 

「見つけた。これがあの悪名高き呪いの書……我が組織が追っていた、禁断の術が書き記されているという……」

 

 故に様々な組織から、その身を狙われている。

 

「退魔機関のエージェントとして、この学校に潜入したが、まさか本当に存在するとは‼」

 

 緊張のあまりゴクリと生唾を飲み込み、転校してわずか数日でエースにまで上り詰めたと評判の小泉怜香(こいずみれいか)が険しい表情を浮かべる。

 なるほど、こやつ、退魔師だったか。

 

「幸いにも、この本の所有者は未だに黒魔術を使っていないのが幸いだった……だが、いつ禁忌に手を染めるか分からない。今すぐ処分しなければ――‼」

 

 指名に燃える怜香。

 この娘、久しく見ない正義感の強い退魔師のようだ。

 さらに、我邪悪な気配を察知し、場所を突き止める実力。

 中々の強者と見える。

 それは素直に認める。

 だが、少し言いたいことがあるのが……

 

「しかし、この呪いの書、魔導書の割に薄いような――!?」

 

 そう言ってペラペラと『本』を捲る怜香。

 瞬間、驚愕の表情を浮かべ、地面に落とした。

 

「なっ!? こ、これは!?」

 

 絶句する怜香。

 そう、この娘が持ってるの、我じゃないんだよなあ。これが。

 我、隣なんだよなぁ。

 じゃあ、この本はなにかって?

 そ・れ・は。

 

「こここここ、こんな破廉恥な本がなんでこんなとととととところに!?」

 

 そう。怜香が持っていた本は、男と女の情事を取り扱った――

 早い話がエロ本であったのだ。

 なぜ、そんなものがここにあるか?

 それは、最近うちに出入りしている拓郎の友人で、サッカー部の青柳航大(あおしまこうだい)という生徒の仕業である。

 あの男、家に隠してたら母親に見つかり、机に山積みにされてからと言うもの、拓郎の友人であることを良いことに、部室内に保管させてもらっているのである。

 当然、女性陣からの評価は最低レベル。養豚場の豚を見るような視線を向けられている。

 

 で、話を元に戻すが、案の定怜香は顔を真っ赤にし、右往左往と動揺しまくっている。

 

「くっ、これが呪いの書……これは確かに禁断の書物だッ‼」

 

 濡れ衣だよ。我じゃないって。

 

 そんなことを言いつつもこの娘、食い入るように見る。

 そりゃあ、穴が開かんほど凝視し、鼻息を荒くし、両の鼻からは血が流れ始めてるくらいには。

 どうやら気丈なフリして、かなりのむっつりさんだったようだ。

 ペラペラと興奮しながら熟読し始める。

 

「くっ、こんなものがこの世にあったとは……なんと嘆かわしい‼ これも呪いの書の影響なのか⁉」

 

 嘆かわしいのはお前の方である。

 とツッコんでいた、そんな時。

 

「そう言えば、青柳ってここ数日見てないけど、どうしたの?」

「あぁ、なんか彼女を寝取られて寝込んでるみたいですよ?」

「⁉」

 

 オカルト研究部の部長・副部長である愛実と龍幸が帰ってきた。

 慌ててロッカーに隠れる玲奈。

 別段悪いことはしてないはずだが、流石に「部室に無断で入ってエロ本みてました! テヘペロ☆」とは言えないだろう。

 息を潜めて、二人が立ち去るのを待つしかない。

 そんな玲奈のことなど知ってか、知らずか。

 二人は青柳の話で盛り上がっている。

 

「寝取られてって、あいつ、彼女なんていたの?」

「いや、正確には『つき合っていると思い込んでいた女子生徒が本命とくっついただけ』なんですよね」

「うわぁ、なにそれ……キモいわぁ……」

 

 ふむ、なるほど。どうやら青山、フラれてショックで寝込んでいるようだ。

 しかも、経緯が哀れすぎる。妄想癖でもあるのだろうか?

 

「どちらかと言えば寝取られっていうよりBSSですね」

 

 BSS。

 B(僕が)

 S(最初に)

 S(好きだったのに)の略である。

 要するに、初恋の相手を横からかっさらわれるシュチエーションと言うわけだ。

 ……なんの解説をしているのだろう?

 

「いや、むしろ相手にされてない分、BSSにもなってないような気が……」

 

 やめてやれ。我にそれ以上、悲惨な情報を流すな。

 

「寝取られと言ったらさ、あんた。私が誰かに寝取られたらどうする?」

「え?」

 

 意地の悪そうな笑みを浮かべて、不意にそんなことを尋ねる愛実。

 どうやら、来たようだ。

 我が待ち望んだ、カップルのいちゃいちゃタイムが。

 

「なんでそんなこと聞くんですか?」

「えー、だってあり得ないとも限らないじゃない? あんたがちゃんと捕まえてないと取られちゃうわよ?」

「えー……やだー……」

「もっと感情込めて嫌がりなさいよー」

 

 そう言って、イチャイチャし始める二人。

 うむ‼ 今日も平和であるッ‼

 

「……イイナー、私も彼氏欲しー」

 

 ……だが、ロッカーの中に異分子が紛れ込んでいる。

 今、なんかの拍子で居場所がバレたら、せっかくの青春が台無しになる。

 されども一介の書物である我にはどうしようもできない。

 呪いでも書けない限りは。

 ホント、どうすっかなー、コイツ。

 悩んでいると、ふと周囲が騒がしくなってきた。

 

「? なんかうるさいわね?」

「だれかが叫んでません?」

 

 怪訝な顔をして、廊下の様子を伺おうと愛実が扉を開ける。

 その瞬間、一人の少年が転がり込んできた。

 

「た、助けてくれぇぇぇぇぇ‼」

「え!? な、なになに⁉」

「どうしたんですか⁉」

 

 息も絶え絶えな少年を介抱すると、背後から「待てゴルァァァァァァ‼」と怒鳴り声と共に“あの男”が飛び込んできた。

 

「テメェのチ〇コ見せてみろゴルァァァァァ‼」

『キャアアアアア!?』

 

 絹を裂くような悲鳴が響く。

 なぜなら青柳は下半身を露出させていたからだ‼

 

 

 

 

 

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