【連載版】我は呪いの書   作:J坊

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第7話

 我は呪いの書。

 中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。

 使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。

 まさに禁忌の書物。

 

 ……そんな我だが、現在、暇を持て余している。

 

 う~ん、暇。めっちゃ暇。超暇。

 暇で暇で仕方がない。

 昨今、温暖化による気温上昇が取り上げられる中、暑すぎず、涼しすぎない過ごしやすい一日。

 あやうく眠りこけるところだった。五百年くらい(笑)

 

 しかし、こうも暇だとよろしくない。

 実は我、定期的に呪術を行使しないと、呪力が蓄積される。

 そうなると、周囲に瘴気を放ち怪奇現象を引き起こすことがあるのだ。

 故に定期的にしろ魔法で浄化するか、呪いを行使し呪力を解放せねばならない。

 まったく、創造主である魔女もロクでもない仕様にしてくれたものである。

 

 そういう訳で、定期的に呪いを振りまかねばならないのだが、ここは学校。

 青春を謳歌する若人や彼らを導く教育者たちにあまり強大な呪いは掛けたくない。かわいそうだもん。

 なので軽い呪いを振りまいて、数で稼ぐ方針でいこうと思う。

 手始めに、ランダムで校内の男子に呪いでもかけようか。

 

 そうだな……『帰宅したら机の上に隠してあったエロ本が置かれている』呪いでいいか。被害も少ないし。

 ちなみにこれが一番軽い呪いだ。

 二番目は『足の小指を角にぶつけやすくなる』呪い。

 地味にきつい。

 

 ……やめよう。

 思春期の男子が親にそんなことをされた日には、家庭崩壊の引き金になりかねない。

 それだけは回避せねば。

 となると、呪っても心が痛まない人間を探したほうがいいだろう。

 そんな奴、そうそう見つからないだろうが千里眼を使い、校内の様子を探ることに――

 

 

 

 ――用務員室。

 

「くくく……まさか、剣道部の主将と1年のチビがつき合っているとはな。このホテルから出てくる写真で脅して、あの女を俺のものに――」

 

 

 

「あれ? なんの騒ぎ?」

「あ、茉莉。なんか用務員室の蛍光灯がいきなり割れて、破片が用務員さんに刺さりまくったらしいわよ?」

「うわ、怖っ‼ ありえんの? そんなこと」

 

 

 

 ――パソコン室。

 

「でゅふふ‼ 催眠アプリができましたぞ‼ これで生徒会の水島副会長を――‼」

 

 

 

「あれ? 美羽ちゃん、なんの騒ぎ?」

「あ、茉莉ちゃん‼ 部長‼ 実はパソコン室にキツツキが飛んできて、パソコン部の部長さんのお尻に刺さったって……」

「なんて?」

 

 

 

 ――校門前。

 

「へへへっ‼ このナイフで、ヨシオなんかと仲良くしてるお姉ちゃんを脅してにエロいことして、俺のものにしてやるぜ‼ あいつの悔しがる顔が目に浮かぶぜ‼」

 

 

 

「あれ? 救急車だ。どうしたんだろ?」

「なんか、門の前にいた小学生が竜巻に巻き込まれて雷が直撃して、地盤沈下に巻き込まれたらしいわよ」

「なんて!?」

 

 

 

 ――駐車場。

 

「まったく、校長である私が、たかがいじめ問題で保護者に謝罪しに行かなければばらんとは……なぜ私が頭をさげなきゃならんのだ‼ いじめられる側に問題があるだろうに」

 

 

 

『次のニュースです。私立高校の校長が車で移動中、街中に現れた熊と動物園から逃げ出したアナコンダに襲われ、重傷を負いました』

「あれ? これうちの高校の校長じゃない?」

「最近、熊がらみの事件多いからね」

「まさか、身近に起きるとは」

「いや、アナコンダはねーよ」

 

 

 

 

 ……意外といるな。呪ってもいい奴。

 この学校、治安悪すぎだろ。四人も見つけたわ。呪っていいやつ。

 まぁ、数々の呪いを放ったおかげで、蓄積された呪力もだいぶ減ったので良しとしよう。

 結果オーライである。

 

 竜巻と地盤沈下並びに熊とアナコンダの所為で、学校は臨時休校となった。

 部活も休みになり、オカルト研究部も例にもれず、愛実たちはさっさと帰路に着いた。

 

 こうして我が一日は、何事もなく過ぎていく。

 

 

 

 

 ……はずだった。

 

「あれ? あれって龍幸?」

 

 我を鞄に仕舞い、帰路に着いた愛実は途中で龍幸を発見。

 先日、龍幸は変質者(青柳)を取り押さえる際に放ったラリアットで骨折し、全治二週間の大けがを負って入院。

 現在は自宅療養中である。

 

「まったく、安静にしてなさいって言ったのに」

 

 そう言いつつも、頬が緩む愛実。

 久しぶりに恋人と会えてうれしいのだろう。

 ここは一つ、心ゆくまでイチャイチャを楽しませてもらおうとしたのだが……

 

「……え?」

 

 場の空気が凍った。

 愛実の視線の先にいたのは龍幸だけではなかったのだ。

 他校の制服を着た一人の少女が、龍幸と親し気に話している。

 つまり、これは――

 

 

 

「あれ? 部長、どうしたんですか?」

「あ、あの、龍幸、その娘は――」

「あ、ひょっとしてお兄ちゃんの彼女さん? 初めまして! 妹の龍華(りゅうか)って言います‼」

 

 

 

 っっっっっ良かったぁぁぁぁぁぁ‼

 だよねー‼ そうだと思ったよ‼

 なんだよ、びっくりさせやがってこの野郎‼

 ビビらせんなよ、もぉぉぉぉぉ‼

 隕石が直撃する呪いかけるところだったわぁぁぁぁぁ‼

 

 少女漫画なら五話くらいかけて葛藤を描くであろう話を、僅か数秒で終わらせる漢・龍幸。

 さりげなく、愛実と妹との橋渡しも行い、良好な関係を築くことに余念がない。

 これで未来の姉妹仲は安泰だ☆

 

 しかし、この『隕石が直撃する呪い』のためにチャージした呪力どないしよ。

 このままだと、関係のない人間に隕石が直撃してしまう。

 そう思って、再度千里眼を発動し、適当なクソ野郎を探していると……

 

『本日、パワハラで控訴された○○市長が、市長選出馬を表明しました』

 

 ……あれでいいや。

 

 その日、パワハラで控訴された市長の乗る公用車に隕石が直撃。

 全治一年の重傷を負う羽目になったニュースがトップを飾ったことになった。

 

 

 

 




◆登場人物◆
・愛実と龍幸
 後日、家族を紹介し合い公認の仲になる。
 ゴールインまで秒読みだ‼
 いちゃいちゃしろ‼

・芳野龍華 84/58/83
 龍幸の妹。お兄ちゃん大好き。愛実さんも大好き。
 二人は末永く幸せになるべきなのです。
 多分呪いの書とうまい酒が飲める。未成年だけど。

・ヨシオくん
 いじめられっ子。お姉さんが大好き。

・お姉さん
 エッチなお姉さん。ヨシオくんが大好き。

・タカシくん
 いじめっ子。お姉さんをナイフで脅してエッチなことをしようとしてる。

・呪いの書
「あれぐらいで済ませてやったのは、むしろ有情だと考えて欲しい」などと供述しており、反省の色が見えない。
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