【連載版】我は呪いの書   作:J坊

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第9話

 我は呪いの書。

 中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの復讐のため、生涯をかけて編み出した、様々な呪法が記されている黒魔術書である。

 使用すれば相手はもちろん、術者本人も破滅する。

 まさに禁忌の書物。

 

 故によからぬものを招き寄せることも多々あるが……

 

「「………………ッ‼」」

 

 現在、我の目の前でこっくりさんを行っているオカルト研究部女子たちの真上では、引き寄せられた狐と狸の霊がメンチを切り合っていた。

 いや、もうホント、昔のヤンキーか?

 そんくらいの勢いでメンチを切り合っている。

 

『お、おめぇ、どこ中や?』

『あん? テメェこそ、何様だ?』

『狸風情が調子乗んな‼ 海に沈められてぇか?』

『テメェの方こそ、ごんぎつねみたいに蜂の巣にされてぇか?』

 

 いや、ごんぎつねそんな殺意の高い話じゃないだろう。

 そんな風にツッコんでいると察した女子たちが、ひそひそと会議を開始。

 

「え? これ、どういうこと?」

「どうやら、こっくりさん、二体いるみたい」

「そ、そんなことあるんですか?」

「たまによろしくないものを呼んでしまった事例があるから、多分、こういうこともあるんだと思うけど……」

「よし、確かめてみよう……」

 

 そう言うや否や、茉莉が勇気を振り絞り、こっくりさんたちに質問をする。

 

「こっくりさん、こっくりさん、きのことたけのこ、どちら派ですか?」

「なんでそんな荒れそうな質問を!?」

 

 その瞬間、十円玉がすさまじいスピードで動き始めた。

 そして論争は始まった。

 

『タケノコこそ至高に決まってるだろう!!』

『キノコこそ最高だ!!』

『チョコレートの量が少ないだろうが!!』

『指が汚れないからいいだろ!!』

 

 ヒートアップするキツネとタヌキの動物霊。

 それに合わせて、加速する十円玉のスピード。

 このままでは摩擦で燃えかねない。

 

「ちょっと!! これ、ヤバくない!? 霊的じゃなくて、物理的な意味で!!」

「指が、指が追いつかないよ〜」

「まずいな。このままでは、腱鞘炎になりかねない。よし、ここは新しい質問だ!!」

 

 そう言って茉莉は新たな質問をこっくりさんに尋ねる。

 

「こっくりさん、こっくりさん、最強の仮面ライ○ダーは……」

「ええ加減にせえよ!! お前!!」

 

 本日二度目のキャラ崩壊ツッコミが炸裂。対立を深めそうな質問を事前にカット。

 これはもう、戦争に発展しかねないから仕方ない。

 ナイス判断。

 ちなみに我はZ○が最強だと思っている。

 異論は認める。

 こういうのは、ただ言い合うのではなく、互いに尊重し合うのが大事なのだ。

 

 

 

 ……まぁ、そんな、マナーも守れない畜生共には、ぼちぼち、お灸を据えねばならぬな。

 

 

 

「あ、十円玉の力が弱まったよ‼」

「今がチャンス‼」

「こっくりさん、ありがとうございました。お離れください‼」

 

 半ばやけくそ気味に叫び、強制終了。

 三人娘は肩で息をしながら、ぐったりする。

 

「こ、これで、こっくりさんたち、帰ったんだよね?」

「た、多分ね……」

 

 美羽の質問に愛実が応える。

 あとは、十円玉と用紙を適切に処分するだけだ。

 が、その前に……

 

「茉莉、さっきの話なんだけど――」

「あ、あたし、用事あるからこれにて、ドロン‼」

 

 そう言って、大量のトランプを口から吐き出し、目くらましとばかりに投げつけ部室から脱出。

 元手品部とは思えない健脚で逃走した。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁ‼ 美羽‼ 片づけだけよろしく‼」

 

 茉莉を逃がすまいと、愛実もオカルト研究部にあるまじき瞬発力で、茉莉を追う。

 そんな二人の鬼ごっこを見とどけ、しばらくして、美羽は「仕方ないなと……」片づけを始めた。

 

「あれ? この本、こんなに分厚かったっけ?」

 

 不意に我の方に視線を向けると、動物霊たちを吸収した我の変化に気づいたのか、小首をかしげた。

 

 

 

 ……どうやら、我の正体を明かす日は近いようだ。

 

 

 

 

 




◆登場人物◆
・動物霊(狐と狸)
 世の中には相容れぬものが存在する。
 善と悪。陽と陰。キノコたけのこ。某カートゥーンのネズミと猫。
 されど、必要なのは互いに尊重し合うこと。
 さすれば、平和な世界が訪れる。
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