リゼロEx ナツキ・ぺトラ 作:[email protected]
今回はペトラの幼馴染たちを絡めてみました
お楽しみいただけたら幸いです
「あー、抜け駆けスバルだ」
「抜け駆けスバルー」
「なんだよ、藪から棒に。人聞きが悪いな」
ペトラの幼馴染の友人であり、彼らが少年だった頃から遊び相手を務めてきたダインとカインの兄弟に、顔を合わせるなり、そんな事を言われて、スバルは不服そうに言い返した。
「だって抜け駆けじゃないか。領主さまのメイドになったペトラを一人で口説いて」
「そうだー。正々堂々と勝負しろー」
と、今年で19歳と18歳であるにもかかわらず、8年前にスバルと遊んでた頃と同じノリでダインとカインは口々に言った。
この兄弟はどっちがペトラに告白するかで毎日張り合ってたくらいだった。そんな兄弟からしたら、ペトラと結婚したスバルは、まさに油揚げを持っていたトンビだった。
「もう。二人とも私の旦那様に変な言いがかりをつけないで」
と、スバルを庇うように立ちふさがったのは、8年前はロズワール邸の期待の新人有能メイドだった少女、今はメイドを結婚退職したスバルの新婚ホヤホヤの新妻で愛妻にして今年で20歳の村一番の美女ペトラだった。
「だってペトラ」
「だってさー」
ペトラに睨まれて兄弟そろって情けない表情になる二人。
「だってじゃありません。そもそも順番を間違えてるわ。スバルがメイドになった私を口説いたんじゃなくて、私がスバルを好きになったから、スバルの傍にいたくて領主さまのメイドになったの」
と、ペトラはスバルの腕にしがみついた。
「つまり、二人には悪いけど、私がメイドになった時には、もう勝負はついてたの」
愛しい夫のたくましい腕に自分の大きな胸を押し付けるペトラ。
スバルは少し赤くなりながら、残った方の手で自分の頬をかいた。
「げー、スバル。そんな頃からペトラに手を出してたのか、この幼女趣味」
「このロリコンー」
「ったく、こいつら、変な言葉を覚えやがって……」
それらの言葉を教えたのが主に自分である事を棚に上げて――そもそも「ロリコン」という言葉は本来は『こちらの世界』に存在してなかった――スバルはゲンナリした。
おまけに騎士時代、幼女の姿の精霊のベアトリスを相棒として常に連れ歩き、結果、『幼女使い』などという不本意な異名を持ってたスバルには結構ダメージの来る罵声だった。
「もう、二人とも失礼な事を言わないで。私が勝手にスバルを好きになったんだから。むしろ私がスバルを時間をかけて口説いたのよ」
ペトラは天を仰いで、思い出を振り返った。
「本当に大変だったわ。あの頃のスバルは私の事を妹分としか思ってくれてなかったし、エミリア様やレム姉様という強敵がいたし、領主さまは性格が悪い上に腹黒で根性がひん曲がってたし、スバルは目を離すとすぐに無茶をするし……そこが格好いいんだけど……」
当時の様々な事柄が脳裏に浮かんで、憂い顔になったり、怒りの顔になったり、赤面したりで忙しいペトラ。
「ペトラにあんな顔させやがって。スバルの罪作り」
「スバルの罪人ー。大罪司教ー」
「誰が大罪司教だ、コラ!」
軽口とはいえ聞き逃せないとばかりに怒鳴るスバル。
とはいえ、長い間、ペトラの気持ちに応えられず、彼女に苦労をかけたり寂しい思いをさせたのは事実なので、スバルとしても反論しにくいところだ。
「ベティーのパートナーであるスバルの良さに早々に気づいた事に関しては、ベティーはペトラを高く評価してるかしら」
と、口を挟んできたのはスバルの契約精霊、今日も小さくて可愛いベアトリスだった。
「あ、スバルの愛人」
「スバルのロリコンー」
「誰が愛人かしら! ベティーとスバルの関係を侮辱するようなら、本気でお仕置きしてやるのよー!」
「落ち着け、ベア子。お前らも、もう子供じゃないんだから、冗談でも言っていい事と悪い事があるのを学習してくれ。俺の故郷には『親しき中にも礼儀あり』って言葉があるんだぞ。まあ、それを平気で無視して俺の部屋に勝手に入って俺にプロレス技をかけてたのが俺の父ちゃんだったけどな」
ベアトリスを宥め、ダインとカインを叱りつつ、懐かしい思い出を振り返るスバル。
アーラム村は今日も平和だった。
「あれ? みんな集まって、どうしたの?」
そう声をかけてきたのはペトラの妹分で幼馴染のメイーナであった。
彼女も昔はスバルと一緒に遊んでたメンバーの一人だが、この村の子供にしては珍しく内気で大人しい性格だったのが逆に印象に残った。
「スバルの優しさと格好良さに早くから気づいてた私をベアトリスちゃんが褒めてくれてたの」
スバルと一緒にご立腹のベアトリスを宥めていたペトラが笑顔でそう答えた。
「ああ。確かにペトラは昔からスバルの事が好きだったもんね」
納得したようにうなずくメイーナ。
「メイーナはペトラが俺を好きな事に気づいてたのか?」
「うん。だってペトラは昔から、ずっとスバルの事を見てたから。毎朝の『らじお体操』の時も、雪祭りの時も、領主さまのお屋敷で鬼ごっこをした時も、スバルと一緒に何かする時は、ペトラはいつもスバルを見てたよ」
「うわあ……全然気づかなかった……」
当時は妹分としか思ってなかったとはいえ、今となっては夫としての至らなさを突き付けられたような気分になって頭を抱えるスバル。
「俺も気づかなかった……」
「俺もー……。ペトラー……」
仲良く肩を落とす失恋兄弟。
「……あのね……今だから言うけど‥…」
メイーナは少し迷っていたが、意を決したような表情をすると、スバルを真っ直ぐに見つめて、
「私ね、ペトラちゃんがメイドになったことで、少しだけ……。本当に少しだけどスバルを恨んでたの」
「へ?」
「だってペトラがメイドになったせいで、ペトラに時々しか会えなくなっちゃったから……一緒に遊ぶことも少なくなっちゃったし……」
ロズワール邸のメイドとなって大忙しになったペトラがアーラム村に戻れるのはごく稀にある休日の時だけである。
しかもぺトラがメイドになってすぐに起きたエルザたちとの戦いで、旧ロズワール邸は燃え落ちた。
別の屋敷に移ってからは、アーラム村との距離が開いたので、以前のように気軽にペトラの友人たちを屋敷に招待する事もできなくなったし、買い出しに行く最寄りの場所もアーラム村ではなくコスツールという都市になった。
おまけに、ぺトラはロズワールの従者として西方の貴族会議に出席したり、スバルを助けるために帝国に乗り込む一行に参加したり、長期の遠出をすることも何度もあった。
それがずっとペトラの後ろについて回っていた当時のメイーナには寂しかったのだ。
「でもね、今はスバルに感謝してる。スバルと結婚して、ペトラはとても幸せそうだもの」
「メイーナ……」
「あ、それに昔、魔獣や魔女教から助けてくれたのも感謝してるよ。スバルがいなかったら私は弟が産まれてくる前に死んでたかもしれない。助けてくれて、本当にありがとう。弟と遊んでくれたのも感謝してる。ありがとう。弟もスバルに懐いてるし、また遊んであげてね」
「ああ。時間が空いる時ならな」
大人しいメイーナの勇気を振り絞っての告白と感謝を受け止め、スバルは親指を立ててウィンクした。
「お前の気持ちはベティーにも少しわかるのよ。それまで一緒にいるのが当然だった者が急にいなくなるのは寂しいかしら」
遠い昔の別れを思い出したのか、そう言葉を挟んだベアトリスは神妙な顔をしていた。
「ベア子……」
ベアトリスは、メリーナに優しい眼差しを向けた。
「それに、ずっと自分とだけ手を繋いでくれてた者が別の誰かと手を繋ぐようになって、自分に構ってくれる時間が減るのだって寂しい事かしら。でも、お前の言うように、大切な人を幸せにしてくれたのなら感謝すべきなのよ」
ベアトリスはペトラに向き直った。
「ベティーはペトラに感謝するかしら。ベティーの大切なパートナーのスバルを幸せにしてくれて、ありがとうなのよ」
「どういたしまして。私もスバルのおかげで幸せだから、お互い様だよ。それにベアトリスちゃんがスバルが危ない所を何度も何度も助けてくれたのを、ものすごく感謝してる。ありがとう」
可愛い外見とは裏腹に厳かな雰囲気でお礼を言ったベアトリスに、ペトラは愛らしい顔に可愛さ全開の笑顔で自分の感謝を返す。
「スバル。突っかかって、ごめんな。俺もペトラを幸せにしてくれたのは感謝してるよ」
「俺もー。ペトラを幸せにしてくれて、ありがとうなー、スバル」
ダインとカインも穏やかな顔で、そう締めくくった。
元から本気でスバルに突っかかるつもりはなかったのだろう。ただ彼らなりにケジメが欲しかったのだろう。だから、あえて少年時代のノリで接してきた。あの頃に戻った気持ちで答えが聞きたかったのかもしれない。
その後、リュカやミルドも通りかかった。小村のアーラム村は仕事帰りの時間帯に道の真ん中で長話してると目立って顔なじみが声をかけてきやすいのだ。
そうして8年前に遊んでた面子が揃って、わいわいと思い出話に花を咲かせた。
そして、みんながスバルとペトラを祝福してくれた。
「幼馴染かあ。いいもんだな」
メイーナたちと別れ、ペトラに寄り添われ、ベアトリスと手を繋ぎながらの帰路。
スバルのその感想に、ペトラは嬉しそうにうなずいて、
「うん。私はすごく恵まれてる。お父さんもお母さんも優しいし、村の人たちもみんな良くしてくれるし、メイーナは可愛いし、昔からの友達みんなが今でも仲良くしてくれる」
そして最愛の夫の腕の中で愛おし気に続ける。
「でも、それもスバルのおかげなんだよ。メイーナも言ってたでしょう。スバルがいなかったら、みんな死んでたかもしれない。今日、私が幼馴染のみんなに会えたのも、スバルのおかげなんだよ」
「俺は――」
そんなに大した事はしてないとスバルは言おうとした。そう言いかけたスバルの口にペトラは自分の人差し指を当てて黙らせた。
「私は何度だって言うよ。スバル、私を助けてくれて、ありがとう。私の家族を助けてくれて、ありがとう。私の大事な友達を、幼馴染たちを助けてくれて、ありがとう。村のみんなを助けてくれて、ありがとう」
どれだけ重ねても足りない感謝と愛情をこめてペトラは告げる。
「私はスバルに、ずっとずっと、足りないお礼を言い続けるよ」
そう、どこか遠くからエールを送ってくれた『誰か』の分まで。
ナツキ・ぺトラの第2話を最期まで読んでくださった読者の方々、ありがとうございます。
スバルとペトラのイチャイチャを書くと言いつつ、他のキャラとの絡みが多いですが、結果として二人のラブラブに深みが出てるんじゃないかと、そうであってほしいと思いながら執筆しました。
次回はもう少しスバルとペトラのイチャイチャ成分を増やそうかなと思ってる所存です。
では、よろしければ、次回もお楽しみください。