リゼロEx ナツキ・ぺトラ   作:[email protected]

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第4話 愛してる

 人によっては「好き」や「愛してる」を軽々しく口にされるのは、ありがたみが薄れると感じるらしい。

 しかし、ペトラは違った。別にそういう人たちを否定するつもりはない。愛の形は人それぞれだ。

 ただ少なくともペトラは好きな人に「愛してる」と言いたいし、「愛してる」と言われたい。何度繰り返しても、それでありがたみが薄れるなんて思ったことはない。

 それだけスバルを好きという気持ちがあふれてるのかもしれないし、もしかしたら片想いの時期が長かった反動もあるのかもしれない。

 あるいは、想いは口にしなければ伝わらないと、身を以て知っているからかもしれない。

 どうであれペトラは今日も愛する夫に愛を伝える。

 

「愛してるよ、スバル」

「ああ、俺もだ。愛してるぜ、ペトラ」

 朝食の最中にいきなり愛を伝えてきた愛妻に、スバルも真っ直ぐに愛の言葉を返す。

 先日の花畑で改めて互いの愛を告白し合って以降、ずっとこんな感じである。

 新婚夫婦としては、むしろ「仲が良くて結構な事」と言えるだろう

「だからって少しは場を弁えるかしら」

 唐突に始まった夫婦のイチャイチャにベアトリスはゲンナリした。

「おう、悪かったな、ベア子。もちろんベア子の事も愛してるぜ。ぺトラとは愛のベクトルが違うけどな」

「ついでみたいに言われるのは不愉快かしら。もっと愛情と誠意をこめて、抱っこしながら言いなさいなのよ」

「スバル、私も思いっきり抱きしめられながら『愛してる』って言われたい」

 プンプン顔のベア子の横からペトラも要求してきた。

「よし、任せろ!」

 スバルは、ペトラのメイドと農家で鍛えられつつ、女らしく愛らしく育った体を愛情をこめて抱きしめる。

「愛してる、ペトラ」

「私も愛していますよ、あなた」

 と、ペトラは良妻モードで抱擁と愛の言葉を返してきた。

「ベア子、愛してるぜ」

「ふふん。まあ、許してやるかしら」

 スバルに抱っこされてアッサリ機嫌を直す幼女大精霊。

「スバルはいいお父さんになれそうだね」

 と、ペトラもなにやら満足そう。 

そうして朝のスキンシップを終えて、朝食を再開する三人。

「ペトラ、おかわりを頼めるか」

「はい、あなた。私の愛をたっぷり込めておきますね」

「おう、ペトラの愛のこもったおかわり、ありがたくいただくぜ」

 訂正、新婚夫婦のイチャイチャはまだ終わっていなかったようである。

 

 朝食の後、二人で朝の分の服の仕立て業、その後、スバルは畑に、ペトラは家畜の世話に向かう。

「じゃあ、畑に行ってくる。愛してるぜ、ペトラ」

「うん。今日はお弁当を持っていくね。私も愛してるよ、スバル」

 スバルが家を出る際も、当たり前のように愛の言葉を交わし合うスバルとペトラに、ベアトリスはなにか考え込んでるようだった。

 

「あれ? ベアトリスちゃん、スバルの方じゃなくて、私の方についてくるのは珍しいね」

 家畜の餌の準備をしていたペトラは驚いた。

 ちなみにスバルの愛竜であるパトラッシュは、その気位の高い気性もあって、他の家畜とは別のパトラッシュ特製の宿舎にいる

「前にも言ったけど、ベティーはスバルを幸せにしてくれた事をペトラに感謝してるかしら。それにペトラとスバルの仲がいいのも良い事だと思うのよ」

「ありかとう、ベアトリスちゃん。私はスバルを愛してるよ」

「最期まで聞けかしら! だからって、お前、いくらなんでも『愛してる』を連呼し過ぎなのよ」

 ベアトリスはペトラをジト目で睨む。

「しかもスバルにまで感染して、なんかある度に『愛してる』って。ベティーのパートナーとしての品位が下がるのよ」

 頭痛を堪えるようなしぐさをするベアトリス。

「そうかな? 私は好きな人に気持ちを伝えるのは当たり前のことだと思うけどな」

「ベティーも基本的には同感なのよ。でも最近は限度を超えてないかと言いたいかしら」

 ベアトリスとて、スバルとペトラのイチャイチャを眺めるのはほとんど日課になってたので多少の事なら流してた。しかし、最近の二人は無暗に「愛してる」を連呼し過ぎて節操が無いように思えるのだ。

「ん~」

 ペトラは少しだけ難しい顔で考え込んだ。そして、

「言いたい事はわかるけど、よりによって、ベアトリスちゃんに言われるのは納得いかないかな」

「なに……?、かしら」

「だってベアトリスちゃん。私とスバルが結婚する前は、人の事を言えないくらいスバルとイチャイチャしてたよ。人目もはばからずに」

「なっ……いや、ベティーとスバルのスキンシップはもっと上品だったのよ」

 思い当たる事があるのか、軽く目をそらしつつも、ベアトリスはそう主張する。

「い~え。スバルが『幼女使い』なんて異名で呼ばれるくらいにイチャイチャしてました」

「あの異名はベティーたちにとっても不本意かしら。あの記者の小僧が悪いのであって、ベティーのせいじゃないのよ」

 と、あくまで譲らないベアトリス。

 ペトラはため息をついて、

「まあ、ベアトリスちゃんに心配や迷惑をかけてるのはわかったよ。ごめんなさい」

 ペトラは誠意を込めて謝罪して頭を下げた。けれど、顔を上げると、姿勢を低くして目線を合わせてベアトリスを真っ直ぐに見つめ、

「でも、私はスバルに私の愛を伝えたい。スバルは凄い人なのに自信が足りないところがあるから、少しでも私の感謝や愛情を伝えたいの」

 そう、自分の決意を告げた。

「……ペトラ……」

「あと正直、私とスバルのイチャイチャを自慢したい。みんなに見せびらかしたい」

「おい。かしら」

「できることなら、道行く人たちに『あれが私の世界一の旦那様なの』って自慢したい。さすがにやらないけどね」

「当たり前かしら!」

 ベアトリスは小さな体で地団駄を踏んで憤慨を表現した。

「でもベアトリスちゃんも以前はスバルは『ベティーのパートナーで凄い奴』みたいな事を毎日のように言ってたよね」

「ま、毎日は言ってないし、ベティーはもう少し控えめだったかしら。スバルは凄い男だけど、ベティーのパートナーとしては不足な部分もあって、ベティーはちゃんと、そういうところは指摘してたのよ」

 顔を赤くしながら反論するベアトリス。

「私だって、スバルが間違ったことをしたら怒るし、場合によってはひっぱたくよ。でも、それはそれとして、私がどれだけスバルを好きか、スバルのどこが好きかは、いつだってスバルに伝えたいの」

 と、初めて会った時から変わらない姿の友達に、自分の考えを伝える。 

「ぐむむ~かしら」

 ベアトリスはまだ何か言いたげだったが、ペトラに痛いところを指摘されたばかりなので反論できない。

「でも、ベアトリスちゃんがそんなに気になるなら、明日は朝食の時は我慢するね。朝はおはようの愛のささやきとキス、それからお着換えの時とお片付けの時にスバルに気持ちを伝えるだけにしておくね」

「譲歩が少ないかしら」

 ベアトリスはなんだか面倒臭くなって呆れたようにツッコミを入れた。

 

 その後、畑仕事を終えたスバルと合流してペトラ手作りの弁当を堪能した。

「美味い! さすがペトラの弁当だな」

「ええ。私の愛情と勉強と創意工夫の結晶です。スバルに美味しいお弁当を作るのが夢でした」

 メイド時代から抱いていた密かな夢だった。

「お水もありますから、ゆっくり食べてくださいね」

 と、ペトラは水筒を差し出す。

 

「愛してるよ、スバル。何回言っても足りないくらい愛してる」

 それがペトラの偽らざる本心だった。

 だから今日も明日もペトラは世界一の旦那様に愛を伝え続ける。




第4話終了です

ベアトリスは可愛い上にギャグもツッコミもできて使いやすいキャラだと痛感してます。

ペトラの愛は重いですが、スバルの愛も重いのでバランスが取れています。

では、次回もよろしければ、お読みいただけると幸いです
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