【TS】自作武器使い女体化娘、男の娘嫁と爆速で添い遂げようとする。 作:秘密の豚園
遺伝子は俺達に囁く。
『増えろ。』だなんて。
【恋愛と物語をオカズに、繁殖という白飯をかき込め。】
そんなバカみたいなことを遠巻きに命じてくる。
でも、俺、
嫁がいるってんなら、なおの事、
俺はそんなことを考えながら、大好きな人と閑静な住宅街を歩いていた。
「何、ジロジロ見てんだよ、ユウちゃん。」
俺の隣を歩く嫁が小さな口を開いた。切れ長の目と、グレーのボブカットが溜まらなく愛おしい。産まれてきてくれてありがとう。同じ大地を踏んでくれてありがとう。
主張を抑えた肩幅と喉仏、血管が小さく浮き出た小さな手。男らしさを強調するブレザーと、男子制服ですら俺の嫁の魅力を殺せない。いや、むしろ、男らしさが良い。
「さっきからジロジロジロジロッ…。どしたんよ、ユウちゃん。」
「俺の嫁は可愛いなぁ、って。
「………。まぁた言ってる…。あのね!俺は…!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!???その可愛い容姿で、一人称が俺と来ましたか!?フォカヌポゥ!!褒美をくれてやろうッ…。俺との逢瀬券と、添い遂げ券だ。ホレっ!!」
俺は事前にラミネートしておいたチケット二枚を、ポケットから引っ張り出した。
「…ひぃッ…。なにその小道具…。いつ作ったのッ!?」
「職員室に忍び込んで………。」
「バカタレがッ!!」
俺に怒号と唾を飛ばすその顔すら愛おしかった。
「嫁じゃねぇからッ!」
「
「…なにが、
「塩が足んねぇよ。……みたいな?」
口角を上げる俺を、サクハが睨みつける。
「ふん。そうやって、俺が分からないネタだとか、ミームばっか使って優越感に浸ってれば良いじゃん。ネットで仕入れた知識で、知識量マウントでも取ってさ。」
「お゛ッ!?嫁の冷笑…メタ視点からの批評………。脳に響く………。ぎぼじいっ………。好きッ!ん゛ッ!」
「む、無敵の人なの?お前には失うものは無いの…?」
心底呆れた様子でサクハは続ける。
「てか、俺の家の前まで来ること無いのに。降りる駅も違うじゃん?」
自宅前の外扉に手をかけるサクハが口を開く。俺はその言葉の中に嫌悪ではなく、遠慮や申し訳なさを感じ取った。
「楽しいもん。そりゃ。お前の事大好きだし。」
口からそのままストレートに飛び出た言葉だった。思案も、校正も躊躇いもない俺の本心だった。俺には駆け引きも、取り繕いも要らない。好きなら、好きとすぐにでも伝えたい。
「………バカタレ…。」
「あ!今デレたな!?じゃあ明日アレしようぜ!周りの奴らに、『夫婦漫才かよ!』って突っこまれるあの…古来から続く…民明書房にも綴られてそうな………。あの………。」
「言葉に詰まるな!周りに内輪ノリを強要するな!夫婦じゃなくて夫夫だろ!民明書房には恋愛ラブコメの舞台装置みたいに機能するモブのテンプレセリフは綴られてねぇよ!!」
おお、四ツッコミ。流石俺の嫁だ。
「おお。」
「だから何が
サクハが地団駄を踏みながら、閑静な住宅を騒がしくしていく。
そんな様子を、俺は見つめながら、後退していく。
「そろそろ帰るわ!またお迎えに上がるわ!じゃあな!嫁ッ!」
「二度と来んじゃねぇ!ボケッ!……あ、明日雨だから、母さん送ってくれるんだって!明日は俺が迎えに行くから!!」
最後の最後にデレやがった。この可愛い嫁め。
今日も良い日だった。そう思いながら、サクハに背を向ける。
そんな日常が変わらないようにと、俺は遺伝子に願った。
───────
俺は願ってた。
電車に揺られている時も。
「んぐご…。」
家に帰った後も。
「ただいまァ。」
夕食を取っている時も。
「ぐァつぐァつぐァつ。」
風呂に入っている時も。
「んぐご………。あ、風呂で寝るのはヤバい…。」
家族におやすみを告げた後も。
自室の布団に入った後も。
尚も、遺伝子に願った。カーテンを柔く照らす月明かりにも願った。
この世界じゃ、男の性を持った奴は、ある日突然、咲く。花が開いたように、女体化は等しく、美とステータスを与えてくれる。
それでも俺は、いくばくかの補助金も、不可逆の女体も要らなかった、何よりサクハにそうなってほしくなかった。
女性差別じゃない。断じて違う。
それでも俺は
「男のまま、愛したいなぁ………。」
そんなことを呟きながら眠りについた。
甘く、深い、眠りだった。
────────
そんな俺を待っていたのは
「………マジか。」
窓に当たる雨と、苦い困惑と、戸惑いの起床だった。
柔らかな肌と、甘い体臭。重く苦しい体と、口に入る髪の毛。
「ペッ……ペッ……。んべ………。」
口の中の粘着きを溶かすように、ペットボトルの水を流しこむ。
「も、もっかい寝れば………。きっと…。」
それでも、非日常と焦燥で冴えた頭は俺の体の状態をハッキリと女体だと告げていた。
「……俺……どうすれば………。」
しかし、冴えた頭は、俺にさらに答えを与えた。
「……いや、逆に良いんじゃないか?」
そうだよ。
男(の娘)と女の結婚、恋愛。ここに戻るだけなんだ。
昨今の理屈の視点による冷笑ブームが、感情を重きに置いた熱笑になったように。先祖返りという言葉があるように。流行が一巡するように。
「遺伝子の言う『増えろ。』だなんてご通達、従ってやっても良いかもな。」
俺は、長い髪を横に振り、立ち上がる。窓に映る美人がこちらに近づくのを見て、自分だと理解するのに、一秒もかからなかった。それから窓を開けて俺は顔を出した。
顔に当たる小雨が、新しい俺を祝福してるみたいで心地いい。俺は、息を吸い込むと、空に向かって、声を出した。
「結婚しようねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!サクハぁぁぁぁぁッ!!!!」
「うるせぇぞ!兄貴ッ!」
返ってくるのは壁を殴る音と、鳥のさえずりだけだった。
おお、妹もどうやら俺を祝福してくれてるみたいだ。
「うるせぇ!クソ…ユウ……え!?誰ッ!?」
戸惑いと怒号が混じった声が眼下から聞こえる。
「え?ちょ…。え!?サクハ!?早くない!?」
俺の家の向かいに開いた空き地には、車の窓ガラス越しに驚愕の顔を見せるサクハの母親と、黒い傘を差しこちらをじっと見つめ、口を大きく開けるサクハがいた。
「…ははッ。」
日常に差し込まれた非日常に悲観する暇なんて無いな。こりゃ忙しくなるぞぉ。
うっふぅん。