【TS】自作武器使い女体化娘、男の娘嫁と爆速で添い遂げようとする。 作:秘密の豚園
今回もよろしくお願いします。うふん。
4月20日。雨の上がった午前9時00分。
砂利と泥をいっぱいに含んだ専用駐車場は、訪れた車を、泥水とガタ付きで歓迎する。地面には白線も停止線もない。
それでも、車間距離と暗黙の了解を読んで、母ちゃんは、緑のラパンの隣にそっとジープコンパスを停めた。
車道を挟んだ向こう側、レンガ調の外装で、こじんまり立っている店がコルレオーネ屋だ。店の前の花壇には、シルエットを丸く整えられた三つの低木が程よい距離感を保ちながら行儀よく並んでいた。
「ねぇ~、こっから歩くのめんどいィ~…。」
「そうさねェ。」
「でも、食べたいィ~。」
「難儀なもんだねェ…。」
車で来た客は、ロクに整備もされていないこの駐車場に車を停めて、息を着きながら歩道橋を通って、ようやっと食事にありつける。
どうにもクソみたいな立地だけど、味と、リッコおばちゃんの顔とサービスの良さで許されてるっていう節はある。
あ、そうだ。
「び…、【
俺は足元に指を指すと、首を横に小さく倒して、甘えた口調で母ちゃんの目を覗き込んだ。
「…………外したら、
シフトレバーをPに入れながら、母ちゃんが訝し気に俺に問いかけた。
「するわけェ!」
いやぁ、本当は高校に行きたいよ。すぐにでも班目をヤっちまいたいし、生徒会なんか全員潰してやりてぇ。チューの約束だってすぐにでも果たしたいけど、まずは我慢。
くぅ~!なんて焦らし!鉄の拘束具で包まれた快楽殺人鬼の気分だね。
「だがね…。」
「その、『だがね…。』はどこに掛かってるのさ。」
「
俺は小さく口を開けて、母ちゃんにサムズアップを向けた。
「内助の功ゥ~?アぁンタ、そんな大人しいタチじゃないでしょ。どちらかと言うと…。お~…。
「別に上手くはないし、韻も全部踏めてないよ?」
「うっさいね。ホレ、早く靴脱いで足、コッチに向けな。」
母ちゃんの言葉に、スニーカーに手を伸ばす。靴紐に指先が触れると、朝に味わった不快感がせり上がる。
「あ…。」
思い出してしまった。不可逆の変容を誰が強く教え諭したのか。今一度。
「……。」
昨日まではロクに靴紐を結ばずとも、足を入れるだけで履けていた愛用のスニーカーだったが、今日コイツは俺のいつものズボラさに待ったをかけた。
朝、家を出る前の玄関。日常へ寄せていた信頼が、疑いと裏切りへの焦燥に変わったんだ。
「ユウオ?」
服を着るときに引っ掛かる胸だとか、口に入る髪の毛。ところかまわず散らばっていくおしっこ。女体化した後の、どこか想定できるようなちょっとした不自然さとは、また違っていた。
靴を履く。それだけだったのに。
それは、信頼しきっていたルーティンの中で、明確な歪みになった。
「ユウオってば。」
今でも思い出す、あの味わったことのないゆとり。靴と、足の間の空白。何気ない日常の、気にも留めない動作の中に現れた棘。痛みは無くても、すぐに抜けるようなものでもない。
「……。」
とは言いつつもォ…。
さっき靴紐強めに結んで、調節したし、いつも通りに疑似スリッポン化させたから、まぁOK…。
ま、やっぱり女の子になっちゃったんだなァって改めて、理解できた。
でも、多少怖くても、それっぽい葛藤しても、サクハからハグされたら、正直それで良いやなんて思ってる。
それにさ、そういう連綿とした違和感を、日常にしていくのが、女体化っ子としての第一歩なんじゃねぇかなぁ~。
「ユウオ!」
「え、あ、はい!俺!人妻です!!」
おお、びっくりした。返事の勢いに倣うように左手が素早く動いた。
湿った靴底を掴んでいた左手が、右足から靴を引き抜くと、鼻腔を甘くてぬるい体臭がくすぐった。
「うへぇ…甘…。…いや…すっぱ……。」
うへぇ…。てか、なんかニオイに甘いだけじゃなくて、【
「…………それじゃ、人妻さん。靴脱いだんなら、こっちに足伸ばしな。」
母ちゃんがポケットから取り出したハンカチを膝の上に乗せると、俺の足をそこに乗せるように指で催促した。
「う~い。」
尻を軸に体を90度回転させて、俺はドアに背を付けた。そして両足は、ホルダーに入った水筒とシフトレバーを悠々と飛び越えた。
「お、スゲ。やっぱり体、やっこいかも。」
「ん。そうかい。」
母ちゃんの生返事と共に、捲られる俺のズボンの裾。
そして製作者たる俺に牙を剥く、拘束具の羅波矢ウェポン【
クソッ…。どこのどいつだよ…。こんな電流流す枷なんて作りやがったアホは。
おかげで朝から痺れっぱなしだよ…。ゾルディック家じゃねぇんだからさ。まぁ、そんなアホの顔でも拝んでやるか…。
俺は、開錠に苦戦する母ちゃんを横目に、そっとドアミラーの方に振り向いた。そして、鏡に映る俺の姿は…。
「おお…。こりゃ…人間国宝…。自分の後光に目がくらむッ…。顔面の上で新興宗教ができちまう…。これ…市井の人間が、見て見ぬフリしていいツラじゃねぇだろッ…。」
しかし、なんたる麗しさ…。朝起きた時より、美人に磨きが掛かってないか?
長い黒髪は一本一本に芯が通っている。指を通して、水かきの間で遊ばせると、その髪のどれにも存在感と、個性の誇示があった。束ねられ、まとめられることを忌避するように、指の中に、さらりとした感触の軌跡を残していった。
男の頃の面影は顔の中にしっかり残っている。二重も、細い眉の形も。
だからか、鏡の中の美人は、喪失に顔をしかめることもなく、俺に対して安堵する顔を見せてくれている。
「サクハ以外の人間は、俺を視界に映すたびに金払えよ…。」
俺は、思わず自分の頬に手を伸ばした。
「あ~、やかましいヤツ…。誰もが二度見するボコボコフェイスにしようかい?」
「あ~!DV示唆!や~め~れ~!ババアッ!テメェを悪役にした毒親エッセイ漫画描いてnoteで連載してやろうかぁッ?あ~ん?」
「ひぃ、怖い怖い。…っしょ…ふぅ…。よーやく外れた…。あ~めんどォ…。」
母ちゃんは手の甲で眼鏡を押してポジションを整えると、俺に、
「あんがとぉ~。」
俺は足を戻すと、母ちゃんに向けて手を伸ばす。肝心の親不孝者を引き取るのを忘れていた。
「なにさ。」
「ワッパ。」
母ちゃんは、俺の言葉に大きな吐息を漏らすと、膝の上の【
「あとリモコン。」
「ほれ。」
「…。ま、お勤めご苦労ってこった。そいじゃ、そろそろ娑婆に出るよ。」
母ちゃんは、ドアのロックを解除して、ドアハンドルに手をかけた。それから俺を急かすように小さく手招きをした後、砂利をスニーカーで踏みつける。
「んしょ。」
それから、後部座席に行儀よく座ったリュックの持ち手に手をかけた。乱暴に手繰り寄せたあと、開いていた口にワッパとリモコンを突っ込む。小さな衝突音やら金属音がリュックの中で消えていく。
「行こっか。」
リュックから覗くウェポンたちに囁くと、左手にリュックを抱えて、ドアを開ける。
雨上がりのアスファルトのにおいが温い風に乗っていた。嗅ぎ馴れたツンとする香り。
俺一人が女の子になっても、世界はちっとも変わってない。
慰めも励ましも理解も、否定も拒絶も、導きも無い。
選んだ自由の分だけ、払う責任と、のしかかる苦労もそのままだ。
「ま、女の子になって『はい、努力の要らないサクセスストーリーな人生をどうぞ。』なんて言われても気味悪いだけよな。」
「なんてー?」
歩道橋に向かっていた母ちゃんが、俺の独りごとに振り向いた。
「別にー?おセンチに感傷に浸ってた~。」
「ふーん、良いじゃない。たまには、アンタ、どっぷり浸ってみな。」
母ちゃんが背を向けて、また歩みを進める。
そんな言葉に、サイドミラーに映る俺が目尻を下げて、白い歯を見せていた。
「馬ッ鹿でぇ。」
それから、一親等アラフォー女の後を追って俺は歩道橋に向かう。頭の後ろで、パーカーに付いたフードが揺れた。リュックが背中の上を跳ねた。
足元の砂利が、アスファルトに変わって、それがまたひび割れたコンクリート床面の階段に変わる。
「体、慣れた?」
歩道橋の通路から、未だ階段にいる俺に対して、母ちゃんが呼びかけた。
「慣れない~。おぶって~。頭と体でなんかディレイがあんだもォん。」
「ディレイ?操作者と、現地のGTロボぐらい?」
出た!母ちゃんのオタク比喩!
「トリコじゃん!」
「ぞあっ…ね。」
母ちゃんが、フグ鯨回でGTロボと対面した時のトリコの顔真似をしたまま固まった。
「おお。」
俺もココの顔真似をしながら、母ちゃんの後ろに忍び寄って、脇腹を指で突く。
「ほれ、バカやってないで、そろそろ行くよ。佳代さん。」
お次は母ちゃんの肩甲骨を指で突きながら、実名で呼びかけた。
「じゃ、このまま『コミックエッセイで作者キャラが、理解できない人間の奇行に驚いて、拒絶反応起こしてる時の“ぞわっ”』もやっちゃおうかね。」
しかし、母ちゃんは俺の呼びかけには答えない。唐突に身を一歩引いて、架空の誰かに向けて、顔を青ざめさせた。
「ね~、佳代~。」
「はいはい。分かってるって。たく…、アンタには【マンションの住人のゴミ袋を逐一チェックするババア】の役をやって欲しかったんだけどねぇ…ほわぁ…。」
母ちゃんは口に手を当て、欠伸を吐き出すと、ようやっと歩き出した。
目の際からは、欠伸で漏れた涙が一粒、地面に落ちて、雨水のシミと混ざる。
「なにそれ?悪役義母成敗系レディコミ?…てか何時に寝たのさ、昨日。」
手すりの上で指を走らせながら、俺は母ちゃんに問いかけた
「ん~、昨日ってより、今日ね。3時、3時。」
母ちゃんは一瞬こちらに目を配った後、俺と同じように手すりの上で指を走らせた。
そして手すりの中で佇む赤錆を前にした母ちゃんの人差し指は、大きく跳ねて、塗装のはがれていない綺麗な部分に着地した。
「…えぇ…。母ちゃん、43だし、あんま無理すんなよなァ。」
「…だってェ…描けるうちにって思ったら、時間が経ってんのさ。それに毎日やってるわけじゃあないし、良いじゃないのよ。たまの毒も、体に入れてやんなきゃ。除け者にされちゃあ、毒が可哀そうじゃないの。」
母ちゃんが人差し指をクルクルと回しながら、目を閉じて、講釈を語る。
「屁理屈エロ漫画家おばさん…。」
「どしたよ、ガラクタ自作女体化息子。」
チッ、口が回るババアだぜ。
歩道橋も下りに差し掛かり、コルレオーネ屋が見えてくる。赤茶色のレンガ外装と、その隙間を通る白いモルタルが目に入った。
花壇に仲良く並んだ三本の低木は、吹いた風に挨拶するように、葉を同じように揺らす。
「ホレ、ユウオ。着くよ。」
アーチのかかった玄関ポーチの上では、レンガの壁に不釣り合いなネオンが、カタカナで書かれた【
ひび割れたコンクリの地面が、湿ったアスファルトになって、石張りの床に変わった。石張りの床は動かず、流れるように視界の中から消えていくことも無い。
着いた。着いてしまった。でも、ドアの前から動けない。石張りの床は視点の先から消えない。
「……うぅ…。」
やべぇよ…。着いちゃったよ…。
「なにさァ、今頃恥ずかしがってどうすんのさ。リッコに言ってやれば良いじゃないの。『
「…んな簡単に言えっかよ…。なんかさぁ…、なんかよぉ~…。家族とか、サクハに見せるのとは、また毛色が…ねぇ?」
俺は、ポーチ内のメニュー表の縁を愛でるように撫でた。指遊びに逃げていれば、まだこの中に入らなくても良い気がしたから。
「サクちゃんには、あんなに好き好き言えるのにねェ。」
「うっせ!……ねぇ、あと1分したら…。」
「こら、日和ってんじゃないよ。ドアの前で葛藤してても仕方ないでしょうに。ほら、お入り。」
母ちゃんはドアの前に立つ俺を、横に押しのけた。
「あ、ちょ!」
「ホレ。」
それから母ちゃんはドアノブを引くと、俺の背中を目いっぱい押した。
「…あ、う。」
石張りの床が、白と灰色のタイルのチェッカー柄に変わる。
四方を色の違う隣人達で囲まれたタイルらは、同色の頂点同士を触れ合わせることで、ようやく拙い同族意識を得ることが出来ていた。
「うぅ~…。」
あ~…、見たくないィ…。上を向きたくないィ…。ずっと下見てたいよぉ…。床に対して、頑張って文学的なものの例えするから、時間止まってくれねぇかなァ…。
閉じていくドアの金具の擦れる余韻が、フェードアウトすることもなくパタリと途絶えた。
「あ。ィらっしゃいませぇ~。」
ドアの閉まる音に続くように、リッコおばちゃんの声が響く。声にかすれも、痰のからみも見当たらない、いつも通り良く通る声だった。
「お客様、1名様ですか?ウチの店は初めて?」
俺の視線が、赤いクッションの埋め込まれた背もたれのない丸椅子を通って、卓上のピクルス入り瓶やら、ガムボールマシーンを通る。
沁みついた社会性が、人の声に反応するように俺の顔を上げさせやがった。
カウンターの隅では、恰幅の良いジジイが楊枝を咥えながらじっとこちらを見つめている。うぅ~、他のお客さんにも見られてるゥ…。
「あァ…そのォ…。えと…。」
第一声は何が良いんだ?あれ?喋る時って、息吐くんだっけ?吸うんだっけ?うぅ…。サクハに対しては、あんなに言葉がスラスラ出たのにぃ…。
カウンターに肘をついていたリッコおばちゃんが、手に持っているバインダーの後ろから顔を半分覗かせていた。
「…お客さん?」
リッコおばちゃんの大きな瞳が、俺に問いかけた。長いまつげがパチパチ動いた。
「あ…。」
「大丈夫?具合悪いの?」
「…いや…ちが…ちが…そのっ…。」
思わず後ろに一歩下がってしまう。その時、背中のリュックが揺れた。ウェポン同士が小さくぶつかって、プラスチックの玩具同士が重なった時のような軽い音が鳴る。
「あ…。」
そうだ。俺の証明が、ここにはあった。ずっとここにあるじゃないか。羅波矢ユウオを、羅波矢ユウオたらしめるライセンスが、こんなに近くにあるじゃないか。
人間の個性を肯定する、見慣れた文言達が脳裏を巡る前に、いち早く俺の背中を押したのは、他でもない
「ま、待って!おばちゃん!こ、これっ…!」
俺はリュックを片方掛けにして、右肩を軸に正面に回した。それから左手で一番大きいファスナーポケットを勢い良く開いて、手を突っ込んだ。
「び、
引き抜いた手の先にあったのは、今朝サクハのスマホを強奪した羅波矢ウェポン、ビッチ・ヨーヨーだ。
「こ、これさ!中に、の、のりが入ってて…防水仕様で…。あと、も、物もくっつけて引き寄せられるのさ!」
「あ、でも!将来の構想的には、中の…液体貯蔵部分をカートリッジにしてさ…、のり以外にも、洗剤とか、催涙剤とかいれて、そ、それでカスタム性を…。」
恥ずかしさから言葉が詰まる。胸が逸る。唾が飛ぶ。
「だから…俺……俺は…。俺は…。」
あぁ、なんで俺…知り合い一人にすら、自分の事を普通に伝えられないんだろう…。
「…。」
リッコおばちゃんがカウンタードアを押しのけて、こっちに向かってきていた。
口を閉じて、うねりのある茶髪のボブを揺らしながら、俺のことをずっと見つめていた。
丈の長いスカートが特徴的な、黒を基調としたウェイトレスのユニフォームが俺の前で止まった。
手が強張って、また一歩引いてしまう。リュックがドアに付いた。
「あの…ごめんなさ…。」
その時、俺の頬に、ひんやりとした指が伸びた。
そして、おばちゃんの手のひらがゆっくりと俺の頬を包む。
「可愛いくなったねぇ。ユウちゃん。」
「…。」
「…わ、分かるの?」
「もちろん。そんな変なおもちゃ作れるような子、ユウちゃんしか知らないもの。」
おばちゃんのその声で、その言葉で、俺はようやく、おばちゃんの目をしっかりと見ることが出来た。
微笑みからか目元に寄ったシワと、少し細く伸びた目。笑いと共に小さく漏れる静かな鼻息。
そっか、そうなのか。
俺が女の子になって、こんな表情をしてくれる人がここにもいたんだ。
俺ってのは、案外単純で、理解だとか共感一つで、葛藤も悩みも、大抵は吹き飛んでしまうみたいなのだ。
「…ねぇ、おばちゃん…。」
「ん?」
おばちゃんが首をかしげた。
「お揃い…だね。俺達。」
母ちゃんがポーチの中で言っていた言葉を口にすると、おばちゃんの口角が跳ねた。
「ふふ、ホントにね。」
おばちゃんの手が俺の頭に伸びた。
その時だった。
勢いよく、遠慮無く、店のドアが大きく開く。
「ほァ~。んゥ、ほんでェ、お芝居はァ?アンタらのドラマは終わったァ?」
大きな欠伸を一つつきながら、ウチの佳代が、あの冷笑ババアがやってきた。
「…。」
こ、こいつッ…。ホントッ………。
「あれま、佳代じゃん。あ、二人で来てたんだァ。ていうか、咲いた同士の大事なコミュニケーションをドラマ呼ばわりは心外なんだけど?」
「ん~?共感と肯定を主軸に置いたポルノドラマって言えば良かったァ?ま、ホットサンド2つおくれよ。」
母ちゃんは歩みを止めず、そのままの勢いでカウンター側のスツールに腰掛けた。
「…ホント昔から、なんというか…。」
おばちゃんは愚痴をつくと、俺の頭を数度撫でて、カウンターの中に戻っていった。
「あ~…。セエカといいさァ、ウチの女どもは…。…あ。」
俺もおばちゃんに倣って一つ愚痴をつく。
でも、気づいてた、気づいてしまった。
「んふふ。もうユウちゃんも
カウンター越しにリッコおばちゃんが微笑んでいた。
違うんだ、おばちゃん。俺の気付きは違うんだ。女性っていうカテゴリに、もう既に俺も入っていることへの気付きじゃないんだ。
母ちゃんは、なんでさっき、一緒に店に入らなかったんだろうって、そう思ったんだ。
母ちゃんが、リッコおばちゃんに対して、俺を【咲いたユウオ】だのなんだの、説明すれば、さっきのくだりも要らなかったんだ。ウェポンを見せる必要もなかったんだ。
あ…。
「…。」
もしかして、この女…。
「ピクルス食べていい?てか。食べるわ。」
瓶から、爪楊枝を使ってピクルスを小皿に取り分けている、だらしない恰好のババアの隣に俺は座った。
「どした?ユウオ、あれかい?そろそろ、邦ドラ界隈も生成AIの恋人を題材にしたメッセージ性がコテコテの作品作る時期なんじゃないかって話かい?」
「ちげぇよ。」
「あぁ。また、SPECみたいな主要キャラの恋愛要素が無いドラマが見たいって…。」
「あんがと。」
「……。さ、なァんの話だか、さっぱりだよ。」
母ちゃんは俺の言葉を鼻で笑った後、小さなピクルスを口に放り込んだ。